竈門炭治郎に憑依   作:宇宙戦争

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原作の時系列

◇西暦1900年7月14日、竈門炭治郎誕生

西暦1911年12月、竈門炭十郎が亡くなる。

西暦1912年12月、竈門家に無惨が襲来。

西暦1914年12月、炭治郎が鬼殺隊に入隊する。

西暦1915年2月、那田蜘蛛山編。

同年5月、無限列車編。

同年9月、遊郭編。

同年11月、刀鍛冶の里編。

同年12月、最終決戦。

といった感じの設定になっています。


2代目日柱の誕生

西暦1915年(大正4年) 7月 産屋敷邸 緊急柱合会議

 

 緊急柱合会議。

 

 それは文字通りの意味で緊急であり、半年に1度行われる定例会議とは全く違う用途で行われる。

 

 しかし、それでも行われるのは非常に稀であり、先月行われた音柱の死が知らされ、月柱の就任が決められた以降、来月の定例会議までこれが行われることはないというのが、つい最近、音柱の代わりに新たに就任した月柱を除いた柱達の意見だった。

 

 ・・・数日前までは。

 

 

「さて、知っての通り、数日前に上弦の肆が討伐されたことは知っているだろう」

 

 

 集められた柱達を相手に、輝哉は口火を切る。

 

 100年もの間、討伐されていなかった上弦の肆という存在の討伐は士気向上の狙いもあって一般隊士にも知らされていたし、当然の事ながら柱達も知っていた。

 

 なので、今回、柱合会議が行われたのはその事をわざわざ知らせるためではない。

 

 幾ら100年間誰も成し遂げることが出来なかった事態が起きたからと言って、それに浮かれるほど輝哉は楽観主義者ではなかったのだから。

 

 

「それで今日君たちを集めたのは、その功績を称えて炭治郎を10人目の柱として認めたいと思ったからなんだけど、みんなはどうかな?」

 

 

 その言葉を聞いた時、9人の柱達(炎柱、水柱、恋柱、蛇柱、風柱、岩柱、霞柱、月柱、蟲柱)の反応は次の通りだった。

 

 

「うむ!上弦を倒したのは素晴らしい!!これは妹の事はともかく、その功績を認めざるを得ないでしょう!!」

 

 

「・・・」

 

 

「私は炭治郎君の事をよく知らないので、御館様の言葉に従います」

 

 

「信用しない!そもそも奴が上弦を倒したのだって信じられない。何かの間違いじゃないのか?」

 

 

「・・・」

 

 

「嗚呼、私としてはそれに反対です。蛇柱が言うように信用できない」

 

 

「僕はどちらでも構いません。まあ、柱として来るなら歓迎しますけど・・・」

 

 

「じゃあ、俺は賛成だな。月の呼吸を教えてくれた恩も有るし」

 

 

「私も同じですね。2度も助けて貰った恩があります」

 

 

 まあ、こんな感じだ。

 

 意外な反応なのは風柱・不死川実弥であり、この人物は特に反対することもなく沈黙を保っている。

 

 そして、前回の柱合裁判と同じように沈黙を中立として数えた場合、賛成3(炎柱、月柱、蟲柱)・中立4(水柱、恋柱、風柱、霞柱)・反対2(蛇柱、岩柱)となるので、ギリギリ賛成派が優勢となっていた。

 

 

「ふむ、見事な別れ方だね。それで小芭内、行冥の2人に聞くけど、君達は何故彼が信用できないんだい?」

 

 

「決まっています。奴は鬼を連れている。身内に鬼を出しているだけでも既に隊律違反に近いのに、それを容認されているとは言え連れ歩く奴など信用できません」

 

 

 伊黒はそう言いながら、反対の理由を言った。

 

 そう、鬼を連れ歩くのは勿論なのだが、実のところ身内から鬼を出している時点で隊律違反に近かったりするのだ。

 

 実際、かつての継国縁壱も兄である継国厳勝が鬼になったという点を責められているし、原作では善逸の師である桑島善悟郎が獪岳が鬼になったことの責任を取る形で切腹までしている。

 

 ある意味新撰組よりも厳しい規則であり、ぶっちゃけ幾ら身内だからと言って、そこまで厳しくあたる必要があるのかとも思うが、これが鬼殺隊なりのけじめらしいということは炭治郎もしのぶから聞いていた。

 

 

「なるほど、でも、それについては以前、解決した問題だね。今さら蒸し返すのもどうかと思うよ。それに炭治郎は結果も残しているしね」

 

 

「ですが・・・」

 

 

