幸せなバッドエンドを目指して   作:ぽんしゅー

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 誤字報告ありがとうございます。書いてると認知が歪んで誤字に気付かない事がありますので誤字報告は本当に助かります。


#5 THIS WAY……

 4月13日 夜

 

 

 ただいまーー!!

 

 超ーーー疲れた。五秒だけベッドで休ませてくれーー!!

 

 

 ………………

 

 

 はい休憩終了。プランの練り直しを始めるか。……えっと確かここら辺に……あったあった。

 

 パンパカパンパンパーン!!『† 定められた黙示録(アポカリプス)†』~~。

 

 これはペルソナ5のスケジュールとそこで起きるイベントを書き起こしたノートである。つまり手書きの攻略本。ここがペルソナの世界だと気が付いた際にちゃちゃっと書き記したものだ。

 

 今日起きたイレギュラーは、芳澤すみれが怪盗団のメンバーに仮加入したこと&ペルソナに覚醒した事。このイレギュラーで確実に無くなるイベントは……

 

10/3 マルキパレスに主人公とモルガナ&芳澤が偶然入る。

 ・芳澤かすみ(すみれ)。ペルソナ覚醒

 ・怪盗団の加入を断る。

 

 はい斜線っと。マルキパレスに偶然入ってしまうイベントは、芳澤すみれのメンタルによるな。先生になんやかんや言われて落ち込まなければいいけど。そこら辺のケアもしといた方が良いか……。ハイ次。

 

11/19 ニイジマパレス攻略日。

 ・なんやかんやでパンケーキを騙す。

 ・ジョーカーのピンチにヴァイオレットが助けに来る。

 

 ん~これは大して影響ないか。別にP5じゃこのイベント無いし、敵が出るとしてもたった三体だから主人公なら余裕だろ。いざとなれば俺が代役になろう。はい次。影響が出たイベントは……もうほとんど三学期以降のイベントか。ラスボスと過ごすクリスマスがあるけど今のところ芳澤すみれは仮加入だからどうなるか分かんないんだよな。とりま保留。んじゃ次はっと……。

 

 4/14

 ・鈴井さんが自殺未遂のきっかけとなる体罰を受ける。

 

 ……パレスの攻略は間に合わなかった。時間は無い中俺は頑張った。だから俺は悪くない。

 それに別に助けなくてもルートに問題は無い。むしろ12/24まで原作通りに進めるんだったらここで見捨てて、高巻杏をルート通りに怪盗団に入れさせるのが正解だ。誰も俺を責めないだろ。

 

 はい言い訳終わり。どんだけ言い訳並べようと助けたいっていう欲望に勝てねぇよ。

 

 ……助ける手段は雑だけど、今はこれしか思いつかないなぁ……まぁなるようになるか。

 

「胡桃ー!! 夕飯出来たよー!! 今日豆乳鍋よー!!」

「今行くー!!」

 

 んじゃあ、まぁ明日も頑張りますかー。

 

 4/14

 ・鈴井さんが自殺未遂のきっかけとなる体罰を受ける。

 

 

 ***

 

 

「鈴井さん。今日部活サボってデートしない?」

「……え?」

「いや、そんなマジで聞き返されるとちょっと効くんだけど……。デートは無いにしてもちょっと一緒に帰らない? 話したいことがあるんだわ」

 

 ちょっとふざけて話しかけたら、ガチ目なトーンで返されたのでさっさと本題に入った。

 

「……ごめんね。私今から鴨志田先生に所に行かなきゃならなくて……」

「うん知ってる。その約束ブッチして」

「……え?」

「その約束ブッチして」

「いや聞こえて無かったとかじゃなくて……」

「今日は俺の事優先して」

 

 鈴井さんの手首を掴んで、無理矢理連れて行こうとするも、その場に根を張ったように鈴井さんは一歩も動かない。

 

「いや……ダメだよそんな事……鴨志田先生は……怖いから」

「知ってる。でも俺は怖くないから」

「だけど……」

「バレー部員が体育教官室で好き放題殴られてることも知ってる」

「……っ」

 

 揺らいだ。でもまだ動かない。

 

「俺は友達が殴られてる姿見たくない」

「……それは私もだよ」

 

 握っている手に、鈴井さんが手を重ねて指を外そうとしてくる。

 

「……巻き込めないよ」

 

 優しい人だ。だからこそクソみたいな奴につけ込まれる。

 

