幸せなバッドエンドを目指して   作:ぽんしゅー

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#2 もちろん俺は抵抗するで?

「道……間違えてねぇよな……やっぱ合ってるよな……」

 

 目の前にそびえ立つ城。そして城門には『私立秀尽学園高等学校』の文字が照らし出されており、異様な雰囲気を醸し出しており、ここが現実と切り離された空間であることを肌で感じる。

 

 ここがパレス……デカすぎんだろ……

 

「どうなってんだ? 中入って聞くしかねぇか……」

「うん」

 

 坂本と雨宮はそのままパレスに入って行く。

 

 はい。ではここで俺は二人に気付かれないようにバックステップして認知世界から抜け出します(RTA風)こうすることで自分だけは現実に戻れて、手元のスマホには『イセカイナビ』が入るのでいつでもあの世界に出入りできるという訳だ。

 

 このイベントは主人公がペルソナに覚醒して、偶然出会ったモルガナと協力してパレスから脱出するイベント。まぁ軽いチュートリアルみたいなもんだ。別にこの時点ではルートに影響しないし、それに無駄に戦う必要もない。むしろ放課後にあの異世界について坂本に呼び出されるのがタイムロスになる。正直ペルソナに覚醒してない俺はあの世界では戦えない。だからひたすらにバレないように隠れてオタカラのルート確保をしなきゃいけない。それは絶対に時間がかかるから無駄なタイムロスはキツイ。

 

 ……まぁ死ぬことはないから大丈夫でしょ。

 

 

 ***

 

 

「よう胡桃、屋上行こうぜ」

「いやちょっと用事あっから」

 

 放課後に早速パレスに行こうとしたら坂本に絡まれました。ぴえん。

 

「いいだろ少しだけだ」

「……うい」

 

 根は優しいって分かってるんだけど、DQNに睨まれるとさすがにビビる。思わず了承しちゃった。

 

「おーい連れてきたぞ」

「あ……胡桃」

「下の名で呼ぶなし」

 

 主人公が早速下の名で呼んできたので訂正させる。

 

 ……転生して与えられた胡桃って名前……男の名前にしてはちょっと可愛すぎんだよな。乙守っていう苗字がカッコいい分、胡桃っていう名前が台無しにしてる感がある。それでよく名前でいじられるんだよな。

 

「名前の呼び方なんてどうでもいいだろ。なぁお前朝の出来事覚えてるよな?」

「城のこと?」

 

 別にここは誤魔化すところじゃないから適当に話を合せとこう。

 

「そうそう。お前なんであそこにいなかったんだ?」

「なんか次の瞬間普通の景色に戻ってて、お前らの姿見当たらなかったから夢だと思った」

 

 思っても無いことをペラペラと喋る。

 

「俺たち全員夢見てたんじゃねぇの?」

「……そうかも……でもやけにリアルな夢な気も」

「だぁー!! 夢だ夢!! 夢に決まってら!! 悪いなお前ら付き合わせちまって」

 

 「話は終わりだ」と言って屋上から出ていく坂本の背中を二人で眺める。たしか原作もこんな展開だったな。ありゃ夢だとか言っても、どうせ明日また入るんだけどなお前ら。

 

「じゃ俺も用事あるから」

「乙守」

「……何」

 

 早速パレス攻略に行こうとしたら主人公に話しかけられる。

 

「いや……なんでもない」

「そう。じゃあ早めに帰った方がいいぞお前。保護観察期間なんだろ。こんなところでウロチョロしてると怒られるぞ。じゃあな」

 

 適当にアドバイスしてその場を退散する。主人公はこの後マスターからありがたいお説教がルブランで待っている。いやマスターに会いたいわぁ……今度こっそりルブラン行ってみよ。

 

 ……さて、人影は無し。こちらを見てくる奴もいない。

 

 校門から出て近くの路地裏に入る。そして周りに人がいない事を確認して『イセカイナビ』を起動した。

 

 ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!!

 

 

 ***

 

 

 無理無理無理無理。まじで無理。パレス舐めてた。

 

 正直頭の中にマップ入ってるから、『オタカラまでのルート確保なんて余裕だわww』とか思ってたけど、想像以上にきつかった。特に体力がついてこない。

 つーか、主人公達はペルソナに覚醒してるからあんなに動けるのであって、一般人の俺がこの城を踏破するとかどだい無理な話だったわ。今は廊下の角を使って身を隠して呼吸を整えてるけど、後ろからシャドウが来てるし、目の前にも迫ってきてる。敵エネミーに遭遇したら一瞬でゲームオーバーだ。

 

 でもここで引きこもっててもバレるのは時間の問題だ。一か八か……

 

「――ッ!!」

「侵入者だ!! 捕まえろ!!」

 

 次のセーフルームまで全速力で走って避難する!! セーフルームにさえ入ればシャドウは追ってこない!!

 

 メッチャ後ろから追っかけてきてるけど、次の角を曲がって扉を開ければセーフルームだ!! よっしゃこのまま――!!

 

「そこまでだ」

「まじかよ……!!」

 

 シャドウに先回りされてた。後ろにも前にもシャドウ。足を止めた俺にじりじりと距離を詰めてくる。このままじゃ逆総攻撃を喰らってしまう。ピンチもピンチだ。やべぇ……終わったか?

