偶然にもティーダを助けることになったシロンは、その後も様々な出会いを経験した。
ある日、魔法の研究に勤しむシロンに喜んでもらおうとこの世界の魔法を調べていたアリシアから第6管理世界のアルザス地方に世にも珍しい召喚士がいると聞いて、スケジュールの空いている面子と一緒に会いに行ってみることにした。
お馴染みのシロン一味に加えて、まもなく2歳になるアルマと子守役のアルフ、飛び級で大学に通っているため時間に余裕のあるアリシアと休みを取りやすい小学生のユーリが同行することになった。
因みに、マテリアル娘たちは、自分の部隊を持つことを決意して妙にやる気の出ているはやてに頼まれて泊り込みで訓練相手を務めることになったため、今回は不参加となっている。というか、シロンと旅行に行くことをいつもの調子で自慢したせいで、はやてたちの怒りを買って無理やりキャンセルさせられたと言うほうが正しい。
「フェイトも仕事があってこれないし、ちょっと残念だな」
「そうですね、あの子はもっと息抜きをしたほうがいいんですけど」
「もう、2人そろってなに辛気臭いこと言ってんのよ。こういう時はフェイトの分も楽しむところでしょ! ねぇ、ユーリちゃん?」
「はい、私もディアーチェたちのお土産選びが楽しみです! アルマちゃんも私と一緒にお土産探そうね~」
「ん~、おみにゃげ~?」
少女たちは、可愛らしい会話をしながらグラハムの運転する車に揺られる。今回は普通の旅行なので、すっかりリラックスした様子で召喚士のいるアルザス地方へ向かった。
しかし、ようやく到着した目的地で予期せぬイベントが起こった。とある問題を抱えていた【キャロ】という少女と出会うことになったのだ。
彼女は、強力な召喚術の才能を持っているせいで【ル・ルシエ】という部族から追放されるところだったのだが、そこへタイミング良くシロン一行がやってきて、はからずも彼らの会話を耳にしてしまう。それを聞いてアリシアとアルフは当然のように怒り、キャロを追い出そうとしていた大人たちに詰め寄った。部族のためとはいえ、幼い子供を放り出すなんて許せないと思ったのだ。
当然ながら一児の親であるグラハムも強い憤りを感じたが、それでも彼女たちを止めなければならない。
「待ちたまえ少女たち。彼らを糾弾するのはそこまでにしておくがいい」
「なんでよ!?」
「ここが彼らの領域だからだ。この部族は、独自のルールを守ることで竜召喚の技術を受け継いできた。ゆえに、外部の人間による干渉はご法度なのだよ」
「そんな!」
確かに、アリシアたちの意見は日本やミッドチルダの倫理観からすれば正しいが、それだけではル・ルシエの判断を否定することはできない。
召喚士として類稀な才能を持っているキャロは、強大な力を持った【アルザスの守護竜】の加護を受けているのだが、もしその力を制御できなかった場合は、たった一回の過ちだけでもル・ルシエが滅んでしまう可能性がある。部族のしきたりとして強い力を拒絶してきた彼らとしては、最悪の事態を防ぐために苦渋の決断を下すしかなかった。
幼い子供をたった1人で死地に追いやるなど許されざる行為ではあるものの、部族の行く末に責任を取れない外部の人間が口を出すべき話ではないだろう。
「それじゃあ、この子はどうなるの!?」
「ふっ、よく考えてみるがいい。この少女は、ル・ルシエのルールから開放されて自由になったのだよ? ならば、後は彼女の意志次第だろう」
「……あっ、そうか!」
放逐されたキャロはもう彼らとは違う。部族のしがらみから開放された今、彼女の意思で何者にもなれるようになった。ならば、こちらの世界に招いてもいいはずだ。
アリシアはリニスに目配せして許可を得ると、笑顔を浮かべながらキャロに話しかけた。自分たちの家族にならないかと。もちろん、答えを決めるのは彼女自身だが……。
「ねぇ、キャロちゃん。もしよかったら、私たちの家に来てほしいな!」
「……お姉さんの家に?」
「そう、私たちの家に来て家族になるの!」
「家族……」
アリシアは、1人ぼっちになってしまったキャロを放っておけなかった。なぜなら、1人きりになってしまう怖さを知っているからだ。彼女の母親であるプレシアは、孤独に押しつぶされて狂ってしまっていた時期がある。そのせいで多くの人が傷つき、妹も辛い思いをした。だからこそ、この子と一緒にいてあげたいと強く思った。
その気持ちはアルフも同様で、寂しそうなキャロの姿に母親の愛を求めていたかつてのフェイトを連想していた。もしかすると、フェイトと似ているこの子はテスタロッサ家と縁があるのかもしれない。奇跡のようなタイミングで出会い、一瞬でアリシアに気に入られたのだから間違いない。だったら、快く受け入れればいい。
「よし! 今日から君はあたしらの家族だ!」
「……私が家族になってもいいのですか?」
「もちろんだよ! ほら、アルマちゃんもお姉ちゃんが欲しいって言ってるよ?」
「えへへ~、ねぇねぇ!」
「………………うん。私もこの子のお姉さんになりたいです」
