幸せなバッドエンドを目指して   作:ぽんしゅー

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随分空きましたが、作者が生きてるうちには絶対完結させます。


#22 君は知るだろう

 6/11 土曜日 曇り

 

 パーティーと一言で言っても種類は様々である。

 

 宴会に新歓コンパや合コン、婚活パーティー、お偉いさんが集まるパーティーもそうだしクラブで踊ったり、ベッドの上で複数の男女がまぐわうのもある意味ではパーティだろう。

 

 そんな不埒な夜のカーニバルを健全たる高校生がそんなもの開けるわけでもなく、今日は斑目改心パーティー&祐介歓迎会を開催する予定だ。

 

 場所は純喫茶ルブラン。俺は緊張した面持ちで扉をくぐった。

 

「お、お邪魔しまーす」

「あ、いい匂い。コーヒーの匂いかな?」

「なんか古くせーな。嫌いじゃないけど」

 

 騒がしい団体のお客様のご来店でこの店のマスターが振り返る。

 

「ん? 友達か?」

 

 佐倉(さくら) 惣治郎(そうじろう)。猫背気味でメガネを掛けており、髭は伸びているがちゃんと整えてあり不潔には感じない。

 

 好きです。(突然の告白)むしろ嫌いになる人いるのか? いやいる訳無い。

 

「お邪魔します」

「女の子……それに二人も」

 

 杏、そしてすみれの姿を見て驚く。

 

「いつもお世話になってます」

「世話掛けられてますの間違いだろ」

 

 お前も隅に置けねぇなと言わんばかりの視線を蓮に向ける佐倉さん。そうですコイツ将来9股するんですよ。

 

「むしろ助けられてます」

「ふぅん……友達なんだろ? ここじゃなくて部屋いけ部屋」

 

 佐倉さんの言葉に従い二階の屋根裏に上がって行く。蓮が住んでる屋根裏は一人で過ごすにはちょっと広すぎるくらいの空間。おそらく高校生が十人程度入ってもまだ余裕がある。

 

「どっから突っ込めばいいんだこれ」

「別に普通じゃないか?」

「広いですねここ。頑張れば新体操の練習が出来そうです」

 

 いや流石にそれは過言……とも言えなくもないか? こいつ毎夜とは言わないが柱を使ってトレーニングしてるしな。

 

「んじゃ、全員揃ったことで始めますか。作戦会議!」

 

 今日ここに集まったのは斑目改心パーティー&祐介歓迎会だけではない。先日明智に言われたことを否定するためにより大きいターゲットを狙うための標的決めと、今後の方針についてを話し合うためだ。

 

 取り敢えず次の改心の相手を見つけることから始まったが……

 

 

 ***

 

 

「作戦会議は一旦保留。『歓迎パーティー』始めるか!」

 

 悲しいかな。標的の心当たりはなし。斑目が言っていた黒い仮面の手掛かりもなし。今後も方針も具体的には決まっていない。次のターゲットは金城なのだが俺がそれを提案する訳にもいかない。

 

 そんな手詰まりの中鳴った祐介の腹の音がファンファーレの如く鳴り響き、作戦会議は終わりを告げた。

 

「ふふん実は見つけちゃった。あれカセットコンロじゃん? 鍋とかできないかな?」

「鍋……いいですね! 色々入れ放題ですし! 栄養を効率的に取れます」

「ワガハイも賛成! 『同じナベのメシ』的な」

「肉入ってりゃなんでもいいぜ!」

「締めはおじやで頼む」

「締めはうどんだ」

「なんでもいいわー俺」

 

 怪盗団全員一致ということで買い出し班と下準備班で分かれ鍋パーティーの準備を進めた。

 

 

 ***

 

 

 予想以上の食材を買い込み、ホントにコレ全部食うの? てか鍋に入らなくない? という不安はあったがそこは成長期の高校生。買ってきた食材を残すことなく完食した。後半はほとんどすみれが食べてた気もするけど。

 

