竈門炭治郎 丙(ひのえ。一般隊士10階級の内の3番目の階級。ちなみに原作炭治郎の最終階級でもある)
我妻善逸 壬(みずのえ。一般隊士10階級の内の9番目の階級。つまり、炭治郎の6つ下)
嘴平伊之助 庚(かのえ。一般隊士10階級の内の7番目の階級。つまり、炭治郎の4つ下)
栗花落カナヲ 乙(きのと。一般隊士10階級の内の2番目の階級。つまり、炭治郎の1つ上)
「──そうか!よくやったぞ、童磨」
無限城にて、無惨は珍しく喜色満面な笑みを、10日程前に音柱を殺害した上弦の弐──童磨に対して浮かべる。
しかし、それもその筈だった。
なにしろ、遂に念願の太陽を克服した鬼──禰豆子の存在と居場所を突き止めたのだから。
「ありがたいお言葉です。それで如何いたしましょうか?すぐに参りますか?」
「・・・いや、お前が連れてこい」
童磨の言葉に、無惨はそう答える。
その意外な言葉に首を傾げる童磨だったが、詮索してもろくなことにはならないと、早々にそれを了承することにした。
「分かりました、俺が無惨様の元に連れていきましょう」
「・・・ついでだ、半天狗も連れていけ。念のためにな」
感情を思わせない童磨の言葉に何処か不信感を抱いたのか、無惨は監視役として上弦の肆である半天狗も同行させるように指示する。
そもそも無惨はこの上弦の弐という存在は今一つ信用していない。
何時も感情の不気味な表情を浮かべている上に、発する言葉にも全く感情が篭っておらず、何を考えているかさっぱり分からなかったからだ。
おそらく、実力が無ければすぐにでも目障りとして無惨に粛清されていただろう。
だからこそ、半天狗という監視を着けることにしたのだ。
もっとも、念のためという言葉に嘘はない。
太陽を克服した鬼は無惨にとって何がなんでも獲得しなければならない対象だったのだから。
それなら自分で行った方が早いのではとも思うが、実のところ、無惨は禰豆子が2年半前に自分を撃退した男の妹だと知って、その人物に自ら手を出して拐うのを躊躇している。
まあ、有りたいに言えばビビっていたのだ。
「おお!そこまでしていただけるとはありがたい。必ずやそのご期待に応えて見せましょう」
そして、童磨は無惨の言葉に何を思ったのか、またもや感情を思わせない笑みを浮かべながらその指示に従う。
──かくして、
2体の上弦の鬼が禰豆子の居場所──狭霧山へと向かうこととなった。
◇
無惨が2体の上弦の鬼を狭霧山へと向かわせた頃、階級
目的は同地に居る禰豆子と、禰豆子の治療にあたるために狭霧山に居る珠世と愈史朗を産屋敷邸まで護送するためだ。
しかし、炭治郎には現在、ある悩みが存在した。
(しかし、まさかこんな段階で音柱が戦死するなんて。流石に予想外すぎたな)
炭治郎は少々焦りの色を見せながらそう思った。
原作を知っている人間は分かると思うが、宇髄は時系列的には今から2ヶ月後に起こる筈の遊郭での上弦の陸との戦いで左目と左手を失って柱を引退したものの、最終的に生き残った柱の1人となっている。
それが退場したとなると、もはや歴史の修正力など期待できず、誰が死んで誰が生きるか全く分からなくなったことを意味していた。
まあ、1つプラスになった点があるとすれば、音柱の死を目にしたことが伊之助と善逸の成長に寄与しているという点だろう。
原作の煉獄と同様、柱の生きざまと死を目にした2人は現在、特訓などを以前よりも多く行うことでメキメキと力を着けている。
特に伊之助に至っては物凄い成長ぶりであり、もしかしたら原作を越すのではないかと思える程の勢いだった。
どうやら上弦の弐と会った際に例の母親の話をされたことがそのやる気に火を着けたらしい。
そして、音柱が死んだことで開いた柱の枠には、新たに
当初は最近復帰した胡蝶カナエも柱の資格(階級
しかし、炭治郎にはその事である不安があった。
(音柱の開いた穴が塞がったのは良いことだけど、あんなんで大丈夫かな?)
