魔法小猫リリカルシロン   作:カレー大好き

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イヤッホーウ、リリカルなのはvividアニメ化決定だぁ!
後は作画崩壊がないことを祈るのみだぜ!


第11話 まもって守護騎士さん【A's1】

 服を着替えて邸宅を出発したシロンは、リインたちを伴ってミッドチルダの中心街を歩いていく。

 現在、こちらの世界で活動しているケット・シーは、専用のデバイスを使って強力な認識阻害魔法【ミノフスキー】を常時発動しており、事実を知らない者が彼らを見た場合、自分たちの常識内に存在するものとして受け取って余計な興味を惹かないようになっている。つまり、人間形態のときは普通の人間に、猫形態のときは猫型の使い魔として認識されるのである。手の込んだ仕掛けだが、自身で魔力を作れるケット・シーはこちらの世界ではあまりに異質なため、悪意を持った人間に目を付けられないような警戒が必要だった。

 そんな便利魔法で守られたシロンは、堂々と街中を闊歩して管理局の地上本部へと向かっていた。迎えに来たリインに急かされているため、それなりに早足で進む。しかし、おちゃめなシロンがまっすぐ向かうはずもなく、アギトの希望通りにアイスクリーム屋さんへ立ち寄っていくことにした。

 ミッドチルダで一番人気のあるお店に入った一行は、目を輝かせながら色彩豊かなアイスを眺める。ここでは、ディッシャーで掬い取るオーソドックスなタイプだけでなくソフトクリームも扱っており、前者をお土産として買っていくことにしたリインたちは、この場でソフトクリームを食べることにした。

 ちみっこいリインたちでも食べ易いようにカップに入れてもらったソフトクリームを持って外にあるテーブルに着く。シロンとリインはチョコレート、アギトはイチゴ、セフィはバニラだ。

 

「チョコレート味のソフトクリームってさぁ、なんとなく【う○こ】食べてるみたいでドキドキするよね!」

「ウギャー! それを食べてる真っ最中になんてことを言うのですかー!?」

 

 シロンの超お下品な発言を聞いて、彼と同じくチョコ味のソフトクリームを食べていたリインが絶叫を上げる。まさしく捨て身のお笑いだったが、結局は圧倒的な不評を受けただけで、一緒にいるセフィとアギトからも辛辣な言葉を投げかけられる。

 

「最低ですね」

「こっち見んな」

「ええい、なんたる屈辱! ウケ狙いでアニメ美少女がプリントされた痛車を作っただけなのに、世間から冷たい視線に晒される悲しいアニメオタクのような扱いをしやがって!」

「まぁ、実際に周囲の人たちからそのように見られているようですけどね」

「なんやて工藤!?」

 

 セフィに言われて辺りを見回すと、行きかう人たちの多くがシロンの事を生暖かい目で見ていた。その理由は、やたらとカッコイイ青年が、妖精みたいな少女たちと一緒にキャッキャウフフと騒いでいるからだ。若い女性たちはいろんな意味で残念そうに見つめ、オタクっぽい男性たちは羨ましそうに眺めている。

 色々とメディアに出て有名になっているリインたちは、可愛らしい容姿と相まって、とても目立ちまくっていた。遠目から見てると、お人形遊びをしているアブナイ男にしか見えないという点も見過ごせない。

 

「こりゃいかん! ハンサムボーイたる我輩に悪い噂が立ってしまうじゃニャないか!」

「んなもんいつも通りなんだから気にすんなよ」

「炎タイプのくせに冷たいお言葉っ!」

「フフ~ン、イイ女ってのは二面性を持ってるものなのさ」

 

 シロンをからかって小悪魔的に笑うアギト。彼女はつい最近までとある犯罪者に利用されてなのはたちと敵対していたのだが、今ではそんな過去があったことなど微塵も感じられない。八神家に引き取られて優しい家族と温かい居場所を手に入れた彼女は、新たな人生を存分に楽しんでいた。

 そんなアギトの隣で1人黙々とソフトクリームを食べていたセフィだったが、手に持ったスプーンを置いてぽつりと不満をこぼした。

 

「ふぅ、ちょっと疲れましたね」

 

 自分の腕より長いスプーンを使ってソフトクリームを食べるのは確かに大変そうだ。しかし、この身体を手に入れてから8年も同じように食事しているので、既に慣れているはずである。そんな彼女が疲れたと言う時は、シロンに食べさせて欲しいという合図なのだ。

 

「マスター、いつものアレをお願いします」

「はいはい、分かりやしたよお嬢様」

 

 しょうがないなといった様子のシロンは、可愛らしく口を開けたセフィにソフトクリームを掬い取ったスプーンを差し出した。いわゆる【あーん】というヤツである。クールビューティーっぽい性格の彼女だが、普段からこんな感じでシロンに甘えている。セフィがここまで心を許しているのは、当然ながら相棒以上の想いがあるからだ。生涯共にいることが約束されているのでのんびりとしているものの、いずれは恋人同士として結ばれることを夢見ている。

