10/3 月 放課後 曇り
「俺はバカだったんですよ白衣さん」
「いきなりどうしたんですか」
俺は突然降りてきた天啓に体を突き動かされ、丸喜先生にパレスまで来てもらった。丸喜先生の力を借りてちょっとした曲解をかけてもらった。
「先生の力を使えば俺のアステリオスを改造できるし、実際に耐性も変わった。ならスキルも改造出来るのではと思い至ったわけですよ! いや今までなぜこれに気付かなかったのか!」
「とりあえず胡桃くんがなにかして欲しいので、言われるがまま曲解しました」
『私が曲解しました』と生産者マークのようにピースする先生。
「というわけでバトルしましょう白衣さん! リベンジマッチで!」
白衣さんは二つ返事で了承し、瞬く間にファフニールへと姿を変える。俺も怪盗団の衣装へと装いを変えて戦闘態勢に入る。丸喜先生は戦闘に巻き込まれないように小走りでその場を離れていく。
「では」
「いざ尋常に」
「「勝──」」
「お取込み中! すみません!」
戦いの火蓋が切られるその寸前に、このパレスの職員シャドウが割って入った。
職員シャドウがファフニールとなった白衣さんに耳打ちすると、白衣さんは元の白衣姿に戻った。
「すみません、少々トラブルが起きたそうなので対応に行って参ります」
「あ、はーい行ってらっしゃい」
勝負がふいになったので怪盗姿を解除して、そのまま白衣さんを見送った。
「なにがあったんですか?」
「パレス内に迷い込んだ者が現れまして」
「迷い込んだ? おかしいな……」
「それって珍しいことなのかい?」
「周囲に人がいれば認知世界に入る際に巻き込まれて……っていうケースはあります」
一応それで杏もカモシダパレスに迷いこんだからな。
「でも俺達は入る際にきちんと周りに人がいないことを確認しました。だからここに入って来れるのはこのパレスのキーワードを知っている人間だけです。……職員さん、その人物ってどういう人かわかります?」
「はい。こちらの人です」
職員シャドウさんは、手元のタブレットを弄ってその侵入者の映像を見せてくれた。タブレットに映った人物を見て、あり得ないと口から出てしまった。
だってこいつは……。
「芳澤かすみさん……だよね?」
なんでいるんだ?
そもそも今日は芳澤かすみだと思い込んでるすみれが迷い込む日だったはず。でもそれはもう無くなって…………待った。あのイベントはすみれがスランプに陥ってメンタルが不安定になったから起きたイベント。そしてこの間の新体操の大会はかすみではなくすみれが一位を獲ってかすみは二位だった。
すみれの代わりにかすみがそのスランプに陥っていた……? 今のすみれでは絶対に起きないと安心していたけど、姉の方がスランプになってたのは盲点だ。でも二位だぞ? そこまで引きずることでもないだろ!?
でもかすみがここにいることが事実だ。そこにいくら思考を重ねても事実の前には膝を折るしかない。
「う゛あ゛──っ!! ヤバイちょっと俺も行ってきます!!」
これはまずい! 最悪の場合、芳澤かすみもペルソナ使いになる! それだけは避けたい!!
***
「いや、ここどこ!?」
謎のパレスに迷い込んだかすみは開口一番そう叫んだ。いきなり周辺の景色が変わって、摩訶不思議な建物の中に入り込んだらそうも叫びたくもなろう。
(落ち着け、芳澤かすみ。とりあえずなんでこんなところに来たのかを今日の出来事を振り返ろう。えっと、まず授業で指された時に答えられなくてクラスのみんなにひそひそ言われたことでしょ。自販機で飲み物買おうとしたら、千円と小銭しか入らない自販機で、財布に五千円札しか入ってなかったことでしょ。電車でおばあちゃんに席譲ったら、そんな老けてないけどねぇ……って嫌味言われたことでしょ。あとは……新体操の成績のことで先生にちょっと言われたことか……今日ダメダメだぁ私……)
今日のことを振り返り、がっくしと肩を落とす。
(それで気分変えようとして、競技場予定地に来たらなんか知らないところに迷い込んだし……出口の扉はどこにあるか分からないし……)
かすみが辺りを見渡すと、潔癖にも近い白い空間が広がっている。まるで病院の待合室のような場所だとかすみは思った。
(ここどこだろう……それにしても本当に変な建物。この真っ白な壁も天井も床も全部同じ色だし、なんだか気持ち悪い……)
かすみはこの場所の不気味さに恐怖を覚えていた。風の音すら聞こえず、自身の足音しか聞こえないとまるで、世界に取り残されたような錯覚に陥る。
その恐怖を振り払うように、もう一度辺りを確認する。すると、少し遠くに人影が見えた。
(よかった! やっぱり誰かいる! あれ、誰?)
