緑谷出久の限界突破(オーバードライブ)   作:Red_stone

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第6.5話 雄英会議

 

 深夜、雄英の教師たちが集められていた。

 こんな非常識な時間に会議など開きたくないのは当たり前のことだったのだが。

 学校の運営としての対応、マスコミ対応に時間を取られて最速でもこの時間になってしまったのだ。

 だが、この緊急事態において差し迫った対応から、その先を考えるのに日を跨がない。まあ、実は24時を超えているのだが……しかし、これは公営機関としてはもちろん、企業と見ても迅速な対応だろう。 

 雄英として、何よりもヒーローとして何をしなくてはならないか未来をよく見据えている証拠だった。

 

「――さて、悪いね皆。こんな時間に集まってもらっちゃって。夜更かしも、夜のコーヒーも毛並みに悪いんだけど、サ」

 

 白いネズミがカップを傾ける。根津校長だった。

 やつれているように見える。それだけ対応に奔走したと言うことだろう。

 まあ、あれだけの大事件だ。くたばっていないだけ上等だろう。

 

「あと、君にも悪いね。来てもらっちゃって」

 

 視線の先に居るのは塚内直正、警察の人間だった。

 

「いえ、お気になさらず。あなた方を警察内に招くのも余計な時間を喰ってしまうので。こんな時間です、皆さんが早く帰れるようにするためにも本題に入りましょう」

 

 ほとんどの教師の前にはコーヒーが置かれている。眠気覚ましである。

 対応に奔走して疲れているが、USJに現れた敵を放置しておくわけにはいかない。オールマイトを苦しめた敵を相手にできるのは、それこそ本人しかいないのだ。

 もし、”今”もう一度ヴィラン連合が現れたらどうしようもない……気概としてはともかく、顔を合わせた時点で敗北と考えておかねば指揮者としては失格だ。

 

「――ああ、第3の脳無がないと考えるのは愚かだと思うぜ」

 

 そう言ったのは出久だ。

 なにを言っても会議に参加すると聞かないから参加している。生徒としてならともかく、オールマイトの弟子で、かつ脳無を倒した一人としてなら意見は無視できない。

 そして、それはそれとして……

 

「数え間違いじゃないか? 今も拘束されている奴が脳無なんだろう。改造人間と言っていたが、二人目が居るかも怪しいんじゃないか」

 

 教師の一人が言う。

 むしろ、それは願望交じりなだけに強固な思い込みだ。あんなものは何人も居てたまるか、という。

 

「逃げたやつが居るだろう?」

 

 教師陣に見つめられても出久は全く気後れしない。それどころか、生徒の身にも関わらず堂々と会議に参加する一人として意見を出す始末だ。

 

「……緑谷。それは黒霧か?」

「ええ、その通りですよ相澤先生。どう考えてもおかしいでしょう? あんな世界を変えかねない個性が存在するわけがない」

 

「確かに。……人員をいくらでも輸送可能。そんな便利な個性があったら噂になってないわけがないな。隠し玉、と”しておけない”ほどの凄まじい個性だな。言われてみれば」

「それだけじゃない。核爆弾で主要都市を破壊して世界を第三次世界大戦に叩き落してもいいし、ドラッグを蔓延させて甘く溶かすように国家を破滅させてもいい。間違いなく、個性社会を崩壊させることのできる強力な”個性”だ」

 

 背筋が寒くなることを平気で言ってしまう。

 それを聞く教師たちの反応は二分される。そんなわけないだろう、と冷ややかに笑う者。そして、それがあり得ると考えて目の前が真っ暗になって目を抑える者。

 

「……凄まじいことを思いつく。だが、USJで見せた個性があれば可能と言わざるを得ないな」

 

 そして、相澤はありうる可能性を前に殺気さえ放っていた。

 まあ出久にはとばっちりだが、気にするような性格はしていない。分かったか、とでも言うようにニヤリと笑って見せた。

 まったく笑いごとではないのだが。

 

「そして、ゆえにアレも改造されていることは間違いがない。そんな個性が自然に発現するわけもないからな」

 

 断言した。

 

「突然変異ではないのか? どのような個性が産まれるか分からんぞ」

「さてね。そこは専門外だが……脳無1号機の方は、首魁自ら改造済と宣言していたじゃないか。なら、あっちも改造済だと思うのが自然だと思うね」

 

「そんな技術力を持つヴィランが存在するのか……?」

「どうだろうな。しかし、人間の改造など昔から創作物でありふれている。実際、個性研究で扱われた例も……」

 

