医者が死んで千年。拾った子の養育費の為に鬼殺隊始めました 作:宮崎 葵
「そうか。巌勝が.......」
私は湧き水の入った湯呑みをおいた。以前から彼にはその兆候があり僕はそれを知っていた。僅かに夢であってくれとは願ったが現実となってしまった。
縁壱曰く、自分は鬼舞辻無惨を討ち損ねた責と兄が鬼となった責から鬼殺隊を追放になったと言う。
矮小な凡百達は愚かだ。縁壱が居なくなれば鬼殺隊は弱るのは目に見えている。何処の庭師が一番太い根を切るだろうか?
「縁壱。ここに居る気は無いか?衣食住なら保証するよ」
「悪いがそれは出来ない。私は兄上を討たねばならない」
そうか、それは残念だ。その言葉は口に出す前に塵になって消えた。きっと彼はこの先何百年もの時を生きるのだろう。弟の亡霊に囚われて何者にもなれず自らさえも失う地獄へと道を踏み入れたのだ。
私は化け物だ。人の行く道に僕が居ることはあってはならない。鬼舞辻無惨が暴れようとも私は本来死人。この世に存在してはならない。
「なぁ、縁壱」
私は縁壱を強引に押し倒した。縁壱は特にこれと言って動じる素振りは見せない。ただそこに佇んでいた。
あぁ、端ない。私は端ない娘だ。女が男を押し倒す等有り得ない話だろう。
「お願いだ。僕を置いて行かないでくれ───」
一人ぼっちは嫌なんだ。そう言おうとしたが縁壱は僕の口を抑える。そうして私の言葉を無理矢理殺してから縁壱は僕の口から手を離して言った。
「お前は一人では無い。良いか、桃」
縁壱の赤みが混じった瞳が僕を捉える。その目はいつもと同じ様に物静かに佇んでいた。何かに急かせれる事も無く、何かに燃え上がる事も無く、今までの強者の誰とも違った目をしていた。
「道を極めた者が辿り着く場所はいつも同じだ。幾百幾千の時が流れようとも、そこに至るまでの道のりが如何なる物であっても必ず同じ場所に行きつく」
そして縁壱は珍しく笑った。それは子供を諭す様に静かで優しげな顔だった。
「いつの日か、私と同じ様な存在にお前は出会える。何も悲しむ事は無い。お前や私の様な天才はいつ世にも現れる」
その時何かが僕の中で崩れる様な気がした。繊細なガラス細工が壊れる様に儚く、逞しい山が崩れる様に大きな音を立てて。きっと私はこの感情の正体を生涯知る事は無い。でも、それでも構わない。私は縁壱と共に居たい。
私は縁壱を抑える手を離して縁側に座り直した。なんだ?この頬から流れ落ちる雫は?化け物に似つかわしく無いこの透明な液体は?
「.......悪い取り乱した」
それからは何気無い日々が過ぎて行った。幾つかの約束を交わして。
僕はただ無心で歩いていた。枯葉の匂いが鼻を刺す森の中は蛇やら虫が蠢いていた。
「どうしたんですか?」
「いや、何でも無いさ。気にしなくて良い」
柴本の問いに無気力に返す。お面を着けているからこういう時に顔を見られないのは良かった。きっと、今の僕は酷い顔をしている。
まさか雪霞が藤原の人間だったとは。僕の他に白い髪が若くから出る人間は藤原に居なかったと思うが、アレから何代も世代を挟んでいるから外から何らかの遺伝を受けた可能性がある。
歩き続けて着いた大きめの塀に囲まれた瓦葺の木造の家。窓が有ったと思わしき所に釘で打ち付けられた木の板と「非人間」やら「人殺シ」と彫られた壁。どれ程の恨みを買えばこうなるのやら。
「地主ってのはこうも恨まれるのかい?僕としては人間の醜さって奴を見せられた気分だ」
「しょうがないんじゃないすかね。皆生きるのに必死だった訳ですから、金持ちが大層憎たらしく映ったんじゃないすか?」
ここの家は数年前は地主の一家が住んでいたと言う。だが、ある日を境に行方が分からなくなったらしい。何でも娘と夫婦共々消息が分からなくなり、部屋には血だけが飛び散っていたと言う。警察が探すも無念、遺体は愚か犯人像すら掴めない。警察も警察側で行方不明者が出た事から捜索は打ち切り。
