幸せなバッドエンドを目指して   作:ぽんしゅー

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#15 摸擬刀の先制攻撃だべ!!

「勉強させてもらったよ斑目。真贋を見抜くには時に冷徹さがいることを」

 

 取り巻きのシャドウは五体。

 

 たわけた山伏(コッパテング)四体に苦渋の鍛冶師(イッポンダタラ)一体。

 

「心置きなく貴様を見定めさせてもらう。俺の……ゴエモンと共に!!」

 

 喜多川がたわけた山伏(コッパテング)にブフをお見舞いする。ダウンしたそばからすぐさま他のたわけた山伏(コッパテング)にブフを連発し、次々にダウンを取っていく。

 

「これで終いだっ!!」

 

 最後にゴエモンの『大切断』を苦渋の鍛冶師(イッポンダタラ)に喰らわせて喜多川の攻撃は終了した。

 

「畳みかける!!」

 

  敵全滅には至っていないものの、ジョーカーが出した『イヌガミ』がタルカジャを発動し、スカルの攻撃力を上げる。

 

「おっしゃあ行くぜ!! キャプテンキッド!!」

 

 スカルのペルソナが敵全体に突っ込み暴れまわる。たわけた山伏(コッパテング)は無残にも消滅し、残りは苦渋の鍛冶師(イッポンダタラ)だけとなった。

 

「クソがっ……!! 舐めるなよ……!!」

 

 一体だけ残った苦渋の鍛冶師(イッポンダタラ)が一矢報おうとこちらに突撃してくる。

 

「ステイ」

 

 が、それを後方にいたブルが、銃弾を苦渋の鍛冶師(イッポンダタラ)の足元に撃つことで行動を阻害させた。

 

「終わりだぁッ!!」

 

 苦渋の鍛冶師(イッポンダタラ)が足を止めた隙に、喜多川が一太刀を浴びせ、敵が消滅した。

 

 喜多川の初陣は完勝で幕を閉じた。

 

 

 

 ***

 

 

 

「俺はそんな朴念仁じゃないさ」

 

 喜多川の初陣(チュートリアル)終了後、パレスのエントランスで、喜多川の内に秘められていたものを告白された。

 

 本当は気付いていた、と。

 

 数年前から怪しい人物は出入りしていたし、盗作なんて日常茶飯事だった。だが世話をしてくれた人がそんな事をしているなんて認めたくなかったから。

 

「だから訪問してきた時は拒んでしまった……俺は逃げてしまったんだ……すまない」

「気にするな」

「……自分が誤魔化してきたことと向き合う、そのきっかけをくれて感謝している」

 

 醜い過去の自分には蓋をしたくなる。それを見たくないから人は過去を塗りつぶしたり、逆に美化したくなる。

 

 ありのままの、等身大の自分を直視するのは辛いしキツイ。だからそれが出来る人は強い人だ。……自分が誤魔化してきたことと向き合う、か。やっぱお前は強い奴だよ喜多川。

 

「これからどうすんだ?」

「分からない……」

「なら、俺達の手で斑目を『改心』させないか?」

「そういえば『改心』がどうとか言ってたな」

「聞いたことねぇか? 『心を盗む怪盗団』の噂」

 

 喜多川はしばし考え、そしてやっと気づいたのか驚いた顔をするが、背後にシャドウが現れ撤退を余儀なくされる。説明は後だ。

 

 

 ***

 

 

 場所を移し、ファミレスで怪盗団とか認知世界の事を大雑把に話した。一テーブルで六人は結構キツイな竜司の肘が当たってる。

 

「なるほど。それでその体育教師は心が入れ替わったと……『心の怪盗団』、本当に実在していたとはな」

「まぁ、いきなり話されて信じろって言っても無理が……」

「いや信じるさ、あんな世界を見た後じゃな……それでお前らは先せ……斑目を『改心』させようとしているって事か」

 

 『先生』と呼ぼうとするが、すぐに斑目と言い直す。ゲームで明かされた過去以上に喜多川と斑目は長い付き合いなのだ。まだ思い入れがあるのだろう、無理もない。だがそうであっても、いやだからこそ、かつての師である、斑目の目を覚まさなければならないと喜多川は決断した。

 

「……俺も加えてくれないか、怪盗団に」

 

 喜多川の申し出に一同が驚く、モルガナが廃人化の可能性も仄めかすも喜多川の意志は固い。ならば拒む理由は無い。もちろん迎え入れよう。ゲーム通りだしな。

 

「ところでそこのメガネを掛けてる人は初対面な気がするんだが」

 

 そう言って喜多川はすみれの方を見る。確かにこっちの姿のすみれは初見か。

 

「初めまして喜多川先輩。芳澤すみれって言います。よろしくお願いします」

「ほら、さっきヴァイオレットって言ってた子」

「ああ、なるほど。合点がいった」

 

 納得する喜多川。確かにメガネを掛けると雰囲気違うよな。

 