その人物は白衣を着た女性のようだった。階段を上がった先、広いホールのような場所で、彼女はなにか探しているようで、こちらには気付いていないようだ。
(ここの関係者かな? とにかく出口だけでも教えてもらおう!)
かすみはその人物の元へと駆け寄っていった。
「すみません!」
声をかけるとその女性はゆっくりと振り向いた。
「え、あ……は?」
そしてその顔を視認して、かすみは固まった。
「ああ。よかったここにいたのですね」
人だと思っていたソレは、仮面を被っただけの謎の生命体だったのだ。
「おや、なにやら緊張なされている様子に見えます。ここから出て行かれる前に中で治療を受けてはどうでしょう?」
「あ! いえ! お気遣いなく! こう見えてピンピンしてますので! ……あはは」
自身の理解が及ばないモノをみて叫びだす前に、その相手が会話をしてきたのでかすみも思わず返答した。そのおかげか取り乱すことなく平常を保っていられた。
「……いえ。私の目から見てもあなたには治療が必要です。こちらへ」
「──へ?」
ただ、目の前の存在が相手の都合を考えて行動するとは限らない。
白衣を着たシャドウの手がかすみへとのばされる。
「あ、嫌……」
逃げ出したい気持ちと相反して、足が根を張るように恐怖で縛られ動かない。目を閉じたいのに、目を閉じれば全てが真っ暗に飲まれる恐怖で目を逸らせない。
「さぁどうぞこちらへ……主の救いのままに」
「──だ、だれか助け」
白衣シャドウの禍々しいその手が、かすみの頬に触れるその刹那。
ダン! という発砲音と薬莢が地面に落ちる音がパレスに響く。
「……銃撃は反射するタイプか」
白衣のシャドウに着弾した弾丸は反射し、引き金を引いた人物の頬を掠める。
「蓮先輩! と……どなたですか!?」
「説明は後だ! とりあえずここから脱出するぞ!」
「喋ったぁ!?」
颯爽と現れた蓮とモルガナが広いホールへと参上する。白衣のシャドウが指を鳴らすと、どこからともなくシャドウが出現し、状況についていけず混乱しているかすみを捕らえた。
「その患者を戦闘に巻き込まれないところへ」
「え、ちょっと、は、離してください!」
かすみは精一杯力を入れて振り払おうとするも、抵抗空しく羽交い絞めのままズルズルと引きずられていく。
かすみの元に駆け寄ろうとする二人の間に白衣のシャドウが割って入る。
「その子を離せ」
「何のために? 彼女は苦しんでいます。主による治療が必要です」
「オマエラが何してんのか知らないが、どう考えてもロクな事じゃないことぐらいはワガハイでも分かるぜ」
「これは救世です」
纏っている白衣が黒い泥に塗れ、白衣のシャドウの仮面が剥がれ落ちると共にファフニールへと変貌した。
「苦しみを切除し、痛みを剪除し、誰も傷つかない世界を作る。邪魔はさせません」
「おいおい……相当な格上だ。気張ってけよジョーカー!!」
「ああ」
ジョーカーは自身の仮面に触れペルソナを呼び出す。青い炎をかき分け出てきたのはヴァルキリー。赤い馬に跨った女騎士は槍を掲げ【マハタルカジャ】を唱え、ジョーカーとモルガナの攻撃力を上げる。
「来い! ゾロ!」
モルガナの背後に黒き剣士が出現し【ガルダイン】を唱え、身を切り裂き荒れ狂う暴風がファフニールへと襲い掛かる。
「──心に痛みを抱えた人間には、その傷をどうするかはその人の自由です」
「マジかよ!? ワガハイの最大打点だぞ!?」
だが、ファフニールは微々たるダメージしか入っておらず、攻撃も気にせず彼らに話しかける。
「同じ傷を持つものに手を差し伸べる優しい者、もう傷つく人が出ないように他人に教訓を説く賢い者、そして……他者を傷つける愚か者」
一向に攻撃をしないファフニールに対し、二人はひたすらに攻撃を仕掛けるが怯むどころか、言葉を止める気配すらない。
「普通の人が他者を傷つける者に転換する多くのきっかけは様々ですが、その多くは理不尽に晒されること」
『バロン』『ミシャグジさま』『スカディ』『ペイルライダー』『ジャターユ』
ジョーカーは多種多様なペルソナを使い分け、その最高打点を仕掛けるも致命的なダメージは入れられない。
「『──なぜ、自分が』と」
「……!」
「動揺」
蓮の脳裏に蘇る不条理な出来事。次の手を繰り出す思考に過る空白。その思考の隙を邪竜は逃さない。
「……っ!?」
【闇夜の閃光】を喰らい目眩状態となり、ジョーカーは足をふらつかせる。モルガナが【メパトラ】を使い目眩状態をすぐに回復し意識が正常に戻る。
