緑谷出久の限界突破(オーバードライブ) 作:Red_stone
ここに夢のワン・フォー・オール3師弟、そろい踏み。
「出久。ヒーローとしてここに来たと言うことは、分かってるな!?」
師匠はこんな危険な場所に来てしまった弟子を叱りたいが……言って聞くようなら苦労はない。
もう諦めたが、来るなら気概を見せろと発破をかけた。
「おう! 共に行くぜ、オールマイト!」
そして、発破をかけられたらどこまでも応えるのがオーバードライブ。
師匠に向かって、ついてこいと気概を吐いた。
「叱ってやらねえからこんなことになるんだろうが。……言っても聞きゃしねえよな、オメエは。後でぶん殴ってやるから、今はついてこい!」
大師匠の特権だと言わんばかりに、真っ先にグラントリノが飛び出した。
「……ココはまずい! 市民に被害が出る――だから、向こうへぶっ飛ばす! 俺と敏典で道を切り開く! やってみせろや、オーバードライブ」
そして、作戦だ。
よし来たとばかりに二人はその背を追いかける。
「君に攻撃は通させない。安心してぶっとぱせ!」
襲い来る棘を二人が破壊する。
――道ができた。
「その期待、裏切るわけにはいかねえな」
尊敬する師匠と大師匠。その二人に託されたのなら、もうやらないわけにはいかない。
暴走する意志力が個性の限界すらも突破する。
「
活力吸収も、泥酔すらも蹴り飛ばして、敵を殴り飛ばした。
腕はもうグチャグチャだ。だが、それで止まるほど光の宿痾は安くない。生きている限り、どこまでも行くのだ。
骨が粉砕骨折したが、そこはそれ。根性論で耐えればいい。
「馬鹿な。馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な――なんだそれは? それは現代病か? ヒーロー症候群か? そんな浅ましいものであるはずがない。それは……」
死んでない方がおかしいほどの重傷を抱え、まだだまだだと突撃していくその姿。それはきっと、現代病よりもずっと……もっと悼ましいものだ。
「――さあ、終わりだぜ」
「観念しな、若造」
間髪入れず、二つの拳が突き刺さった。
「……まだだ!」
だからこそ、オーバーホールもまた叫ぶのだ。
「まだだ」と。
譲れないモノがあるから立ち上がれる。痛いのも苦しいのも我慢して、前に進む。
「俺は、まだ何も成していない。……親父に、何も返せていない……!」
泣きたいほどの激情が、動けないはずの身体を突き動かすのだ。ゆえに、手段など選ばない。恰好良さなど捨てる。どれだけ泥にまみれたとしても。
「――勝つのは、俺だ」
自らを破壊、そして。
「おいおい、なんだよコリャ」
「巨大化、だがここまでのは見たことねえぞ」
ただ一言、でかい。
山のように巨大な治崎が三人のちっぽけなヒーローを見下した。全長1kmはある巨体は、ただ動くだけで街も人も破壊する。勝つために、必ず勝つために……不可能を踏破する。
ここまでの個性行使の代償は”死”それ以外にないだろう。全力よりはるか先を振り絞った。立って、しゃべれるだけでも驚愕だ。現に巨人の額に生えたオーバーホールは痩せ衰えた老人のような姿を晒している。
「」
巨人が身を震わせるように足を振った。
それは巨人にとってはアリを蹴るように気軽に振り払っただけだが、小人にとっては厄災も同じ。1tを遥かに超える重量が高速で向かってくる。
「……まずい!」
「逃げろ、小僧!」
二人が弟子を逃がそうとするほどに、それはマズイ。
「男が逃げられるかよ! 常識的に考えてェ!」
だが、そんな気遣いが通用するオーバードライブではない。骨が砕けて無くなったはずの腕で受け止める。
「気の毒になあ。死力を振り絞り、限界を超えて……それでもただ一人すら助けられない」
声が響く。
「……ッ!?」
三人が一斉に気付く。
後ろには誰かが倒れていた。巨人は最初から知っていて、軌道上に捉えていた。彼らが盾になろうがその人は死ぬ、その絶望を与えるために。
「――なら、助けるだけだろうが。……そうだろう!? オールマイト、グラントリノォ!」
「ああ! そうだったな!」
「……は。小僧が吠えてんじゃねえぞ。この程度、俺だけでも……ッ!」
支える。防ぐ。
……が、ずりずりと後ずさって行く。そもそも巨人と組み合うこと自体が間違っている。活力吸収の個性は依然健在だ。
刻一刻と力は失われて。
「……だめか」
離れて見ている誰かが呟いた。
「まだだ!」
そう。まだだ。
紡いできた絆は裏切らない。誰かに感銘を受けて、自分もそうなりたいと思った。
ならば、魅せてくれた”誰か”に恩返しがしたい、人間とはそういうものだから。
「――その未来は見えていた!」
一人の影が倒れていた人を救った。
