竈門炭治郎 柱(日柱。鬼殺隊で最高の階級)
我妻善逸 辛(かのと。一般隊士10階級の内の8番目の階級。つまり、炭治郎の8つ下)
嘴平伊之助 己(つちのと。一般隊士10階級の内の6番目の階級。つまり、炭治郎の6つ下)
栗花落カナヲ 甲(きのえ。一般隊士10階級の内の最上の階級。つまり、炭治郎の1つ下)
「ええい!まだ見つからんのか!!」
無惨は無限城でイライラとした様子で、各地に存在する鳴女の“眼”からの情報を見ていた。
この鳴女の眼は原作では産屋敷家の位置を特定(もっとも、原作で岩柱が語っていた通り、わざと位置を特定させたのかもしれないが)し、更には鬼殺隊士の位置を把握して無限城へと誘った鳴女特有の血鬼術だ。
しかし、それを身に付けたのは原作では上弦の肆になった後、すなわち前任の上弦の肆である半天狗がやられた刀鍛冶の里編以降の話だったのだが、この世界では事情が違い、炭治郎の脅威が改めて再認識された為に、無限列車の一件の直後辺りで鳴女にその力が与えられていた。
そして、実のところ、2ヶ月前に禰豆子の存在を見つけたのもこれだったりする。
切っ掛けはほんの偶然だった。
各地に飛んだ“眼”で情報収集をしている最中、珠世を見つけ、そのまま泳がせてみようと思って追跡させた先が狭霧山であり、そこで禰豆子の存在を確認したのだ。
ちなみに禰豆子の存在を確認した時、辺りは日中だったが、眼を日陰に移動させることで制限を強いられながらも珠世の監視を続行していたのだが、そこで偶々目にしたのが日中で活動する禰豆子の姿だった。
流石にこれには無惨も驚いたが、同時に狂喜乱舞し、童磨に確保を命じ・・・まあ、後は既に語った通りなので説明は省くが、この時は禰豆子の回収は失敗してしまう(ちなみにこの時、童磨は無惨からお叱りを受けたらしい)。
しかし、その後も諦めずに情報収集を続けて禰豆子の居場所を突き止めようとしたのだが、未だに一向に見つかってはいなく、無惨は焦りを募らせていた。
「それほど焦る必要はないのでは?彼の鬼が太陽を克服しているということは日輪刀では殺せません」
上司が焦っていることでのあまりの心労に耐えかねたのか、鳴女はそう言って無惨を落ち着かせようとする。
しかし、そんな彼女に無惨はこう返した。
「いや、駄目だ。鬼殺隊には藤の花の毒を活用して鬼を殺す輩が居る。日輪刀は効かなくとも毒で殺される可能性は十分にある」
そう、太陽を克服したということは太陽光の成分を含んだ鉄で出来た日輪刀では殺せなくなったということを意味しているのだが、毒への耐久性はまた別の話となる。
まあ、本来なら藤の花が鬼にとって毒となるとはいえ、その毒を使って鬼を殺そうという輩は長い鬼殺隊の歴史の中でも1人も居なかった筈だったのだが、残念なことに今宵の柱の中にはそんな人材が居るのだ。
胡蝶しのぶ。
彼女は腕力の関係で鬼が殺せないことから、鬼を殺すための毒を開発するという偉業を達成しており、現在は蟲柱として鬼をせっせとあの世へと送り続けている。
もっとも、それでも上弦クラスならばその毒を解毒可能な為に彼女の実力は鬼殺隊最弱と見なされていたのだが、今の彼女の存在は無惨にとって非常に危険な存在だった。
何故なら、彼女が現時点で禰豆子を殺してしまう可能性のある唯一の人間だったのだから。
なので、見つけたら始末したいと、禰豆子を逃したあの時から思っていたのだが、残念なことに彼女はこのところ鬼殺の最前線には出ていない。
それもその筈、彼女は珠世と共に現在、産屋敷邸にて原作で無惨を盛大に弱体化させた対無惨用の複合薬(仮名)を開発しており、産屋敷邸に籠りきりになっていたのだ。
現時点では産屋敷邸の位置を知らない無惨には当然、手を出せよう筈もない。
