新・刀使ノ乱舞   作:エクスカリバー!!

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調査隊、始動

 

 

可奈美やセイバーたちが“隠れ家”で休んでいる頃……羽島学長から赤羽刀調査隊に参加を命じられ、美炎と知恵、そして新たに清香の3人。

 

彼女たちは羽島学長と分かれ、管理局本部を出て、鎌府女学院へと向かった。そこで合流したのは昼前に共に荒魂退治した練府の刀使『七之里呼吹』であった。

 

そして、遅れて綾小路武芸学舎から『木寅ミルヤ』が加わった。

 

練府で多少ゴタゴタがあったが、互いに顔合わせが出来、ようやく赤羽刀調査隊のメンバーが揃った。

 

 

 

 

それから夜が明け、いよいよ調査隊が出発した。

 

「瀬戸内知恵さん、確認になりますが……調査の目的は荒魂発生の一因とされる『赤羽刀』の出所を探ること。これで間違いありませんか?」

 

「えぇ、そうよ木寅さん。だからまずは東京方面へ向かうのはどうかしら?目的地は別として」

 

「あん?だったらまずはこの鎌倉からでいいじゃねぇかよ。アメ公が御刀ぶんどって持って行こうとした時、アイツらの船が沈んだのはこっちのほうだろ?」 

 

呼吹の言う通り、終戦直後にアメリカが日本から御刀を運びだそうとした時、浦賀沖に沈んだのは確かだ。

 

ところがどういうことか、伍箇伝の調査では浦賀沖からは御刀が1本も発見されていないことになっている。

 

「え?ちぃ姉、それで何で東京なの?」

 

「そうですね……安桜美炎さんもご存じと思いますが、荒魂はノロが集まり結合することで発生します」

 

流石にそれは美炎も知っている。そもそも授業で習っている(それくらいの成績はある……らしい)。

 

「本来ノロは無機物との結合こそしませんが、御刀は例外です。いえ、正しくは結合こそ出来ませんが、何故かノロは御刀を取り込もうとしたがります」

 

だが、実際に御刀を取り込むことは無い。取り込むのは()()()()()だけ。それが『赤羽刀』なのだ。

 

だがそこで疑問点が出てくる。そもそも錆びも刃こぼれもしないはずの御刀が、何故錆びつき、荒魂に取り込まれるのか?

 

そもそも、取り込まれて錆びるのか、錆びてから取り込まれるのか。それすらも分からない。不自然なことが多すぎるのだ。

 

「う~ん……わたしの御刀、『加州清光』は先端が欠けてるけどな……」

 

「それは……!非常に興味深いですね……いえ、それはさておき。そう言った理由から伍箇伝は、赤羽刀は人為的に加工され、誰かがばら撒いてる可能性がある。そう言う見解なのです」

 

「とにかく、今の私たちには情報が少なさ過ぎるの。だからまずは赤羽刀を()んだ荒魂が多く出現する東京へ向かうのが得策だということ。分かったかしら?」

 

「なるほど……それで、東京のどこに向かうの?」

 

「は?荒魂ちゃんブッ倒しに行くんだろうが」

 

「血気盛んなのはいいですが、それが目的ではありません。まずは特祭隊の支部に赴き、近年の資料を請求して────」

 

「えぇーー!?つっまんね~!」

 

ブーブーと、文句を言うが、他に手がかりが無い以上、ミルヤの指示に従うしかないのだ。

 

「そうだよ、七之里さん。つまんなくても、それがわたしたちの任務だよ!ね、六角さん?」

 

「……原宿」

 

「六角さん?」

 

「あん?何だよ?」

 

「は、原宿………い、行きたい……です」

 

「ああ、原宿!良いよね、原宿……って、えぇ!?」

 

「ばっかじゃねぇの!?」

 

「そうですね……六角清香さん、あなたと同じ関西組として気持ちは分かりますが……私たちは遊びに行くわけではないのです」

 

「そうよ、清香ちゃん。大人系女子が行くなら、原宿よりも渋谷よ!」

 

「そっちかい!!」

 

「ちぃ姉、違うでしょ……」

 

「ハァ~……行きたいなぁ……」

 

「どうして六角さんは、そんなに原宿に行きたいの?」

 