「心当たりがあるのでしょうか」
「……」
「そうさせるように環境が仕向けているのでしょうか。それとも最初からあなたに逃げ道などなかったのでしょうか」
「……お喋りが好きみたいだな」
「心への好奇心が、猫をも殺してしまうぐらいに強い故に」
「ワガハイは猫じゃねぇ!」
「それは失礼」
二人は一度態勢を整えるために、ファフニールから距離を取る。ジョーカーは目を動かし視界にかすみを入れる。まだ奥へと連れ去られずに、戦闘の被害が出ない場所でシャドウに捕まえられている。
「モナ。俺が怯ませるような一撃をヤツに入れる。その隙にかすみを助け出してくれ」
「分かった。ド派手なのを──」
「理解してくれると思ったのですが」
かすみを狙う視線に気づいたファフニールが問答無用で【コズミックフレア】を放つ。膨大な熱エネルギーの奔流が青白く発光した直後、パレスを揺らす大爆発が彼らを襲う。
余りの熱で肉眼で見ることを許さず、認知世界に適応してないかすみの目が開かれるようになった頃には勝負は決着寸前だった。
「自由を勝ち取るためには強く在らねばなりません。しかしそれは常に最強であること。強さにも孤独という痛みはあります」
「ぐっ……」
「クソッ……!」
二人は膝をついて苦虫を嚙み潰したような顔で睨みつける事しか出来ない。その二人にのそりとゆっくりと近づくファフニール。
「痛みからは逃げられない。ですが主の手にかかればあなたの抱えてる痛みもなくなります。どうでしょう治療を受けてはみませんか?」
「断る」
「なぜ?」
「俺の痛みは俺だけのものだ。上から目線の救いの手に利用されたくはない」
ファフニールからの提案を吐き捨て、再びペルソナを出そうとするジョーカーは仮面に手をかける。救いの手を払いのけ反逆の姿勢を見せる。
「苦しみも痛みも全部無くなるのですよ。なぜそこまで拒むのです」
「そんなの感情があるからに決まってるじゃないですか!!」
「か、かすみ……!?」
突如大声でファフニールの言葉を否定し、横やりを入れたのはシャドウに羽交い絞めにされたままの芳澤かすみだった。
「いいですか!? 竜の人!」
「竜の人」
「さっきからあなたの言っていることは確かに理想的で素晴らしいものなんでしょう! でもそう簡単に割り切れないんですよ!! 確かにひどい言葉をもらって傷ついて、逃げ出したいし泣きたい日もありますよ! でも傷はそこから奮起して頑張る理由にもなるんですよ! それを全部無視して救うとか勝手なんですよ!!」
「ですがあなたは
「~~っだから! そういう勝手な理解がムカつくんですよ!!」
かすみを理解しようとするその言葉が、彼女の燃える心に油を注ぐ。
「確かに言う通りですよ! すみれに抜かされて悔しいし! 私の方がたくさん努力してきたのに報われないし! 今日、先生に嫌なことも言われたし! でも今耐えて頑張って強くなろうとしている最中なんですよ! それを誰かが勝手に横やり入れられて邪魔されたくない! ……あなたの言う救いは! ただの身勝手な願望の押し付けなんですよ!! 全部無かった事になんて出来るわけない!」
『妹さんに後れを取らないようにね』
『姉の方は早熟型だったのかな』
『特待だからって勉強しなくてもいいよね』
『芳澤すみれは──』
『姉の──』
「うるっさいな!! 私をあの子の姉だけとして見るな!! 私を見ろ!!」
脳裏の過る言葉が、過去の陰口が、彼女の怒りを燻ぶらせる薪となる。
「私は、世界をもぎ取る芳澤かすみだ!!」
***
──それでいいのよ。お姫様。
──あなたに救いの魔法はいらないわ。ただ強く在ればいい。
──その先に王子様すらも霞んでしまう、煌びやかなあなたが立っているのですから。
──我は汝。汝は我。
──さぁ灰被りのお姫様。燃え上がるほどに輝いて。
***
仮面を剥ぎ取るのに躊躇は無い。
青い火柱が出ると共に、かすみの姿が変わっていく。秀尽の制服姿から反逆の姿へ。その覚醒の勢いでかすみを捕らえていたシャドウは吹き飛ぶ。
すみれと似た、燕尾服を黒いレオタードの上から羽織った装いだが、すみれの怪盗服の色を反転したように、燕尾服は血のように赤く、手袋は光を拒むように漆黒だ。腰に携えたレイピアを抜き、ファフニールへと向ける。
「来て……! アシェンプテル!!」