 しかも、その夢は幼馴染のリインにも伝播していた。マンガみたいに破天荒なシロンの活躍をセフィや家族から聞かされ続けた結果、彼女の中でヒーローのような存在になっていたからだ。実際に大切な家族を助けてくれた大恩人でもあるので、好意を寄せてしまうのは当然の結果だと言える。今はまだ楽しいお兄さんを慕うような感じだが、この先どうなるかはリイン本人にも分からない。ただ、あーんしてもらっているセフィのことが羨ましいと感じている時点で、ある程度は先読みできるだろう。

 

「あー、いいなぁ。私も食べさせて欲しいですー」

「なんと! 更なる羞恥プレイをおねだりするとは。これが、若さか……」

 

 セフィに食べさせ始めた辺りから周囲の視線が更に熱くなり、流石のシロンも気が退けていたのだが、恋に恋するリインにとってはあまり気にならないらしい。乙女とはかくも逞しい生き物なのかと改めて実感するシロンであった。

 

 

 仲良くソフトクリームを食べたシロンたちは、お土産を手に地上本部へとやってきた。中央にそびえる超高層タワーがひときわ目を引く豪華な施設で、自負心が強すぎるあまり傲慢な組織になってしまった管理局の歪みを体現したような作りをしている。とはいえ、局員たちの多くは良識を持っており、中の雰囲気はそれほど悪くはない。

 実際、シロンに対する扱いは、部外者であるにも関わらずとても友好的だ。もちろんそれには理由があって、管理局内で何かと有名なはやての【特別な友人】であるという事実も手伝っている。ただ、彼に友好的な理由はそれだけではなくて……

 

「あっ、シロンちゃんだー!」

「お久しぶりです、シロンさん!」

「こんにちは、シロン」

 

 シロンたちが通路を歩いていると、前方からやってきた若い女性局員のみなさんが早足で近寄って親しげに話しかけてきた。実を言うと、彼自身の人気もはやて並に高かったのである。若い女性は言うに及ばずだが、男性たちとも合コンや飲み会などで頻繁に盛り上がっており、結構仲が良かったりする。

 そして何より、管理局はシロンの立ち上げた会社のお得意様であるという特典があった。デバイスを中心としたメカニック関係の更新・改善作業を任され成功させたという実績があり、上層部からもそれなりの信用を得ていたのだ。

 そうした【手回し】が功を奏しているからこそこうして堂々と入ることができるのだが、それをいいことに行動や言動も大胆になる。

 

「やぁやぁ、僕の小猫ちゃんたち。今日も元気にパイオツ揺らしてるかい?」

「挨拶するようにセクハラしてるです!?」

「よくタイホされないよな、コイツ」

「確かにそう思いますけど、不思議と嫌な感じがしないんですよねー」

「なんていうか、それが当たり前って感じ?」

「確かに、普段は常に全裸ですから」

「うわぁ、すごい情報聞いちゃった!」

 

 信頼されているのかバカにされているのか判別しにくいが、とりあえず問題にならなくてなによりである。

 

「ところで君たち、どこかへ行こうとしていたようだが、時間の方はいいのかね?」

「あっ、そうだ。私たちこれから昼食を取るんですけど、もしよかったらみなさんも一緒にどうですか?」

「ふむ、そういえばお腹が空いてきたニャ~。よし、その誘い、全力で乗らせてもらおう!」

「ええー!? それは流石にダメですよー!!」

 

 これ以上遅れたらはやてたちの我慢も限界にきてしまうかもしれない。そう思って焦りだしたリインは、小さい身体を懸命に使ってシロンを押し止めようとする。

 

「早く行かないと、みんなにぶっ飛ばされちゃいますよ?」

「ふっ、我輩の夢であるハーレム王国を実現するためならば、はやてたちの妨害ごときパパッと跳ね除けてみせるニャ!」

「いつの間にか、壮大かつくだらない話になってるです!?」

 

 あまりの唐突さにリインがショックを受ける。まさか、これまでのアホなやり取りがハーレムへの布石だったとは。ていうか、もしかすると一緒に仲良くソフトクリームを食べた自分もその一員に入ってるのだろうか。

 つまり、シロンちゃんはリインの事が好きってこと!?