キャロは、小さくて暖かなアルマの手を優しく握りながらつぶやいた。彼女の目には、複雑な感情が入り混じって溢れ出た涙が光っている。本当の家族から捨てられた矢先に新しい家族ができたのだから当然だろう。彼女はまだ途惑っているのだ。
それでも大丈夫だとリニスは思う。一緒にいたいと思ったとき、人は家族になれるから。他人同士だったグラハムと自分が夫婦になれたように彼女とも家族になれるはずだ。
「それじゃあよろしくね、キャロ!」
「……はい」
キャロは、ぎこちない様子でアリシアの申し出を受け入れた。今はまだ他人行儀だが、この瞬間に彼女は【キャロ・テスタロッサ】となってシロンと愉快な仲間たちに迎え入れられた。後にキャロは、アリシアとフェイトに思いっきり愛情を注がれて明るく元気な少女へと成長し、自身の力を生かすために管理局へ入局することになる。
とまぁ、そこまでは感動的なお話だったのだが……シロンがいるのに穏やかに終わるわけがない。そんなこんなでキャロを仲間に入れたその帰り道、今まで静かに事の成り行きを見守っていたシロンが自分をアピールするように動き出した。
「いいかいキャロ。デュエリストとして生まれたからには、ブラック・マジシャン・ガールを召喚して完璧に使いこなすべきニャ! なぜなら、とっても目の保養になるから!」
「あ、あの、私はデュエリストじゃなくて竜召喚士だし、竜以外は召喚できませんよ?」
「ええい、竜召喚にばかりこだわっていたら、キャロ社長と呼ばれるようになってしまうぞ! そもそも、やつらにはパイオツがついてないではないか! まぁ、ついてりゃいいってモンでもないけど!」
「幼女相手に何言ってんのー!?」
アリシアは誰もが納得できるツッコミをした。
しかし、 夢を諦めきれなかったシロンは、後にデュエルモンスターズを実体化できるソリッドビジョンシステムを作り、キャロのデバイスに組み込むことになる。そのおかげで彼女はちびっ子の人気者となり、デュエルモンスターズがゲームとして市販されるようになった未来においてデュエリストの始祖として崇められるのだが、現時点ではどーでもいい話だった。
紆余曲折の末にテスタロッサ家の三女となったキャロは、ゆっくりとシロンたちに懐いて笑顔も見せるようになってきた。そんな彼女の姿を見てフェイトは一つの決断をする。2年前に保護して本局の施設に預けていた少年【エリオ・モンディアル】を引き取ろうと決心したのだ。
彼はフェイトと同じようにプロジェクトFの技術を用いて生み出された人造魔導師であり、ブラック企業の研究施設で非人道的な扱いを受けたため、一時期は重度の人間不信に陥っていた。誰にも心を開かず、資質のある電気魔法で周囲にあるもの全てを傷つける日々が続いた。しかし、彼と同じような境遇にあったフェイトが根気よく説得し、最近になってようやく落ち着きを見せ始めていた。
人と接することにも慣れて本来の優しさを取り戻しつつある今の彼ならキャロとも上手くやっていけるだろう。もちろん本人の意思を尊重するが、この提案を受け入れてくれることを望んで
エリオに会いに行き、嘘偽りない本音を打ち明けた。
そして、彼は――フェイトの提案を快く受け入れた。
「……これからよろしくお願いします、フェイトさん」
「うん、こちらこそよろしくね、エリオ」
エリオはぎこちない笑みを浮かべて新たな一歩を踏み出した。まだまだ問題は山積みだが、これでフェイトは正式にエリオの保護責任者となった。
完全に親から捨てられたキャロとは違って両親のいる彼は戸籍をそのままにしているのでファミリーネームは変わらない。もちろんフェイトは、キャロと同様にテスタロッサ家へ迎え入れる話もしたのだが、エリオはそれを辞退した。クローンとして生み出された彼は、自身が背負った宿命から逃げたくなかったのだ。病死した息子の代わりに自分を作ったクセに結局は偽物としか見ていなかった両親や、人間としてすら見てくれなかった研究施設の職員たちに負けたくはなかったのだ。
そのような心理状況からも分かる通り、エリオの傷心を癒すにはもう少し時間が必要だった。
数日後、テスタロッサ家にやってきたエリオと初対面したシロンは、彼の心に鬱屈した感情が秘められていることを見抜いたのか、何かと気遣う素振りを見せた。彼もまた作られた存在なので、参考になる助言ができると思ったからだが……
「いいかエリオ! 男として生まれたからには、エロに熱中して生命の神秘を探求し、中二病を経験して世界の理を学習しなければならないのニャ!」
「は、はい! 分かりました、シロンさん!」
「って、そんなの分かっちゃダメだからね!?」
当然フェイトはシロンの暴挙を止めようとしたが、惚れている彼に対して本気になれるわけもなく、結局エリオはシロンの偏った遊びを教わってしまうことになる。その結果、彼は重度の中二病にかかってしまう。
しかも、キャロと一緒に管理局へ入った途端に症状が悪化し、水を得た魚のように大活躍をすることになる。基本的に魔導師という職業自体が中二病みたいなものなので、今の彼にとっては天職だった。