卓越した身のこなしで安全地帯まで連れていく。その彼の名をオールマイトは知っている。
「サー・ナイトアイ……!」
感動で息が詰まりそうだ。
喧嘩別れしていた。彼には負い目があった。それでも、助けてくれると言うのなら。
「負けるわけにはいかないな!」
「いや、無駄だ。全てが無駄だよ、オールマイト。昔はお前が俺たちの絶望だった。だが、今は……こんなに小さい」
巨人が蹴り飛ばした。
「「「ぐああああああ!」」」
吹き飛ばされ、瓦礫を粉砕してビルの残骸に叩きつけられる。
もはや、指一本動かす力すら残っていない。はやく、病院に連れて行かなければ命が失われてしまう。
「……潰れろ」
足を持ち上げ、降ろす。
もうそれだけで大災害だ。比喩ではない、その質量が振り下ろされれば大地がひっくり返る。
震度8に匹敵する地震が起きるのだ。それが起きれば、全国でどれだけの被害者が出るか……計算したくもない。
エネルギーとしては桁違いに低いし、マグニチュードで言えば2ですらない。だが、地震は大地と言う殻のはるか下で起きる。地表で起きれば、それこそ地球の皮膚がひっくり返るのだ。
そう、倒れ伏した三人に確実な死が訪れるのだ。日本という大地の半壊とともに。
「負けるな! オールマイト!」
「ああ、オールマイトは負けない。立ち上がる姿を予知せずとも、私は知っているのだから……!」
その刹那、声援が届く。ミリオ、そしてナイトアイ。
「がんばって、緑谷君……!」
「負けるな、オーバードライブ!」
友の声、麗日と切島の。テレビ越しの声が、奇跡的に。
「負けんじゃねえよ、緑谷。俺に勝ったんだろうが」
轟。
「信じている、信じさせてくれ。君を! ヒーロー殺しすら上回った君の信念を」
飯田。声が、届く。
「「「おおおおおおおお!」」」
――ならば、ヒーローが立ち上がらないはずがない。
3人で、受け止めた。
『なあ、なぜそこまで頑張るんだ? もういいだろう。富も、名声も思いのままじゃないか。そんなに辛い思いをすることはない。なあ、諦めようと思ったことはないのか』
それはただの疑問。
この巨人の足を支えることは国を支えることと同義。では、オールマイトは常にその重圧を背負ってきたと言える。
それを、やめたいと思ったことはないのか。
「「――ないね」」
オールマイトとオーバードライブの声が唱和する。
「平和の象徴が必要なんだ」
「誰かの明日を守るのだ」
「「――諦めたことなど、一度もない」」
静かな声が光を灯す。
どこまでも進むその姿はまるで光の亡者。光に目を焼かれ、それしか見えなくなってしまった人間の末路。
どこまでも進んでいく正論の怪物だ。
「ああ、諦めたことならあるぜ。こいつらを止めるとか、ぜってえ無理だってよ」
グラントリノが苦笑する。
「アレが住宅街に落ちれば被害は甚大だ、分かっているな!? オールマイト、オーバードライブ」
グラントリノは二人とは違う。まっとうな価値観を持っている。
だが、こいつならばと思ってしまった。
そして、託すに足るまで鍛えてやった。ならば、信じられないはずはない。全力でもって、後に託す。
「言われるまでもなく」
「分かった!」
「「一撃で完全破壊する!!」」
決意が交錯した。
「おし、よく言うた! 俺が0.1秒稼いでやる。……だから!」
個性『ジェット』最大出力。
その質力をただの一瞬、だが永遠にも思える引き延ばされた時間の中でそれに耐える。3人でやっと持ち上げたその怪物を支えてみせた。
「合わせろ、オールマイト」
「ああ、行くぞオーバードライブ」
十分に拳に力を乗せる時間は貰った。
信じる師が力を貸してくれている。周りには応援の声が聞こえる。
ならば、あとは言うまでもなく。
「「――行くぞ」」
応えないわけにはいかないのだ。
USJで見せた170%、先の200%……限界を易々と突破する。過熱する意志力が暴走して、物理法則を殴り飛ばす。
「「――ワン・フォー・オール300%」」
前人未踏の領域を軽々と踏み越えた。
加熱する意志が個性を進化させる。どこまでも、強く強く……強大になっていく。
「「――『UNITED STATES OF SMASH』」」
破壊し、三人で拳を突きあげた。
多分これがオールフォーワンの怖さですね。無限にバフとデバフを盛ると言う鬼畜仕様。まあ、訓練する時間があるなら組み合わせで一撃の威力向上を狙ってもいいかもしれませんが。
個人的には人を殺すのに多彩な能力とか必要ないと思っています。それよりSTRとSPDを盛るか、相手の能力値を下げるのが一番。
そして、小癪に数字を弄る敵を根性論で打ち取る3師弟。例えるなら自分の駒を全て飛車・角にして相手の駒を歩兵に変える敵。そして将棋盤を殴るラスボス系主人公。