 

「えへへ~、それはそれで嬉しいですけど~………………それとこれとは話が別です!」

 

 危うい所で我に返ったリインは、再びシロンの暴走を止めるべく、アクシズを押すニューガンダムのように踏ん張った。しかし、パワーの違いは一目瞭然であり、このままではどうやっても勝てそうにない。

 これは万事休すか――そう思われたその時、彼女にとって絶対的な強~い味方が現れた。

 

「ちょーっと待ったぁ! あんたの悪行もそこまでやで!」

「むむぅ!? なにヤツ!!」

 

 鋭く響いた女性の声に反応して視線を向けると、そこには腕を組んで仁王立ちしている八神はやて二等陸佐がいた。彼女は、なのはやフェイトと同い年の幼馴染であり、魔法の才能はなのはたち以上という傑物だ。その上、指揮官としての才能もあって、この若さで大きな部隊を率いて大活躍した経験もある末恐ろしい少女であった。

 とはいえ、それは彼女の一面でしかない。普段の彼女はとても優しくて、料理が得意なごく普通の美少女であった。ただし、なのはの友達だけあって、やっぱり怖い一面もあったりする。

 

「コラ、シロン! ここまで来といて、なんでまっすぐ私んトコに来んのや! 返答によっては、かなり切ない目に遭うでぇ?」

「なんという迫力!? 子供が見たら泣いちゃうレベルニャ!!」

 

 二等陸佐の肩書きは伊達ではなかった。19歳にしてソロモンの悪夢と呼ばれたアナベル・ガトーよりも階級が上なのだから、その迫力は推して知るべしだろう。しかし、シロンは彼女よりも更に上の修羅場を潜ってきているつわものだ。ソレスタルビーイングのトップとして世界を相手に喧嘩を売った彼もまた伊達ではなかった。

 

「はん! 我輩に言うこと聞かせたかったら力ずくでかかってこんかい! そんでもって、立派に育ったのは、そのパイオツだけでないことをガッツリ示してみやがれってんだコンチクショウめ!」

「ほほう、この期に及んでまだそんな戯言をぬかすんかい。そんなら、私も全力で相手したる……行け、ヴィータ!」

「おうよ!」

 

 怒りに燃えるはやてが命令を下すと、いつの間にかシロンの背後を取っていた赤髪の幼女【ヴィータ】が、手に持ったハンマー型アームドデバイスをゴルフスイングのように振るった。彼女の外見年齢は8歳ほどだが、魔法で強化されたその力はかなりの物で、隙を突かれたシロンには避けるヒマなど無かった。その結果、鋭く振り回されたハンマーは、彼の股間に直撃する。

 

「あんぎゃあ~~~~~!? 我輩のゴールデンボールがナイスショーット!?」

「ああっ! あれだけ大見得切ったのに、たったの1秒で危機的状況に陥ってるですー!?」

「ち、力が抜けてゆく……立て、立つんだ、我輩の宝物!」

 

 シロンは、股間を押さえながらゆっくりとくず折れた。男にとってもっとも無防備な場所を攻撃されては、流石のシロンも耐えられない。

 

「ぐぬぬ……我輩の唯一にして最大の弱点を見破るとは! やるようになったな、はやて!」 

「いや、年頃の乙女やったら誰でも知っとると思うけどな」

 

 情けない格好のまま褒めてくるシロンを見て、自分のやってしまったことにちょっぴり恥ずかしくなるはやてであった。しかし、【恋する乙女】としては、他の女性に気を取られている彼に怒ってしまうのも当然だと思う。だからこそ、【同じ気持ちを抱いている】家族達も協力してくれている。

 

「まったく、ハーレムやったら既にできとるやん……」

「はやてちゃん?」

「……あ、あはは~、助けに来てやったで、リイン!」

「は、はい、ありがとうございます……少しやり過ぎな気もしますけど……」

「へっ、コイツはこのぐらいでいいんだよ」

 

 心配そうな表情のリインにふてぶてしい様子で話しかけたのは、先ほどハンマー振るったヴィータだ。はやての家族である彼女は一見すると普通の少女のように見えるが、実際は守護騎士ヴォルケンリッターという名の魔法生命体(プログラム)であった。特に彼女は、【鉄槌の騎士】と呼ばれるアタッカーで、幼い容姿に反した攻撃の要を担っている。

 因みに、戸籍上の年齢は【18歳】なので8歳児の容姿でも堂々と結婚できるという、ある意味アブナイ存在なのだが……それは一先ず置いといて、彼女の仲間である守護騎士はこの場に4人いた。

 

「それじゃあ、シロンを運んだってや」

「了解しました、主はやて」

 

 凛とした声を発したのは、守護騎士の将たる【剣の騎士・シグナム】だ。二つ名の通り剣型のアームドデバイスを使う剣士で、外見年齢19歳の美少女ながら、騎士道精神を貫く武人のような性格をしている。

 そのせいで妙に男前なシグナムは、これまた男らしくシロンをおんぶすると、呆れた様子で話しかけた。

 

「大人しくしていればこのような目に遭わずに済んだものを」

「せやかて工藤……」

「まぁ、シロンちゃんなら仕方ないわね」

 

 シグナムの言葉に返事をしたのは、参謀役の【湖の騎士・シャマル】だ。ほんわかタイプの美人である彼女は、少しおっちょこちょいなところがあって、外見年齢は22歳なのにシグナムより年下に見える。

 そんな頼り無さそうなシャマルだが、実は管理局でもトップクラスを誇る治療魔法のエキスパートだった。

 

「ごめんなさいシロンちゃん。後でちゃんと治療してあげますからね~、2人っきりで!」

「おい、なにさらっと抜け駆けしようとしてるんだ、シャマル?」

「はぁ、ヤレヤレだな……」

 