「ごちそうさまでした」

「ふぅ~食った食った」 

「美味だったぜアン殿。将来はいいお嫁さんに……」

「ほわ……あふ……ゴメンねむ、ソファー借りる」

 

 大きな欠伸をした杏がソファーに横になる。スカートの中が見えそうで見えない危うい姿勢になる。そこに竜司とモルガナがスカートの中を覗き込もうとするが、すみれがすかさずブレザーをかけてガードする。

 

「……デリカシーです」

 

 ジト目で注意された竜司とモルガナは『別に俺ら何もしてませんよ?』という風に席に着く。

 

「時に竜司、杏とはどういう関係だ?」

「あ? 別に同じ中学っつーだけだよ」

「昔のアン殿は……どんなだったんだ?」

「そんな変わんねえよ。高校になってクラスが別れてからは話してねーけど、友達は少なかったな。帰国子女で、見た目もコレだったしな。派手なヤツは勝手に嫌って、地味なヤツは近づかない」

 

 まぁ、そもそも日本と外国人って距離感とか違うらしいからな。いきなり日本の距離間に慣れろって言われても難しいし、一度コミュニケーションに失敗したらその失敗を取り返すのも難しいしな。高校になって志帆さんと杏が仲良くなれて良かった。

 

「そうだったのか……で、お前達はどうだったんだ?」

「俺達?」

「互いのことを知るにはいい機会だ。俺の過去は知られてしまったんだ。お前達も話すべきだ」

「自分は失うものがねーってか」

 

 過去暴露大会。しかも自発的に話さなくてはならない。

 

「なぁそれ言いたくないって言ったら言わないで済む?」

「……俺は一番胡桃の過去が気になるから聞きたい」

 

 まさかの蓮からリクエストが入った。それに乗っかるように他の面子も頷く。

 

「俺は別にそんな困ったこと中学時代になかったから話す内容なんてないぞ」

 

 少なくとも今世は。

 

「ダウトだな。ペルソナに目覚めたってことはそれなりに何かあるって事だぜ」

 

 それなりに……か。「あはは、お前らに話すことなんか何もねーよ」と言いたいところだが、頑なに話さないと逆に怪しまれそうだ。さて、どれをどういう嘘を交えて話すか? ペルソナ覚醒のトリガーは鴨志田の振る舞いにイラついたからだけど、起爆剤は沢山持ってた気がする。

 

「あー……恋人に振られたってだけだよ」

「んぐッ⁉」

「えっお前彼女いたの?」

「ほう……興味深い」

 

 まぁこれが一番それっぽいだろ。

 

「その人に空っぽだねって言われて、それっきり俺はそれを引きずってるだけ。まぁつまんない話だろ?」

「別に私は空っぽな人だと思いませんけど……」

「いいんだよ。俺は俺でそういう自覚あるから」

「俺は胡桃と出会って日は浅いから何とも言えんが……もしそのことを引きずっているのならば……空っぽだと思うのならばこれから満たしていけばいい」

「祐介……なんつーかお前恥ずかしいこと言うよな」

 

 祐介は恥ずかしいことを口にした自覚が無いのか、それとも恥ずかしいとは思ってないのか俺の言葉に首を傾げている。

 

 まぁ好きな人がいたってとこ以外嘘だけど。

 

「まぁそういう事だから今後とも怪盗団としてよろしくってことで。ハイじゃあ次、竜司パス」

「あ、あー、つっても俺だってただの親不孝モンの話だ」

 

 そうして竜司が語り始めた。

 

 竜司は幼い頃に父親が消えて、母子家庭の中スポーツ推薦で秀尽へ。特待生で楽をさせたいと思ったが、高一で鴨志田に嵌められ手を挙げてしまった。そしてそのまま陸上部は廃部。それが原因で母親が学校に呼び出され教師から言われたい放題。帰り道の途中で片親でごめんと謝られたらしい。

 

「……酷い話だ」

「学校は『みんな平等』と教えるが、現実はそんな綺麗事ばかりじゃない……気持ちは、俺にはわかる」

 

