後書きにオクムラパレス編で書く息抜き回のアンケートがあります。
喫茶ルブラン。昼下がりの午後にもかかわらず、店内に客は一人もおらず閑古鳥が鳴いている。
「暇だな~」
「おい、まだ営業中だぞ。猫は二階に戻してこい」
「もう夕方で、いつもの常連客も帰ったから誰も来ないだろー? それにいざ来た時には猫カフェにしたらいい!」
「そんな理屈が通るかよ」
「いーや通す。というか集客するためにもっとメニューを増やすべきだ! 蓮の器用さを生かしてカフェアートをするとか」
「アイツがいねぇとどうにもならねぇだろ」
「そーじろーもやるんだ!」
「キャラじゃねぇ」
「もー!!」
店内に唯一存在している双葉と惣治郎は、暇を潰すように雑談に花を咲かしている。
そんな中カランカランと、来店のドアベルが鳴る。
「お邪魔します」
礼儀正しくすみれが来店してきた。軽く会釈をするとポニーテールが揺れた。
「ん? ああ。すみれちゃんか」
「こんにちは。マスター。双葉ちゃんは……いますよね?」
「ああ、ここに……って何してんだ?」
「に、にゃあ」
双葉はモルガナで顔を隠し、陰からそろ~っとすみれを見ていた。
「今日は部活が早く終わったのでルブランに寄って、双葉さんと話そうかと」
「な、なぬっ、私が目的か!」
「はい。忙しくて夏休みはあれ以来会わなかったし、海にも行けなかったしでお話する機会があんまりなかったので」
すみれはフタバパレスの攻略以降、新体操の練習に手が離せない状態で、8月後半の『双葉のコミュ力上げよう週間』には参加できなかったのだ。
「そうか。座りなすみれちゃん。コーヒー奢るよ」
「そんな、悪いですよ」
「いいんだよ。双葉と仲良くしてやってくれ」
「……なー、そーじろー。それ本人の前で言われるとかなり気恥ずかしいんだぞ。あとお世話になっておりますとか」
「そ、そうなのか?」
「ふふ、仲が良いんですね」
「まぁな!」
双葉がドヤ顔で肯定すると惣治郎が照れたように顔を背け、顎を触る。
「じゃあ、ごゆっくり」
双葉の座っている席の隣にコーヒーを出すと、惣治郎はカウンターの奧へ引っ込む。すみれは座ってコーヒーを飲むと感嘆の息を漏らした。
「やっぱりルブランのコーヒー美味しいですね」
「分かるクチか?」
「はい。素人ですが美味しいものと感じます」
「そうか…………」
「…………」
「…………そ、そう言えば天気いいですね! 運動とかランニングしたくなります」
「あんまり外に出ないから分からない。それに運動したくなるのはもっとわからない」
「あ、そうですか、えっと…………」
「…………」
「…………」
((わ、話題が続かない…………!))
お互いどこかぎこちない会話で気まずさを感じている。二人は初対面ではないが、こうやって面と向かって話すのは初めてであり、そしてある意味での難題が二つある。
(ヤバい。同年代の友達と何話してたっけ。……いや、高校に入ってからクラスの人と全然話した記憶が無い…………!? 新体操の練習に忙しかったし、放課後は怪盗団で話すのが大体で、話すときは課題の提出とかだけ……? え? 私もしかして……同年代との会話苦手?)
一つ、すみれは同年代の友人が少ないということである。学校で悪い意味で話題になっている先輩とつるんでいたら当然クラスメイトから距離を置かれるだろう。それに本人自体は、怪盗団で過ごすことが楽しいと感じていたのでクラスメイトに関心が無かった。だからこそ、同年代との会話が減り、双葉との話し方が分からないのである。もっとも、双葉を普通の女子高生と接して正解なのかはわからないが。
(……こういう時なに話せばいいんだ~! すみれって私と全然タイプ違うし、話が嚙み合う気しない……)
二つ、他の怪盗団のコミュ力が高すぎる問題。陰キャが全然いないのである。杏や竜司、真がコミュ力高いのは当たり前として、祐介はテンポと感性が変なだけで、会話は出来る方だ。蓮は無口に見えて、知らぬ間に相手の心に入り込むのが上手く、胡桃は口八丁手八丁で他人に合わせるのが上手い。
故に、すみれは同年代と話していないせいで、双葉と何を話せばいいのかわからなくなり。
故に、双葉はあの期間を経て、人と会話するのが余裕だと勘違いしていた。
(皆さん助けてください……!)