 彼女たちの痴話喧嘩(?)を聞いて呆れた声を上げているのは、【盾の守護獣・ザフィーラ】だ。使い魔のような獣人の男性で、外見年齢は20代半ばのイケメンである。しかし、普段は獣モードと呼ばれる狼の姿でいるため、話す機会のない人たちからは人型に変身出来ることはおろか喋ることすら知られていないという不遇なヤツだった。

 ただし、最近はヴィヴィオとアルマの子守で一緒になることが多かったアルフと結構良い仲だったりするので、同情する必要は無いだろう。

 

「あのー、八神二等陸佐……」

「ああ、シロンの事はこっちに任せて、みんなはお昼を楽しんで来てや~」

「は、はい、失礼しました~!」

 

 やたらとイイ笑顔のはやてにビビッた女性局員たちは、一目散に逃げ出した。かすむ意識の中でその光景を眺めていたシロンは、不意に過去の出来事を思い出す。

 そういえば、守護騎士たちと初めて出会ったときも、こんな感じで襲われたんだっけ……。

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

 今より10年前、プレシアが起こした騒動から半年後に、地球の海鳴市で再び魔法絡みの大事件が発生した。いや、その事件はもっと以前から始まっていた。八神はやてという少女が生まれた時に、彼女の魔力資質に惹かれて【闇の書】と呼ばれるロストロギアが転生してきた時から……。

 

 

 過去の持ち主がおこなってきた無茶な改造によって様々な機能が暴走している闇の書は、はやての肉体とリンカーコアに大きな負担を与えて徐々に命を蝕んでいた。そんな彼女が9歳の誕生日を迎えた時、闇の書の封印が解かれて、中から出て来た守護騎士たちの主となった。そこから物語が急速に動き始める。5ヵ月後、はやての病気の原因を知った守護騎士たちが、問題を解決するために活動を始めたからだ。

 はやてを助けるためには、魔力の源であるリンカーコアを蒐集することで闇の書のページを埋めて完成させなければならなかった。そこで真っ先に目を付けられたのが強大な魔力を持ったシロンだった。半年前から続いているなのはとの特訓で、だいぶ前から魔力反応を感知されていたのである。

 この頃、猫形態のシロンは認識阻害魔法【ミノフスキー】の効果で、世間からは月村家の作った高性能猫型ロボットとして認識されており、海鳴市を自由に闊歩していた。しかも、街に繰り出しては頻繁にナンパを繰り返してやたらと目立っているので発見は容易だった。そのせいで、隙を突かれた彼は1人でいるところを狙われてしまう。

 相手の魔力は確かにすごいが、単独行動している今なら勝てるはずだ。守護騎士たちはそう考えたのだが……その判断は間違いだった。

 

「コイツ、やたらとつえー!?」

「はぁーはっはっはぁ! 見ただけで相手の実力も見抜けんなど笑止千万、片腹痛しぃ! だからお前はアホなのだぁー!!」

 

 身体強化魔法【ユニコーン】で無双モードになったシロンは、ヴィータ、シグナム、ザフィーラを圧倒した。更に、とどめと言わんばかりに、ユーノの協力で完成させた新型の捕獲魔法【タートルシェルバインド(亀甲縛り)】を使う。これは、エッチい事で有名なあの縛り方をバインドで再現したもので、拘束すると同時に精神的ダメージも与える恐ろしい魔法である。発動するには直接相手に触れて複雑な術式を展開しなければならないという制約があるのだが、無双モードの状態ならどうってことないので、ヴィータたちはいともあっさりとエビ反り状態で捕まってしまう。

 その光景を離れた場所で見ていたシャマルは、みんなを助けるために【旅の鏡】という魔法でシロンのリンカーコアを蒐集しようとした。しかし、本来攻撃用ではない旅の鏡は、魔法防御が正常に機能している相手への使用が難しく、シロンの体内に侵入することはできなかった。そもそも、自身で魔力を作れるシロンの身体はこちらの世界の常識とは違ってリンカーコア自体が存在しないので、シャマルの攻撃は全くの無駄であった。しかも、魔法を使ったせいで居場所を掴まれてしまい、彼女も亀甲縛りの屈辱を受けるハメになってしまう。

 

「さぁて、とりあえず捕まえてみましたが、どうしてくれちゃおっかなー?」

「「「「……」」」」

 

 ビルの屋上に縛られた状態で転がされた守護騎士たちは、羞恥に頬を染めながらシロンを睨みつけた。縛られた上にデバイスを取り上げられた状態では逃げることもできない。

 そんな彼女らの様子を仮面の戦士に変身したリーゼロッテも見ていたが、相手が強すぎて迂闊に手を出せないでいた。彼女たちの計画を成功させるためには、守護騎士たちの行動を完遂させなければならないのだが……。