美炎にとって、何気ない一言だったが、それが清香の何かのスイッチを入れた。

 

「だって原宿ですよ!?は・ら・じゅ・く!!」

 

「は……はい……」

 

「お洒落で可愛いお店がたくさんあるし、クレープも食べたいし、もしかしたら芸能人にも会えるかも!」

 

目をキラキラと輝かせる清香に対し、くだらねぇ…と呼吹は聞く気ゼロだが、美炎も清香の話でなんとなく良いな…と思ってしまう。

 

「確かにクレープって美味しいよね……なんか何でも良いから甘いものが食べたくなっちゃった……」

 

「やっぱり原宿行きたいですよね、安桜さんも!!」

 

「え、なに、この子……昨日と全然違うんだけど……」

 

任務前だが、年相応の姿を見せる美炎と清香を見て、クスクス…と笑ってしまう知恵。なんだかんだで、彼女たちはまだ子どもなのだ。

 

「なんだか、見てるとホッとするわね……」

 

彼女たちは刀使である前に、1人の少女。戦いだけが全てではない。そんなのは、悲しいだけだ。

 

そして、2人の姿を見ていると、かつての光景を思い出す。

 

「(昔はあそこに居たのよね……義勇くん……)」

 

今、彼はどこに居るのだろうか……

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「ハッハッハッー!どうやら清香は相変わらずのようだな!だが、それでなにより!」

 

「炎定、うるせぇ!」

 

「黄瀬も静かにせよ。折角の隠密任務が台無しだぞ?」

 

「いや、俺が悪かった!すまなかったな、黄瀬よ!」

 

「いや、だから声がデカい」

 

「(眠い………(_ _).oO)」

 

尋ね人は意外と近くに居たりする。

 

調査隊から少し離れた場所、定食屋で朝食を食べながら双眼鏡で彼女たちを見張る義勇たち。

 

「ハァ~……可愛い美少女たちを尾行出来るのは良いけど、何でこのメンバーかな~……」

 

「まぁ、そう言うな黄瀬よ。他の者たちにはそれぞれ任務がある。なにより主が我らを信じてこの任務を与えて下さったのだぞ」

 

ポンポン…と善逸の肩を叩きながら、焼き魚定食を食べる三日月。その善逸の方は生姜焼き定食、杏寿郎は最初は三日月と同じ焼き魚定食だったが、完食後、新たに肉じゃが定食を注文。義勇は鮭大根定食を眠たそうになりながらも、口に運ぶ。

 

「ところで義勇は何故そんなに眠たそうなんだよ?」

 

「いや、【炎定が寝相が悪すぎて何度も蹴り起こされ、黄瀬の寝言がうるさかくて全然眠れなかったが、任務に支障が出ないよう努力するから】問題ない」

 

「ハハハ…冨田、お前は本当に優しいな」

 

「え?どこが?」

 

「(寧ろ何故三日月は寝れたんだ……?)」

 

この刀剣男士は相変わらずよく分からん、と思いながら双眼鏡で調査隊の様子を見る。とくに、先日再会した幼馴染みを。

 

「……美炎」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

数時間後────原宿

 

ザワザワ…

 

「うわ~!ここが原宿なんですね!みんなオシャレですね!お店もいっぱい!ホントに凄いですね、ミルヤ先輩!」

 

「はい、原宿は実に良い街ですね」

 

「「…………」」

 

テンションMAXの清香と、特に変わらず平然とするミルヤ、そして状況が掴めないその他……

 

「え、何コレ?何で原宿来てんのわたしたち?」

 

「ごめんなさい、お姉さんには全く分からないわ」

 

「んだよ……結局荒魂んとこ行くんじゃないのかよ!」 

 

「呼吹さんはちょっと黙ってて……えっと確か────」

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

数時間前

 

 

「六角清香さん、もう一度確認しますが、遊びに行くわけではありません。行き先が原宿だというだけならともかく、目的が遊びに行くなど………原宿?」

 

何か引っかかったのか、しばらく黙り込むミルヤ。そして

 

「いえ……良いですね原宿。あそこには確か『青砥館(あおとかん)』と言う刀剣商があったはずです。そうですね、確かに一刻を争う任務でもありませんし、六角清香さんの言う通りでとりあえず原宿に向かう。ということでいかがですか?」

 

