緑谷出久の限界突破(オーバードライブ)   作:Red_stone

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第50話 異能解放戦線

 

 そして、時が経つ。雄英はプラネテスによって襲撃され、混乱状態にある。準備するなら今の内だ。

 力を蓄えなければオールマイトに蹂躙され、フルメタルギガースに慈悲もなく草苅されるのみ。

 ゆえに強くなった。敵らしく、改造で。脳無の戦闘技術を生きたまま得る。ようは生きたままプラネテスとなったオーバードライブと同じことだ。

 足りない戦闘経験も補った。

 

 ギガントマキアは44時間と44分の間、一切休むことなく攻撃を続け、その後3時間の睡眠をとると再び攻撃を始める。戦闘時は身体が大きくなり、探知能力すら発揮した。本人曰く耳や鼻がいいらしい。

 それこそ、改造人間の強さを天然で発揮しているといっていい。基本的に改造の目的は増設ではなく拡張だ。腕を4本にしたところで、腕が二本しかない人間では扱いきれないのだから。

 ゆえに腕を増やすのではなく、握力を増加させる。筋力を増やす。人間の身体で出来ることを誰よりも強力に――それが基本だ。

 

 だが、死柄木は個性で限界を突破する。

 異能は使うだけでは意味がないが、実戦経験を重ね使いこなすようになれば、ただ”身体能力が高い”だけの野獣など簡単にしつけられる。

 どれだけ柔軟をしたところで、伸びる腕の自在さには敵わない。

 敵を一瞬で握りつぶす握力があろうと、その五指が触れた瞬間に崩壊させられては力比べにもなりはしない。

 ならばとスピードでどうにかしようとしても……あのオールフォーワンが感知系の個性を愛弟子に与えないわけがない。瞬発力を駆使して視界から消えることに意味はないのだ。

 こうして、死柄木はギガントマキアを腕力で服従させた。

 

 今は荼毘とスピナーと彼を除いた面々が必死に食らいついて戦闘経験を積んでいる。

 

 まあ、殺されないように必死に逃げ回っているの間違いかもしれないが。しかし、マグネが役に立っている。

 人間に磁力を付加する彼女の個性は悪あがきには最適だった。

 こうやって実戦経験を確保しなければ、オーバードライブを相手にした時には人質にでもなるのが精々だ。もう見捨てられない今、助けようとするのはただの隙だ。

 

 ――そして、義欄からの電話がかかってくる。

 

「てめぇ、なんでMrコンプレスの電話に出ねえ! 最低だな、てめェ!」

「ああ、それは私達のせいだ彼は悪くない。敵名トゥワイス、分倍河原 仁くんだね?」

 

 不吉な声が響いた。ボイチェンだ、無駄に人の恐怖心を煽ってくる使用になっている。

 

「――誰だ?」

 

 聞いている彼は背筋が寒くなる。ただでさえ人一倍仲間思いで義欄のことを心配しているのに。

 

「今、ニュース等チェックできる状況かい? すぐに見てほしい!」

 

 Mrコンプレスがスマホを出す。

 ニュースを見ると、指が数々の場所から発見されたと知る。……それは、敵連合が暴れまわった場所だ。

 

「初めまして。敵連合!」

 

 煽るように、電話の先の彼は言う。

 

「――異能解放軍、最高指導者『リ・デストロ』だ」

「解放軍かよ。レトロブームでも来てんのか? あんまり流行りに流されんなよ」

 

 死柄木は苦い顔。トゥワイスほどでなくとも、彼も心配はしている。殺されました、ハイ終わりでは済まさない。

 (ヴィラン)でも仲間には優しい。

 

「ハッハッハ、押さえてるね! だが違うよ流行りを作った側だ!」

「楽しそうだな、義欄はどうした!? 目的は何だ!? あいつはとてもいい奴なんだ!」

 

 トゥワイスが焦っている。

 

「彼はここに居るよ、もちろん生きて。目的は異能の開放、人が人らしく能力を100%発揮できる世の中。既存の枠を壊し再建することだ」

「ブローカーを開放して掛け直せ、今は忙しい。用事が済んだら聞いてやるよ革命サークル」

 

「ならばブレイクタイムがてら聞いてくれ。まず彼は開放しない、一応人質さ。我々解放戦士たちは来る日に向け準備を整えてきた! 何年もかけて! 耐えて耐えて備えてきた! 革命サークル!? 潜伏解放戦士11万6516人、すでに決起の準備はできている。自虐ジョークは好きじゃないな敵連合!」

 

 はったりだろ、とスピナーが呟く。

 

「新潟か、ずいぶん山奥に居るね」

 