ここだけ聞けばただの怪事件で終わりだ。だが、問題はこの先である。その数年前、警察の撤退の直後。五歳から十二歳位の子供、主に女子が夜に突然居なくなると言う。他にも両親の遺体は見つかるも子供の遺体は見つからない事件が十軒近く。隣の県境付近にも発生していると言う。
最初に鬼殺隊は試しに三十人の隊士を捜索隊として派遣するも全員何も見つけられ無かったらしい。が、最近事件が再び動き出した。
何でも夜に背丈が大きな男と小さな女が夜な夜な街を徘徊していると言う。何でも、昼には現れず見た者は死んで居るとか。
試しに夜に捜索を行うように出した隊士の十三名の内八名が血痕すら出さずに失踪。ある隊士の日誌に「我、明日森ノ廃墟ニ向カワン」とあったらしい。内訳には
そして、前回と違い今回は女が居た点と日誌の隊士を除くその周囲に居た隊士とその女隊士が見つからない点から「鬼は女が狙い」であると絞られた。
その結果、廃館に潜むとされる鬼が向こうから来る様に僕が派遣される運びとなった。本当、僕が基本的に不死身だからとこんな場所に配置するとは。首を切ってやろうか産屋敷。
最近の失踪は計二十八名。今回の鬼は推定で千人近くを食べている鬼だ。それなりに力も付けている。笠部に関しては起きそうに無かったので僕と柴本の二人で逃げる様に来る始末。
正直な話、今回の鬼は面倒な鬼で間違い無い。世救は本人曰く、襲って来た鬼殺隊や背信者を含めれば四千は
「本人、人間の愚かさには
僕は思わず溜め息を吐く。やれ戦争だの、やれ略奪だの、やれ暗殺だの。差別に奴隷制度に汚職。本当に人間と言う生物の大半はいつまで愚かで居る気なんだ?いい加減、少し程度は進歩でもすれば良いのに。
「.......そうっすね。人間ってのは本当に醜い生き物ですよ。自分さえ良ければそれで良い。他人の事は二の次。自分の為なら幾らでも残酷になれる」
その声は何処か遠くて近い所を思い返す様な声だった。きっと、彼も彼なりに何らかの不幸やら不遇なり人間の醜さを知る機会があったのだろう。
「或る意味、僕ら鬼殺隊はその最たる例と言えるだろうね。鬼を殺して日銭を得て自分を繋ぐ」
「確かにそう言う奴も居ますね」
柴本は苦笑いしていた。多くは覚悟を決めた人の世の英霊に成らんと言う者だ。だが、大量に稲が有れば中には出来の悪い米が混じる様に覚悟を決めていない者もまた居るのだ。
勿論、本心から徹頭徹尾人の世の為と言う隊士は少ない。然れど、曲がりなりにもそれなりに人の世の為の理由と言う奴を持ち合わせているのが大半だ。
「とにかく、入ろうか。僕としては早く日の出ている内に鬼の首を刎ねて帰りたいからね」
そう言って僕は右側の深緑の苔やら茶に赤と色の鮮やかな茸の住処と化した引き戸をに手を掛ける。が開かないのだ。内側から固く閉ざされている。間違い無く誰かしら居るのだろう。なので、肩の高さで右腕を少し引いてから殴り引き戸を壊した。木は人の手から離れて長かったのか朽ち掛けていて案外容易く砕け散った。
「.......白夜さん。あんた本当にそのちっさい身体の何処にそんな力があるんですか」
横を見ると柴本が顔を引き攣らせて驚きと呆れの様な物が混じった表情をしていた。
「いや、今回に関しては木が脆すぎただけさ。少々穴が空くことはあっても普通はこんなにも粉々にならない物さ」
人間時代の私でも出来たが普通の人間には出来ないだろうな。ここはやんわりと流しておこう。
そして僕と柴本は白い大きな家の中に入った。玄関の入口に屏風が残っているが鉈やら金槌で傷付けられた痕が山ほどあり、他にも赤黒い匂いからして血らしき物やら泥が屏風を塗り固めてあり何が描かれているのか分からない。
「.......気味が悪いっすね」
「確かにこれは少し独創的と言う奴で済むレベルでは無さそうだ。流石に過激過ぎる」