「「えっ………」」

 

それから美炎たちに有無もいわさず、サッサと鎌倉駅へと向かいあっという間に原宿へと向かって行った。

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

そして、現在

 

「ま、まあ……来ちゃったからには楽しまないと損は損、だよね?」

 

「いや、それはそうなんだけど……」

 

「ちぃ姉?」

 

何か気になることでもあるのか、ちょっと歯切れが悪い知恵。しかし何か聞いても、言葉を濁すだけ。

 

「まあ、わたしたち西日本組は、東京なんて滅多に来られないんだから。楽しまないと損よね」

 

「美濃関は中部地方だよ、ちぃ姉。あ、アイス!アイス食べようよちぃ姉!あのお店すっごい並んでるよ!」

 

「ハァ~……面倒くせ~……」

 

呼吹だけは、年頃の少女のノリに乗れず、適当にぶらつくついでに、荒魂でも探そうと、別行動を取った。

 

「ねぇねぇ、ちぃ姉は何味にする?わたし、メロンシャーベット!」

 

今朝の任務へのやる気はどこに行ったのやら、すっかり甘い物に夢中の美炎。

 

彼女のこんな姿を見るのは久しぶりだった。最後に見たのは、知恵がまだ美濃関に在籍していた頃。幼馴染み3人で一緒にいた頃────

 

「ちぃ姉?」

 

「あ、ごめんなさい!それじゃあ私は、コットンキャンディー味で」

 

「こっとん……きゃんでぃー……?」

 

「綿菓子のことよ」

 

そして財布に握り締め、アイス屋へと向かう美炎。そこに清香とミルヤが合流して

 

「あの、あっちのお店でお洋服見てきて良いですか?大好きなブランドのお店なんです!あ、あっちのブーツも可愛い!!」

 

「って言ってるけど、ミルヤさんはどう?」

 

「そうですね……分かりました。では、私は六角清香さんと行動します。瀬戸内知恵さんは安桜美炎さんと一緒に行動してください」

 

「じゃあ行きましょう!ミルヤさんって背が高いから、なんでも似合うと思うんですよね!」

 

そう言ってミルヤを羨ましがる清香。確かにミルヤは年上の知恵に近いくらい背が高い。モデル体型と言うのだろうか。

 

しかし、こうしていると皆が(1人除いて)普通の少女のようだ。とても荒魂と戦う刀使とは思えない。

 

「もしかして清香ちゃんに影響されてる、のかしら?」

 

だとすれば、それはそれで嬉しいことだ。ならば自分もしっかり楽しまなければ。そう思い、美炎の元へと向かった。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「わっしょい!!わっしょい!!」

 

「うるせぇーー!!」

 

「お前がうるさい」

 

「そうだぞ黄瀬。折角の尾行がバレてしまう」

 

調査隊から少し離れた場所、スイーツ店で彼女たちを見張る義勇たち。彼女たちが原宿に向かうと分かり、慌てて交通費を皆で用意して、ここまで付いて来た。

 

そして彼らも何かと原宿を満喫している。

 

「わっしょい!!わっしょい!!」

 

両手いっぱいのスイーツポテトを持つ杏寿郎と

 

「ふむふむ……現代の菓子も中々良いな……」

 

揚げドーナッツを頬張る三日月

 

「(カステラ………美味い……( ̄~ ̄))」

 

ミニカステラを口いっぱい頬張る義勇。そして

 

「あ、お姉さ~ん ちょっとあなたの心の奥まで尾行しても良いですか~?」

 

「お巡りさ~ん、変態で~す」

 

「いや、俺も一応お巡りさんなんだけど!?」

 

4人目のナンパに失敗する善逸。

 

「てか、俺たち任務は!?」

 

「……………大丈夫、忘れてない」

 

「その間はなんだ!?」

 

「すまないが、この、“どーなっつ”とやらのお代わりを頼────」

 

「頼むな三日月!!」

 

「わっしょい!!わっしょい!!」

 

「お前は、いい加減黙れ!!」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ピピピッ!  ピピピッ!  ピピピッ!