 こうなったら、一か八かで戦いを挑むか。しかし、亀甲縛りはされたくないし……。と、内心で葛藤していたその時、彼女の思惑を無視するように話が急展開した。どういうわけか、シロンの方から仲直りを申し出てきたのだ。

 

「……なぜだ?」

「そうだニャ……一生懸命なお前たちが、どうしても悪い奴とは思えなかったから、かな?」

「……」

「我輩を襲ったことも何らかの事情があるんだろうけど、もしその理由が納得できるものだったら、手助けしてやらんでもないニャ」

「この状況でそれを信じろというのか?」

「まぁ、その辺は君たちの自由ですけど? 訳を話してくれないんだったら、その恥ずかしい姿を次元世界中のネットに流出させちゃうよん!」

「全然自由じゃねー!!」

 

 守護騎士たちに選択の余地は無かった。

 そんなことをされたら恥ずかしくて外に出れなくなる……もとい、管理局に捕まってしまうので、とりあえず納得してもらえるように大まかな事情を話した。自分たちはとある少女を助けるためにリンカーコアを蒐集しなければならないということを。そして、問題を円満に解決するためには急ぐ必要があり、効率よく蒐集するためには人を襲う必要があると。

 

「殺しはしないんだニャ?」

「無論だ。我らの誇りに誓って、人を殺めることは決してしない」

 

 シグナムたちの目を見ながらその言葉を聞いたシロンは、あっさりと魔法を解いた。彼自身も同じような戦いをしていた経験があるので、彼女たちを応援してやりたくなったのだ。本音をぶっちゃけると、魅力的なパイオツを持った美女の敵になりたくなかっただけだったりするのだが、そんなことなど知る由も無いシグナムはごく普通の反応で疑問をぶつける。

 

「私が言うのもなんだが、いいのか?」

「いいもなにも我輩にお前たちを裁く権利なんかニャいし、その理由も無いニャ。懲りずに襲いかかってきても、また返り討ちにすればいいだけだし」

「ふん、大層な物言いだな。しかし、事実でもある。敗者の身としては受け入れるしかないな……」

 

 愛剣を拾って鞘に収めたシグナムは思わず苦笑する。まさか、これほどの強者がいようとは思いもしなかった。まさに、驕れる者久しからずであると、自分の未熟さに気づかせてくれたシロンに対して場違いにも感謝の念を抱いてしまう。それと同時に、武人としての喜びも感じていた。

 だが今は自身よりも優先すべきことがある。見逃してもらえた幸運に感謝しつつ、気を引き締め直さなければならない。

 

「では、遠慮なく立ち去らせてもらうぞ」

「おう、気をつけて帰りんしゃい。あ~それと、恥ずかしい思いをさせたお詫びにこれを上げるニャ」

「それは……シュークリーム?」

「翠屋特製の人気商品ニャ。ほれ、お家に帰ってみんなでお食べ」

「なんであたしに渡すんだ!?」

 

 何となく食べたそうな表情をしていたヴィータにシュークリームを渡すと、シロンは手を振りながらさっさとどこかへ行ってしまった。あまりのあっさりさに守護騎士たちは呆気に取られてしまう。それでも一応警戒してみたが、辺りに魔力反応もないしシュークリームにも仕掛けは見当たらない。

 

「……帰るか」

「……そうね」

 

 このままここにいてもしょうがないので、追跡されないように分散しながら八神家へと帰っていった。戦闘で感じるものとは別の疲労感を覚えながら……。

 その一方で、彼女たちより先に立ち去ったシロンは、月村家への帰り道でニヤリとしていた。

 

「なんという素晴らしいパイオツ! 最高の映像が取れたニャ~!」

 

 歩きながら鑑賞していたのは、亀甲縛りをされて色っぽく悶えるシグナムとシャマルが写った映像だった。いつの間にかデバイスで記録していたようだが、あのシュークリームは隠し撮りしたお詫びだったのだ。これぞまさしく、知らぬが仏である。

 しかし、不運にも真相を知ってしまったリーゼロッテは、嫌らしい笑みを浮かべる彼を見つめてため息をついた。一体アイツはなんなんだ……。

 

 

 何とか和解することができたシロンと守護騎士だったが、事情を考えるとお互いに接触を避けるべき状況なため、しばらく会うことはないと思っていた。しかし、彼らの予想に反して、再会の機会はすぐにやってきた。数日経った12月2日の夜に、なのはの魔力を見逃せなかったヴィータが彼女を襲撃したのだ。

 その時シロンは、モビルアールヴの改造作業に疲れて爆睡していたのだが、異変に気づいて目覚めた時には事態がかなり進んでいた。【魔法の力に目覚めてしまったなのはたちに危険が起こった場合の保険】という名目で設置した監視装置によって異常を察知したリンディたちが、救援を送りこんで守護騎士たちと交戦していたのだ。なのはのピンチに駆けつけたのは、彼女に片思い中のユーノと彼女の親友であるフェイト、そして使い魔のアルフだった。実を言うと、翌日の12月3日にテスタロッサ家の面々が帰ってくる予定になっていたのである。