「辛かったら逃げていいんだよ鈴井さん。ただ辛いことに立ち向かって戦うことだけが正しいことじゃないんだ」

「……正しいとかそういう話じゃなくて逃げられないんだよ」

「辛くて逃げたくはあるんだ」

「……!! でも……!!」

「俺の事信じて欲しい。必ず何とかするから」

 

 揺らいでいる。あともう少しだ。

 

「……信じていいの?」

「鴨志田の件については鈴井さんにもやってもらう事があるけど、絶対に危ないことはさせないし、もう傷つけさせない。だから一緒に逃げて欲しい」

 

 その返答には足が応えた。地面に縫い付けられていた足が動き、このまま手を引いて連れていく。

 

「おい。どこに行くんだ?」

 

 逃がせると思いきや、目の前に鴨志田が立ちはだかる。

 

「鈴井さん走って」

「え、ちょ」

 

 そのまま横をスルーして昇降口へと向かう。

 

「待てお前ら!! 何やってるのか分かってるのか!!」

「ははは!! 知らねーよバーカ!!」

 

 なんか言ってるけど無視無視。止まるわけねーだろバーカ。鈴井さんの手を引いてそのまま昇降口を出て、上履きのまま学校の外へと逃げた。取り敢えず目立たないようにに路地裏へと入る。

 

「はぁ……はぁ……ここまでは追ってこないだろ……」

「……どうしよ。本当にやっちゃた……」

「はは、不良の第一歩だ」

「言ってる場合かなぁ……」

「じゃあちゃっちゃと行動しますか」

「詳しく聞かなかったけどこれからどうするの?」

「デート」

「……本当に?」

「いや一緒に行って貰いたい場所があるだけ。でも行く前に学校から靴と鞄を持って来なきゃ」

「え……戻るの?」

「まさか。昨日丁度いい後輩(パシリ)が出来たからその人に持ってきてもらおう」

 

 携帯を取り出して、昨日出来た後輩に電話を掛けた。

 

 

 ***

 

 

 鈴井さんとコンビニのイートインスペースで待っていると、目的の後輩が外に見えたので手を振り、あちらもそれに気付いてコンビニに入ってくる。

 

「お疲れ様」

 

 昨日、パレス攻略の日にちを合せるために連絡が取れていた方が良いってことで、芳澤すみれとトークIDを交換しといてよかった。

 

「お疲れ様です。……上級生の教室入るの緊張しました」

「それはマジでご苦労様。今度購買のパン奢るわ」

「……私の事食べ物で懐柔出来ると思ってませんか? 五個でお願いします」

「結構食うじゃん」

「……えっとそちらの方は?」

「ああ、紹介するわ。こちらバレー部の鈴井さん」

「よろしくね芳澤さん」

「よろしくお願いします。あ、こちら持ってきた鞄と靴です」

「ありがとう」

 

 さて、荷物の受けとりも済んだことだし目的地に向かいますか。

 

「腹減ったからビッグバンバーガー行こう。奢るよ」

 

 

 ***

 

 

 ビッグバンバーガーの店内に入るとそこにいたのは、主人公と涙目の高巻杏だった。

 

「志帆⁉ 何でここに⁉」

「杏こそ何で⁉」

 

 ふっ……計画通り……。4/14は鈴井さんの体罰があると同時に主人公がビッグバンバーガーで高巻杏の悩みを聞くイベントが発生する。そこで天才俺は思いついた。これお互いに会って話した方が良いんじゃね?と。

 

 高巻杏の悩みは鴨志田から関係を迫られている事、断ったら鈴井さんのレギュラーを外すとか脅されて今葛藤している。そして今日、鴨志田の部屋に来いって言われて仮病を使って断ったから、その憂さ晴らしとして鈴井さんが体育教官室に呼ばれることになる。

 だが鈴井さんをレギュラーから外して困るのは鴨志田の方だ。実力がある鈴井さんを外して全国大会を勝ち上がるのは難しい。高巻杏はそこに気付けたら、もしくは鈴井さんが高巻杏の悩みに気付けていたらまた違う展開があったかもしれない。それこそあんな悲劇にはならなかったはずだ。

 

「あ、お前こんなとこにいたのかよ~~探した探した。ちょっと付き合えや」

「え?」

ちょっとだけ高巻さんと鈴井さんの二人にさせてくれ

……わかった

 

 主人公の肩を組んで無理矢理立たせる。小声で意図を伝えると抵抗せずに付いてくる。

 

