緑谷出久の限界突破(オーバードライブ)   作:Red_stone

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第4話 雄英入学

 

 そして、出久はもちろん合格した。

 希望にあふれた高校生活へ向けて、教室の扉を開けた。

 

「――あ」

 

 ともに0Pロボットの足を持ち上げた仲の彼が声をかける。

 

「やあ、あの時の君。君なら試験を合格できたと信じていた! 俺の名は飯田天哉。君の名前を教えてほしい!」

「俺は緑谷出久だ。よろしくな、天哉」

 

 握手した。

 

「私も私も! 私は麗日お茶子。よろしくね、緑谷君に飯田君」

 

 その手に重ねる手が一つあった。

 

「お、嬢ちゃんか。あの時は助けるつもりが逆に助けられちまったな」 

「ううん、助けてもらわないとどうしようもなかったから」

 

 和気あいあいとした雰囲気の中、唐突に大きな舌打ちが慣らされ場が凍った。爆豪がギロリと殺気を込めた目で緑谷を睨みつけたのだ。

 

「よ、かっちゃん!」

 

 だが、出久は気にせず片手を上げて声をかけた。

 

「うるっせえんだよ。話しかけてくんな、このクソナードが!」

「君! 雄英生たるもの、そんな態度は……」

 

 飯田が律儀に反応する。

 

「やめとけ、天哉。かっちゃんは聞きゃしねえよ。それに、もうすぐ予鈴だ。席に着いたほうがいい」

「――お友達ごっこがしたいなら他所へ行け」

 

 動く寝袋。

 そこから人が生えている。ゼリー飲料を取り出し、一息に飲み干した。

 

「はい。静かになるまで8秒かかりました」

 

 その言葉を皮切りに、入学式を省略しての個性把握テストが始まった。

 いまだワンフォーオールを扱いきれていない出久だが、それ以上に個性の扱いに慣れていない者たちに負けてはいられない。

 一位を取って爆豪をキレさせた。

 

 最下位は除籍する、という合理的虚偽。

 イレイザーヘッドの嘘と言うのが”一人”という部分にかかっていたのは気付いていたが何も言わなかった。

 実際に20人でも10人でもなく0人だったから、言う必要もないと考えた。

 

 

 そして、次の日はオールマイトの課す戦闘訓練だ。その前に皆にコスチュームが配られる。

 ……出久が選択したのは黒尽くめだった。原作オーバードライブが着用していた黒コート、黒スーツに黒ハットだ。

 

 初戦がスタートする。それはもっとも波乱に満ちた戦いだった。

 爆豪&飯田VS出久&麗日。教室でもっとも悪目立ちしていた4人での戦いが幕を開ける。

 

「建物の見取り図……覚えないとねコレ」

「もう覚えた。麗日は作戦あるか?」

 

「え、早いね。えと、作戦と言われてもちょっと」

「じゃ、覚えることに集中してくれ。こう言う建物のパターンは決まってるから、すぐに覚えられるようになる」

 

「そんなことまで考えてるの?」

「師匠がいいんでね。……さて、俺の我儘に従ってくれるか?」

 

「もちろん! 私たちの仲だもんね」

「じゃあ、行くぜ。――正面突破だ」

 

 そして、戦いがスタートする。

 玄関から突入、一気に最上階を目指す。

 

「――」

 

 爆豪が死角から現れる。

 そのまま爆破、気付いていないなら一瞬でKOもありえる一撃だ。自信満々な態度は自意識過剰ではない、学生レベルでは慢心することが許されるだけの実力はもっている。

 

「分かりやすいんだよ。奇襲をしたいんなら、靴に毛皮でも張っておくことだな。……靴音が聞こえてたぜ!」

 

 出久が頭を下げて回避、みぞおちに拳を叩き込んだ。

 奇襲はメリットばかりではない、こうして防がれたら窮地に陥る。

 そもそもオールマイトの個性を受け継ぎ、指導を受けた彼はすでに学生レベルを超えている。生半可な奇襲では逆襲を喰らうのだ……このように。

 

「っが。てめえ、デク――」

 

 吹っ飛ぶ。ワンフォーオールなしとはいえ、中々のダメージだ。

 すぐには立てない。

 

「さあ、行け麗日! ヴィランを倒すぞ!」

「了解、デク君も気を付けて!」

 

 走っていく。

 これが出久の考え。何も考えていない二正面作戦だ。一対一がやりたかっただけで、作戦でも何でもなかった。

 

「さあ、戦おうじゃねえかヴィラン。こうして走ってりゃ、突っかかってくると思ってたぜえ」

 

 もっとも、一対一にするための作戦くらいは考えている。

 爆豪の性格は知っていたから、玄関から入る程度の小細工で分断できた。まあ、つまりは挑発でおびき出したというわけだ。

 