 居場所がバレている。少なくとも――解放戦線は何も力を持たないわけではない。

 警察にすら居場所がばれていないのに、こいつはあっさりと看破して見せた。依然、敵連合はヒーローの目の敵であるのに逃げ続けているのは伊達ではなかったはずなのに。

 

「――ち」

 

 トゥワイスがスマホを投げる。だが、生来優しい彼のこと。義欄のために破壊まではできなかった。

 

「もう遅い! 衛星カメラで君たちをロックした。どこに行こうと居場所は筒抜け! 悪名高き敵連合!! 通報すればヒーローが総力を挙げて君らを包囲する!」

 

 スマホの中から声が続く。

 

「予告有とは優しいね! どうしたいんだ、お前ら」

 

 茶々を入れるが、電話の先の興奮した声は止まらない。

 

「解放の先導者はデストロでなければならない。君たちは名を上げすぎた。我々の手で潰し解放軍再臨の狼煙とする」

 

「――落とした指はその宣誓、まどろっこしい駆け引きなど必要ない。戦おう、異能を開放して。これからすぐ愛知の泥花市へ来るといい」

 

「来れば義欄は解放しよう‼ そして選ぶといい。私たちと戦って潰えるか。ヒーローに捕まり潰えるか! 死柄木弔!」

 

 電話が切れた。

 

「……」

 

 死柄木がスマホを踏みにじる。Mrコンプレスが「俺のスマホぉ!」と嘆くが気にしない。

 

「行くぞ、テメエら。蹂躙だ」

 

 死柄木がさっそうと足を踏み出す。

 

「応よ! 助けに行こうぜ!」

 

 トゥワイスが続く。

 

「ちょっと待って。もう殺されてるかも。言ってたこと全部嘘かも」

 

 トガが問う。彼女の戦闘能力は今や低い方だ。不安があるのも仕方がない。

 

「無策で突っ込めってかよ、リーダー」

 

 Mrコンプレスの両腕は健在、だが逆にトガともども改造手術を受けていないということだ。それで、まあ――それでも市民全てが敵という多勢に無勢に対抗できるかどうかと言えば無理だ。

 

「……よお、ドクター。聞いてたんだろ?」

 

 だが、死柄木は弱いメンバーの不安をシカトしてドクターに話しかける。

 

「お前たちのラジオが最近のマイブームじゃわい。じゃが、脳無は出せんぞ。雑魚なら行けなくもないが、無意味じゃろうな」

「いいよ、そんなこと。むしろ、これからもっと忙しくしてもらうからさ」

 

「お?」

「奴らを虐殺して脳無に作り変える。潜伏解放戦士11万? そんなものではオールマイトにも、オーバードライブにすら勝てはしない。だから、使いつぶしてやるよ。死体に変えて、脳無に改造して」

 

「ひゃはははははは! 大言壮語を吐きよるのう! まだマスターピースへの改造手術も受けていないのに!」

「手術前の最終調整さ。そのくらいはやんないとまた負けるぜ?」

 

「いいじゃろう。なに、トゥワイスのおかげで手は足りる! やってやろうじゃないか。精々死体は奇麗に残せよ」

「了解だ」

 

 死柄木はどんどん歩いていく。

 

「いやいやいや、俺たちはどうしたらいいんだよ。荼毘とスピナーも居ないんだぜ?」

「いいや、居るぜ」

 

 前と同じ黒い泥のワープゲートで来た。

 

「無理なら隠れてろ。数はトゥワイスが居れば逆転できる。強い敵がいるなら……こっちにだって強い奴は居るさ」

 

 その強い奴とは俺のことだと言いたげな荼毘。起き上がるギガントマキアを睨みつける。

 

「リーダー、コイツはまだ仲間じゃねえのか?」

「ああ、そいつはよく分からん」

 

「じゃあ寝てろ」

 

 燃やした。皮膚が炎上し、悲鳴を上げる。……以前の荼毘とは比較にならない火力。そして、それは連続する。弱点であった継戦能力が今やここまでになった。

 これでギガントマキアは数日は回復に費やすことになるだろう。

 

「行くぜ、虐殺だ」

「いや、お前は抑えとけ。黒焦げだと脳無にできない。俺が奇麗に頭を潰してやるよ」

 

 スピナーもまた、以前とは違う。増設した心臓を撫で、にやりと嗤う。

 

 裏で悲鳴を上げるトガ。彼女はギガントマキアの場所に近かった。炎がブレて彼女を襲うが……スピナーが爪の付いた手甲を振るうと炎が塵と貸す。

 そう、それは殺塵鬼の個性にして、彼の腕を改造して手甲と化したものだった。

 

「さあ、新生敵連合――出陣だ」

 

 敵連合と異能解放戦線の超常戦争が始まりを告げた。

 

 

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