 

「……ん? お前どっかで見た顔かと思ったら乙守か!!」

 

 目の前のシャドウの軍団から聞き覚えのある声が聞こえる。その声の主はシャドウを横に退かせ姿を現す。

 

「鴨志田……」

「鴨志田様、だ。もっと敬え。この城の王だぞ」

 

 下卑たな笑いで自分の地位を誇示してくる。

 

「鴨志田様。この者をどうしますか?」

「死刑。と言いたいところだが、この城からつまみ出せ。こいつには役割がある」

「かしこまりました」

 

 役割?

 

「なんだ役割って?」

「お前、鈴井と仲いいだろ。いつも話してるのを見かけるぞ」

「あ? それが何だって言うんだよ」

「馬鹿だなぁお前。都合の良いオモチャを簡単に壊す訳ないだろ。ちゃんとケアしてくれよ」

「……お前」

「気付いたか? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ……最悪だ。こいつは鈴井さんの居場所をわざと壊さないようにしてたんだ。居場所を壊したら、鈴井さんも壊れるかもしれないから。でも俺はそんなことに気付かずにただ地獄に行く鈴井さんを見守っていただけだ。

 

 ……俺が鈴井さんを気遣うことで鈴井さんは追い詰められていたのか。心配かけまいと頑張って……あいつの体罰に耐えて……俺はホントに何も考えて無かった。

 

「お前鈴井狙ってんならいい目してるよなぁ。高巻ほどじゃないけどスタイルと顔もそこそこいいから俺もいつか手ぇ出そうと思ってたんだよ。でどこまでいったんだ? もうヤったのか? 処女じゃ無かったら萎えるんだよなぁマジで」

「……勘違いしてるよお前」

「あ?」

「鈴井さんはテメェみたいな底辺にどうにか出来る女じゃねぇよ。鏡で自分の姿でも見ながら唾でチン毛直しとけよ、ちょっとはマシな男になるだろ。あ、やっぱ無理だわ。顔面が土砂崩れみたいなヒデェ顔してるからまず整形するところからすすめるわ」

「……こんのクソガキっ!!」

「……ぐっ!!」

 

 周りにいたシャドウ達に殴られ、床に押さえつけられる。そして鴨志田が近づいて顔面を踏みつけられる。

 

「いくらお前が強がろうと何もできないんだよ!! 無能なゴミクズがっ!!」

「無能……無能ね……」

「ああそうだ!! 無能で無力で無価値のただの社会のゴミクズが、この俺様に歯向かってんじゃねぇよ!!」

「……確かに無能で無力で無価値なゴミクズだよ。俺には何もない空っぽな人間だ。だから前世で死んだんだ」

「あぁん?ついに頭がおかしくなったか?」

「俺の中身は空っぽで、いつも誰かの顔色を窺って生きてきた。親、同級生、先生、先輩、後輩、誰からも嫌われたくなくて八方美人で生きてきた。()()()()()()()()()()()周りに流されて酒飲んで死ぬなんて……前世の親が浮かばれねぇよ」

 

 俺には自分なんて無い。決定は周りに委ねてきた。それはとっても窮屈で息苦しい。

 

 だから丸喜先生の現実に憧れた。

 

 理想の居心地の良い世界で、俺は眠りたい。

 

 変われない自分のまま死んでいきたい。

 

「だからそれを叶えるために……力がいるんだよ。……俺と……俺自身の世界の為に!!」

 

 

 

 ***

 

 

 

『――アハハハハ!! 無様な奴!!』

 

 ……うるせぇ

 

『――お前の弱さを認めた上で変わりたくないと主張するか!!』

 

 ……別に良いだろうが。変わんねぇのも美徳だ。

 

『――そんな虚飾塗れの身で何を望む!!』

 

 ……証明したい。たとえ空っぽな俺でも生きてていいって証明したい。

 

『――小っせぇ!! 小っせぇよ!! もっとだ!! お前の壊したいものはなんだ!!』

 

 ……世界だ。こんな訳分かんねぇ出口の無い迷宮みたいな世界があるから、俺がこんな息苦しいんだ。常識(ルール)に雁字搦めにされた社会が俺の首を絞めてくる。

 

『ああそうだ!! こんなクソみたいな世界に風穴開けたら少しは空気も良くなる!!』

 

 ……俺が変わるんじゃない。世界を変えるんだ。その為の力を……俺にくれ!!

 

『――アハハハハ!! いいぜ!! ならば契約だ!!』

『――我は汝、汝は我!!』

『――テメェの気に食わないもの全部、跡形もなくぶっ壊せ!!』

 

 ……あぁそうするよ

 

 

 

 ***

 

 

「うっ――あぁ!!」

 

 仮面が顔を覆う感覚を察知し力が漲る。押さえつけているシャドウを無理矢理振り払って立ち上がる。

 

 そして仮面に指を掛けて、無理矢理剥がす。

 

 皮膚ごと剥がれるような感覚。今はその痛みすらも些事だと感じるぐらいに体が高揚している。

 

 暴風と青い炎と共に巨体が出てくる。その巨大すぎる体は地面に半分ほど埋まっており、その頭部は牛の形をしていた。

 

「……一年だ。一年見逃してきた。テメェの悪事を、俺の都合で見逃してきた。辛かったよ。友人が痛々しい傷を負っているのに何も力になれないなんて。……でも時は来た。もう我慢しない。やっと手に入れたこの力でテメェをぶっ飛ばす!!」

 

 俺の意志に応えるように、背後のペルソナが咆哮する。

 

「――全部ぶっ壊すぞ!! アステリオス!!」

 

 




アステリオスの口調はペルソナ合成で出てきた時の台詞を参考にしています。

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