「それに一番厄介なのが、禰豆子が奴の妹という点だ。あの時は存在を隠すために他の人間に預けていたようだが、1度失敗した以上、必ず手元に置こうとするだろう」
そう、禰豆子が炭治郎の妹ということは非常に厄介な事実だった。
黒死牟を撃退したり、倒す寸前まで行ったりした以上、現時点で炭治郎が鬼殺隊最強の剣士であるという点は疑いようの無い事実だ。
そして、禰豆子の兄ということは今後は彼女に張り付いて護衛するようになる可能性が高い。
いや、四六時中張り付く訳ではないのかもしれないが、それでも手元に近い位置に置くのは確かだ。
そうなると上弦を複数体投入しても禰豆子を奪取できるかどうかは分からなくなるし、時間を掛ければ掛けるほど柱だって増援にやって来る。
「そうなったら厄介だ。・・・こうなったら、私直々に出なければならぬかもな」
「・・・」
最初からそうしろ。
内心でそう思おうとした鳴女だったが、流石にそれは止めておいた。
何故なら、目の前の上司は心が読めるので内心でそう思ったことはそのまま伝わってしまう。
それに彼女も命は惜しい。
その為、彼女が出来たのは何も思わずにただ頷くことだけだった。
──だが、彼らは知らない。
既に禰豆子が殺されていたことを。
◇鬼殺隊士養成学校 校長室
鬼殺隊士養成学校。
それは炭治郎の進言によって3週間ほど前に輝哉が作り上げた鬼殺隊士候補の人間のための養成所だった。
従来のやり方ではそれぞれの育主の元に鬼殺隊士候補者を預けて鍛えた後、最終選別に送り出すという方針を立てていたのだが、近年の新人鬼殺隊士の質の低下に伴って、輝哉は炭治郎の言う通りに育主とその生徒達を一点集中させて育て上げる方針に変更したというわけだ。
そして、その校長の座には善逸と獪岳の師である元鳴柱・桑島善悟郎が就任していた。
「やれやれ。まさか、育主の質がここまで低かったとは・・・」
校長室で桑島は頭を抱えていた。
当初、この学校の校長としての誘いが来た時は脚の事もあって丁寧にお断りしようとしたのだが、他に候補者となる筈だった自分の同期の柱である元水柱・鱗滝左近次と数年前に柱を引退した元炎柱・煉獄愼寿郎は、前者については7月に狭霧山で戦死、後者についても酒に溺れて引きこもっており、とても教育の場には出せないなどと言われては流石に断りを入れる訳にもいかず、結局、この役を拝命することとなったのだ。
だが、流石に他に教員となる人材も曲がりなりにも育主なので、自分に出来ることはこうして校長の席に居座って生徒達の成長を眺めることくらいだとも思っていたのだが、そんな甘い考えは僅か1週間くらいで崩されることになった。
育主の質が思ったより低かったのだ。
勿論、全員が全員そうではなく、中には自分より教えるのに適した人材はいたが、大半があまり上手く教えられていない面々だった。
これでは最終選別に送り込んだとしても大半がすぐに喰われてしまうだろう。
そう思った時、善悟郎は思わずゾッとした考えを浮かべる。
(もしや、ここ最近は藤襲山の鬼に餌をくれてやっただけなのではないか?)
桑島は自分が最終選別を受けた頃を思い出す。
あの頃は今と違い、受けた人数の半数以上が毎年受かっており、死んだ人間は運が無かったり、実力が乏しかったのだと考えていたが、ここ近年は20人受けて数人が受かるという例が大半。
それは社会が近代化して受ける人間の質が落ちたということもあるが、もしかしたら育主も同時に質が低下してしまっているのではないかと桑島は思っていた。。
「・・・幸いだったのは、この学校の設立と同時に隊士の最終選別の見回りが行われることになったという点か。聞いたときは何を生温いことをと思っていたが、ここまで質が落ちているとなると、仕方の無いことなのかもしれんな」
桑島はそう呟きつつも、場合によっては教員の再教育を行うことを考慮しつつ、これからの方針を考えていた。