 諸々の手続きが長引いて半年ほどミッドチルダにいた彼女たちだったが、ようやく全てが終わって地球に引っ越すことになった。その際、なのはやフェイトを管理局に入れたいと考えていたリンディが勧誘ついでにアースラで送ると申し出てきて、現在の状況に至っていた。

 シロンとしても彼女たちの帰還は嬉しかったが、命がけで大切な少女を救おうとしている守護騎士たちも助けてやりたいと思っていた。その気持ちは、なのはがリンカーコアを蒐集された姿を見ても変わらない。

 

「殺しはしないって言ってたしニャ」

 

 それに、未熟ななのはに経験を積ませる上でも役に立つ。そう思ったシロンは、ドモンに稽古をつけるマスターアジアのような心境で成り行きを見守ることにした。しかし、グラハムとリニスが援護に入ってきてはのん気に構えていられない。守護騎士の実力では彼らに勝てないので、とりあえず間に入るような動きをしてしまったのだが、それがいけなかった。一部始終を見ていたリーゼアリアが、邪魔なシロンを陥れるために思い切った謀略を仕掛けてきたのである。

 彼女は、自然を装ってアースラのブリッジにやってくると、以前シロンが守護騎士と接触した際の映像を都合のいい場面だけ見せて、仲間になった可能性があると言いだした。この映像は、彼女の主であるギル・グレアム提督の命令で設置した監視装置によって撮影されたものだと説明して、シロンを貶める材料として利用したのだ。

 魔導師襲撃事件が地球を中心に起きていることは既に判明しており、世界事情に明るいイギリス出身のグレアム提督が自ら調査を買って出たことはリンディたちも知っていた。そのおかげでリーゼアリアの強引な予想にもそれなりの説得力があった。もしかしたら、本当にあり得るかもしれない。

 

「あのピンク色の人、シロンさん好みの大きな胸だから……」

「そ、そうですね……」

 

 着目点が若干おかしいが、何にしても邪魔をしているのは確かなので対処する必要はある。そんなブリッジ内の動きを感じ取ったリーゼアリアは内心でほくそ笑む。これなら上手くすれば同士討ちを望めるかもしれないし、最低でも疑心を持った管理局に監視されて行動を制限されるはずだ。

 姑息なリーゼアリアの作戦はジワリと効いて、フェイトたちを混乱させた。正直言って信じ難いが、状況を見ると彼女の説明にも一理ある。気が迷って思わず戦闘を中断してしまった少女たちは、シロンに真実を問いただそうとした。

 だが、それは実行できなかった。彼女たちが声を発する前に、これまで沈黙していたグラハムが急激に態度を変えてシロンを罵ったからだ。

 

「まさか、私のいぬ間に幼女趣味に堕ちていようとは! 見損なったぞ、バカ王子!」

「って、そう来たかーっ!?」

 

 ヴィータを庇っていたシロンを見てアホな勘違いをしてしまったらしいグラハムは、遠慮は無用とばかりに全力で向かってきた。その認識はどうなのよと思った周りの面子が呆気に取られるが、そんなことなどお構い無しとばかりに2人は仲良く喧嘩を始めた。空戦機動は凄まじいが、罵りあいながらパンチを繰り出しあっている姿は、戦闘というより喧嘩にしか見えなかった。

 そんな感じで数分が経ち、周囲に微妙な空気が流れ始めた頃、グラハムをぶっ飛ばしたシロンは近くにいたヴィータの所まで距離をあけた。そして、妙に踏ん切りがついたような表情を浮かべながら、守護騎士に全面協力してやると宣言した。

 

「いいだろう! お前たちがそう望むなら、我輩はロリコンになってやるニャ!」

「いや、ロリコンなんて望んでないけど………………まぁいいわ。とりあえず、上手くいったみたいだしね」

 

 思わず本音をつぶやいてしまったリーゼアリアを他所に、ヴィータと手を繋いだシロンは他の守護騎士たちと共に戦場を離脱していった。

 こうしてシロンは、期せずして管理局と敵対することになる。

 

 

 勢いに任せて守護騎士と行動を共にすることになったシロンは、彼女たちから一通りの注意を受けた後に八神家へとやってきた。そこで、彼女たちの主だという八神はやてと初めて出会うことになったのだが、周囲の心配を他所に速攻で仲良くなった。【おっぱいマニア】という共通の性癖に強いシンパシーを感じたからだ。

 

「分かりあえるって、こういうことを言うんやな!」

「ああ! 我輩たちは今、ニュータイプとなったのニャ!」

「……シャマル、私は悪夢を見ているのか?」

「いいえ、シグナム。これは現実よ……」

 

 白い小猫を抱きながら怪しい会話をしている主を見て、守護騎士たちは悲嘆に暮れた。とはいえ、いただけないのはその程度で、はやてに喜びを与えてくれるシロンの人柄はしっかりと認められるのだった。