「てめえの掌の上ってかァ。……ムカつくぜ」

「さあ、やろうぜかっちゃん! お前さんとは一回、本気で喧嘩してみてえと思ってた!」

 

「は、身の程を知りやがれ!」

 

 白熱の戦いが幕を開ける。

 驚くべきは爆豪の反射神経。ワンフォーオールを使っていないとはいえ、出久の攻撃を”見て”かわす。

 もっとも、それを承知の上でさらに攻撃を重ねていく出久も出久だ。

 殴られて、ダメージがあってもまったく堪えることはない。

 

 素人が見れば爆豪の勝ちだなどと言うだろうが、殴り合いは互角だった。

 もちろん、爆豪は爆破も併用したうえで。

 

「――だがな、クソナード。互角と思ってんだろうがそれは違ェ! こっちはスロースターターだ、しのぐだけじゃてめぇの負けだ」

「……なら、それを超えるまで」

 

 爆破の威力が上がっていく。

 身体が温まってきたのか、動きのキレも良くなる。だが――

 

「まだだ」

 

 それ以上に、出久の慣れが早い。

 もはや余波など気にしない。多少の火傷など意味がない。痛みを和らげるすべなどなく、ただ気合と根性だけで進んでいく。

 

「テメエ、なぜ諦めない?」

 

 恐ろしいものを感じて、爆豪は跳び退った。

 なぜなら、これは練習だ。負けたところで失うものなどないし、ここまでやれば忌々しいことにむしろ褒められるだろう。

 内心では認めたくないが……実力差がある中でのここまで足止めされたとしては。

 

「もう十分だろうが」

 

 だから、もう痛い思いをする必要はない。

 皮がべろべろに剥がれて、赤い肉がのぞいている。その苦痛は想像するしかないが、この世で最も苦しい死に方は焼死だ。

 腕の二本とはいえ、そうなっている。

 

「……あ? なんで諦めんだよ。俺はまだ負けちゃいねえぞ」

 

 だというのに、出久は立つ。

 そしてオールマイトもまた、試験の中断を求める生徒の声を無視して続けさせる。

 

「その腕、二度と使い物にならなくなるぞ!」

「知るかよ。(おとこ)の戦いだ! ぐだぐだ言ってんじゃねえ!」

 

 出久が前へ出る。

 爆豪は一歩後ろに下がったことを自覚して。

 

「ふざけんじゃねえ! 死にたがり野郎が! 死にたいなら、思い切りぶっ殺してやらあ!」

 

 ゆえの全力。

 出久は常識では止まらないことを理解した。KOなど馬鹿馬鹿しい、なぜならコイツは身体の3割ほどを火傷している。

 重傷だ、それでなお止まらないなら命を絶つ以外に止める手段などありはしない。

 

「いいぜ、来いよ! お前の全力、見せてみな。……こっちも全力で迎え撃ってやる」

「ほざけェ!」

 

 爆豪の全力。破滅的な力が吹き荒れた。

 ビルを破壊し、傾く――

 

「……チ」

 

 爆豪は目ざとく強度の高い柱の傍に退避した。

 この程度なら倒壊はしない。核爆弾は無事だと思い直して。

 

「何を終わった気でいやがる?」

 

 アッパーカットに頭を揺さぶられた。

 出久はこの危険な状況下において、保身など微塵も考えていない。見れば腕には破片が刺さっている。

 危険を承知で突っ込んでくるだなんてリスクしかない選択、爆豪では考え付かなかった。

 

「……デクぅ!?」

「あばよ。かっちゃん」

 

 人体の急所、正中線への5連撃が過たずに意識を刈り取った。

 手加減をミスれば死にかねない一撃に爆豪は耐えられない。そもそも出久のように根性で耐えるなんて話は夢物語だ、人間には痛みの許容量というものがあるのだから。

 

 

 

 そして、時は少し巻き戻る。

 麗日の試合。

 

「やっぱり、核爆弾の前で守ってたね。飯田君」

「来たか、麗日君。……覚悟することだ。今の俺は――至極、悪いぞぉぉ」

 

 迫真の演技力を見せる飯田。

 そして。

 

「――そして、君対策でこのフロアのものは全て片付けておいたぞ!」

 

 相手への対策も怠らない。

 麗日の個性『無重力』は物に作用する。そして、物に作用するのなら、作用する物をなくせば脅威にならない。明確な弱点の一つだ。

 

「ぬかったな、ヒーロー。フハハハハハ!」

「凄いね。ちゃんと、考えてる。それに、あなたの個性は物がないほうが都合がいい……でしょ? 少ししか見れなかったけど、知っとるよ」

 

「その通り。俺の個性は『エンジン』。加速する個性……君に成す術はない。運がなかったと諦めるのだな!」

「ううん、諦めんよ。あの時、緑谷君と一緒に強敵に立ち向かったあなたなら分かるでしょ?」

 