 祐介は心当たりがあるのか深く頷いて肯定する。 

 

「じゃあすみれは? すみれも秀尽なんだろう? 鴨志田関係で問題があったんじゃないか?」

「いえ私はそれ以前の問題で……」

 

 少し目を伏せて話し始める。

 

「……昔、姉と約束したんです。一緒に世界の表彰台に乗ろうって。でも……私は姉のように結果が出なくて……一位の表彰台にはいつも姉だけが乗っていて、私は陰から拍手するだけ。秀尽で入ってもそれは一緒で、結果の出ない私は先生からは姉の付属品扱い。でも姉は私と一緒の表彰台に上がることを諦めて無くて、それが辛かったんです。かすみが私を諦めてくれたら私も諦められるのにって」

「そうだったのか……」

 

 すみれは他人の期待とか信用は重荷になるタイプだったんだろう。でも周りが勝手に期待してた癖に、結果を出せなかったら期待外れはひどいだろうが。

 

「で、でももう私は立ち直ってますから! 今はかすみと一緒のところに立つどころか、追い越してやるって気持ちです!」

 

 そう言うとすみれは明るくガッツポーズをする。

 

「本人のことをよく知らないでレッテル貼られるのは辛い……というか悔しいだろうよ」

「レッテルっつったらコイツも大概だけどな」

「蓮が?」

 

 蓮が一番理不尽だろうな。男に襲われてる女性を助けようとしたら、男が勝手に転んだ傷を傷害の容疑をかけられて無事保護観察で秀尽送りだからな。いや無事じゃねぇな。

 

「これが事の顛末だ」

「聞いてるだけで腹立ってきやがるぜ……!」

「女の方も酷いな。ダンマリを決め込んだわけだろ?」

「しゃあねぇだろ。誰もが俺らみたいに強いわけじゃない。怪盗団は弱い奴らの味方だろ。その男を改心すべきだ」

「そうです! その人の顔とか覚えてないですか? 次の改心相手をその人にしましょう」

「すまん暗がりでよく見えなかった」

 

 蓮に濡れ衣を着せたのは獅童正義。終盤のパレスの主だ。大体のボスはコイツに繋がっている。鴨志田は秀尽の校長を介して間接的に関わってるし。金城も斑目も金を獅童に献上してる。この後の奥村も、元凶はこいつだ。

 

「もし改心させたとしてもこいつの判決は覆らない。前歴は残ったままだ」

「ありえねぇ……世の中間違ってるぜ! 弱ぇヤツ助けねぇで身勝手な大人勝ち逃げさせてよ!」

「偉いヤツの言ってる事なんてアテになんねぇよな」

「……確かに、冤罪かけられたことは悔しいしショックだった。でも一つ良い事はあった」

「は? 良い事なんもねぇだろ」

 

 

「――お前達に会えたから」

「「「「「………………」」」」」

 

 沈黙が訪れる。

 

「………………忘れてくれ」

 

 蓮が顔を下に向けた。珍しい、照れてる。『度胸』のパラメータが足りなかったのか?

 

「い、いや、私は嬉しかったですよ? ね? 皆さん!」

「お、おうもちろん!」

「当たり前だ」

「お前よくそんな恥ずかしいこと言えたな」

「おぉぉい! クルミ!」

 

 モルガナが回転しながら顔面に飛んできた。

 

「恥ずかしがってる蓮なんて珍しいだろうが。今いじらなかったら今後そういう機会回ってこないぞ!」

「おめーは下敷きうんたら礼儀ありっていう言葉知らねぇのか!」

「『親しき仲にも礼儀あり』だバカ竜司」

「んだとコラ!」

 

 竜司にヘッドロックをかまされてると、うるさいと言って杏が起きた。

 

「あー……悪い。起こしたか?」

「ううん? 別に、途中から起きてたし……聞きながら思ったんだ、皆のこと、昔から知ってる気がする。『似た者同士』だからかな?」

「ロクなもんじゃねぇよ」

 