「我が名は
火属性なのか雷属性なのかはっきりとしない二つ名を名乗ってルルーシュのようなポーズを極めるエリオ。幸い彼は美少年なので案外さまになっているのだが、イタイことには変わりない。後に彼と一緒に行動することになるキャロは、毎日恥ずかしい思いをするハメになるのだった。
テスタロッサ家にキャロとエリオがやってきてから3ヶ月ほど経ち、ようやく彼らの生活が落ち着いてきた。その間に【レリック】というロストロギア絡みの事件が数回発生したが、それ以外は特に大きな問題も無く世界は平穏に包まれていた。
そんなある日、とうとう元の世界へ帰るための魔力が溜まった。
魔力変換装置の改良によって使えるようになったCNドライヴとエグザミアから膨大な魔力を生み出せるユーリの協力によって2年ほどで溜め込めるようになったおかげで、時間の大幅な短縮に成功したのだ。
待ち望んでいた朗報をセフィから聞いたシロンは、みんなに発表するために時間を取るよう促した。そして発表当日、すずかの家に集まった一同の前でシロンは語った、今年中に元の世界へ帰ると。
その報告に一番喜んだのは意外にもグラハムだった。彼は、元の世界にいる両親と仲間に自慢の娘を見せてやりたかったのだ。今年で2歳になるアルマは可愛い盛りなので、彼の気持ちは分からなくもない。
「だがしかし、娘の写真をプリントしたTシャツまで着ちまうのは流石にやりすぎだぜ、とっつぁん!」
「何を言う! 愛あればこそ、茨の道すら進んでいけるのだよ! オスカル!」
「宝塚のベルばらかよ! っていうか、やっぱり恥ずかしいんじゃねーか、このハム野郎!」
「ふっ、それもまたカイカンであると言わせてもらおう!」
かなりマニアックなネタで盛り上がってしまうぐらい2人は浮かれていた。やはり、歴戦の2人でも生まれ故郷が恋しいのだ。
どのみち一度は帰らなければならないため、誰に気兼ねすることもなく大手を振って行ける。 それに、何やら嫌な予感がしてならないのだ。なぜそう思うのかは分からないが、とりあえず早めに帰って確かめたほうがいい気がする。
また、行方不明になって6年も経っているので、そろそろ生存していることを知らせないと部屋に置きっぱなしのエログッズが形見分けと称して世間に晒されてしまうかもしれない。だからこそ、急いで帰る必要もあった。
「アイドルの我輩にそんなスキャンダルが持ち上がってしまったら、全国の女性ファンが嘆き悲しんでしまうニャ!」
「心配事の内容がマヌケすぎですね」
「まにゅけなの~!」
不幸にもシロンの独り言を聞いてしまったリニスは、すかさずツッコミを入れる。15歳になった彼のエロパワーは幼少期よりも更に磨きがかかっており、最近は少し直したほうがいいのではと思うようになっていた。
アルマが生まれる前まではまぁいいかと思っていたが、このままでは娘の情操教育によろしくない。自分の旦那の変態っぷりを脇において、まずはシロンをどうにかしなければならない。
「というわけで、これからはあなたの教育もしっかりとやっていきますから、覚悟してくださいね?」
「こりゃあかん! 教育ママに修正されてまうニャ!」
愛情の深いリニスは、シロンのことも自分の子供として見ていた。というか、悪ガキのシロンは妙に母性をくすぐる存在で、つい面倒を見てあげたくなってしまうのである。
それは、この場に集まっている少女たちも同様で、愛情を感じているシロンが元の世界へ帰ってしまうことに不安を感じていた。
魔力を溜めるのに必要な2年間は絶対に会うことができない。それだけでも辛いのに、もしかしたらもう二度と戻ってこないのではないかという危機感が脳裏をよぎってしまう。
「シロンちゃん、どうしても行かなきゃならないの?」
「ああ。我輩たちが変革した世界の行く末を確かめなければならないからニャ。それに、我輩たちの無事も伝えないといかんニャろ?」
「うん……」
すずかは悲しそうに顔を俯かせる。頭ではそうするべきだと分かっているが、恋する乙女としては行ってほしくはない。
そして、シロンもまた同じ気持ちであるからこそ、彼女の頭を撫でて優しく言い聞かせる。
「大丈夫、我輩は必ずこの世界に帰って来るニャ。ぶっちゃけ、こっちでハーレムを作る予定だから!」
「ぶっちゃけすぎよ!」
確かにとんでもハップンな話だが、ツッコミを入れたアリサもそれほど否定はしていない。すずかたちといつまでも仲良くやっていけたら、それはそれで楽しそうだと思ったのだ。
慣れとは恐ろしいもので、子供の頃から「ハーレム王に俺はなる!」とか「16歳になったら全員我輩の嫁じゃー!」などと口説かれているうちに、いつの間にか本人たちもその気になっていたのである。シロン本人が至って真面目に語っていたという理由もあるが、いずれにしても彼女たちが本気で惚れているからこそだろう。
だったら、もし本当に彼がハーレムを作ったら、私は……
「って、何考えてんのよ私ぃー!!」
「ゾゴックッ!?」
アリサは、恥ずかしさのあまりシロンを殴り飛ばす。彼女はまだ15歳の中学3年なのでソッチ方面の話はちょっと早かった。奥さまになれるのは16歳の女子高生からなのだ。
