緑谷出久の限界突破(オーバードライブ)   作:Red_stone

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第25話 敵連合、開闢行動隊

 

 そして、光が輝くときは闇もまた蠢いている。ヒーローがどれだけ心を配ろうとも、敵はその隙を虎視眈々と狙い続けるものだ。

 影が上から合宿所を見下ろしている。10名だ。

 

「疼く……疼くぞ……早く行こうぜ……!」

 

「まだ尚早、それに派手なことはしなくていいって言ってなかった?」

 

「ああ、急にボス面始めやがってな。死柄木のヤロウ」

 

 そいつらにまとまりはない。だが……瞳に映る目は凶悪なまでの光を宿している。USJのときの雑魚どもは違う剣呑な視線だ。

 これは襲撃である。

 ヴィラン連合がついに動いた。二重三重に隠したはずの合宿所が、あっさりと敵にばれていた。

 

 これは、生徒たちにとっては教師たちが与える試練とは別次元の苦難だ。なぜなら、守ることと倒すことはまったく別の戦いだから。

 殺すことを知っている犯罪者は”強い”、ただの学生では太刀打ちできない。対抗できるだけの芽が育っている者も居るが……

 

 確かにこの蠢く闇たちはオーバードライブに一蹴されるだけの実力しかない。だが、襲撃側なら話が変わる。

 強力なだけの奴など、囮を貼り付かせて行動を縛ればいいだけだ。何人か殺すだけで雄英の権威は地に落ちる。つまり、絶対に勝てないはずの相手に戦略的な勝利を得られる。ただ強いだけでは無敵足りえないという証明だ。

 

「今回はあくまで狼煙だ。……虚ろに塗れた英雄たちが地に堕ちる。その輝かしい未来の為のな」

 

 相手のチート、そして自らの勝利条件を知っているからこそ余裕がある。それは無軌道な暴走ではなく、根拠のある余裕だった。

 確かに”暴力では勝てない”だろう。だから、謀略で潰すまでの話だった。

 もはや敵連合は見境なく暴れるだけのチンピラではない。精鋭が、しかるべき策をもって動き出す。

 

「さァ始まりだ、地に堕とせ。敵連合”開闢行動隊”」

 

 邪悪な(はかりごと)が幕を開ける。

 そして、原作にはない影が”二つ”動いている。生徒どころか教師ですら簡単に殺せるほどの”殲滅兵器”。

 

「さァ、試させてもらおうか。かの英雄大戦(ギガントマキア)に列する資格があるかどうか。その輝きを見せてくれ……何人生き残ってくれるだろうか」

 

「……そのような醜悪な姿に産まれ落ちてしまったこと、哀れでならぬ。直視に堪えん。ゆえ、奈落へ追放しよう。――皆殺しだ」

 

 彼らこそ、サイバネティクス理論を脳無に応用発展した、最上級(ハイエンド)を超える惑星級(プラネテス)

 脳無を戦術兵器とするなら、こちらは戦略兵器だ。

 

 ――地獄が幕開ける。

 

 

 

 プラネテスが猛威を振るう。

 

「よお、ヒーローども。隠れていたってことは、お前らが本命と言うことでいいんだな?」

 

 その片割れ、緋鬼だ。金属で構成されたとおぼしきその体には何の攻撃も通用するとは思えない。

 堅牢な防御の上、鋭さと重さがそのまま攻撃力だ。

 これにオールマイト並のパワーが加われば、それだけで脅威である。

 

「くだらない。私にとっては貴様らも卵も変わらない。……哀れなほどに弱く、脆く、そして醜い――死ぬがいい、それがせめてもの情けと知れ」

 

 そして、もう片方の蒼鬼。こちらは女性型だ、すらりとしたボディに胸の膨らみ……仮面の下には果たして素顔があるのかどうか。

 だが、こちらもメタリックな装甲に覆われた肢体は力強い。見るからに黒霧と同類の特殊能力に秀でたタイプだが、接近すれば何とかなるような甘さはない。

 

「てめえら、雄英に手を出そうとはいい度胸だ。平和の象徴に手を出すその意味、分かってんだろうな? 人形ども」

 