「じゃあ次の攻略予定日はいつにする?」

「祐介……明日行けるか?」

 

 蓮が祐介に了解を取る。祐介はやる気満々らしく力強く頷いた。

 

「俺は早ければ早いほど良い。問題ない」

「じゃあ今日は祐介の歓迎会&パレスの作戦会議の腹ごしらえってことで」

 

 そういって杏はメニュー表をとってスイーツを見ている。

 

「オメ―腹減ってたの?」

「それもあるけど、皆いるから色々頼んでも食べきってくれるかなって」

「どんと来いです!!」

 

 健啖家のすみれが胸を張る。頼もしい。俺も腹減ったしなんか頼むか。

 

「よっ、残飯処理日本一‼」

「大分不名誉じゃありませんかそれ?」

「俺は黒あんみつを頼もう」

「絶対ワガハイから連想しただろ……なぁ寿司ってあるか?」

「あるわけねーだろここファミレスだぞ。あーでもサーモンのカルパッチョあるな。蓮、モルガナにこっそり食わせとけ」

「……モルガナ。鞄の中汚さないなら頼んであげてもいいぞ」

「なぁんだと思ってるんだぁ!! ワガハイのことをっ‼」

「あ、おい乙守。各種豆の盛り合わせがあるぞ」

「……竜司。俺は別に豆は大好物で目が無い訳じゃ無い。普通に豆腐ハンバーグ頼む」

「豆腐も豆だろうが」

 

「……みんなすまない」

 

 全員騒がしくメニューを選んでいると、祐介が何やら重々しい空気で口を開く。

 

「財布を持っていなかった」

 

 相変わらずだなおい。

 

 

 ***

 

 

 一時間後、大量の皿がテーブルを埋め尽くしていた。

 

「食った食ったー!!」

「大変満足だった」

 

 雑談と作戦会議、9:1の割合だったが祐介が怪盗団に馴染む良いきっかけになっただろう。

 

「あ、すみません。親が心配するので私はこれにて……」

「了解。じゃあ明日放課後アジトで」

 

 失礼します。と言ってすみれはテーブルにお代を置いてファミレスを出ていった。

 

「……ふむ。彼女、すみれだったか。いいモデルになりそうだ」

「変態」

「安心してくれ高巻さん。俺は君のヌードを諦めた訳ではない」

「いやそれは諦めろ……あと杏でいい。もう仲間なんだし他人行儀は無し」

「そう、か。仲間か……ありがとう」

「そうそう。俺達のことも気軽に呼んでくれていいぜ!!」

「別に許可を取るつもりは無かったが」

「このヤロ」

「ん? 何だろこれ?」

 

 すみれが先程まで座っていた席から杏が何かを見つける。

 

「赤いリボン?」

「すみれのか?」

「だと思うけど、すみれ赤いリボン着けてたっけ? いつも黒だった気がする」

「ああ。すみれはパレスに入る時に赤いリボン着けてて、怪盗服姿になる時に黒いリボンになってる」

 

 しかもいつもは髪をおろしてメガネ掛けてるから分かりにくい。

 

「「「…………」」」

 

 ……? 何故か蓮と竜司と杏が目を合わせて何かアイコンタクトしている。

 

「よし、胡桃走って渡してきな!! 今ならまだ間に合うかも!!」

「何で? 明日会うなら明日渡せばいいじゃん」

「もしかしたら重要なものかもしれないじゃん!!」

「だったら足が速い竜司のほうがよくね?」

「あー、俺、突然、腹が痛くなったなぁ? 痛くなったなぁ蓮?」

「そうだな。今トイレに行かなきゃ俺達は漏らすかもしれない」

 

 二人同時に? どうしてそうなる?

 

「じゃあほら。今行けるのは胡桃しかいないって!! GOGO‼」

「分かったよ行けばいいんでしょ」

「……俺が行こうか? 飯代を払えないからここで義理を果たさせてく……痛っ!!」

 

 祐介が何やら苦悶の表情で膝を抱えている。何かあったんだろうか。

 

「じゃあいってらっしゃい」

「……いってきます」

 

 そうして俺は流されるままファミレスを出てすみれを追いかけた。もちろんお代を忘れずに置いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故……三人共俺を蹴った」

「「「ゴメン」」」

 

 

 ***

 

 

 すみれに走って届けろって言っても、どこに居るのか分からない。駅には向かったとは思うけど、姿は見えない。

 

 ……電話するか。

 

『はいもしもし』

「こちら乙守胡桃です」

 

 もし電車に乗っていたら電話を掛けるのは迷惑かと思ったが、1コール鳴り終わるまでに出たので問題は無いようだった。

 

『先輩どうしたんです?』

「さっきのファミレスで忘れ物。赤いリボン」

『えっ、あ、本当だ』

「今どこにいる? 届けたいんだけど」

『お気持ちはありがたいんですけど、今親の車でして……』

 

 ほう、駅からお出迎えか。すみれの親って確かゲームでも心配性だったな。心配性な原因は多分芳澤かすみの事故だと思ってたけど、元から娘のことが大切な良い親だったんだな。