「乙守君どこにい――」

鈴井さんはここで高巻さんに鴨志田の事全て話すこと。それ一番やってもらいたい事だから

……うん。わかった

「よし頑張れ。ゴメン高巻さんこいつちょっと借りるね」

「あ、うんいいけど」

「先輩、私はどうすれば?」

「芳澤さんは一緒のテーブルに来て」

 

 二つのグループで分かれて、高巻杏と鈴井さんの二人きりの状況を作れた。これでお互いに悩みを打ち明けたら、鴨志田の言いなりになんてならないっていう反骨精神も出てきて鈴井さんも自殺なんてしないだろう。悩みを打ち明けるっていうのは勇気がいる事だから頑張れ!!

 

「んじゃこっちはこっちで話しようか」

「……俺も乙守に聞きたかったとこだ」

「え、何?」

「パレスの話」

「……あぁモルガナが勝手に喋ったのね」

 

 あんにゃろ勝手に喋りやがって……。この後は主人公と話し、上手い事誘導してパレスに行かせる予定だった。その際に俺はあの認知世界の事を知らない弱者の体で話すことで、

 

俺「助けて……」

 主人公&坂本「当たり前だ!!」ドン!!

      ↓

 4/15 カモシダパレス三回目の突入&高巻杏のペルソナ覚醒。

 

 っていう原作通りの流れに修正しようと思ってたのに。……まぁバレちゃったなら仕方無い。

 

「あの後実は気になってさ。こっそり行った。それでペルソナに目覚めちゃった。ちなみこっちの芳澤さんも目覚めた」

「……なるほど」

「乙守先輩この人は?」

「……雨宮蓮。最近話題の転入生」

「雨宮先輩。私芳澤すみれって言います。よろしくお願いしますね」

「よろしく」

 

 面識無いのか? 4/12に少しだけど顔見知りになるイベントがあったはずだけど……。姉が生きてることでそこのイベントが変わったのか?

 

「本題に入る前にちょっとお腹空いたからなんか頼んでいい?」

「奢りなら」

「あんま親しくないのにがめついな。最近お金入ったから別にいいけど。芳澤さんも頼んでいいよ」

「ゴチになります!!」

 

 パレスの敵倒すと金が入るからそれでちょっと潤沢。三人のハンバーガー代ぐらいなら余裕よ。

 

「えっとじゃあ――」

 

 

 ***

 

 

「お待たせしました~。こちらサターンポテトと、コメット・バーガー二個になります」

 

 二個という数え方が正しいのか分からない。机に並べられたのはハンバーガーで出来た鈍器。二隻もしくは二艇と呼んだ方が正しいだろう。もちろん頼んだのは俺じゃない。芳澤すみれと目の前で青い顔をしている主人公だ。

 

「……何で頼んだ」

「……芳澤さんが食べるならいけるかなって」

「いただきます」

 

 お通夜みたいな雰囲気を出してる横ですいすいと食べてく芳澤すみれ。その細い体のどこに入ってくんだよ……

 

「……取り敢えず食うぞ。出された食べ物残すのは俺の美学に反する。俺も手伝う」

「助かる」

 

 

 ***

 

 

「ごちそうさまでした」

「「……ごちそうさまでした」」

 

 机に突っ伏す俺達と違って、芳澤すみれは食べてもケロリとしている。胃袋の中にブラックホールでも入ってんのかマジで。

 

「話って?」

「え?」

「俺がさっき遮ったから、乙守が話したかった事」

「ああ、そうだったそうだった」

 

 突っ伏しながらも言葉を紡いで話を成立させる。

 

「鴨志田の改心手伝ってくれないか?」

 

 モルガナが俺の事を喋ったおかげで先程のプランが潰れたので、こんな時の為に温めといたプランBに変更する。

 

「……やる気か?」

「殺しはしない。でもモルガナから聞いたんなら大体知ってるんだろ? もしそうなったとしても覚悟はある。お前にあの鴨志田に一泡吹かせたいっていう気持ちがあるなら手を貸して欲しい」

「……わかった。協力する」

「契約成立……ってことでいいか?」

「ああよろしく。乙守」

「……よろしく『雨宮』」

 

 


 

 

 

我は汝……汝は我……

 

 汝、ここに新たなる契りを得たり

 

 

 

 契りは即ち、

 

 囚われを破らんとする反逆の翼なり

 

 

