緑谷出久の限界突破(オーバードライブ)   作:Red_stone

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第51話 異能解放戦線VS敵連合 緒戦

 

 そして、協力者を起点にしてワープする。数分もかけずに敵本拠地へ到達した。

 オールフォーワンは殺された、その憎しみを共通点として死柄木とドクターは強力につながっている。それと居場所を教えるかは別の話だが、協力できることはしてやっている。

 実際、今の彼らの装備は充実している。それはドクターの最大限の支援の結果だった。

 

「誰か、来たな」

 

 何人かが警戒するものの、無警戒で迎え入れる。もはや、木っ端ヒーローなど相手にしていない。殺すと覚悟することもなく、牙をむくなら蚊のごとくに叩き潰すだけだ。

 

「私は案内役を仰せつかった者! 解放軍指導者と話したければ私についてきたまえ!」

 

 そういう彼について、人気のない街を進んでいく。ヒーローがテロリストと繋がっているとは世も末だが、ことさらに騒ぎ立てることもない。

 ヒーロー飽和社会の今、よくない小銭稼ぎに精を出す者も当然いる。

 そして、彼らは案外仲間思いだ。ムカついたが、ここでは殺さない。まだ仲間を助けられる可能性がある以上、いたずらに騒ぎは起こせない。

 次に現れたのは黒スーツの男。慇懃無礼にお辞儀して見せる。

 

「遠路はるばるようこそお越しくださいました。本日は記念すべき日、敵連合は主賓。さぁ、始めてまいります」

 

 不穏な空気が破裂する。殺気が飽和する。御託はいいと言わんばかりに群衆が襲ってくる。

 それは訓練され、統率された軍隊の動き。ただの暴徒とはレベルが違う。それこそ、オールマイトやオーバードライブを出さなければヒーローなど成す術もない。

 

「異能解放軍”再臨祭”!」

 

 次の瞬間、数十人の個性が乱舞した。一人一人がヒーローに伍する実力の持ち主だ。こんなものに巻き込まれては生き残る手段などない。

 

「――で?」

 

「御託は終わりか?」

 

 並大抵の実力者であればそうだろう。しかし、化け物の力を存分に振るえば、それはただの蹂躙される木っ端に過ぎない。

 前に出た荼毘とスピナー。炎と崩壊の力に巻かれ、襲撃者達は壊滅した。黒スーツの男は額に汗を流す。

 

「来たら返すつったろーがよ、前チョロが!」

 

 トゥワイスが親指を下に向け、首をかき切る動作をしながら問いたてる。

 

「ブローカーなら最高指導者とともにあそこでお待ちです……」

 

 用意していたのであろうセリフをしゃべった。無様に崩れ落ちないあたり、大した役者だ。

 ――命の危険を感じていないわけでもなかろうに。

 

「そうか、じゃあ用済みだ。要らない頭だけ塵にしてやるよ」

 

 死柄木の手が伸びる。が――

 

「「「花畑様をお守りせよ!」」」

 

 何人もの戦士たちが命を賭して足止めする。そいつらをちょうどいい具合に解体して放置するが……花畑には逃げられた。

 

「心求党、党首――これは11万人もハッタリじゃねえかもな」

 

「それこそ好都合、素材が増える。11万連続ガチャさ。きっと、SSRも何人か来てくれるぜ。目指すはタワーだ」

 

 揚々と歩き出した。花畑が示した塔へ向かって。

 

「そういうことなら得意です――ぎゃ!?」

 

 トガが歩き出した地面が爆発する。

 

「連続失血死事件、その犯人。渡我被身子ちゃんね。女子高生はなぜ狂気にいたったか、生前に語られていた衝撃のインタビュー、受けてくださる?」

「え~~~、ヤ」

 

 気月置歳、解放コード『キュリオス』が動き出した。異能は『地雷』、触れたものを起爆装置に変える。殺傷力は低いが――数を置ける。

 ゆえに準備した場所に誘い込む戦いにおいては滅法強い個性だった。

 至る所を起爆装置に変えれば、あとは詰み将棋だ。しかも、歩を無限に持っている。同じ場所には置けないが、そんなものは気休めにもならない。もう一度設置すればいいだけの話だ。

 

「潜伏解放戦士たちは日々訓練を続けてきたの。その力、愚連隊ごときに劣るものではないのよ」

 

 そして、現れる何人もの親衛隊。

 彼女を直接狙おうと彼らが盾になる。そして、隙を伺おうとも自分ごと爆発させられるのもかまわず向かってくる命知らずの戦士だ。

 

「ごめんなさいね、取材対象への遠慮なんて一年目で捨てちゃった」

 