「ああ、そうだったな。……ならば、手加減は失礼に当たるな! 全力で、君を叩きつぶそう! ヴィランとして!」

「なら、私はヒーローとして、あなたを倒す」

 

「「行くぞ!」」

 

 交錯する拳と拳。

 とはいえ、見ごたえから言えば下の戦いには何段も劣る。

 

 心の変革は一瞬だが、身体は血と肉でできている。出久の光に感化されたとして、身体は一晩では作れない。戦闘技術は一朝一夕では身につかない。

 麗日の拳は明らかに素人のそれだった。

 

 けれど、飯田。

 彼はヒーローの弟だけあって蹴り方は心得ている。だが、それで長年の倫理の鎖は外れない。

 無意識で女は蹴れないと、手加減をしてしまう。

 

 そして、奇跡的な均衡はすぐに崩れた。

 

 ――揺れる。

 建物自体が崩れかけ、傾くのだ。

 

「っこれだ!」

 

 その好機を麗日は見逃さない。

 折れる柱を掴む。完全には倒壊しないが、そこはへし折った。

 

「これは、爆豪君か? だが……っぐ! ぬかった! これでは」

 

 核爆弾を守らなくては。

 守るべきものがあるから、行動が一手遅れて手遅れになる。ヴィラン側がそうなるとは皮肉なことだが。

 

「これが私の全力!……即興必殺『彗星ホームランバー』!」

 

 投げた。

 これはさすがに守り切れない。というか、まともにぶち当たれば死にかねない。

 

「それはホームランではなくないか!?」

 

 変な突っ込みだけ入れてその場から逃れた。彼も経験者、さすがにまともに当たる前にホームランの軌道から逃げ出した。

 

「回収‼」

「……おのれェ!」

 

 とはいえ爆弾の守りをはがされたのは違いなく、ヒーローチームの勝利になった。そして、総評の時間が来る。

 

「今戦のベストは飯田少年!」

 

 オールマイトが言う。飯田は驚いた。

 

「何故だろうな? わかる人!」

 

 八百万が答えた。状況設定に対応できていたこと。そして、最後の攻撃が乱暴すぎたこと。それが要因。

 出久のアレも、何も考えずに正面から行ったようにしか見えなかった。

 

「……いや、待ってくれ。別にヒーローチームは核を壊しても良くないか?」

 

 出久が反論した。

 

「どうしてです? 一歩間違えば核爆弾が炸裂していたのですよ」

「いや、核爆弾を止めたいだけならぶん殴ればいいだけじゃねえか? そんで壊れてオシャカだろ」

 

「……なんて乱暴な! というか、それこそ街の危機ですわ! 爆発しますわよ!」

「核爆弾は精密機械だろ。殴ったくらいで炸裂したら、前世代の科学者たちは苦労してねえだろうよ。ま、壊れたら汚染が広がるからそういう意味ではマズイだろうが……そっちの用途はダーティボムの方だから、情報収集の段階で間違ってたことになるな」

 

 つまりは、敵の持つ秘密兵器など破壊していいだろという判断。

 例えばプラスチック爆弾なんかは燃やそうが、衝撃を与えようが、食べようが――炸裂しない。

 核爆弾はそれ以上だ、そもそもヴィランが奪ったところで1日毎に要求される整備などできないからガラクタと化してもおかしくはない。

 もちろん、爆発しなくても内容物は劇毒どころでは済まないのだが、そこはそれ。一応避難は完了していると言う前提もある。

 

「え? いや、確かにそうかもしれませんけど……え?」

 

 とはいえ、破壊と簡単に思いきれる方がおかしい。

 なるべく壊さずに、はヒーローとしての基本原則だ。というか、奪ったモノなら元の持ち主もいる。

 核爆弾なら……壊してもいいは流石に飛躍しすぎだ。敵に使われるなら破壊する、それは軍人の領域である。

 

「ストップ、緑谷少年。ヴィランの目的が分かってるからって、壊されちゃマズイぜ。確かにちゃんとした兵器は燃やしたって暴発しないけど、粗悪品が使われる場合だってあるんだからさ」

「なるほど、確かに。納得した」

 

 それからのバトルは特に原作と乖離することなく進んだ。

 そして、委員長は出久を経て飯田へと。マスコミの侵入事件で彼は評価を得た。

 

 




 と、いうわけで核爆弾って設定おかしくね? という話でした。
 まあ、前世代の御伽噺的な扱いになっていても世界観的にはおかしいところなどありませんが。オールマイトもアメリカで活動していた時期がありましたし。
 軍人思考なら使われる前に破壊は考えるだろうな、と。ヒーロー的にアリかは議論が分かれるところでしょうが。

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