「小芭内、厳しいことを言うようだけど、これ以上反対するなら結果を示して欲しい。例えば炭治郎と同じく上弦を倒すとかね」

 

 

 輝哉は珍しく少々厳しめな口調でそう言った。

 

 鬼殺隊は良くも悪くも実力主義。

 

 だが、それで階級という概念がある以上、上の人間が結果を示さずに下の人間の功績を認めないなど、組織的な観念としてあまりにもよろしくない。

 

 それだけは組織の長として容認できないために、輝哉は少々厳しめな口調で注意したのだ。

 

 

「・・・」

 

 

 伊黒は輝哉の言葉に押し黙る。

 

 厳しめな口調に驚いたのもそうだったが、この前の事を蒸し返したことで輝哉の面子を潰してしまっているのだと、今さらながら気づいたからだ。

 

 そして、黙ってしまった伊黒に代わり、行冥はこう発言する。

 

 

「しかし、竈門隊士の階級は丙。柱になるには甲の隊士である必要がありますし、なにより柱は9人までと決まっております」

 

 

 そう言って別の面から反対する行冥だったが、それが苦しい言い訳であることは本人がよく理解していた。

 

 何故なら、胡蝶カナエや時透無一郎など、階級が甲に達していなくとも柱になった例はあるし、そもそも柱が9人までという規則も“それ以上増やしても、柱の威厳が損なわれる”という理由からであって、逆に言えば“増やしても柱の威厳が損なわれない何か”があれば例外を認めても特に問題はないのだ。

 

 そして、炭治郎は先日、100年間討伐できなかった上弦の肆を倒しているため、その基準は十分に満たしている。

 

 だが、それでもどうしても岩柱は認める事が出来なかった。

 

 彼は過去のとある経験から人間不審に陥っており、特に子供に対してあまり良い感情を持っていない。

 

 そんな彼からしてみれば、鬼を連れるという鬼殺隊士にあるまじき行為をし、尚且つ子供である炭治郎を容認するなど出来る筈がなかった。

 

 しかし、行冥は知らないことであるが、炭治郎もまた岩柱の事をよく思ってはいなかった。

 

 原作では妹を見捨ててまで里の人間を救おうとした炭治郎を認めた彼であるが、同じことが起こった場合、おそらく自分はその正反対の行動を取るので、認められる可能性は一切無いと思っていたのもそうだが、それ以上に彼に対して反感を持っていたからだ。

 

 彼の過去の経緯は知っているし、確かにそれは同情に値するが、頭の可笑しい人間であるという点には変わり無かったし、自分の立場からしてみれば正直言って何処まで信用できるか怪しいと思っていた。

 

 勿論、それは人前では口に出してはいない。

 

 彼が胡蝶姉妹の恩人であるということはよく知っているし、その事が2人の耳に入ったら、世話になっている蝶屋敷の人間と何らかの確執が生まれてしまうと思っていたからだ。

 

 特に妹のしのぶには、原作同様に禰豆子を人間に戻す薬を開発して貰わなくてはならない関係上、それだけは絶対に避けなければならなかった。

 

 

「うん、確かに行冥の言う通り、そういう決まりがあるけど、さすがに一般隊士が上弦を倒していて、柱が100年間倒していないのは格好がつかないからね」

 

 

 そう、当たり前の事だが、柱というのは実力が認められているからこそ、尊敬され優遇されているのだ。

 

 しかし、それより下の一般隊士が柱が倒したものよりも上のものを倒しているのでは柱の権威を低下させてしまう可能性が高い。

 

 そうなるくらいであれば、異例の10人目の柱として炭治郎を据えた方がよほど良いと輝哉は考えている。

 

 

「・・・」

 

 

 行冥もまた、先程の伊黒同様に押し黙った。

 

 御館様の言っていることは間違ってはいないし、そもそもこれは炭治郎が普通の隊士であれば、問題なく通っていたであろう話だ。

 

 これ以上反対するのは私情でしかない。

 

 そう考えてのことだった。

 

 しかし、だからと言って納得した訳ではない。

 

 その証拠に彼は独自の日輪刀の柄を強く握り締めている。

 

 

「じゃあ、炭治郎は10人目の柱──日柱として登録することに決定する」

 

 

 ──判断は下された。

 

 そして、この一週間後、正式に炭治郎は鬼殺隊最高の階級である柱──日柱を襲名することとなる。

 

 それは始まりの剣士──継国縁壱以来の2代目の日柱誕生の瞬間でもあった。




狭霧山の死闘の功績による炭治郎の階級昇進

竈門炭治郎 3階級昇進 丙(一般隊士10階級の内の3番目の階級)→日柱

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