 

 我、『混沌』のペルソナの生誕に祝福の風を得たり

 

 自由へと至る、更なる力とならん……

 

 


 

 

「さて、話したいことは終わったしあっちの会話が終わるまで……」

「……終わったよ」

 

 話しかけてきたのは高巻杏と鈴井さんだった。お互いに泣いていたのか目が少し腫れている。

 

「ナイスタイミング。こっちも話したい事終わった」

「……あのさ。乙守君……だよね。志帆を連れ出してくれてありがと。志帆が鴨志田のところに行ってたら、あたし一生後悔してた」

「いやそれは別に。俺も鴨志田のやってる事許せなかったから」

「……でさ。あたしにもやれること無いかな?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ちょっとムッとしたか? でもゴメンこう言わないといけないから。

 

「大丈夫。後は何とかするから……あ、もうこんな時間。早めに帰らないと親が怒るから。んじゃまた明日ねー!!」

「あ、ちょっと!!」

 

 適当な嘘を吐いて、その場から逃げ去るようにビッグバンバーガーから出る。今根掘り葉掘り聞かれるわけにはいかない。先程言った言葉の効果が出るのは明日だな。賭けではあるけど一番有効だと思ってる。とりま明日様子見だな。

 

「……うぷっ」

 

 食後の激しい運動はNGだな……。

 

 あっ。上級生の集団に芳澤すみれ置いてきちゃった。まぁいいや、南無。

 

 

 ***

 

 

『ヽ(`Д´#)ノ』

 

 帰宅すると、芳澤すみれから怒った顔文字のスタンプが送られてきた。後で謝罪の返信しとこっと。

 

 さて……『† 定められた黙示録(アポカリプス)†』、『† 定められた黙示録(アポカリプス)†』っと……

 

 4/15  鈴井さんが屋上から飛び降りる。

 

 このイベントはもう無くなったと思っていいだろう。きっと高巻杏と話してもうその気は無いはずだ。そんでついでに……

 4/15 体育教官室で鴨志田に詰め寄るも、主人公、竜司、三島の3人は退学勧告される。(攻略のタイムリミットの勧告)

 

 このイベントも飛び降りから派生したイベントだ。鈴井さんの飛び降りを見て三島が動転したところを坂本と雨宮が問い詰め体育教官室に乗り込むっていうイベント。これも飛び降りが無くなったことで消滅する。問題は次だ。

 

 4/15 カモシダ・パレス潜入3回目

 ・コードネームが決まる。高巻杏がペルソナ覚醒する。

 

 どうすっかなこれ。一応種は撒いたけどうまく機能するかどうか。もし失敗したら高巻杏はペルソナに覚醒することは無いし、怪盗団に入る事もない。そうなったらどうなるか、怪盗団のメンバー欠けたら12/24のラスボスが倒せない可能性がある。だから上手い事このイベントを起こしたいんだけども。

 

 いや、俺が高巻杏の代わりになればいいんじゃないのか……? 欠けた人数は補えてるし、俺アギ系使えるし、代役に成り得るんじゃないのか?

 ……よ~し!! 悩殺術♡とかウソ泣きとかガールズトークとか頑張っちゃうぞ♡

 

「胡桃ー!! 夕飯出来たよー!! 今日も豆乳鍋よー!!」

「二日連続で⁉ 今行くー!!」

 

 んじゃ明日も頑張るか。

 

 

 ***

 

 

『置いていったのはマジでゴメン。ところで俺に魔性の魅力ってあると思う?』

『無いです』

 

 高巻杏の代わりは諦めた。

 

 




 補足説明

 混沌(LE CHAOS)のアルカナの元ネタはエテイヤ版タロットから。
 
 数字は1 
 正位置の意味:理想 観念 美徳
 逆位置の意味:知恵 英知 才能の開花

 エテイヤ版のタロットのパターンは複数あり、混沌のアルカナが存在するのは第三版のGrand EtteillaⅢ。「Grand Jeu de Oracle des Dames/婦人の偉大な神託」というタイトルで1870年に発行されたもの。


 オマケ:11/20の尋問室にて

「あなただけではこの犯行は不可能。協力している人間の中に専門性に長けた人物は多数いたはず」
「……いたのよね? 人心掌握に長け、人間関係に波風立てないように立ち回れて、ありとあらゆる人間に対応できる人物が。そうでないと束ねる事は出来ないはず」
「……どうなの⁉」

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