(助けて皆~!!)
「「えっと……あ、どうぞ」」
偶然にも被ってしまった言葉に、お互い顔を見合わせた。
「た、大した話じゃないから……先、いいぞ」
「いや、私もそんな大した話題じゃないので……」
「……はは」
「……ふふ」
話題を譲り合おうとする定番の流れが面白可笑しいと感じ、互いに頬を緩めた。趣味や生活がまるで違う二人、しかし歩み寄ろうとする気持ちは一緒だった。
「……よし! 遊びに行くぞすみれ! 惣治郎、出かけて来る!!」
それを理解した双葉は、意を決して立ち上がった。
「お、おう。遅くならんうちに帰って来いよ」
「え、でも双葉ちゃんはインドア派だって聞いて……」
「いつの話をしている。いや私はインドア派だが、人は成長するものだぞ。さぁ遊びに行くぞ!!」
「わ、わかりました」
「それだ! それを外せ!」
「はい?」
「敬語だ! すみれに敬語で話しかけられると、こう……むず痒い!!」
「じ、じゃあ……わかった。行こう、双葉……ちゃん」
「うん!」
「マスター。コーヒーごちそうさまでした!」
「あいよ」
惣治郎一人となり、店内にはテレビから流れるニュースしか声は聞こえない。
「……案外、寂しいもんだな。なぁ、若葉」
惣治郎は閑古鳥が鳴く店内で、雛が巣立ち、いずれ飛び立っていく寂寞な気持ちを想像し、僅かに鼻をすすった。
***
「取り敢えず渋谷まで来た!」
「双葉ちゃん。実は私、放課後を遊んで過ごしたこと全然無いから、こういう時どういう所に行くのかわかんない……」
「いやむしろいい! 今回はJKらしく遊ぶんじゃなくて、テーマを決めて遊ぶぞ」
「テーマ?」
「そうだ。『テーマはあいつらが遊びに行きそうなところに行く』だ。……今はお互いのことを無理矢理分かろうとしなくてもいいから、感想を共有しつつ親睦を深めようぞ」
双葉は指を立てて自身の考えを話した。双葉とすみれ。お互いにお互いのことを知ろうとして、正面から向かい合って距離を縮めようとしても、距離感を間違えて接触事故を起こしてしまうかもしれないことは目に見えていた。だったら向かい合わずに、同じ方向を向いて、歩幅を合せればいい。
そんな考えで双葉は、同じことをして感想を共有すれば、お互いの価値観を知りつつ、距離を縮めつつ、さらに怪盗団の仲間の事も知れる。一石三鳥の提案だった。
「双葉ちゃん……天才?」
「もっと褒めてもいいんだぞ! 早速行こう。まずは竜司からだ!」
「そうですね竜司先輩がよく行くのは……フィットネスジムでしょうか?」
「……却下でいいか?」
「早速!?」
悲しいかな。ジムはインドア民にはハードルが高い。運動ももちろんだが、周りのジムガチ勢の目に耐えられない。元は引きこもりだった双葉にはまだちょっと怖い場所だった。
「じゃあ……竜司先輩は蓮先輩とよくゲームセンターに行ってるらしいです」
「じゃあゲーセン行こう!!」
双葉が元気よく賛成すると、すみれはそれに従ってゲームセンターへ案内する。
ゲームセンターへ行く双葉の足取り軽いが、周囲の人の目が気になるのか、目を合せないように俯いて道の端っこを歩いた。すみれはそれを悟ったのか通路側を歩いて、双葉から人の目を遮る様な位置をキープしながら歩行した。基本的にこれが二人のデフォルトで、渋谷まで来るときもこういう距離感で歩いていた。
「あ、あり」
「ついた。ここだよ」
「えっあっ、……そうか。ここが奴らが入り浸っているゲーセンか……」
「基本的にガンナバウトとかしてるみたい。ほらあれ」
双葉が何か言おうとしたが、すみれが言葉を遮ってしまいタイミングを逃した。言えなかったことを別に気にしてない風に装ってゲームセンターに入って店内を眺めた。