 

 

「「っ!」」

 

アイス店で並んでいた美炎と知恵のスペクトラムファインダーからアラーム音が鳴り響く。

 

「荒魂が近くに!?えっと、場所は……代々木公園……そこから来てるみたい!ちぃ姉、早くみんなと合流して迎え撃たないと!」

 

「えぇ!」

 

列から離れ、急いで他のメンバーの元へと向かう美炎と知恵。

 

街の人たちも何か異変を感じてはいるが、まだ詳細は分からないようだった。そこに街頭放送が街中に広がる。 

 

『緊急放送、緊急放送……現在、竹下通りで荒魂が発生しています。機動隊が到着するまで現場には近付かず、警察、刀使の誘導に従い、迅速に避難してください。繰り返します────』

 

その放送を聞き、最初こそ慌てる人々だったが、誰かが避難誘導に協力してくれているのか、次第にスムーズに避難しはじめた。

 

美炎たちも、他のメンバーと合流し、荒魂の方へと向かう。

 

現場には、小型であるが、顔だけ大きい数体の荒魂が電柱や乗り捨てられた車に齧り付き、破壊していた。

 

「放送が……管轄の刀使の人たちが動き出してくれたんだね!」

 

「でも、今ここには、私たちしかいないから!」

 

「へ!狩り放題じゃねぇか!コイツらはアタシが全部狩り尽くしてやんよ!」

 

そう言い、呼吹は御刀を抜き、1人先走り荒魂との戦闘を始める。

 

「待て、七之里呼吹!突出するな!荒魂をそちらに追い込んでは民間に被害が出る!」

 

ミルヤが叫ぶが、喧噪の中にいる呼吹の耳には届かなかった。

 

「(どうするべきか……?ここは安桜美炎に呼びに行かせる……いや、おそらく彼女では七之里呼吹を呼び戻すことは出来ない。戦術としては下の下ですが一度……いや、それで本当に大丈夫だろうか……?)」

 

 

『木寅さんはなんでもかんでも難しく考えすぎだよ?』

 

 

「(っ!!)」

 

 

『あなたが迷っちゃ、部隊のみんながケガしちゃうよ。迷うくらいなら、1番手っ取り早く、真っ先に思いついたことを試すのも良いんじゃないかな~?』

 

 

こんなとき、頭の中に綾小路のとある後輩の言葉が蘇る。いつも狐のお面を頭に着けている、1つ下の後輩の言葉。

 

そこまで言うのなら、そうさせて貰うことにしよう。

 

「瀬戸内知恵さん、こちらはお願いします!七之里呼吹を呼び戻すまで持ちこたえてください!」

 

「えっ、ミルヤ!?」

 

知恵が止める間もなく、ミルヤや呼吹の元へと目指し走って行った。

 

「あの!わ、私は……私はどうすれば……」

 

オロオロと、自分だけどうすれば分からず、御刀も抜かずにいると、荒魂たちが清香にターゲットを絞った。

 

『─────!』

 

『─────!』

 

「えっ、きゃあっ!?」

 

「清香ちゃん!」

 

「ちぃ姉は六角さんを守って!私1人でどれくらい持つか分からないけど……頑張って敵を引き付けておくから!」

 

「美炎ちゃん……直ぐに戻るからね!」

 

そう言って、知恵は直ぐさま清香の元へと走る。そして美炎は宣言通り、知恵の後を追おうとする荒魂たちの前に立ち塞ぐ。

 

「ここから先には、行かせないよ!」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「………」

 

「おい、冨田!ぼぉーとしてないで、避難誘導手伝えよ!」

 

街頭放送で荒魂が発生したと聞き、義勇たちは任務を一時中断、避難誘導を手伝うことに。

 

そんな中、義勇は何かを感じ取った。

 

「冨田、どうしたんだ?」

 

「…………三日月」

 

「うん」

 

「頼んで良いか……」

 

「……ああ、承知した」

 

「はぁ!?こんなときに何を─────」

 

「まあまあ黄瀬よ、ほとんど避難誘導も終えている。逃げ遅れがいないか確認に行くだけだろう?」

 

「………ああ」

 

「だからなんだよ、その間は!?」

 

「では冨田、俺も同行するとしよう!2人いれば効率も良いだろう!」

 

「………行くぞ」

 

そして三日月と善逸に後を任せ、義勇は杏寿郎と共に荒魂が発生したとされる現場へと向かった。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「清香ちゃん!ぼぉーとしてないで!荒魂がそっちに行ったわ!」

 

「あ、ご……ごめんなさい!わ、わたし……きゃあっ!」

 

『────!』

 

なんとか清香の元に駆け寄ろうとするが、荒魂の方が早い。直ぐに清香に避けるように言うが、恐怖でか、足が思うように動けないのか、その場に転んでしまった。

 

チャンスとばかりに、荒魂が清香に目掛けて突撃してくる。

 

「清香ちゃんっ!」

 

「させないっ!!」

 

ザシュッ!!