 その後はシロンの歓迎会ということで大いに盛り上がった。臨時の宴は、はやての体調を心配したシャマルに注意されるまで続き、夜の11時過ぎになってようやく子供たちは眠りついた。

 すっかり気に入られたシロンは、はやてとヴィータに挟まれるような形でベッドに連れ込まれていた。もちろん今は猫形態で、はやてに軽く抱きしめられるような格好になっている。未だに警戒心を持っているヴィータはしばらく起きていたが、気持ちよさそうに寝ているシロンを見ているうちにバカらしくなって不貞腐れるように眠ってしまった。

 やれやれ、やっと開放されたか。

 ヴィータが寝入って数分後、タヌキ寝入りしていたシロンは静かに目を開けた。目の前で穏やかな表情を浮かべながら眠っているはやてを見つめつつセフィに語りかける。

 

「(おいセフィ、やっぱりはやての病気は治せないのかニャ?)」

<(はい、今の魔力量では願いが叶えられません。恐らく、彼女の病気には世界に影響を与えるほどの大規模な因果が絡んでいるのでしょう)>

「(そりゃまた随分とでかい話だね。この子自身は普通の女の子なんだけどニャ~?)」

 

 シロンは首を捻った。確かに守護騎士なんてお供がいるくらいだから何らかの形で魔法に関わっているはずだが、世界規模というほどには思えない。

 

「(後どれくらいで魔力は溜まるのニャ?)」

<(現状のペースでは2年くらいかかります)>

「(2年か……みんなの様子を見るとそんなに時間は無いかもニャ)」

 

 必死に蒐集を続けている守護騎士の姿からは余裕など感じられない。恐らく、タイムリミットは近いのだろう。

 ならば、大量の魔力をすばやく供給できる方法を見つけるしかないのだが、その方法は既にあった。それは時の庭園にある動力炉を利用するというものだ。プレシアから話だけは聞いていたのですぐにティンときた。後は彼女に頼んで動かしてもらうだけである。

 もちろんシグナムたちに隠れて行動する必要があるが、セフィの力で影分身を作っておけば出歩いても大丈夫だろう。

 

「(とゆーわけで、申し訳ないけど、ちょっとの間だけお別れニャ)」

<(お気になさらないでください、待つことには慣れていますから……)>

「(遠距離恋愛中の乙女みたいなセリフだニャ!)」

 

 こうしてセフィは、必要な魔力が溜まるまで時の庭園に安置しておくことになる。緊急事態の時は瞬間移動で戻ってこれるので心配は要らないが、いざ離れるとなるとお互いに寂しくなってしまうのだった。

 

 

 それと同じ頃、シロンがいなくなった月村家ではすずかが心配していた。事情を知っているグラハムたちから用事があってしばらく外泊すると説明されてとりあえず落ち着きを取り戻したが、こちらもシロンたちと同様に寂しい気持ちを味わっていた。それでも、事件が解決するまでは我慢してもらうしかない。

 

「今回の事件、どうも管理局の手際が良すぎる。乙女座の私としては、胸騒ぎを覚えずにはいられんな」

「はい、彼らは裏で何かをやっているようですね……」

 

 今回の事件には複雑な問題が絡んでいそうだと感じたグラハムは、現時点ではすずかとアリサを関わらせない方がいいと判断して、なのはたちにも言い聞かせていた。シャマルの魔法を受けてリンカーコア無しに魔法を使っていることがバレてしまう危険性も無視できなかったからだが、いずれにしても事情を知らない一般人を傷害事件などに巻き込むべきではないだろう。都合のいいことに、リンディたちも同じように考えていたため、すずかとアリサはしばらくのあいだ蚊帳の外に置かれる状態となった。

 そんな経緯でシロンがいなくなってから数日経ったが、その間にも多くのイベントが発生していた。なのはの家の近くにあるマンションにテスタロッサ家とハラオウン家が引っ越してきたり、アリシアとフェイトが聖祥学園初等部に転入してきたりと大忙しである。同時に、穏やかな日常の裏では次なる戦いの準備も進んでいく。

 

 

 そして更に数日が経ったある日の夜、リンカーコアが完治したなのはとようやく身辺が落ち着いたフェイトは、カートリッジシステムを搭載したデバイスで守護騎士たちとの2度目の戦いにのぞんだ。

 成り行きを利用して管理局と行動を共にする事にしたグラハムとリニスだったが、シロンの事を考慮したリンディから待機を申し渡されたため、今回は子供たちだけで戦うことになった。それでも、新しいデバイスで対等以上に渡り合うことができるようになったおかげで、多勢に無勢な守護騎士たちは次第に劣勢となっていく。しかも、隙を突いたクロノがシャマルの背後を取ることに成功し、守護騎士たちは窮地に追い込まれてしまう。