更に追い打ちと言わんばかりに壁には「カエレ」や「クルナ」等の文字が赤黒い何かで書かれているこれは.......。
柴本が赤い文字に近寄り指で触れた。
「乾燥してますけど.......血ですね。となると、ここにはやっぱり鬼が」
「居るだろうね。恐らく、窓に板を打ち付けていたのはこの血に関する行為を見られない様にする為の意味合いもあったのだろう」
その後も家を捜索した。台所や御不浄には湿気のある皿や使用したと思わしき痕跡があり最近まで使用していた生活感があった。
家の造りは玄関が引き戸になっていて左側にT字型の下が向いた玄関側に敷居から推測するに部屋としては三畳と奥側と左側に別れる所に六畳あり、左側も手前に四畳と奥に八畳の部屋。奥は主人の部屋なのか棚や押し入れに布団以外にも本が大量に置かれていた。
主人の部屋の押し入れの反対方向には廊下があり打ち付けられた板を蹴った
ここの鬼は大層頭が悪いらしい。こんな事をすらば間違い無く人が集まり警察が来てしまう。そうなれば忽ち人間が集まって───
「ねぇ、柴本。一つ思ったが何故鬼は僕達に攻撃しないんだ?」
僕は静かに言った。妙に生活感のある一部の位置、死体の痕跡が無い家。僕の読みが当たっているのならここの鬼は厄介な鬼だ。正直、相手の血鬼術の効果によれば殺す事さえ出来ないかも知れない。
「それは俺達に気付いてないのか単純に寝てるのかどっちかじゃないんですか?」
柴本は顎に手を当てて考えるが出た結論は単純な物だった。だが、そんな生易しい物では無いぞ。これは。
「いや、おかしいんだよ柴本。その二つの点から」
「どういうことですか、白夜さん?」
柴本は「訳が分からない」と言った片目を細め額に皺を作った顔で首を傾げる。
「先ず、鬼があんな簡単に破られる引き戸の家を拠点にするかい?いいや、普通に考えてありえないね。僕には到底理解出来ないさ。こんな小さな家だ。それこそ適当に
なのに、八名の隊士は
「今すぐこの家を出るんだ!今回の鬼の血鬼術は───」
僕は後ろを向いたがそこには柴本の影は無かった。周囲は上下に血痕を細かい範囲に圧縮し散りばめた黒カビの様な物がある壁になっていて、ただ長い廊下と絵画が飾られていた。
「まんまと嵌められたと言う事らしいな。これは」
僕は自嘲気味に苦笑いしながら一人ボヤいていた。
視界はいつの間にか窓がついた白く所々に腐った跡がある俺が両手を左右に広げても左右どちらも二から三寸程余る床が腐りかけの木で出来た廊下に入れ替わっていた。天井には赤いランプが付いている。さっきまでの家はどうした?周囲を見渡して見たが白夜さんの人影は無い。空間転移の血鬼術の類だろうか?この手の血鬼術は有効範囲が狭い筈だ。近くに間違い無く鬼が居る。
「しまった!刀が詰まって抜けない!」
大声で焦った様に叫ぶ。だがそれに対しての物音は無い。となると、浅慮な鬼では無いと見た。それとも単に遠くに飛ばすだけの血鬼術なのか?試しに窓を覗いて見れば遠近感の分からないヘドロの様なぐちゃぐちゃな黒いナニカが広がっている。
これは間違い無く血鬼術が関係しているな。俺の経験則ならこれは幻術辺りだろう。幻術なら何処かに解くための手口がある筈だ。俺が知る限りこの様な特殊な空間の幻術使いの鬼は本人が血鬼術を使用している間は本人も動けない。つまりは、幻術でこちらが先に先手を打てば向こうが幻術が解けて直ぐの隙を狙える。
今まで知る幻術を使った、それも夢の様な世界に入れる幻術を使う鬼の突破法は幻術の中に居る鬼を殺す事。どうやらこの手の血鬼術は諸刃の剣らしく今までの鬼はこの幻術で殺した後に目が覚めると意識の無い抜け殻の様になっていた。
きっと、幻術で負けた場合は幻術の使用者も意識が破壊されるのだろう。実際その時に俺に同行した