 全くだな。と同意すると首の絞めがきつくなった。

 

「……ワガハイには、振り返れるほどの記憶はない。ワガハイだけ仲間はずれな気がする」

「人間の枠どころか現実からはみ出してる猫が何言ってんだ」

「俺達みたいにロクでもない過去だろうな」

「というかその記憶を取り戻すためにメメントスに潜るんだろ?」

「猫じゃねぇーし! ……それにワガハイが怪盗団に手を貸してやってんのはワガハイ自身のためだ勘違いすんなよ! オマエラに強くなって貰わないとメメントス探索どころじゃないからなっ!」

 

 そう言ってテーブルの上でふんぞり返るモルガナ。いじけたり偉ぶったり忙しいやつ……

 

「……ねぇやろうよ。私いけるところまでやりたい。悪い大人をやっつけて困ってる人達を勇気づけたい」

 

 杏の提案に皆が同意を示す。俺達が悪い大人達を改心して世直ししてやるんだと。全員の意志が固まって絆が深まったような、怪盗団の団結を深めた良い歓迎会だった。

 

「じゃあこれからもよろしく。リーダー!」

 

 今後の方向性も決まったところで今日は解散となった。

 

 

 ***

 

 

 解散後、竜司達に銭湯に誘われたが、適当な嘘をついて今日はやめとくと断って帰路についた。

 

 自室で『† 定められた黙示録(アポカリプス)†』を開き今後の予定を見て考えていた。

 

 正直ヤバイ。メメントスに入る際に蓮に許可を取らなくいけなくなったのがまず一つヤバイ。

 

 今後敵が強くなる可能性もあるっていうのに俺のレベリングに監視が入ったのがキツすぎる。俺のペルソナのアステリオスもこれ以上はスキルを覚えられないから戦ってレベル上げるしか強くならないのにメメントスに潜りすぎたら蓮にバレる。あの悪神ホントに余計なことをしやがったな。

 

 ……ほぼ詰んでねぇか? 俺のアステリオス最強まで育ててもどうせ氷結弱点は治らないから祐介と戦ったら不利だし、そもそも怪盗団全員でかかって来られたら終了だし……。

 

 あークソ! そもそもあっち九人に対して、こっちは丸喜先生含めて二人だぞ!? しかも俺はボス補正入ってない強さで戦わなきゃいけないんだぞ!? スキルカードは蓮しか使えねぇし。あー俺のペルソナも突然変異して超強化されねぇかなー。

 

 ………………いや、出来るな。

 

 でも、それはかなりリスキーだし。もし失敗したら俺の計画も頓挫する可能性もあるかもしれない。

 

 ……仲間か。

 

 

 ***

 

 

 6/13 月曜日 曇り

 

 週明けの月曜。他の生徒は朝のHRで教室にいる中、俺は保健室に向かった。

 

 保健室にはソファーでコーヒーを飲みながらリラックスしている丸喜先生の姿があった。見渡しても他の生徒は存在しておらず俺と丸喜先生の二人っきりだ。

 

「どうしたの乙守君。具合悪い?」

「すみません先生。ちょっと折り入って相談事がありまして」

「取り敢えず座りなよ。コーヒー淹れるからさ」

 

 丸喜先生のご厚意に預かり、ソファーに座りコーヒーを口に含んだ。昨日のマスターのコーヒーがどれほど美味しかったのか理解できた気がした。

 

「それで相談事というのは?」

「先生。お金貸してください」

「………………取り敢えず理由を聞こうかな」

「すみません冗談です。本気にしないでください」

 

 これはドア・イン・ザ・フェイスという本命の要求を通すために、まず過大な要求を提示し、相手に断られたら本命の要求を出す。人間心理を利用した交渉テクニックの1つだ。もちろんお金を貸してなんていうのはブラフだ。本命はこの後。

 

 俺はその本命の相談事を口にした。

 

「――丸喜先生、俺は『怪盗団』です。力を貸してください」

 

 俺の仲間は怪盗団ではない。

 

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