しかし、シロンたちが帰って来る頃には高校生活も半分過ぎてしまっている。それだけアピールする時間が減ってしまうことになるのだ。
だからこそ、これを渡さなくては。
「とにかく、私のデバイスを持っていっていいから早く帰って来なさい!」
「あっ、それじゃあ私も!」
すずかとアリサに渡してあるデバイスにはCNドライヴが搭載されているので魔力供給に使える。これを使えば僅かでも帰れる時間が早まるというわけだ。
たった2基増えたところで気休め程度にしかならないが、彼女たちの切ない気持ちを察するには十分だ。
「わかったニャ。これは我輩が預かっておくニャ」
シロンは2人から渡されたカードを大事そうに懐に入れる。これによってすずかとアリサは戦闘力を失い、しばらくの間は魔法の世界と離れて学業に徹することになる。
しかも、戦力の欠落は彼女たちだけではない。
「まぁ、後の事は我らに任せるがよい。主様の御身は我が命に代えても守護してみせようぞ!」
「そう、シロンの命はボクらが守る! 朝食から夕食まで毒味はガッツリオッケーだい!」
「そして私は、ふつつかながら湯浴みのお手伝いをさせていただきます」
「あー、いいなぁ。私もシロンと一緒に入りたいです」
「って、あんたたちも行く気なの!?」
「無論だ。ユーリと我らは一心同体。こやつが行くというのなら、地獄の果てでも付き合うまでよ」
魔力供給の要であるユーリは、当然ながら一緒に行かなければならない。そうなると、必然的にユーリの家族であるマテリアル娘たちも一緒について来ると言い出すことになる。どちらにしろ彼女たちを残していくのは色々と危険なので、一緒に行くことは大分前から決められていた。
「ようは我らの大勝利というわけだ! はーっはっはっは!」
「常勝、必勝、大爆笑! ボクらの気分は超ハラショー!」
「お祝いとして勝利の美酒に酔いしれましょう」
「それはダメですよシュテル。私たちは一応未成年なんですから」
「ちぇっ」
どさくさに紛れてお酒を飲もうとしていたシュテルはユーリの妨害によってテンションを下げられてしまったものの、調子に乗ったディアーチェとレヴィは肩を組んで高笑いしている。
「「あはは、あはは、あははははー!」」
「ぐぬぬ~!」
「相変わらずムカツク奴らだな!」
「まぁまぁ、おみやげにマカデミアナッツチョコを買って来るから許してやってくれニャ」
「ハワイ旅行かよ!」
ヴィータはお約束のおみやげギャグにツッコミを入れるが、その瞳はやはり寂しそうだ。他の面子も同様で、シロンとの別れを心の底から惜しんでいた。そんな彼女たちの様子を見ると本当にハーレムが実現しそうな気もする。
しかし、今はまだその時ではない。シロンが生まれた戦の星では、絶対に勝ち得なければならない運命の戦いが待ち構えていたからだ。
グラハムに急かされて出発を早めることになったシロン一行は、予定を変更して数日後に元の世界へと帰っていった。居残り組に見送られながら故郷へと舞い戻った彼らは、懐かしい景色を見て喜びに打ち震えた。
しかし、感動に浸っている余裕は無かった。久しぶりに我が家へと戻った矢先に新たな脅威と直面することになったからだ。なんと、ケット・シーの住まう火星に【地球外変異性金属体、ELS】が襲来してきたのである。
なのはのいる世界で作っていた新型ガンニャムをセツニャたちに託して戦力を増強したケット・シーは、地球から救援に駆けつけた連邦軍と共に防衛線を構築する。これは、人類と猫妖精の存亡をかけた戦いだった。
結論から言うと、2ヶ月にも及ぶ大作戦の末に辛うじて勝利することができた。
ELSの圧倒的な物量によって連邦軍は甚大な損害を受けてしまったが、絶体絶命の状況で起死回生の手段を見出すことに成功した。
最高レベルのイノベイターに覚醒したセツニャの発言により彼らと対話できる可能性を得たシロンが、セフィの力を使ってセツニャの能力を拡大したのだ。魔力の溜まっていない状態ではこれが精一杯だったが、みんなの力を得ることで何とか目的を成し遂げた。
複数のガンニャムで活路を開き、ELS母船の中枢に侵入したセツニャのダブルオークアンタがクアンタムバーストを発動する。そこでELSの身の上話を聞いたセツニャは、『それならシロンが解決してくれるんじゃね?』と言って彼らを説得し、対話に成功した。かつて使用したエンジェル・ハィロゥの成果を考慮し、対管理局の切り札として作っておいた【クアンタムシステム】が偶然にも役に立ったのだ。
「こんなこともあろうかと用意していた甲斐があったニャ!」
「まさにご都合主義ですね」
とまぁ、そんなこんなでELSと和睦したシロンは、セフィの力を使って彼らの希望――滅亡に瀕している母星に代わる新天地の発見――を叶えてをあげることになった。その結果シロンたちの帰還が4年後にずれこんでしまうことになるのだが、それは仕方がないだろう。