 こんなもの、どうしろと言うのだ。例えばトップランクに位置するヒーローならばやりようもあっただろう。

 だが、最強に類する一角に迫れなかった普通のヒーローでは……もう降参するほかないだろう。

 トガも、敵連合の中では戦闘力下位に位置する。

 

「「「……トガちゃんに何してやがんだこのババア! 指一本でも触れたら上下に分割してやるぞメスガキが!」」」

「――え?」

 

 何人ものトゥワイスが解放戦士たちに挑んでいく。

 一人二人なら簡単な敵だ。少し力を入れて殴れば泥と消えるのだから。なら、5人なら? 10人なら? 死も恐れず掴みかかってくる奴らを相手に、反撃はできても着々とダメージが溜まっていく。

 

「コイツ、データと違う!!」

 

 誰かが叫んだ。

 そう、林間合宿で自分を分身できるようになっていたことを異能解放戦線は知らない。ゆえに、第一の作戦は最初から失敗していた。

 

「馬鹿な! 馬鹿な馬鹿な馬鹿な! なんで……こんなことに!」

 

 キュリオスは歯噛みするしかない。最悪の相性だ。一度こちらに来るトゥワイスを全員、100人ほどを始末したところで、次の瞬間にはお替りの100人が来る。

 彼女の個性は仕掛けた後に自分が移動しなければ、自分もダメージを受ける。だから、さっさと離れる必要があるのだが。

 

「――ひ!」

 

「「「「どこに行くんだよ。ここは一方通行だぜ」」」」

「「「「いいや、そっちも行き止まりだね!」」」」

 

 後ろを振り向くと無数のトゥワイス達が見ている。前を見てもトゥワイスしか見えない。もう逃げ場もない。戦士たちは頑張っているが、さすがに多勢に無勢だ。

 歯が抜け落ちるように一人二人と落ちていく。

 

「ごめんねえ、取材はお断り。来世でよろしくお願いします!」

 

 どす、と注射が刺さる。大切なものが抜けていく感覚がある。無限のトゥワイスに動揺した隙を突かれた。

 これがトガの戦闘能力、他人の視線をかいくぐる。……まあ、この状況では使わなくても良かったかもしれないが。

 そして、キュリオスが最後に目にした彼女の顔は笑っていた。人形のような満面の笑み。

 

「……やはり、あなたは超人社会の闇を体現する者。死して悲劇を確立出来たら、きっと――私は現代の聖典を作れたのに」

 

 最高の記事を作りたかった、その最期の言葉を言うこともなく。

 

「あなたのこと大好きです。だから、血を見せて――」

 

 血を抜かれた上、切り刻まれた。痛みと血の喪失で眠りにつく。……永遠の眠りへ。

 

 

 そして、別の場所で戦いは続く。

 

〈キュリオス氏が斃れました。彼女は開放にその身をささげたのであります! そして、それを聞いた最高指導者はただ一言「無駄にするな」と〉

 

 花畑が選挙カーで人を集める。

 その声が響く度に、無数のトゥワイスたちでできた敵連合の戦線を押し上げる。

 目的はタワー。壊し、殺し――そしてタワーまで制圧することが敵連合の勝利。

 

「「「おおおおおおお!」」」

 

 まさに無数。戦線を押し上げた場所に死柄木が居る。

 ならば、ここで倒さねばならない。トゥワイスを倒さなければ被害は拡大する一方だが、リーダーを倒せば圧力は弱くなるはず。

 もはやネズミ狩りでなく戦争だ。それも、アメリカが哀れな爆撃機で現地軍を粉砕するかのように、戦士たちの命は一秒ごとに減っていく。

 

「……雑魚が。まとまんなよ、死体が奇麗に残らねえだろう?」

 

 閃く手。自在に伸び、掴むだけで崩壊させる脅威の手は簡単に人の命を奪っていく。しかも、後で素材にするために四肢か首だけを破壊して後で繋ぎ合わせられるよう残す。

 

「リーダーがやっていいなら、俺もやっていいよなあ」

 

 そして、荼毘が我慢をやめる。

 炎で余すところなく焼き尽くしてやろうと眼下をにらみつけ――

 

「――」

 

 何者かが降ってきた。フードを身に着け、手足に巨大な氷を生やした男か女かわからないそいつ。

 顔など見えないのに視線が射貫く。

 

「なるほど。俺も少しは強くなったみてえだ。分かるようになってきた、お前強いだろ」

 

 だが、そいつは応えない。

 