 そして、相手。両手にガトリングガンを構えたその男は我当(がとう) 林俱(りんぐ)。イレイザーヘッドと同類のアングラヒーローだ。

 その彼には笑みが浮かんでいる。

 異なる理由でアングラに潜んでいる。わざわざ個性をバラす必要性が理解できないからアングラヒーローをやっている彼と違い、こちらはもはやヴィラン的な理由だ。

 ――誰はばかることなく暴力を振るいたい。そのガトリングガンを撃ち放ちたい、ただそれだけ。

 

 つまり、ヴィラン相手なら暴力を振るえるからヒーローをやっている。個性を使って暴れたいと思えば、それ以外に方法がない。もちろん犯罪者になれば良いのだが、せっかくなら合法にやりたいだろう。

 

「……ハン。つまらねえな、その笑みは見たことがあるぜ。お前ほど詰まらねえ男もいねえ。信念なき男に、この先の神話を見る資格はねえよ」

「は。大方、我らのことを動く死体としか見ていないのだろうよ。下らんことだ。まあ、我らプラネテス以外の木偶人形しか見ていないのだから仕方あるまい。……だが、あんな玩具と同列に見たこと、その罪は償ってもらうぞ」

 

 ――そして、今回のヒーローの敵は”殺せる”敵だ。

 警察は脳無を人間として扱わないことを決めた。人間であったかもしれないが、扱いとしては生体モーターでも埋め込んだ死体人形だ。

 動かなくなるまで破壊しても、それは殺したことにはならない。なぜなら、生きていないから。

 そうやって殺しの免罪符でも用意しないと、オールマイトに迫った敵をヒーローが倒すのは不可能という判断だ。

 

「ほざけ! 脳無である以上は全殺しなんだよ! その奇麗な顔をバラバラにしてやるぜ! ヒャッハァ―――」

 

 アングラであることにはそれなりの理由がある。

 そして、危険なヴィランには危険なヒーローを当てる。根津校長の冴えたやり方だった。そうしなければ、勝てないのだから。

 個性『ガトリング』がうなりを上げる。

 無数の銃弾が宙を舞う。旧世界の破壊の権化が幕を開ける。今のヴィラン連合くらいなら状況次第で彼一人でも倒せるほどの戦力がある。

 

「――下らん。信念なき力に意味はない」

 

 緋鬼の周りに紅のオーラが立ち上る。

 それは、物質的な作用すらもたらす。そう、これからが彼の本当の個性。色々混ぜてステータスを上げているものの、これこそが頼みとする真の力。

 『崩壊』。ともすれば首魁の上位互換とさえ呼べてしまう力が銃弾をかき消してしまう。オーラに触れたもの全てが塵と化すのだ。

 

「――醜いぞ。疾く消えるがいい」

 

 そして、蒼鬼。氷のカーテンが攻撃の全てを弾く『氷結』だ。

 それは轟の上位互換。何もかもが、”上”だ。

 氷壁の展開速度、強度、そして、彼以上の大雑把な力の振るい方に至るまで……全てが格上。

 

「クソクソクソが! その顔を引き裂かせろ! ズタズタになりやがれ! なんで、俺に気持ちよくやらせねえんだよ!」

 

 どちらがヴィランかわからない言葉。だが、それだけに強力であったはずが……

 このハイエンドすら凌駕するプラネテスには何も通用しなかった。

 

「ナラバ、サラナル戦火ヲ投入スルマデ」

 

 上から響く声。

 降り注ぐミサイル。爆炎がプラネテスを飲み込んだ。

 彼の姿はまるで竜の様。禍々しい羽根をはばたかせ、宙に舞う。そして、鋼鉄のカギ爪に隠されたミサイルの発射口を開くのだ。

 こちらも、あまりにも強すぎてアングラでしか生きられないヒーロー。旧世界の破壊を体現する美沙(みさ) 射琉(いる)

 

「攻撃ガ通用シナイ。パターン解析ヲ開始シマス」

 

「ヒャッハァ! やれやれやれ! やっちまえ! ぶっ壊れろォ!」

 

 無数の銃弾、そしてミサイルが叩き込まれる。

 およそ人型に対して行うべきでない破壊の坩堝をひっくり返した。本物の鋼さえ、この紅蓮の前では一瞬たりとて無事ではいられない。

 

「んで、俺の個性の隙間でも見つけられたかい?」

 

 無邪気に手を振る緋鬼。馬鹿にしているように見える。

 そう、この態度からはヒーロー殺しと似たような部分さえ見える。信念に重きを置き、命を軽視する姿勢だ。

 