 さすがにそこは出久でも答えられない。基本、全て死柄木と対峙した経験、そして個性研究について調べたことからの推測だ。

 だが、うつむいていたオールマイトが突然顔を上げた。

 

「いる」

 

 厳かに宣言した。

 

「……」

 

 無言で先を促すも、彼は黙ったままだ。

 

「HAHAHA。ちょっとワケがあってね。それに関しては僕も知っているから、この場では心当たりがあるとだけ思っててくれ。……オールマイト、やはり」

 

 根津校長が話の先を引き継いだ。

 

「ええ。奴の仕業でしょう。……奴なら”できる”し”やる”……!」

 

 むっつりと黙り込んでしまった。

 その態度に、ヴィラン連合には人間を改造できるほどの技術があることが確定されてしまう。

 詳細を隠されても、根津校長とオールマイトの二枚看板に保証されては疑えない。

 

「ま、それならそれでいい。知らせるべきことなら教えてくれるさ。ちょっと聞きたいんだが、塚内さんだっけ? あんたも知っているのかい?」

 

 からからと出久が笑う。

 誰よりもオールマイトを信じている弟子だ。そこはブレないし、何かを隠されてスネるほど子供でもない。

 必要があれば話してくれると信頼している。

 

「まあ、オールマイトとは個人的な親交もあると言うことでこの場にお呼ばれさせてもらったからね。知っているよ」

「そうか。警察も知っているなら、信頼性については申し分ないだろ。で、どうするんだ?」

 

 そう、重要なのはどうするかだ。

 オールマイトを超えるほどの改造人間の存在を前に、どうするか。オールマイトなら限界突破してくれるなんて、それは事実かもしれないがダメだろう。

 

「学生とは思えない割り切りだな、緑谷。……後で問い詰めます、校長」

「お手柔らかにね、相澤先生。で、どうするべきだと思う?」

 

「黒霧に対する対策ですか? それとも敵連合のしっぽを掴む方法?」

「そっちは時間があるときにゆっくりと。まずは学校の防備をどう固めるかだよ。……オールマイト、回復にはどれだけ時間がかかる?」

 

「……うぐ。すいません、何日かは動けません」

「そうか。緑谷君も同じだけ謹慎ね? 授業は受けていいけど、実習はしないように。それと、戦っても駄目だよ。度を超えた鍛錬もね」

 

「――」

 

 出久は目を逸らす。

 

「……返事」

「了解した。身体に負担をかけることはしねえよ」

 

 ふてくされた。

 限界を軽々と超えた代償が響いている。全身を拷問レベルの筋肉痛でイジメられながら、それだ。痛みとか、体の悲鳴で止まることを知らないから外部から無理やり止めなければ早々に身体を壊してしまう。

 

「ええと……学校運営の方はどうなったのかしら……?」

 

 ミッドナイトが恐る恐る発言する。

 

「ああ、話を戻そうか。僕としてはここで休校にする選択肢はないと思っている。で、緑谷君……聞きたいんだけど、脳無がすぐに出てくることってあると思う? 戦った者の感想が聞きたいんだね」

「おそらく、すぐに出てくることはないと思う。脳無をこちらで確保できたのが良かった。あれはテスト用の試作機……膨大な資金と手間をかけて作ったワンオフだろう。他にもあったとして、調整に手間がかかるはずだ。試作機の実物をこっちで確保した以上、データの流用ができないからな」

 

「ふむ。妥当な考えだね。まあ、敵を過大評価して恐れていても仕方ない。じゃ、これからは学校運営の話に行こうか。何人かは残ってもらって、後は家に帰るといい。君も帰るんだよ? 緑谷君」

「ま、確かにここから先は俺が立ち入っていいことじゃねえわな。帰らせてもらうぜ」

 

 改造人間に対する会議は終了し、あとはむしろ経営に関わる面子が残る。

 もちろん、相澤も帰るのだが。

 

「……黒霧。奴も改造された人間だと言うのか」

 

 珍しいことに、一人で星を見上げている。

 思いふけっている。

 

「あの癖……どこかで見たような覚えがあるが」

 

 空を睨みつける。

 

「分からんか」

 

 舌打ちした。

 

 

 




 出久が改造人間に詳しいのはオーバードライブ成分。更に、原作と同じく個性そのものについても知識があります。
 光の宿痾は脳筋修行をやるくせ、ちょっとした情報からでも真実を見抜いてくるチート。

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