一般的なゲームセンターで、UFOキャッチャー。格闘ゲームの筐体。レジャーサービスには卓球が出来る台まで置いてある。
「ああ、あれを一緒にやったことがあるって言ってたかも」
すみれが大きな液晶の前に二丁の拳銃のレプリカが置いてある筐体を指差す。
「おお、ガンシューティングか。すみれはやったことあるか?」
「ううん初めて。……これ戦闘の参考になるかも」
「やって……いや、やってみたい」
双葉はすみれに気を使って提案するのではなく、自分のやりたいという気持ちを素直に伝えた。自身の我儘を伝えるのも、受け入れてくれるという信頼関係があってこそだろう。
「うん。やろっか」
「お、おう」
すみれは拒否する気も無いぐらいに双葉の我儘を受け入れた。というより、お金を入れる前に銃に触っている時点ですみれは興味津々だった。
二人は筐体にコインを入れて、銃を手に取る。
「協力と対戦あるけど?」
「対戦!」
「おっけ」
二人は画面の【GAME START】の文字に照準を合わせて、引き金を引いた。
***
画面に出てくる敵を撃ち殺して進むシューティングゲーム。二人が今やっているモードが対戦モードであり、フェーズが終わるごとに倒した敵のスコアの合計得点が出て、計3フェーズのスコアの合計競うモードだ。
最終フェーズが終わった後、お互いのスコアが画面に表示された。
「うそ……」
「すみれ弱くないか? 普段銃使ってるんじゃないのか?」
対戦の結果、双葉の勝利だった。圧勝とまではいかないが、敵の撃ち漏らしで明確な点差が付いていた。
「そうだけど、逆になんで双葉ちゃんそんなスコア高いの? 初めてなのにランキングに入ってるし。それにエネミーの出現位置が分かってるみたいに撃ってたし」
すみれは敵が出現して慌てて照準を向けているのに対し、双葉はあらかじめ敵の出てくる位置に照準を置いて撃つことで、迅速に敵を駆逐しスコアを稼いでいた。
「うーん。私はなんというか、ゲーム脳だからあらかじめ分かるんだよなー」
「ゲーム脳?」
「なんというかゲームにもお約束があって、ボス戦の前にはセーブポイントがあったり、強すぎる敵は負けイベントだったり……そういうプレイヤー心理をとると、どこに敵が湧いたら嫌か、ここにオブジェクトがあるから有効に使えっていう製作者の意図を汲み取ると楽にスコア稼げたりする。……まぁ大抵、製作者の意図を逸脱するプレイをしないとトップにはなれないんだけどな」
「……もう一回」
双葉の言葉を聞いてすみれがボソッと呟いた。
「えー嫌だ。これ腕疲れる」
「もう一回だけ」
コンティニューを懇願するすみれの目にはギラギラと闘志の炎が燃えていた。負けず嫌いのすみれにとってこれはもうゲームではなく、戦いなのだ。
「……分かった。一回だけな?」
すみれの熱意に圧され、双葉は渋々了承してコインを入れた。先程の双葉の言葉がすみれの負けず嫌いの心に火を点けた。
***
「ぐぬぬ……戦いの中で成長をしやがって!」
「ふふん。まだまだ怪盗団の先輩は譲れないので!」
二戦目の結果。すみれが勝利した。双葉のアドバイスを聞き、先の先を読んで立ち回った結果、僅差で双葉のスコアを上回った。逆に、双葉は腕が疲れたのかさっきのスコアよりも得点が微減していた。
「どうするもう一回やる?」
「ううん流石に疲れたし、ここで白黒つけたらズルズルやっちゃいそうだから引き分けのままにしとこう」
『continuity?』の文字の下に表示されてる『NO』の文字を撃ち抜くと、画面はタイトル画面へと戻った。
「じゃあゲーセン出て、次はどこ行こうか?」
「うーん……杏がよく行く場所とか?」
「杏先輩は……よくファッション雑誌見てるから駅地下のブティックとか?」