 

『─────!?』

 

迅移で清香に目掛けて突撃していた荒魂をすれ違いさまに斬り割く美炎。

 

それにより荒魂は悲鳴をあげ、ドロドロのノロになっていく。

 

そして、清香を狙おうとしていた荒魂たちを引き付ける美炎。その間に、清香を守るように彼女の前に立つ知恵。清香は頭を抱え込み、地面にうずくまっていた。

 

「いや…………いや………助けて…………助けて…………」

 

ブルブル震える清香。御刀にも手を伸ばそうともしなかった。

 

「(分かってはいたけど……もしかして六角さん、刀使なのに戦うのが怖いの……?)」

 

刀使には呼吹のような刀使はいるが、清香のような刀使は初めて見た。何故刀使になったのか分からない。

 

「(私は清香ちゃんを守るので手一杯!美炎ちゃんだってそんなに長くはもたない……)」

 

状況はあまり良くない。このままでは負傷者が出る可能性がある。

 

 

誰か

 

 

せめて誰かあと1人

 

 

ミルヤたちが戻るまで保たせられたら────

 

 

「ヒュゥゥゥ……」

 

「フゥゥゥ………!」

 

「「っ!」」

 

 

突如、聞いたことのある呼吸音と、初めて聞く呼吸音、そして何者かが走って来る足音。

 

 

それがだんだんと近付いて行き────

 

 

「水の呼吸……肆ノ型……」

 

 

ザバァァーー!!

 

 

「炎の呼吸……肆ノ型っ!!」

 

 

ボォォォーー!!

 

 

「打ち潮」

 

 

「盛炎のうねりぃぃーー!!」

 

 

淀みない水流の斬擊が、美炎の前にいる荒魂たちを次々と斬り裂き。燃え上がる炎の障壁が、知恵と清香を狙う荒魂たちを薙ぎ払う。

 

『『──────!!』』

 

瞬く間に荒魂たちはノロへと溶けた。美炎たちは、何がどうなっているかまるで分からなかった。

 

だが1つだけ分かるのは、()()が美炎たちを守ってくれたと。

 

水のような蒼い刀身の刀、見たことがある左右非対称の羽織。もう1人は見たことない白い羽織に炎のように紅い刀身の刀。

 

顔は美炎たちとは逆方向に向いているし、帽子のようなものを被っているので、顔は見えない。

 

だが、その内の1人は分かる。それは

 

「ぎ、ぎゆ────」

 

バッ!

 

「ま、待ってっ!!」

 

美炎が声をかけようとしたが、その前に彼らは一気に建物の上へと飛び上がり、何処かへ行ってしまった。

 

それを何も言えず見送ってしまう美炎。

 

「美炎ちゃん……」

 

「うん……来てたんだね……」

 

「そうね……それじゃ私は、清香ちゃん見てくるから」

 

「分かった」

 

そして知恵は未だにうずくまっている清香の元へと駆け寄った。

 

「清香ちゃん、もう大丈夫よ」

 

「………はい……す、すいませんでした………」

 

知恵に手を差し伸べられ、その手を掴み立ち上がる清香。そして周りのノロへと化した荒魂たちを見渡す。

 

「あの、コレって………」

 

「ごめんなさい清香ちゃん、ちょっと話を合わせてくれないかしら?」

 

「は、はい………」

 

それから知恵に言われ、この荒魂たちは救援に来てくれた付近の刀使たちと協力して自分たちが討伐した、と言う事になった。

 

何故そんな嘘をつくのか気になったが、清香は大人しく従うことにした。

 

「そういえば………」

 

「ん?どうかした?」

 

「い、いえ!なんでも……」

 

そして知恵が美炎を呼びに行っている間、清香は先ほどの声を思い出す。

 

地面にうずくまっていて、顔や姿は見ていないが、声だけは聞こえていた。

 

まるで炎のように熱い声。その声の主も、まるで炎を擬人化したような人だった。

 

「もしかして……師匠……?」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

美炎たちを手助けした後、義勇と杏寿郎は人気のない裏道に入り込む。

 

そして杏寿郎は近くの電柱へと手を伸ばし思いっきり────

 

ドンッ! ドンッ! ドンッ!

