緑谷出久の限界突破(オーバードライブ) 作:Red_stone
そして、いたる箇所で解放戦士たちが蹂躙されている間に、コピートゥワイス達がタワーに到達した。
「よーう、テメエか。俺たちの居場所を潰してえ馬鹿教祖ってのァ」
「ずいぶんハゲてんじゃねーかてめ――。ハゲ教祖じゃね――――か。失礼しました!」
そう言い捨て、何体もの分身を作り始める。それで詰みだ。2,3回の分身さえ許せば後はネズミ算で無限に増える。
「捻りがないな」
リ・デストロの顔を影が覆う。
「てめーらはコピーだ! 死んでも存在が消えることはない。さあ、蹂躙してやろうぜ」
そして、自分の仲間たちすらコピーする。そこまでされたら打つ手がない。三者三様の個性――切り抜けるには純粋な実力が必要だ。
「……ずいぶん脆い。ところで君、人質の意味は理解しているかね?」
コピーの一人を消した。そう、リ・デストロは純粋な実力を持っている。少なくとも、コピー荼毘ですら見ることすらできない程度には速く、重い。
数で圧殺できるほど生易しい相手ではない――解放戦線指導者のリ・デステロは。
「それ以上増やせば義欄を殺す。正規メンバーではない彼を殺すのは私も本意ではない。できれば分身しないでもらいたい」
「――問題ない。お前が作ってくれた状況、一対たくさんだ」
コピー死柄木が受け入れた。トゥワイスの肩を叩く。
「俺たちに分がある」
「取り返しゃあいいんだな」
コピー達が向かう。それはやはり、生半可では1秒も持たない数と質による虐殺だが……
「酷い連中だ」
その刹那、リ・デストロの腕が巨大化する。ただの一撃で10人は居たコピーが消し飛んだ。
「同じ土俵で争っているのが馬鹿馬鹿しい」
だが、トゥワイスは消えかけの分身から自分を分身させる。かろうじて、義欄を取り戻すことに成功する。
もっとも、リ・デストロは興味なさげに見逃していただけの話だが。
「――過度な情は枷だ。我々の意思の前に散るといい」
腕を巨大化、もろともに殴りつける。このように、その気になるだけで二人纏めて儚い命だ。
「高尚な夢をお持ちのようで」
だが、死柄木がガードする。『崩壊』の手がリ・デステロに当たるが、そこは個性で肥大化した身体、壊れた場所は捨てればいい。
足手まといが居るから有利なはずと、攻撃を重ねてもかわされ、いなされて反撃を喰らってしまう。
この死柄木もコピーだ。だから一発当てるだけで倒せるはずなのだが。
「なぜだ! なぜ、目的もない奴に私の拳が当たらない!?」
全てをかわされる。しかも、馬鹿にするように少しずつ皮膚を削り取ってくる。その気になれば殺せるのだと知らせるように。
――紙一重でかわし、掌を当ててくる。
「そりゃ……お前の意思が弱いからじゃねえの?」
「ふざけるなァ!」
リ・デステロはその憤怒を開陳する。
「かつて! 一人の女性が異能を持つ子を産んだ。まだ異能に対し偏見の強かった混乱の世、止まぬ雑言溢れる差別。愛しい我が子に石を投げられる日々! 女性は小さな声で訴えた。〈これはこの子の個性です〉。しかし訴えは嘲笑とともに埋もれていった。何故だ!? 反異能の人々に殺されたからだ!」
「だが、実際に施工された政策は今以上の個性の抑圧! やつらは能力の使用そのものを忌避した! デストロは思った! 〈母さんの願った未来はこれではない〉!」
「歴史もないチンピラの破壊衝動に、我々以上の重みなど、決して! ありはしない!」
ゆえに負けられない、全力でもって敵を潰すのだ。解放80%、ストレスアウトプット――
「これで消えてなくなるがいい! 『負荷塊』!」
ストレスの具現化。力そのものが死柄木に向かう。コピーの身ではかすらなくても傍を通るだけで消えてしまう。
だから。
「俺に重みがないなんて知ってるよ。俺が目指すのは解放すら”ない”虚無。俺は、ただひたすら全てぶっ壊すだけ――」
真っ向から迎え撃つ。『崩壊』の5指で消してしまった。
「トゥワイス。義欄を守っとけ、奴が来たぞ」
次の瞬間、塔が崩壊する。
「よお、ただ壊すだけのチンピラが来てやったぜ」
待っているのはオリジナルの死柄木。瓦礫に足をかけ、リ・デストロを見下す。
「ならば消えろ、創造無き世に未来なし!」
ストレス100%。だが――
「振り切る前に壊せば威力もねえな」
効果がない。オリジナルの『崩壊』の力を前に、遠距離攻撃など意味をなさない。全てその5指で塵と消える。
「ならば!」
デトネラット社謹製、負荷増幅鋼圧機構”グレストロ”を装着する。一見するとパワードスーツだが、それは己を締め付ける拘束具だ。
ストレスを感じるほどに強くなると言う個性に合わせた、限界以上を叩き出すための”武器”である。
「150%……限界を超え、貴様を倒す! 破壊の悪魔め!」
”貯める”系統の個性。前準備が必要というデメリットがあるからこそ、自らの牙城での戦いは有利に進めることができる。
限界など突破しなくても、簡単に100%を振り切ることのできる出力を発揮できる。
「ああ、そう」
崩壊。ただの一振りでその一画が消失する。いたずらに広範囲を破壊するのではない、制御している。
ただ一人の敵を殺すのに街ごと粉々にする必要はないだろう。
「じゃ、死ね」
首が、舞った。
――ただ、150%も200%でも関係なく一蹴されるだけの実力しかなかったという話。リ・デストロは死柄木の足下にも及ばない。
決着は着いた。
眼下では無数のトゥワイスが戦士たちを襲い、荼毘が虐殺している。そして、怯え、避難場所に立てこもった市民たちは。
「邪魔だ」
死柄木の一撫でで建物が崩壊する。
個性『崩壊』が、人々の居る頑丈な要塞だけを破壊した。もちろん、中身は無事で済まない。瓦礫に潰された無数の遺体が覗く。
脳無化するにはもう少し奇麗なほうがいいが、どうせ逃げた者どもだ。碌な個性はもっていないだろうし、優先すべき解放軍幹部の遺体は他にある。
死柄木はつまらなそうに天を仰ぐ。
「これから、忙しくなりそうだな」
全ては終わりに向けて。全てを滅ぼす日――”聖戦”に向けて動き出す。オールマイトとオーバードライブの二枚看板に加えて、ギガースが居る。
一度戦端が開かれれば、もはや戻り用もなくどちらかが滅ぶまで止まらない。
脳無と量産型プラネテスとも言えるギガース兵がぶつかれば、無事で済むものなど一つもない。
泥花市はこれより死の都市となり、要塞化される。
ここはもはや連合などではなく王国となった。正義と悪。全てをかけて、血で血を洗う戦争が開始されるのだ。