「哀れだが、少し笑えるな。ああ、その無駄なあがきは可愛らしいよ。ならば、人の子らよ……氷に閉ざされ永久(とこしえ)に眠るがいい」

 

 動かなかった蒼鬼がついに動き出す。

 差し伸べるように、そっと手を。それだけで全てが凍り始める。そう、全てが。彼女の半径10mが凍り付き、なおもその領域は広がっていく。

 もちろん空中も例外ではない。

 

「異常ナ出力ヲ確認」

 

「馬鹿な……! なんで、何も通じねえんだよ!」

 

 彼ら二人は全力で攻撃する。

 熱暴走(オーバーロード)すら辞さない攻撃は、気温の上昇すらも狙っている。マズルフラッシュと爆炎は、言うまでもなく気温を上げているはずだ。

 なのに。

 

「霜ヲ確認。体温低下ヲ確認。活動限界マデ後、100秒」

 

「くそが! 何も手がねえってのかよ!?」

 

 吐いた息が白くなる。寝れば凍死は当たり前、気を抜けば手足が凍って壊死するほどにまで気温が下がる。

 もはや狂気の領域にまで達した個性出力が全てを蹂躙する。

 

「おやすみ、醜い者ども」

「クソが!」 「打ツ手、ナシ」

 

 嘆いた、その時。

 

「――」

 

 最期の一撃が完成する。スナイパーの一撃だ。

 そう、それこそが奥の手。隠していた三人目のため、絶望して見せて油断を誘った。

 更には蒼鬼が殺害を期したその瞬間を狙い澄ました。命を奪う時、その一瞬だけは警戒を忘れるから。

 

「……貴様。よくも、この私に汚れを付けてくれたなァ!」

 

 怒鳴った。

 そう、完全に隙をついた一撃だ。ボクシングの逆転一発KO、サッカーの逆転シュート。意識の間隙を突いた一撃は強力だ。

 ただ、強力な一撃でも傷を付けるには至らないという悲しい話だった。

 旧時代の戦争の権化、最後の一つ。スナイパーライフルと同等の個性を持った砂那(すな) 伊庭(いば)であっても。

 

「まあ、落ち着けや。氷河姫(ピリオド)。やるもんじゃねえか、向こうさんも」

「黙っていろ、私が奴を殺す。邪魔するなら、貴様から殺してくれるぞ殺塵鬼(カーネイジ)

 

 一触即発の空気がただよう。

 

「やりたきゃ、やりゃあいいさ。ただ、あまりよそ見はするもんじゃねえと教えたかったのさ。……こんなふうに」

 

 カーネイジと呼ばれた脳無の手には二つの生首。

 氷河姫が目を離した瞬間にそいつらの元まで行ってきて首をねじ切った。

 抵抗すらも許さずに殺してのけた殺人技法、ステータス頼りだけでは決してできないことだ。

 

「……チ。だが、こいつは私がもらう!」

 

 視線を戻すも、スナイパーはとっくに逃げている。

 攻撃したら居場所を変えるなど常識だ。延々と留まって逆に狙い撃ちにされる素人ではない。

 

「死ねえ!」

 

 罵声とともに個性が解放される。

 氷の大砲が打ち込まれる。もちろん、当たるわけがない。当て推量であたるような奇跡などそうはない。

 だが……

 

 氷の華が咲く。満開の花弁が手を広げ、全てを氷のうちに閉ざすのだ。

 

「……ッ!?」

 

 悲鳴を上げる暇もなかった。

 十分攻撃範囲から逃げたはずなのに、氷河に飲み込まれた。一瞬で体温を奪われ、氷像と化した。

 彼女に轟のような優しさはない。表面だけを凍らせるような半端はない。

 幸いだったのは急激な気温の低下により眠るように死ねたと言うことだろう。

 

 





 ヴェンデッタから跳ねのいい踏み台を輸入しました。小ボスとしてはすごく良いキャラをしている二人です。
 跳ね台の踏み台になったのはオリジナルのキャラです。コンセプトは戦争、跳ね台の踏み台を他人様のキャラでやるのもどうかと思ったので。
 殺傷力が高すぎてちゃんとしたヒーローになれなかった対脳無用のアングラヒーローの方々でした。原作でも普通に殺す気で攻撃していたようなので、何かしらの言い訳を用意して殺して良いと言うことにしてあるはずです。

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