「服とかネットで頼めばいいのに」
「でも、試着しないと分からないこともあるし一旦行ってみよ?」
「うん……」
双葉は不安と期待をごちゃ混ぜにしてすみれと共にブティックへと足を運んだ。
***
服屋にはコミュ障に一番天敵が存在する。
「本日はどのような服をお探しですか?」
「ひょ!?」
そう店員である。服屋の店員というのは、客を見つけたらすぐに話しかけてくるという特性を持ち、世間話やコーディネートについての蘊蓄を垂れ流し、パーティーメンバーのように付いてくる。その様子から【服屋 店員】で検索したら【うざい】というサジェストが候補に挙がるレベルに。
ファッションに疎い人間ならば助かるが、一人で服を選びたい、もしくは店員と会話したくない人にとっては天敵ともいえるだろう。
「あ、えと」
「今日は秋服を見に来たんです。しばらく二人で見させてもらっても大丈夫ですか?」
服屋の店員にビビり散らかし、すみれの後ろに隠れている双葉に対し、慣れてる態度で店員をあしらうすみれ。
「はいどうぞー。ではお困りになりましたらお声がけください」
「ありがとうございます」
店員は笑顔でその場を後にした。店員は手持ち無沙汰なのか、整頓されているジーパンをもう一度畳んで棚に並べている。
「す、すごいなすみれ」
「前に杏先輩に教えてもらったの。こう言えば気を使える店員は話しかけてこないって」
「ほえー」
一言断りを入れるだけで、自分達だけで見たいということを暗に伝える。店員はいいえダメですなんて言えるわけも無いので話しかけられる頻度は減る。というテクニックを杏と一緒にショッピングした時に教わっていた。
「言葉ってメンドクサイな……というか、すみれ。それ着るのか?」
「え?」
すみれが手に取ったのは、動物柄のシャツ。しかもヒョウ柄だ。
「大阪のおばさんでも今日日着ないだろ」
「まぁトラ柄じゃないし大阪の人は着ないんじゃないかな……」
「そういう問題じゃないだろ」
二人共、大阪へのイメージが偏見レベルだった。
「……決めた。私がすみれをコーディネートしてやるぞ」
「……出来るの?」
「なめんなよー! こう見えてもオシャレさんなんだ。すみれに『これが……私』って言わせてやるからな!」
半ば強引にすみれを試着室へ入れ、双葉は店の中の服を吟味し始めた。
数分後、双葉にカットインが入ったかのような勢いで服を選び、すみれの試着室へ持ってきた。
「これ着てみて!」
双葉が持ってきたのは、ハイウエストのワークパンツと、タイトなニット。すみれは早速、選んだ服を試着し始める。
「着る時に、足首見えるまでロールアップしろよ!」
「えっと、これでこう……」
「着れたか?」
「こ、これでいいのかな?」
試着室のカーテンを開けると、カジュアルかつメリハリのついた服を身に纏うすみれがいた。
「おおー。やっぱりすみれはスタイルいいから似合うと思ったんだよなー。んーでも……」
「でも?」
「ポニテ解いて、メガネにした方が雰囲気合うかも……ほれ」
双葉がすみれのリボンをほどき、自身のかけていたメガネをすみれへと装着させる。
「うっ……度が強い……」
「うっ……なんかぼやける……」
すみれは双葉の度の強いメガネをかけて視界がピントが合わなくなり、双葉は自身のメガネを貸してしまったことで、すみれがぼやけて見えていた。
「私、メガネを持ってるから返すよ」
「あ、そうなのかすまんすまん……おお!」
普段使っているメガネを取り戻し、双葉の視界が回復すると、目の前にコーディネートされたすみれが立っていた。
髪を下ろしメガネをすることで、先程までのスポーティーな印象を無くした代わりに大人っぽい雰囲気を出していた。
「おお、やっぱ私センスあるな~」