有一郎の刀身が紫だと聞いて、それが月の呼吸の特性だと気づき、彼に月の呼吸を教えたのは炭治郎だった。
実はある技の完成に必要だったので、その過程として上弦の壱を真似る形で月の呼吸を覚えており、それをそのまま有一郎に教えたのだが、彼に教えたのはあくまでも炭治郎が見た技だけであり、技は合計でも数個しかない上に、型の数字も全然違っているので穴だらけだ。
そんな中途半端な技術で柱としてやっていけるかは、はっきり言って炭治郎にもほとんど自信が無かった。
(・・・人の心配をしている場合じゃないか)
炭治郎はそう思った。
何故なら、音柱の戦死によってそれとはまた別に1つ問題が出来てしまっているからだ。
それは遊郭に居る上弦の陸をどうやって処理するかである。
当初の予定ではあと2ヶ月待って原作通りに宇髄と共に遊郭に潜入すれば良いと考えていた。
そして、自分の担当を原作のときと屋から上弦の陸の本拠地である京極屋に変更して貰うことを願い入れた上で、他の上弦が援軍に来る前に速攻で上弦の陸を倒す。
ちなみに居場所も正体も分かっているのに自分で行かないのは、万が一、失敗したときのために撤退を支援してくれる人間が欲しかったからだ。
なにしろ、上弦の陸は新世紀エヴァンゲリオンに出てくるイスラフェルの下位互換とも言える特性を持っており、2体の鬼を頸が繋がっていない状態にしなければ討伐できないのだから。
しかし、これが破綻してしまった以上、また新たな方法を考えなくてはならない。
(さて、どうしようかね)
炭治郎は考えを巡らせるが、なかなか思い浮かばない。
なにしろ、上弦の陸が居る場所は遊郭だ。
当然、行くには任務など、何かしらの理由が必要なのだが、それがなかなか思い浮かばない。
最悪、誰かに遊郭に上弦の陸が居ることを話して協力して貰うというのも手だが、情報源を問い詰められると言葉に困ってしまう。
馬鹿正直に『原作知識です』と言う訳にもいかないし、かといって情報源を話さないと情報自体が信用されない可能性が高い。
特に蛇柱や岩柱には。
(珠世さんの事を話して、珠世さんから聞いたと嘘をつくか?・・・いや、無理があるな)
そもそもこれから彼女たちは原作よりも早く鬼殺隊に合流するのだ。
そんな嘘がバレるのも時間の問題だろう。
(となると、やっぱり1人でやるしかないのか?)
炭治郎はため息をつく。
討伐する上弦があれなだけに、上弦の陸を1人で討伐するというのはそれだけ困難を極めるのだ。
まあ、イスラフェルのように全く同じタイミングで2体の弱点を突かなくてはならないという1人では撃破が絶対無理な相手ではないだけマシではあるが、それでも面倒ではあるし、もしかしたら町の人間に被害が出てしまうかもしれない。
(・・・いや、無理だな。長期戦になって他の上弦が増援に来る未来しか見えない)
十二鬼月は絶えず無惨と感覚を共有している。
これは上弦の壱が那田蜘蛛山で言ったことであり、実際に上弦の壱がピンポイントに自分の前に現れている以上、それは信じざるを得ないことだ。
しかし、そうなると話は振り出しに戻ってしまう。
(いっそのこと、放置・・・は出来るわけないよな。それに可能ならば、こっちのフィールドで倒した方が確実だ)
一瞬、上弦の陸は放置してしまおうかと考えた炭治郎だったが、すぐにその案を却下する。
何故なら、それは人道的に流石に不味いし、仮にここでパスしたとしてもどうせ最終決戦では戦うのだ。
そして、その場合、無限城という向こうの有利なフィールドで戦うことになるので、不利な要素が増えてしまう。
やはり、遊郭に居る時に倒してしまうのが一番だろう。
「どうしようかなぁ」
結局、結論は振り出しに戻ってしまい、炭治郎がどうやって自分以外の人員を調達するかを改めて考えていたその時、1羽の鎹烏がこちらに向かって飛んできた。
「あれ?なんで、鎹烏が・・・」
それに気付いた炭治郎は首を傾げる。
自分が狭霧山に向かうことは既に伝えてあるし、それを伝えた鎹烏は自分の近くに居るので、飛んできた鎹烏は自分とは別のものということになる。
(何か緊急事態でも起こったのかな?て言うか、あの鎹烏が飛んできた方角って・・・)
炭治郎がそう考えていた時、その飛んできた鎹烏は炭治郎の姿を認めると、そちらの方に降りてきて、とんでもない情報を伝えてきた。
「カァー、狭霧山襲撃ィイ!!現在、鱗滝左近次ガ襲撃シテキタ上弦ノ弐ト交戦中ゥ!!カァー!」
炭治郎が入隊してからこの時点までの十二鬼月の討伐数
下弦4体
計4体
・内訳
竈門炭治郎(1体)→下弦の壱(厭夢)
栗花落カナヲ(2体)→下弦の伍(累)、下弦の陸
不死川実弥(1体)→新下弦の壱(轆轤)