幸せなバッドエンドを目指して   作:ぽんしゅー

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#3 無いよぉ、剣無いよぉ!!

「――全部ぶっ壊すぞ!! アステリオス!!」

 

 アステリオスの咆哮が衝撃波となって目の前の兵士を吹き飛ばす。

 

「ッ調子に乗るなよ!!」

 

 鴨志田の周りにいた他の兵士の体がグズグズに溶けると、新しい体が再び形成される。

 

 死刑台の人面花(マンドレイク)寝台の精鬼(インキュバス )不和を呼ぶ家政婦(シルキー)

 

 丁度いい初陣(チュートリアル)。全員火炎弱点だ。

 

「燃やせ。アステリオス」

 

 地面から噴火の如く爆炎が噴出し、目の前の敵が巻き込まれ消滅する。

 

「クソッ!! さっさとアイツを捕らえろ!!」

 

 次にやってくるのが地下室のランプ男(ジャックランタン)か。アイツ確か火炎吸収だからアギ系が効かない。なら武器で……!!

 

 ……?

 

「……あ?」

 

 手の中に何もない。いやいやいや、原作じゃペルソナに覚醒したら何故か武器持ってたじゃん!! そこは認知のアレで何とかしてくれよ!!

 

「って危なっ!!」

 

 ジャックランタンの攻撃を間一髪で避けて、廊下に飾ってあった甲冑が持っている槍を手にする。

 

「オラッ!!」

 

 そしてそのまま槍を振るってジャックランタンを倒す。うん。結構動けんね俺。

 

 しかし撃退してもわらわらと出てくるシャドウ達。しゃらくせぇな。ここは一気にぶっ潰すか。

 

「アステ――」

「威を示せ!! ゾロ!!」

 

 目の前に暴風が吹き荒れ、シャドウがダウンする。てか今の声!!

 

「おい、オマエ走れるか⁉ ここから逃げるぞ!!」

 

 目の前に落ちてくる黒い影。そしてその背後には剣を持ったペルソナを付き従えさせている。

 

 モルガナだ!! うわーガチで猫じゃん。ちょっと興奮してきた。

 

「ついてこい!!」

「あっはい」

 

 モルガナに言われその場から撤退する。シャドウの包囲網を抜け、振り切った先に入った部屋はセーフルーム。安全な空間に退避したという事実が実感として体に行き渡り、体が一気に疲労感に襲われる。

 

「ここまで来りゃ安心だろ」

「ありがとう。モ……猫?」

「猫じゃねーわ!!」

 

 あっぶね。危うくパンケーキするところだった。

 

「ここって一体何?」

 

 モルガナお決まりのツッコミを貰ったところで、適当に俺の知ってる原作の知識をべらべら喋ってもらおう。この世界のこと色々知り過ぎてると怪しまれるからな。……半分くらい聞き流すけど。

 

「ああここはな……」

 

 

 ***

 

 

「なるほど。パレスにペルソナねぇ……」

 

 説明ご苦労。知らないフリをしながらモルガナの話を聞いていく。

 

「んでもって、お前のその姿がお前がイメージしてる反逆の姿なんだが……凄いなお前」

「え?」

 

 モルガナに言われセーフルームの鏡で自分の姿を見る。

 

 裾は足の膝下まである毛皮のマントを羽織り、首から動物の牙で繋いだ首飾りを掛け、ズボンも所々に動物の毛皮を使われていてモフモフしている。極めつけは今被っている牛の仮面だ。

 

 この野性味溢れる姿はどう見ても……

 

「蛮族……」

「だな。ワガハイもそう思うぜ」

 

 これが俺が思う反逆の姿。もうちょっとスマートな服が良かったんだけども、まぁ……

 

「悪くない……」

「……まぁお前が良いんなら良いんだろうよ」

 

 ワイルドだし、何か見た目強そうだし。

 

「なぁお前。ワガハイの事手伝ってくれないか?」

「いいよ」

「もちろん礼は……って即答かよ!!」

「さっき助けてくれた礼って事で。でも俺もやりたいことあるんだわ」

「なんだ?」

「さっき言ってたことを丸呑みして信じたとしたら、ここは鴨志田の心の中なんだろ? ならここで暴れたら現実にいる鴨志田本人にも少なからず影響は出るかも。だったらここでアイツの心の中の悪性の腫瘍の様なものを切り取って真人間にしたい」

 

 回りくどい言い方をしたけど、要するに改心がしたい。

 

「丁度いいぜお前。ワガハイもカモシダには恨みがあるんだ」

 

 たしかモルガナって『真の姿に戻る』という目的の為にこのパレスを調査していたんだっけ。それで鴨志田に捕まって、主人公に助けられるまで拷問されてたんだよな。かわいそ。

 

「……殺さねぇぞ?」

「わかってる。要は『改心』させたいんだろ? やり方は単純さ。歪んだ欲望を奪っちまえばイイ。そしたらこのパレスは崩れてカモシダはイイ奴になる」

「……でもそんな事したら廃人になるだろ?」

 

 覚えてるぜモルガナ。最初この手段を主人公に提示した時に廃人になる可能性があるって言ってたことを。欲望は人が生きていくために必要なエネルギー。それを奪っちまったら廃人になる可能性があるって。

 

「筋がイイぜお前。だからさっきの判断は覚悟が決まるまで保留ってことにしてやっても――」

「いややろうぜ。すげー個人的な理由だけどアイツのこと嫌いなんだ。手が滑ってうっかり殺しちゃったとしても、自責の念に駆られないぐらいには」

「……わかった。手を組もうぜ」

 

 モルガナがニヤリと笑う。

 

「詳しいやり方は後日また説明する。今日は初めてペルソナに覚醒して疲れただろ」

 