「こ、これ私本当に似合ってる? なんか服に着られている感じしない?」
「そんなことないけど、オドオドしてるとそんな風に見えるかもな。胸張って自分は似合ってると思ってれば大丈夫だ。新体操してるすみれなら得意だろ?」
「そ、そっか……すぅ……」
新体操は人に見られる競技、自分に自信が無くては高い評価を勝ち取れない。その心構えを持ってすみれは深呼吸して、姿勢を正した。そしてその場でくるりと一度回った。
「うん、いい感じ」
後ろの姿をチェックした双葉にすみれは自信満々に「……でしょ?」と答えた。
「というかなんでメガネ普段つけてないんだ?」
「えっと、これは私の昔のコンプレックスでもあったから」
これ。と言ってすみれはメガネを指差す。
「なんというか……私には姉がいて、いつも比べられてたから。だから私は姉とは違うってことを、見た目だけでも誰かに知ってもらいたかったのかもしれなくてメガネをかけて髪を下ろしてたのかも……まぁもう乗り越えたんだけどね」
素朴な疑問にすみれは苦笑いを浮かべて答える。本人の中で乗り越えたものだから笑い話になるのだろう。
「そうか……。でもメガネ掛けたすみれも素敵だと思うぞ! 自信持て!」
「……ありがと双葉ちゃん」
「それに……」
「それに?」
「私とおそろいだ。ほら!」
双葉は自身のメガネを両手で動かしアピールする。それを見てすみれも両手を使って上下にメガネを動かす。
「本当だ。ふふっ……」
「えへへ……」
二人は少し照れくさそうにはにかんだ。
「ん? 惣治郎から連絡だ……『夕食どうする?』だってさ」
「もうそんな時間?」
「あいつらが居そうなところを巡礼するのには時間が足りないな」
「そうだね。また今度にしよっか」
「今度?」
「そう。友達なんだからまた遊びに行こう」
「……友達、友達……。そうだ。そうだな!」
双葉はすみれの『友達』という言葉を確かめるように反芻し、咀嚼して理解すると、嬉しそうな声を出した。
「なぁ、ルブランで夕食食べてくか?」
「そうだね。双葉ちゃんを送れるし、お邪魔しようかな」
その後、試着した服を買い、寄り道して怪盗団グッズを買ってから、双葉と共にルブランへ戻った。
***
「すみれ送らなくて平気か?」
「大丈夫。いざとなったらダッシュで逃げるから」
すみれは大量のカレーを頂いた後、買った服を持ってルブランの外に出た。双葉も連れだってルブランを出て、すみれを見送ろうとする。
「な、なぁ、すみれ……」
「……? なに?」
「…………」
双葉がどもりながら言葉を紡ぐ。夜道を照らす電灯が彼女の言葉を急くように点灯する。
「えっとな、道歩く時に気使ったりか、店員追い払ってくれたときとかありがとう……だから、私、今日、楽しかっ、た」
誰かにお礼を言うという行為に慣れていなくて、最後の方は言葉につっかえてしまった。
「うん私も。双葉ちゃんから、仲良くしてくれようとしたの嬉しかった」
「また、遊びたい」
「わかった。約束……じゃあまたね」
「じゃ、じゃあ」
双葉はすみれが角を曲がり、姿が見えなくなるまで手を振っていた。手を振るのをやめると、ゆっくりと来た道を戻ってルブランに帰った。
「ただいま」
「おう、おかえり、ってさっき言ったばっかだけどな」
「……なぁ惣治郎」
「なんだ?」
「私……友達出来た」
「……そうか……よかったな」
「うん……!」
***
「ただいまー」
「おかえり。珍しいねー友達と食べて来るなんて」
「まぁね」
すみれが帰ると、風呂上がりで髪をタオルで乾かすかすみが出迎えた。
「あれ? メガネ掛けてるのも珍しい。最近はポニーテールだったのに」
「ああ……これは。これが私っぽくもあるみたいだから」