しかし、そのずれによってなのはたちがピンチに陥ることになるとは思いもしなかった。シロンたちが不在の間に、スカリエッティが動き出したのだ。
彼は、自らの野望のために最高評議会を殺し、地上本部を混乱に陥れて管理局を滅亡の危機に陥れるのだが、戦勝に浮かれて祝勝会を開いているシロンたちには想像すらできなかった。
「私、シロン・ガンニャールヴルが祝杯しようというのだ! 千夜子!」
「なるほど、料理の持ち帰りもできるだなんて、エコだわそれは……じゃなくて、なぜ私がここにいるのか説明していただけないかしら?」
運がいいのか悪いのか、戦争が終わった直後に猫召喚でやって来た【黒猫】さんが祝勝会に紛れ込んでいた。
因みに、この少女は【五更 瑠璃】ではなく【東雲 千夜子】のほうだ。彼女は重度のオタクであり、この後シロンと意気投合して未来のサブカルチャーを大いに楽しむのだが、物語にはこれっぽっちも関係ないためバッサリと割愛させていただく。
「ああ、とても素晴らしいわ! 来世すら飛び越えて、遥かなる時空の彼方であなたとめぐり会えるなんて! 私の
「面白いアニメを見つけただけで大げさだニャ」
2人で仲良く深夜アニメを見ながら穏やかな時間が過ぎていく。4年後になのはのいる世界で大事件が起きるとも知らずに……。
☆★☆★☆★☆
険悪な様子のはやてたちから逃げ出したシロン一行は、さっさと地上本部を出て先行しているグラハムを追った。彼の事だから既にリニスたちと合流しているかもしれない。そう思って連絡してみたら案の定当たっていた。
彼女たちと待ち合わせした場所に行ってみたら、興奮したグラハムが危ない様子で娘と接していた。
「おお、我が娘よ! 君の圧倒的な可愛さに、私は心奪われた! 女は魔物に例えられるものだが、君だけは違う! あえて言わせてもらおう、ラブリーマイエンジェルであると!!」
「ええい、街中でカテジナさんよりおかしいこと言ってんじゃねー!!」
「貴様こそ! 年頃の娘と対話する父親などは、ノミの心臓(臆病者)だということがなぜ分からんのだ!」
「悪かったよ! わざとふざけて弱気な心を誤魔化してたんだって今気づいたよ!」
どうやら娘に嫌われたくない一心で彼なりに気を使っていたらしい。だが、その内容はいただけず、はっきりいって逆効果だった。ミライのことが好きなクセにスレッガーとの仲を取り持ったりするブライトさん並に不器用な男である。しかも、せっかく娘のご機嫌を取っていたのに一瞬にしてオイシイところをシロンに掻っ攫われてしまう。
「あっ、シロンお兄ちゃんだー!」
「やったぁ、お兄ちゃんと遊べる~!」
「はっはっは、今日の我輩、超人気者!」
「ふっ、トップファイターである私を振るとは、思い切りのいい乙女だな。だが、それでいい。それでこそ我が娘だ!」
やはり、若くてカッコイイお兄さんの方がいいか。愛しい娘が親離れしていく様子を感じてちょっぴり寂しいけれど、彼女が笑顔ならそれでいい。発言はバカっぽくても、ちゃんと立派にパパをやっているグラハムであった。
「だがしかし! 私は我慢弱く、落ち着きのない男なのさ! しかも、乙女をたぶらかす輩が大の嫌いときている。ナンセンスだが、貴様をぶっとばさずにはいられない!」
「だぁー!? グラハム超めんどくせー!!」
「ふふっ、また始まったね」
「キュクル~!」
ヴィヴィオやアルマと一緒に近づいてきたキャロが、使役竜のフリードリヒに語りかける。家族とのつながりを大事にしている彼女にとっては、こんなバイオレンスなイベントも好意的に写るようだ。良くも悪くもシロンの影響を受けた結果である。
そんなキャロの隣には、同じようにシロンを心酔しているエリオもいる。何かを警戒しているような様子の彼は、見えないナニカと戦っているようだが。
「どうしたエリオ。組織の連中が近くにいるのか?」
「ええ。奴らは時空の歪みからこちらを監視しているようです。今日も風に乗って嫌な気配が伝わってきますよ。名状し難い邪悪な気がね……」
「それはたぶん、お前がザンネンなこと言ってるから注目集めてるだけニャ」
「否! その者たちは組織の連中が作った超魔電子立体映像によって擬態したスパイです。まさか、シロンさんともあろうお方がこの程度の児戯に惑わされるとは。傲慢が綻びを生むというのか!」
「なんていうか、もうね、彼は手遅れなようだね!」
「全部シロンのせいでしょー!?」
エリオの保護者であるフェイトが思わずつっこむ。
確かに、この中二病はシロンからうつされたもので、元々素質のあった彼は重症化してしまった。そのせいでおかしな言動が多くなり、周りからは美少年なのにとてもザンネンだという声が多数寄せられている。
しかし、そう悪いことばかりでもない。
エリオとキャロは、人造魔導師や戦闘機人の増加に伴って新たに設けられた特定児童保護課に配属され、異質な力を持って生まれたがゆえに虐げられている子供たちのケアに大活躍しているのだ。キャロのデュエルモンスターズとエリオの中二病は非常に相性が良く、彼らの活躍は将来が見えなくなっている子供たちに希望を与えていた。