そう考えながら廊下を進んでいると突然何の前触れも無く景色が入れ替わった。さっきまでの白い廊下は消えて堀抜いた様な不自然な岩の中にある土と灰を混ぜた様な黄褐色の空洞へと入れ替わっていた。松明が等間隔に置かれておりその様はまるで炭坑とでも言った所だろうか。後ろを振り返っても景色は変わらない。
試しに後ろ歩きで一歩下がるとさっきの白い不気味な黒いナニカが映る窓の廊下に変わっていた。
つまりは景色が違うが全く同じ空間であると言うことか。ドアを開ければ別の景色と言う鬼は居たがこの様な幻術は知らない。
そこから恐らく二時間ほどしての事だろうか。俺はこの不可思議な夢の中に囚われた様な幻術の中を歩き回った。
大体十数回目の部屋が変わった頃合だろうか。その部屋は白く照明が無いのに明るかった。さっきまでの部屋は照明と廊下以外何も無かったがその部屋だけは違った。
丸い部屋の中央には天蓋付きの白い掛け布団のベットがあり、壁には四角の四隅から円を置いて削った様な黄色い十字架の様な模様。何処からか分からないオルゴールの金属の優しい音色がただ優しくも不気味に響いていた。壁には白い箪笥が等間隔に四方に一つづつ置かれていた。それとベットの右側、俺から見て直線方向にドアがあるのが見える。だが、それより気になる物があった。
あのベットに鬼が居るのだろうか?俺は腰から刀を抜いた。新しく打ち直された俺の日輪刀は前回と同じく鎬造りの二尺程の長さの直刀の湖の様な青い標準的な日本刀と同じ規格の日輪刀。
寝台には小さな盛り上がりがあり黒い髪が僅かに頭の端辺りとして見えた。小さな盛り上がりは大体三十五寸。白夜さんよりは少し小さい程度だ。
「.......誰か居るの?」
静かな声。掛け布団の下から聞こえた声は特に感情の起伏が無く寝起きにしては余りにも明確過ぎた。少なくとも白夜さんの声では無い。
「君は鬼か?えらく見事な血鬼術だ。どれだけの人間を食べた?」
俺は刀をベットの上の空間に置いて問い掛ける。この量はかなり食べてる筈だ。正直道中不気味さすら感じた。これだけの複雑な幻術を俺は知らない。
「......
「質問に答えてくれ」
俺は刀をベットの上に付ける。油断させるつもりか?ここは幻術の中。仮に殺してもそこに居るのは鬼であり、鬼で無かったとしても鬼が作った影法師。
「.......月光。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが作った」
何を言っているんだこいつは?今流れているオルゴールの曲名か?そんな事はどうでもいいのだ。
それはベットから出てきた。髪は床に触れる手前まで伸びていた。鬼特有の変異した点や姿は見受けられない。露出している肌は首から下へと全身が包帯に巻かれた上に着ている白い灰色が混じった様なワンピースは染み一つ無く白い白夜さんのとは違い所々に黒い染みが付いていた。
俺は目を見張った。女児の両手両足には鎖がついているのだ。鉄の輪が両足首の上にあり間には黒い鉄の鎖。手には五つ程繋がって途中で切れた鎖。手には白い箱を抱えていてそこから音が聞こえている。
「えらく悪趣味だな。これは」
女児は何も答えない。顔を覗きこんだが目に光は無くそこには闇が佇んでいた。次の瞬間俺は彼女が鬼では無い事を確信した。瞬きだ。今この女児は瞬きをした。
鬼は瞬きをしない。つまりはこの女児は少なくとも鬼では無い。まさか人間か?以前に慢心した鬼が「貴様らは今から全員私の幻術の中で死ぬのだ。仲間同士殺しあってなぁ」と言って手口を明かした鬼が居た。複数人を同じ幻術に入れる鬼と戦った際に仲間を見分けるのに瞬きの有無を利用した。
だとしたら彼女は巻き込まれた被害者だ。そう考えた途端罪悪感が俺の首を絞める。俺はやっぱり外道のクズ野郎だ。外道の子は所詮何処まで行っても外道の子。穢れ血には抗えなかったのだ。
「.......お坊さんは何をしに来たの?」