 

 

────頭をぶつけた。

 

「情けないな!いくら後輩のピンチだったとは言え、迂闊に対象に姿を見せ、あまつさえ呼吸法の技を見せるなど!この炎定杏寿郎、まだまだ未熟!」

 

ドンッ! ドンッ! ドンッ!

 

何度も未熟!未熟!と電柱に頭をぶつける。何度もぶつけるうちに、電柱に赤いシミが出来はじめた。そこに義勇が止める。

 

「炎定、止めろ」

 

「冨田、お前を止めることも出来なかった!本当にすまない!」

 

「いや、俺が先に考え無しに刀を抜いた。俺の責任だ。だからもう止めろ」

 

「しかし………」

 

「それと、電柱が折れそうだから止めろ」

 

見ると、杏寿郎がぶつけたところから、電柱全体にヒビがはしっていた。

 

「それに……アイツらは俺たちのことを話さない」

 

「それは何故だ?」

 

「………美炎は話さない」

 

全然説明になっていない義勇。だが、彼がここまで言うのは珍しい。ならばここは─────

 

「分かった!冨田がそこまで言うのなら、俺も信じてみよう!」

 

「……すまない」

 

そして2人は、三日月たちの元へと合流に向かった。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「木寅さん、七之里さん!よかった、無事で……」

 

「こちらをお任せして申し訳ありませんでした。木寅ミルヤと七之里呼吹、これより調査隊に合流します」

 

ようやく呼吹を連れ戻し、ミルヤが美炎たちの元に戻って来た。

 

そして、調査隊の指揮権をミルヤに戻し、ようやく真面な調査隊に戻った。

 

「ちっ……おい!ちんたら話してねぇで、早く親玉荒魂ちゃんと遊ばせてくれる約束だろうが!だから帰って来てやったんだぞ!」

 

「そうでしたね……こちらの荒魂は?」

 

「えっと……この辺りの管轄の刀使の方々の協力を得て、なんとか討伐出来ました……」

 

知恵が打ち合わせ通りに話し、ミルヤが周囲を見渡す。確かに彼女たちと分かれる前にいた荒魂は全て倒された後だった。

 

「(この数を彼女たちが……?)こちらが不在の間、ありがとうございます。それで、その刀使はどちらに?」

 

「あっ!それが、まだやることがあるって言って、何処かに……」

 

「そうですか……」

 

「なんだよ!アタシの荒魂ちゃん倒しまったのかよ!?あ~あ~、それならもっと遊んどきゃよかったぜ……」

 

不満そうにブツブツ文句を言う呼吹。そんな彼女を放って、ミルヤがノロ回収部隊に連絡した。しかし、別の場所でも荒魂が出現したらしく、回収部隊は少し遅れるようだ。

 

近くの警官隊に現場を引き継がせても良いとあったので、調査隊はもうしばらくその場に待機し、やって来た警官隊に後を任せ、青砥館へと向かった。

 

 

 

 

それから30分後…

 

 

入り口に刀を飾っている店の前に、調査隊一行が着いた。

 

青砥館(あおとかん)』、刀の鞘や柄の制作、刀の手入れや鑑定に売却、刀の販売から取り寄せまで出来る。

 

刀使の多くは刀剣類管理局から支給される鞘を使うが、人によっては青砥館のような店に頼む者もいる。

 

それこそ、鞘や柄の柄巻きだけでなく、鍔の目抜きから縁に至るまで刀身以外の全てをオーダーメイドする者もいる。

 

 

「────そんな刀使たちにとって、この青砥館は言わずとしれた名店であり憧れなのです!」

 

そう力説するミルヤ。彼女がここまで語るのは初めてであった。

 

「学内で(こしらえ)に関する職人を積極的に養成していて、元々、拵に工夫をこらす者の多い美濃関の生徒でさえもここを贔屓(ひいき)している方も多いのです!」

 