とはいえそれは子供たちの話であって、大人としては一緒に楽しめる分野ではない。
「ほんと、せっかくの美少年なのに勿体無いわよね」
ため息と共にそうつぶやいたのは、17歳のお姉さんであるティアナ・ランスターだ。
彼女は次元航行部隊でフェイトの補佐官をやっており、忙しい業務の合間に執務官を目指して勉強に励んでいる。一時は兄の汚名をそそぐために無茶な努力を積み重ねていたが、今ではすっかり落ち着いて地に足の着いた行動を心がけていた。そうなったのは、とある出来事のおかげで彼女の心境に変化が起きたからだ。
今より半年以上前、訓練の成果がなかなか出ないことに焦りを感じていたティアナは、なのはとの模擬戦で危険な行動をとった。そのせいで彼女の怒りを買い、全力全開で撃墜された。トラウマになりかねない攻撃を受けた彼女は酷く落ち込み、辺りに八つ当たりまでするようになって、ついにはシグナムから鉄拳制裁を受ける事態にまで発展してしまう。
そんな空回りするティアナを見かねたヴィータは、なのはの過去の話を聞かせた。彼女がシロンとグラハムから受けた訓練の様子を……。
最初に見せられた射撃訓練では、膨大な数の誘導射撃魔法でボコられるなのはの姿が映し出されていた。
『いいか、なのは! ガンダムたるもの、ファンネルを狙撃できるほどの射撃センスがなければならない! というわけで、我輩たちが出したファンネルを全部打ち落としてね』
『はい! ……って、攻撃してきた!?』
『当然だ。この訓練、リスクのないゲームなどとはわけが違うのだからな。甘えなどは許されんのだよ。しかし、恐れることは何もない。当たらなければどうということはないのだからなぁ!』
『いやいや、何百もあるのに無理ですってー!?』
そして、なのはは閃光の中に消えていった。幼女が電撃魔法で袋叩きにされるという非常にショッキングな映像で、ティアナたちは言葉を失う。だが、話はまだ終わりではない。
次に見せられた防御訓練では、膨大な数の魔法式ガトリング砲でボコられるなのはの姿が映し出されていた。
『いいか、なのは! ガンダムたるもの、銃弾を食らいまくっても無傷でいなければならない! というわけで、今からこのガトリング砲で撃ちまくるから耐え抜いてね』
『はい……って言いたいところだけど、そのガトリング砲やたらとでかくない!?』
『当然だ。これはモビルアールヴ用に作られたものだからな。普通の人間に使うものではないのだよ。しかし、恐れることは何もない。当たらなければどうということはないのだからなぁ!』
『あーん! またこの展開なのー!?』
あまりにも凄まじい攻撃で、ヒイロほど硬くないなのはは抵抗空しく撃墜された。この調子だと次を見るのが恐ろしくなるが、シロンたちはその期待にしっかりと応えてくれた。
最後に見せられた身体訓練では、巨大な隕石で無残にぶっ飛ばされるなのはの姿が映し出されていたのだ。
『いいか、なのは! ガンダムたるもの、隕石を押し返すほどの伊達じゃない力がなければならない! というわけで、今から隕石落とすからちゃんと受け止めてね』
『ちょ!? それもう訓練の域を逸脱してるよ!?』
『当然だ。戦略級広域殲滅魔法【アクシズ】は最大出力で放てば世界を滅ぼせるからな、わざわざ無人世界に来たのはそのためなのだよ。しかし、恐れることは何もない。死ななければどうということはないのだからなぁ!』
『いやー! さりげなく変わってる最後のセリフが怖いよー!?』
なのはは涙目で絶叫するが時既に遅く、シロンはすばやく詠唱を終えてしまった。
『天を彷徨いし戦の星よ、大地を汚す愚民を滅ぼせ! 行け、忌まわしい記憶と共に! アクシズ!!』
『ぎにゃ―――――――――…………』
巨大隕石の直撃を受けたなのはは、クレーターの中心でピクピクしていた。そんな彼女を一瞬で治療して、更に訓練を続ける鬼のようなシロンたち。
まさに地獄と呼べるような無謀すぎる内容だが、シロンの魔法とセフィの能力によってケアは万全なので、とりあえず命の保障だけはあった。つまりなのはは、サイヤ人のような特訓方法で人並みはずれた強さを手に入れていたのだ。
もちろん彼女はただの人間なので身体能力が劇的に変化するわけではないが、健康状態を良好に保ったまま豊富な実戦経験を得るという本来なら有り得ない状態で成長したおかげで誰もが認める史上最強の魔導師となった。
その代わりに魔法脳筋と化してしまい、彼女が行う地味で過酷な訓練は【魔王のブートキャンプ】と呼ばれて恐れられるようになる。それでも、なのはのやった訓練に比べれば児戯に等しいのだが、ティアナたち新人局員はそれですら苦しんでいる。そんな自分があの訓練をさせられたら……。
「お前もやってみるか?」
「いいえ無理です、ごめんなさい」
ティアナはあっさり降参した。あんな人間離れした訓練をしていたのならあの強さも納得できる。そして、自分たちに同じようなメニューをやらせなかったことも理解できた。
自分は、ガンダムとやらを目指しているわけではないのだから……。