「おいおい、寂しいだろ? おしゃべりしてくれよ。それとも、お前が強いってのは俺の勘違いで、おまえさんは呆れてるのかい」

「――蒼炎の使い手、『二倍』の偽物を巻き込むことに躊躇していることはないだろう。……何かを待っているのか。はたまた異能に問題ありか」

 

 出し抜けに言い放った。

 

「いいぜ、分かった。お前を脳無にするときは首から上は別人を繋げてやろう」

 

 ジョークではないブラックジョークを放ちつつ、戦いに移行する。

 

「それは大変だ。では、貴様の頭を叩き潰してゴミ箱に捨てる前に教えてやろう。僕は氷を操る。ずっと異能を鍛えてきた。学校も行かず、ヒーローよりも長く。最高指導者が僕を強くしてくれた」

「――素敵な人生歩んだな。かわいそうに!」

 

 荼毘が吐き捨てる。不幸自慢など、仲間であれ敵であれ聞き飽きた。こちらは(ヴィラン)、不幸な生い立ちなどありきたりすぎて個性にもなりはしない。

 

「生半可な炎で氷が溶けると思うなよ!」

 

 炎と氷がぶつかり合った。

 ――ぶつかり合う。まだまだせめぎあう。……氷の使い手が更なる氷を補充しながらもせめぎあう。 

 仲間が巻き込まれてもお構いなし、無数のトゥワイスたちもやられている。とはいえ、それは偽物でダメージがあるのは解放戦線の方だ。

 さらには。

 

「――威勢と状況があってねえな。氷があらかた消えちまったよ」

 

 荼毘が馬鹿にした笑みを浮かべる。

 耐久勝負は荼毘に軍配が上がった。そして、今や竜のような形状の氷だったのが今は手足にわずかに残るのみ。

 

「いいことを教えてやる。相手の異能を見極めるのは基本中の基本、その爛れて剥がれ落ちそうな皮膚……お前――長く戦えないんだろ。己の炎に身を焼かれるから」

「……」

 

 今度は荼毘が黙った。

 

「そして、僕の異能は氷を操る! 氷の温度も操って、水道に氷を送り込み温度を下げれば、無限に氷を供給できる! 解放軍の目指す先の未来では異能を高めることが生きることそのもの! 異能の強さ以外に、生きる価値などない!」

 

 街の下から地面すらも突き破り大量の氷が現出する。そう、彼の異能に”果て”はない。体力が続く限り、水がある限りいつまでも氷を補給し続ける。

 そして、ここは市街地。……水が尽きるなどありえない。

 

「さあ、持久戦を続けようか。貴様の限界が来るまで!」

「そりゃ、哀しいな。死ね」

 

 せめぎあいが続く。

 そして、それが20分も越えたころ――

 

「……ぜえ! はあ――ッ! 馬鹿な、どんな体力。いや、己の炎に身を焼かれるはずでは!?」

 

 あるいは、爛れた皮膚そのものがブラフということか。

 彼は自分の目が信じられなくなってきた。まさか、耐久勝負どころか持久力勝負になろうとは。

 しかも、それ(持久力)は学校にも行かずに鍛えて来たもの。戦士ではないチンピラなどに上回られるなど想像すらしていなかった。

 

「そんなことはない。お前の眼は正しかった……一昨日まではな。お前はどうやらプルスウルトラして異能を高めたようだが、こっちはそんなことしないんだよ」

「では、どうやって……!?」

 

「改造さ。耳がいいおまえさんたちは氷河姫の噂を耳にしたことがあるだろう?」

「プラネテス、か! だが、奴らは雄英生に破壊されたはず!?」

 

「残骸を回収し、俺の身体に埋め込んだのさ。だから」

 

 一瞬で彼の居る高度まで跳び、ぶん殴る。ありえない身体能力、あきらかに脳無と同種の――

 

「がはっ! 馬鹿な、生きながらにして脳無に。炎を――違う! なんだ、これは……殴られた頬が凍っただと!?」

 

 敵は起き上がれない。

 立ち上がろうと地面をひっかくが、膝が笑って力が入らない。完全にダメージが閾値を越えている。しかも、身体を貫くこの冷気はどうしたことか。

 

「多少はアイツの個性を使えるのさ。炎で体温が上がる以上に、コイツは俺の身体を冷やしてくれる。まあ、そうすると冷えすぎるんだが……」

「馬鹿な! 馬鹿な! 馬鹿なァ! 異能解放戦線が愚蓮隊などに負けるなど!」

 

 動けないそいつの頭に、荼毘は足を乗せる。

 

「そこはあれだ。顔も忘れた母さんに感謝ってな?」

 

 グシャリと潰した。

 

 

 

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