「「な、なるほど………」」

 

「もっとも、安桜美炎さんは美濃関の方ですから、知っていると思いますが」

 

「うぐっ!?………すいません、全く知りませんでした……」

 

「そのお話よく分かります!御刀にとって白鞘(しらさや)はあくまで普段着!拵え一式は女子の勝負コーデみたいなものなのです!」

 

「その例えはどうなんだろう……?」

 

確かに分からないこともない。

 

だが御刀は人々を守るためのもの。

 

刀使にとってはかけがえのない相棒。

 

少なくとも美炎はそう考えていた。

 

いえ、美炎さんは分かっていません!良いですか?『勝負コーデ』と言うのは、つまり『デート服』みたいなものなのです!女子にとっては戦闘服と同じものなのです!」

 

フンッ!と強く語る清香。とても先ほどまで腰を抜かしていた少女とは思えない。

 

「てゆうか、えっ!?六角さん、で、でででデートしたことあるの!?」

 

この子、進んでる!なんて恐ろしい子っ!!

 

と、改めて感心すると

 

「///あ、ありません……」

 

「えっ、なんて?」

 

「///そ……その、本とか読んで………憧れてるだけで………実際は………」

 

「なんじゃそりゃ!!(ベシッ!)」

 

「……そろそろ良いですか?店の前で立ち話でもなんですので、まずは店主にご挨拶を────」

 

「それには及ばないぜ」

 

店の中から声がし、振り返ると和服を着た少し年老いた男性が店から出て来た。

 

「いらっしゃい、俺がこの店の主、『青砥 陽司(あおと ようじ)』だ。可愛いお嬢様方が5人も。より取り見取りじゃねぇか?」

 

店から出て、美炎たちをぐるっと見渡す青砥館店主。制服がみな違う彼女たちは、彼にとってはちょっとしたお花畑のようだった。

 

「か、可愛い……」

 

「お嬢様……」

 

「///やだ、神がかった別嬪さんだなんて……(ポッ)」

 

「いや、そこまで言ってねぇよ?」

 

「何か言ったかしら、七之里さ~ん?」

 

「イエ、ナンデアリマセン」

 

「ハァ~……申し訳ありません、騒がしい者たちばかりで……」

 

ミルヤは店主に頭を下げるが、店主は良いの良いの!と笑って答えた。

 

「若い子はこれくらい元気があって丁度良いんだよ!それより、刀身以外なら何でも相談にのるぜ?もちろん、サービスもしとくぜ!」

 

バシンッ!

 

そこに店主の背後から彼の頭を誰かが叩いた。

 

「ちょいとおとん!お客さんに色目使うのいい加減やめてよ!恥ずかしいったらありゃしない!」

 

そう言って背後から出て来たのは練府の制服を着た少女。

 

青砥館の1人娘の『青砥 陽菜』である。御前試合に合わせて現在里帰りという名の手伝い。試合後には、多くの刀使たちがこの店に訪れるのだ。

 

「そうだ!あなたたち今日と明日、お店手伝ってくれない?ご飯とお布団なら幾らでもあるからさ!もちろん、格安で御刀の調子も見ますよ?」

 

「いえ、我々には任務が……」

 

「ほら陽菜、お客さんをいつまで店の前に立たせるつもりだ。さっさと中に入れてやれ」

 

「なっ!?元々はおとんが─────」

 

口喧嘩をしながら店内へと入っていく青砥親子。

 

結局調査隊一行は、青砥館でそのまま一泊する事となった。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

そして、その様子を監視する公安零課の三日月たち。

 

 

「ふむ……青砥館に入って行ったか……」

 

「どうする、このまま青砥館に張るか?あそこって確か、舞草と繋がりがあるんだろう?」

 

「して……如何する、冨田?」

 

「………審神者から、先ほど近くに宿を手配したと連絡があった」

 

「あの店には公安の別の課が見張りをしてくれるそうだ。我々はその間、宿でゆっくり体を休めるとしよう!」

 

「よっしゃー!やっと真面な宿にありつける!」

 

「では、向かうとするか」

 

「ああ………」

 

「因みに主には、彼女たちに呼吸法の技を見せたことは?」

 

「…………まだ」

 

「…………後でちゃんと報告しろよ?」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

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