何にしても、そのような非常識すぎる話を聞かされては流石に考えを改めざるを得なかった。
「私は常識の範疇で身の丈に合った強さを手に入れるんだ!」
でないと、結果を出す前に死んでしまう。ティアナが手に入れたかった力は五体満足で生きているからこそ得られるものであり、厳しい訓練を潜り抜けてきたなのははそれをちゃんと理解していた。死ぬほど苦しい訓練で加減というものを学び取ったなのはは、彼女たちに合ったペースをしっかりと考えてくれていたのだ。
そう理解したからこそ、なのはと同じことをしようとした友人を全力で止めた。現在ティアナのとなりでのほほんとしているスバル・ナカジマのことだ。
彼女は、子供の頃にお世話になったなのはに憧れて入局したガッツのある少女で、現在は特別救助隊として事故や災害から人々を救い続けている。今日は久しぶりになのはと会うためにわざわざ休日を合わせていた。
そんな楽しい時間にシロンたちがやってきたのだが、やはりというか色々とハプニングが起き始めた。今もスバルたちの視線を気にすることなくフェイトと痴話喧嘩(?)してるし……。
「もう! シロンのバカー!」
「なにをー? バカって言うほうがバカなんだい!」
「ははっ! 流石のフェイトさんもシロン兄の前では普通の女の子だね~」
「まぁ、あの人はものすごく変だからね……」
「え~? シロ兄は強くて優しくてカッコイイじゃん。ギン姉もそう思うでしょ?」
「うん、そうね。シロンさんはとっても素敵な人よ」
「あーもう、ギンガさんはあの人に惚れてるんだから同意するに決まってるでしょ」
「えっ!? あの、私は……」
ギンガは、ティアナに本心を言い当てられてうろたえる。8年前にシロンと知り合った彼女は、おバカなようで面倒見のいい彼に好意を抱いていたのである。
現在彼女は父親と同じ陸士108部隊に所属する捜査官をしており、クラナガンの平和を守るために犯罪者を取り締まっている。管理局の動向を警戒したクイントが家族の身を案じて専業主婦となったおかげで本来の歴史より心に余裕が生まれ、現在は年頃の女性らしくおしゃれや恋を楽しんでいた。
「やぁ、ギンガ! 久しぶりだね!」
「はい、シロンさん! ところで、髪がアフロになってますけど、大丈夫ですか?」
「なぁに、ちょっと電気マッサージを受けてただけニャ」
「フェイトさんの電撃魔法を受けてこれだけで済むなんて、やっぱりこの人変態だわ」
「ほぅ、変態とは心外だね。痛みをカイカンに変えられるほどに順応性が高いと言いたまえ」
「それを変態って言うんでしょ!」
「ぷぷっ! ティアはシロ兄と相性バッチリだね!」
「どうしてそうなる!」
ナカジマ姉妹はシロンとティアナを交えて楽しそうに会話する。
ご覧のように普通の少女に見える2人だが、実は意外な秘密がある。彼女たちは違法な研究によって人工的に生み出された戦闘機人の実験体なのだ。機械部品によって魔力とは異なるエネルギーを使えるが、最新の戦闘機人より生身の身体を主体としているためか魔法も使えるハイブリット体となっている。
当初は自身に宿る力を恐れていた彼女たちだったが、なのはやフェイトのおかげで考えが逆転した。あえてその力を受け入れて社会に役立てる道を選んだのである。
なのはたちを見て2人は学んだのだ、人を傷つけてしまうような力でも素敵な使い方ができるのだと。
爆発事故により炎に包まれた空港でなのはに救助されたスバルは、頼もしい彼女の姿に心を奪われた。セツニャやグラハムがガンニャムの力に魅入られたように、厳しい特訓を潜り抜けてガンダムとなったなのはもスバルたちを虜にしていたのである。
そして今、管理局局員になるという夢を実現したスバルたちは、憧れのなのはと一緒にお出かけするまでの仲になっていた。しかも、母親を助けてくれたシロンもいる。まさにスバルたちにとってはドリームタッグなのだが……。
「よう、ガンダム! マグネットコーティングの調子はどうだい?」
「色々言いたいことがあるけど、とりあえず私の名前は『な・の・は』だよ!」
「ラストシューティングッ!」
よせばいいのに調子に乗ったシロンはなのはの怒りを買い、頭にディバインシューターを食らってしまう。せっかく直した髪が再びアフロになってスバルたちの笑いを誘った。しかし、シロンはめげない。だって男の子だもん。
「やるようになったな、ガンダム! それでこそ我輩のライバルだ!」
「半泣きで言われても説得力無いよ。っていうか、ガンダムって言うの禁止!」
どうやら、なのは自身はガンダムという呼び名を気に入っていないらしく、お怒りの様子で頬を膨らませている。しかし、神経が図太いシロンはそのくらいでビビる男ではない。エースオブエースの怒気ですら軽く受け流して、アフロとなった髪をユーリとセフィに直してもらっていた。
「もう、なんでなのはさんにあんなことを言うのですか?」
「ふっ、似過ぎた者同士は憎み合うという事さ」
「簡単に説明すると喧嘩友達という意味です。頂点を極めてしまった者同士、惹かれあっているのですよ」
「なるほど、拳で語り合う仲というヤツですね!」