 いやホントそれ。これかなり疲れる。覚醒に加え、多分俺が出したスキルがかなりSP持ってくやつだったからか頭もぼっーとする。

 

「あぁ……じゃあ明後日の昼でいいか?」

「ワガハイは別に構わないが……。オマエ学生じゃないのか?」

「明後日は球技大会があるから適当に抜け出す」

 

 明日は記念すべき坂本のペルソナ覚醒日だから、邪魔しちゃいけない。それに武器調達したいし。

 

「じゃあ明後日な。必ず来いよ」

 

 モルガナに念を押されながらパレスの入り口まで案内してもらった。ナビゲーションの音と共に見慣れた路地裏に出ると、さっきまで使っていた槍と共に現実世界に出てきてしまった。

 

 ……どうしよコレ

 

 

 ***

 

 

 俺的パレス攻略期限日は明後日の13日。翌日の14日は鈴井さんが体育教官室に呼ばれて体罰を受ける日だ。一日で攻略して、翌日に予告状を出して改心させる。

 

 ……かなりカツカツだ。だから明後日で確実にルート確保できるように準備を整えておく。パレス帰りの疲れた体で来たのが……

 

「Untouchable(アンタッチャブル)……」

 

 ミリタリーショップ、アンタッチャブル。主人公達の武器を買ったり、銃をカスタマイズできる店。そしてここには……

 

「……」

 

 いたー!! 岩井宗久ぁー!! 不愛想!! 顔怖い!!

 

「……そこの学生。扉の前に立ってると他の客が入ってこれなくなるからさっさとどけ」

「あ、すんません」

 

 感動で見とれてたら注意されてしまった。扉から岩井さんの元へと歩いていく。

 

「あの、クロスボウってどこら辺に置いてますかね」

 

 主人公達は遠距離武器として銃を持つ。普通によく見る拳銃とかリボルバー、ショットガン、サブマシンガン、果てにはロケランやパチンコまでこの店で調達している。なら俺も持ちたい!! でも銃の種類で被りたくない。そこで選んだのがクロスボウである。これなら被らないし、あっちの世界での見た目とも合ってるからナイスチョイスだと我ながらに思う。それに前世で好きなキャラが武器として使ってたからそういう思い入れ的なのもある。

 

「あそこの棚に置いてあるがお前には売れねぇ」

「え?」

「未成年には販売出来ねぇんだよ」

 

 盲点。クロスボウってそういう規制あったのか。え、どうしよ詰んだ。

 

 ……ぶっちゃけ息子のことやらヤクザのことやらを持ち出して脅すっていう選択肢もあるけど、そこまでする必要無いから他の銃選ぶか。仕方ない。

 

「じゃあこれで」

「一万五千」

 

 

 ……近接武器買う予算無くなっちまった。

 

 

 ***

 

 

 4/13 昼 晴れ

 

 

「わりぃ。具合悪くなったから次の種目俺の代わりに出てくんね?」

「ジュース一本な」

「助かる」

 

 クラスの奴に代わりに出てくれと頼み、こっそりと学校から抜け出そうとする。買ってきた銃と昨日パレスから持ち帰った槍は校門を出てすぐ近くの路地裏に隠しておいた。後はそれを持ってアイツのパレスに行くだけ。

 

「乙守君……?」

 

 昇降口から出ようとすると鈴井さんに話かけられ足を止めてしまう。

 

「どうしたの? もうすぐ試合だよね?」

「あーえっと。気分悪くなって風に当たろうかと」

「……大丈夫? 無理はしないでね」

……こっちの台詞だろ

「え?」

「んー何でもない。いやー残念だわー、体調が絶好調なら俺がエースになって、その日はクラスのヒーローになってたのになー」

「ふふ、そうだね。それで皆から話かけられてキョドってる」

「……冗談だし。それにキョドらないし。……まぁいいや終わるまで外出てるわ」

「サボりは程々にね」

「……サボりじゃないし」

 

 適当に嘘吐いてその場を誤魔化して立ち去る。誰にも見られないようにさっさと校門から出て路地裏に入る。置いてあった槍と、銃の入ったバッグを持って『イセカイナビ』を起動させる。

 

 景色が変わる。世界が変わる。そして衣装も変わる。

 

「モルガナ」

「おう。約束通り来たか。……あいつらとは違うな」

 

 ……ああ原作だと昨日、坂本+主人公に協力を頼んだんだけど突っぱねられたんだっけ。だからちょっとご機嫌斜めなのか。

 

「……やるか」

「気合い入ってんなオマエ」

「まぁな。これ着ると闘志が湧いてくるのと、あと……」

 

 軽く準備運動して武器を手に取る。武芸の達人のように槍を振り回し、空中に投げてキャッチする。うん絶好調。

 

「ちょっとヒーローになりたくて」

 

 

 ***

 

 

――どうしよ。ぼっちになっちゃった。かすみはさっき試合で体育館行っちゃったし……。私が出る試合は三十分後か……まだ時間あるな。購買で間食買お。

 

 

――ん? あれは……?

 

 

――やっぱり……事故から庇ってくれた人だ。この学校の生徒だったんだ……。あの時ちゃんとお礼言えてなかったし、今丁度いいから言っちゃおう。

 

 

――……話かけるタイミングが見つからなくて、ストーカーみたいに後を付けてるみたいになってる……。こういう時かすみみたいに大胆にズケズケと話かけられたらな……

 

 

――外出ちゃった……もしかしてサボり……? 不良?……でも今一人きりだから話しかけに行く絶好のタイミング……

 

 

――って校門飛び越えた⁉ 路地裏でなんかやってる。……ちょっとだけなら外出てもバレないよね……

 

 

 

 あ、スマホ取り出――

 

 

 

 

 

 

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