 

「じゃあ明日パレス行く前に返すわ」

『分かりました。ありがとうございます』

 

 じゃあまた。と言って通話を切る。うんうん、親子の仲が良い事はよきことかな。

 

 

 

 ***

 

 

 

 5/20 金曜日 曇り

 

「はいこれ」

「ありがとうございます」

 

 放課後、パレス攻略のためアジトに向かうと、今日は部活の無いすみれが一人で先に待っていた。軽く挨拶を交わした後、昨日忘れていったリボンを渡すとすぐにメガネを外し、髪を束ねた。

 

「やる気満々じゃん」

「ええ。今回のパレスの調査であまり関われませんでしたから。せめてここでシャドウ達をなぎ倒す勢いで行かないと足手まといかなと思いまして」

「燃えてんね~。期待しとくわ」

「任せてください」

 

 気合十分で蓮達を待っているすみれのポニーテールは落ち着かない様子でゆらゆらと揺れていた。

 

「……似てるなぁ」

 

 その姿が、この間蓮と登校している芳澤かすみの後ろ姿と被っていて思わず口に出てしまった。

 

「似てるって、姉にですか?」

「えっ、あ、まぁ」

「……そうですか」

 

 なんか地雷踏んだっぽい。ちょっとだけ声のトーンが低くなった。

 

「姉と一緒なんですこの赤いリボン。いつもは姉妹で色違いでお揃いのものを買うんですけど、このリボンだけはお揃いの色で揃えてて、『一緒の表彰台に立った時、同じ色のリボンだったら見栄え良いでしょ?』ってかすみが。……競技でこれ着けれないんですけど小さい頃は知らなくて。でも勿体ないからってお互いに着け合ってた時期があったんです」

「でも今は着けてるとこあんまり見ないけど」

「……しんどい時があったんです。演技が上手くいかなかったり、どれだけ練習してもかすみに勝てなかったり、それを慰める優しさが辛い時とか。それが積み重なってこのリボンを着けるのが嫌になって、それで今は着けるのを避けてるんです。……ダサいですよね私」

 

 すみれは自嘲気味に笑うが、俺はそんなの全然悪い事だと思わないし、辛い事から逃げることは当たり前の行動だ。

 

「別にいいんじゃない? そうやって自分守るのはダサいことじゃないだろ」

「ありがとうございます。でもそろそろ逃げずに立ち向かわなきゃって思うんです。カッコ悪い自分を乗り越えなきゃ前に進めないって思ったんです」

 

 別に前に進まなくていい。と言いそうになったが飲み込んだ。本人が前向きなのに水を差すのは違う気がした。

 

「……なのでパレスの攻略が終わった後、少し買い物に付き合ってくれませんか?」

「別に良いけど。何で買い物?」

「それはその時まで秘密ってことで。あ‼ 喜多川先輩来ましたよ!!」

 

 祐介が連絡通路の奥から歩いてくる。それに合わせて都合よく……まるでこっちを観察してタイミングを伺ってたレベルで都合よく改札の方から蓮達がまとめてやってきた。……俺の考えすぎか?

 

 アジトで祐介にイセカイナビの使い方や、あっちの世界での動き方などを教えた後にパレスへと向かった。

 

「……なぁ、何話してたんだ?」

 

 向かう途中でこっそり竜司が耳打ちをしてきた。やっぱりこっち見てたのかよ。すみれのプライバシーに関わる話だから適当に誤魔化しとくか。

 

「近所の割りばし畑から遊園地が出てきた話してた」

「お前何言ってんの?」

 

 

 

 ***

 

 

 

「作戦はこんなもんか……?」

「よし!! ルートは獲得したからいつでも奪えるな!! 予告状を送るタイミングはジョーカーに任せるぜ」

 

 パレスの攻略は至って順調。オタカラ一歩手前にギミックがあるので、盗む際にてこずったらいけないのでモルガナと蓮が主導となって作戦が練り、後は盗むだけとなった。

 

「明日決行しよう」

「……ちょっと早すぎなんじゃない? 祐介はまだパレスに慣れきってないと思うし」

「杏。慮る気持ちは嬉しいが、俺は一刻も早く斑目の悪行を止めたい。明日、マダラメにオタカラを盗むのに俺は賛成だ」

「そうだぜ。悪い事してる奴は早めにぶっ潰した方が良いに決まってる。俺も賛成に一票だ」

「そっか。勢いついてる今が良いのかもね。ゴメン心配し過ぎたかも」

 

 というわけで杏も明日決行に一票。蓮がモルガナとすみれにも聞くが二人共二つ返事で承諾。俺も明日にやるべきイベントは無いので承諾した。

 

「全会一致だな。じゃあ明日よろしく頼む」

 

 

 

 ***

 

 

 5/21 土曜日

 

 マダラメパレス完全攻略予定日 ←黒明智のことについて詳しく聞く(出来たら)

 

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