「そうです。拳を握り殴り合って、傷だらけのまま似たもの同士と笑いあうアレです」
「あ~、確かになのはってそんな感じだよなぁ。お話しようとか言いながらフェイトも散々ぶっ飛ばされ……いいえ、何でもありません」
3人の会話を聞いていたアルフは10年前の出来事を思い出して同意するが、途中でなのはの視線を感じてフェイトの後ろに引っ込んでしまう。狼だった頃の記憶が逆らってはダメだと警告したのだ。
しかし、それは単なる過剰反応だった。ガンダム化計画のせいでやたらとプレッシャーを放つようになってしまったが、本来の彼女は心根の優しい女性だ。その証拠に、幼いヴィヴィオは彼女にとても懐いている。
「なのはママー。ヴィヴィオ、アイスクリームが食べたいなー」
「え~? さっきお昼を食べたばかりじゃない」
「でもでも~、甘いものはモンバーバラだってシロンお兄ちゃんが言ってたよ~?」
「いや、それを言うなら別腹なんだけど、っていうか、ヴィヴィオに変なこと教えるなって何度も言ってるでしょー!?」
「やられるっ!?」
この時シロンは、アムロのようにキュピーンと脳裏に電撃が走って危険を察した。しかし、アムロとは違ってフィンファンネルバリアを使えなかったので言葉通りにやられてしまった。6つの敵(ディバインシューター)が同時に襲いかかり、咄嗟に回避したシロンの股間に全弾命中してしまったのである。特に狙ったものではなく回避行動中の不運な事故だったが、わざわざ自分から当たりに行っているように見えてとてもマヌケだった。
何にしても、今はただただ痛みに耐えるしかない。
「我輩の……我輩の命が吸われていきます……」
「あーん、シロンお兄ちゃんがー!」
「もう、こんな街中でなに恥ずかしいことやってるのよ、2人とも!」
「私も同類なの!?」
フェイトは、ユーリやアルマと一緒にシロンの腰を叩いてやりながら呆れた声を上げる。股間に当たってしまったのは事故なのだが、確かにふざけすぎた。それに、士官特権によって戦闘魔法の使用がある程度許可されているとはいえ、これだけ派手に使ったら後で怒られてしまいそうだ。
ガンダム化が進んだなのはは、カミーユのように『修正してやるっ!』という気分になり易くなっていたためこのような事態がたまに起きるようになっていた。これは、力を得てしまった者が暴発しないようにガス抜きをしているようなものなので、ある程度は仕方がないことだった。
まぁ、実際に被害を受けるのはもっぱらシロンだけなので大きな問題はないのだが、世間体がよろしくないのはいただけない。ヴィヴィオが学校で変なことを言われるようになってはたまらないと場所移動を提案する。
「せっかくだから、ユーリちゃんの服も見て回ろうよ!」
「えっ、私のですか?」
「そうですね。先ほどユーリに似合いそうな服を見つけましたので、もう一回行ってみましょう」
なのはの提案にリニスも乗ってきた。2人のママさんは子供のおしゃれにハマっており、お姫様のようなユーリや子供形態のアルフは時々付き合わされていた。
そうなると、一緒に行動している2人の子供も必然的に興味を持つことになる。
「えへへ~、私もユーリお姉ちゃんのお洋服選んであげる~」
「あっ、私も私もー!」
「ふふ、それじゃあ2人にお願いしちゃおうかな?」
アルマとヴィヴィオも母親のマネをして、ユーリのファッションコーディネーターとして名乗りを上げた。明らかになのはとリニスの影響を受けたと思われるその行動に、周囲の大人たちは優しい笑みを浮かべる。
ただし、1人だけ異常な反応を示しているが。
「おおぅ! なんという愛くるしさだ! ももも、もう辛抱たまらん! アルマ! 私は君を求める! 果てしないほどにぃ!!」
「ええい、トチ狂ってお友だちにでもなりにきたのかい!?」
あまりにアブナイ様子だったため、思いっきり亀甲縛りで締め付けた。しかし、相手はそれすら受け入れてしまうヘンタイであった。
「ぐおっ、ぬおっく! やめろぉ! あ、いや、しかし……こういうプレイも……悪くない」
「グラハムよ、天に昇れぇ!!」
「ぐはぁ!!」
アルマたちの可愛さゆえに暴走してしまったグラハムにイラッとしたので、とりあえずぶっ飛ばす。もちろん放っておいても大丈夫なのだが、暑苦しい家族の抱擁を目の前で見せ付けられるとウザい。というわけで、ここは少し大人しくしていてもらおう。その方がみんなのためにもなる。
「さて、ハム太郎も静かになったことだし、みんなで楽しいショッピングと洒落込もうぜ!」
「「「おー!」」」
「まったく、いつまで経っても変わらないわね……」
リニスは、猫形態になって気絶しているグラハムを抱きながら苦笑する。彼らと出会って10年以上経つが、相も変わらず賑やかだ。その明るさに自分も救われたのだから文句は無いけど、悪乗りされるとちょっぴり困る。
実際、彼らは半年以上前に起きた大事件で困ったことをやらかしていた。後にジェイル・スカリエッティ事件と呼ばれる歴史に残るような出来事で、調子に乗った彼らは大暴れしてしまったのである……。