俺は女児からの声で暗澹の旅路から呼び戻される。今の俺は『鬼殺隊の人徳者・柴本克弥』でなければならない。その為に今行うべきは鬼を斬り人を救う事。
「お嬢ちゃん、今からお坊さんの言う事を良く聞いて欲しい。ここには悪い鬼さんが居るんだ。今からお坊さんは鬼さんを斬らなければならない。でもお嬢ちゃんを放っていると多分食われちまう。だからお嬢ちゃんには俺の近くから離れないで欲しいんだ」
最悪、俺が見つけられなくとも恐らく白夜さんが倒すのだろうが流石に職務を怠る訳にはいかない。なので俺はこの女児を守りながら鬼を探す事にする。
鬼は高が一匹だけ。世救の様な大物ならいざ知れず、そこら辺の鬼なら見つけてから逃がす位の事は出来る。
「.......分かった」
「じゃあ行こうか。絶対、お坊さんから離れない様にしてくれよ?」
そう言うと女児は一回だけうなづいた。その後は部屋を調べたが特にこれと言った物は無く包帯や変えの服がある位だった。俺等は別の空間に行った。
静かな和室には三人の人影。その内の一人は白い小袖を着ていて白い狐のお面をつけた少女でもう一人はペイズリー柄の袴を着た少年。こちらは特にこれと言ったお面は無く赤い目と黒い髪と言う物珍しい容貌をしている。
もう一人は背高は190cm前後の男で紫の生地に黒い四角の染めをした袴を着た目が6つもある異貌の痣を持つ元鬼殺隊士。
鬼の始祖二人と上弦の鬼と言う恐らく今この世で実現しうる限り最も物騒なお茶会の始まりである。
「さて?久しいね。まさか君から僕を招待するとは思っていなかったよ。最後にあったのは四百五十年位前かな?確かアレは黒死牟も居た時だったかな?」
僕が黒死牟に視線を送ると黒死牟は他所を向いた。僕はそれに「冷たいねぇ君は」と流して黒死牟の入れた黒い茶器に入った抹茶を飲む。何故茶器が僕の最近の趣味の紅茶の茶器なのかは聞かないでおこう。
「久しぶりです。今回は少しお話をと思いまして貴女様のお仕事中にも関わらずお呼びさせて頂きました」
普段なら恐らく彼はこの様な謙った喋り方はしないだろうね。本当にどれだけ僕が恐怖になっているのやら?
ほら、黒死牟も六つある目玉を見開いて硬直しているじゃないか?
「にしても、君この少し見ない間には肝が座ったんじゃないか?部下を殺した相手を前で平静を保って居られるんだからね」
何とも思って無いだろうが試しに聞いてみる。少しは変化が有れば面白いと言う物だがこれは特に変化は無さそうだ。
「滅相もございません。私等貴女に比べれば非常に脆弱で今も傷が消えずに苦しむ日々です」
ついに理解不能が過ぎたのか放心状態の黒死牟を余所に僕はその空気を壊す事にした。黒死牟が居るならまだ茶会を続けようとも思ったがアレは駄目だ。当分は目を覚ましそうに無い。
「で?本題は何かな?僕としては仕事の都合もあるから早い所ここの鬼の首を刎ねて帰りたいんだけど?」
「鬼殺隊では無く私達について頂けませんか?鬼殺隊と違い私達鬼は永遠の命を持っています。つまりは頭が変わらないのです」
「悪いが僕も鬼殺隊に着いたのは訳ありで基本的に積極的には───」
僕はそう言って立ち上がり茶室から出ようとした時だった。
「それに貴女様には娘もいらっしゃる」
無惨は僕の幕切れを無理に押し潰す。何故それを貴様が知っている?いつから知っていた?何処から見ている?
「まぁ聞くだけ聞こうじゃないか?僕に見合う条件なんかはそう易々と見つからないと思うがね?」
僕は冷や汗混じりに座り直して答えた。
リアルが多忙なのに裏で色々書いて出して無かった私です。
某サーバーにて矛盾点に関して言われたので説明してもネタバレにならない範囲での矛盾についての解説を今後を入れる予定です。
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お疲れ様でした。また次回のお話を楽しみにお待ち頂けると幸いです。