 勝利はほぼ確実な状況であり、これで決着が着くかと誰もが思った。

 だが、その直後に事態が急変した。絶妙なタイミングで仮面の戦士が現れ、何故か守護騎士たちを逃がそうとしたのである。その上シグナムは、シロンに渡されていたカードを使って【戦闘型ハロ】を4機出現させた。バレーボールほどの大きさに作られたこの機体はミッドチルダ式魔法を参考にした新型で、攻撃を避けきれなかったユーノとアルフは亀甲縛りにされてしまい、結局それが隙となって守護騎士たちに逃げられてしまう。

 見覚えのある男の奇妙な行動にリンディたちはおろかグラハムたちも途惑うが、今はまだ動く時ではないと判断して静観するのだった。

 

 

 その同時刻、今回の戦闘に姿を現さなかったシロンはというと、シグナムたちの頼みを聞いて八神家で待機していた。今日は、はやての友達を夕食に呼んでいたため、シャマルと共にお手伝い係を任されていたのだ。しかし、ピンチに陥ったシグナムたちからの要請でシャマルも出かけてしまい、家にははやてとシロンだけが取り残された。

 ヤバイ、空気が悪くなる。

 一応シグナムには戦闘型ハロを渡してあるので捕まることはないだろうが、今はこっちのほうがピンチである。女の子の涙に弱いシロンは、裸踊りでもしようかと思うくらいテンパってしまった。

 そんな時にあいつらが現れた。

 

「ようシロ坊。久しぶりだな。ってか、可愛い彼女と乳繰り合ってる真っ最中ですかぁ? まったく、最近のガキときたら迫力満点だぜコンチクショウ」

「出てきて早々に最低だなオイ!?」

 

 後ろから声が聞こえたかと思ったら、そこには銀時と桂がいた。相変わらずのふてぶてしい表情でダメ人間的な発言をすると、勝手に冷凍庫を漁って取ってきたヴィータ秘蔵のアイスを食べてしまう。

 

「初対面やのに寛ぎすぎやろ!?」

「まぁまぁ、かたいことは言いっこなしだぜ、お嬢ちゃん。世の中ユルユルのほうが楽しめるってモンさ。お前もそう思うだろ、ヅラ?」

 

 悪びれもせずアイスを食べる銀時は、未だに一言も喋っていない桂に話を振った。すると、なにやらプルプルとしている桂がいつものセリフで答えを返す。

 

「ヅラじゃない、桂だ! しかし、今の俺はかつかつだ! なぜなら、ユルユルの大便を放出したい衝動に駆られているから!」

「って、またソレかよ!?」

「実はここへ来る前に魚屋から鮮魚を盗んでな、本能の赴くままに生の状態で食したのだが……どうやらそれにあたってしまったらしい」

「お魚銜えたドラ猫かよ! お前やべーよ! 猫化が進んで後戻りできないレベルまで来ちゃってるよ!」

「確かにそうかもしれん。だが、悪いことばかりでもないぞ? この前行ったキャバクラで猫っぽい仕草をしたら『桂ちゃん、可愛ういぃ~!』って感じで大ウケしたからな」

「お、いいなソレ! 今度俺もやってみるわ」

「あーもう! いたいけな少年少女の前でクソみたいな会話してんじゃねー!!」

 

 あまりに低劣な会話のオンパレードに頭にきたシロンは、無造作に2匹を掴んで庭に出ると、思いっきり蹴っ飛ばして強制送還させた。

 

「へっ、汚ねぇ花火だ!」

「う、うん……変わった猫さんたちやったな……」

 

 嵐のような珍客にお帰りいただいてほっと一息つく。ほんと、お友達が来る前でよかった。2人で同じ事を思いながらほんわかしていると、その数分後に本命の友達がやってきた。しかし、それが更なるカオスを生んでしまう。なんと、はやての友達はすずかだったのだ。

 

「なんでシロンちゃんがここにいるの!?」

「一体これはどういうことなんや、シロン?」

「って、なにこの昼ドラ展開!?」

 

 いきなりのトンデモ展開で3人共に混乱してしまった。だが、ギャルゲーでいくつもの修羅場を潜り抜けているシロンは、すぐさま再起動すると懇切丁寧に事情を説明した。すずかに関しては友達兼家主であると説明し、自分がここにいる理由は寂しい思いをしているはやてのためにシグナムたちからお泊りを頼まれたことにした。これは今思いついたわけではなく、表向きの理由として事前に考えていたものだ。幾分嘘が混じっているとはいえ、ほとんど本当のことなので、彼女たちもすんなりと納得してくれた。

 

「そんなわけで、もうちょっとだけのんびりしたいから、みんなには内緒にしといてね?」

「うん分かった、2人だけの秘密だね!」

「いやいや、私もおるんですけど!」

 

 気持ちを落ち着けることができた3人は、夕食の準備を進めながら仲良く会話を楽しむ。シグナムたちは間に合いそうもないが、これならはやての寂しさもいくらか和らげることができるだろう。

 それにしてもすずかの登場には驚いた……。二股かけてるスケコマシの心境ってこんな感じなのかなと、ちょっぴりアダルトな経験を積んだシロンであった。

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