彼女の背後に出てきたソレは、すみれが使役するサンドリヨンと似てはいるが僅かに異なっていた。サンドリヨンのように青白のクリスタルのような色ではなく、ルビーのように燃えるように輝く赤。そして象徴であるガラスの靴ではなく、片方に金、もう片方には銀の靴を履いていた。
「輝いて、アシェンプテル!!」
眼前の敵を裁かんとする光の柱がファフニールへと襲い掛かる。
「って全然効いてないし!?」
かすみの攻撃をものともせずにファフニールは語り始める。しかしその隙に蓮とモルガナはかすみの方へと近寄り、庇うように立つ。
「……前に進むには痛みを伴う。人はそれを成長と言います。ですがその前提が間違っている。痛みなど無いに越したことはない」
「……よくやったかすみ。おかげで隙が出来た」
「は、はい! お褒めの言葉ありがとうございます!」
「さて、と。……逃げるか」
背を向け、戦闘を放棄して逃げる三人。
「逃がすとでも?」
その行く手を阻むように湧き出るシャドウたち。数は三体、レベル差があるものの、弱点を突ければ蹴散らすことも不可能ではない。しかしそれを不可能にしているのが、背後に迫っている邪竜の存在だった。
(……逃げ道を塞いでるシャドウに集中攻撃して、一点突破出来れば逃げれそうだが……その一手の内にあの大きいシャドウが攻撃してくる……少しでも足止め出来れば……)
「──俺、必要?」
その瞬間、三人の目の前に大炎上が起こる。それは逃げ道を塞いでいた三体のシャドウを巻き込み、その業火が消えると、三つの影は消え、代わりに一人の男が立っていた。
「えっ、誰!?」
「いいところを一人で掻っ攫う怪盗」
背後のアステリオスを携えて、彼らの前に現れたブルこと乙守胡桃。彼はファフニールの相対する形で前に出る。
「悪いけど、見逃してくれない?」
「そう仰るのでしたら……」
ファフニールと胡桃は仲間である。ここで本気で戦ってお互い損耗するのは避けたい。だが、蓮たちの目の前で仲間だということがバレたくはない。だがそれをファフニールは知らない。
(察して察して察して察して察して気付いて気付いて気付いて気付いて気付いて!!)
だから、胡桃はものすごい勢いで瞬きして、ファフニールにアイコンタクトを送る。
「……そう仰るのでしたら! 私を倒してみなさい!! フハハハハハ!! 」
(ノリノリじゃん)
奇跡的に胡桃の意図が通じたのか、しなくてもいい敵役を演じつつ戦闘態勢へうつるファフニール。
「待った、ブル。あのシャドウはレベルが違う。今この場にいる俺たちだけじゃ……」
「大丈夫。俺は怪盗団の秘密兵器だぜ? ド派手なの一発ぶち込むから逃走準備だけよろしく」
蓮の言葉を聞きつつも、アステリオスは拳を構え、必殺技の準備へと入る。
「まぁでも倒しても構わないだろ?」
「フフフ……やってみなさい……!」
かくいうファフニールも核熱属性最上位の【コズミックフレア】を放とうとしている。
(乙守様の攻撃……あれはおそらく火炎属性の攻撃……私には効かないということを知ら──)
「──赤灼爆拳」
耐性があるから受ける。その思考は、アステリオスの拳に乗った熱と衝撃で消え去った。ファフニールの胴体に直撃した炎の拳は、大爆発を起こしてその巨体を吹き飛ばす。
「……よし。トンずらするか!」
「あ……ああ」
たまらずダウンしたファフニールを横目に、胡桃を含め四人は、パレスを後にした。
***
今はモルガナがかすみに何が起こったのかを説明している。異世界、パレス、ペルソナ……。受け入れがたいが実際に見てしまい信じるしかないとかすみは言った。蓮はかすみが学校で落とし物をしたらしく本人に渡すためにここまで来たらしい。それにかすみがここに来た理由は新体操の成績のことで周りからちくちくと嫌味を言われたらしい。
……展開は同じなんだよな。
このイベント、すみれを救ったことで無くなったと思ったんだけどな。まさかかすみの方がスランプに陥ってペルソナ覚醒のきっかけになるとか……読めねぇって。
「その……お聞きしたいんですけど。先輩方は怪盗団なんですか?」
「えーと、それはだな……」
「そうだ」
モルガナが煮え切らない態度で発言を濁しているのを無視して蓮がきっぱりと言い切った。
「……もしかしてすみれも怪盗団ですか?」
「そうだ」
「……!」
かすみは、まさかとは思ったが事実を告げられると流石に驚いたらしい。その後、下を向き少し考えるように目を瞑った。
「それは……すみれが自分で選んだことですか?」
「ああ。自分から怪盗団に入った」
「そうですか……じゃあ何も言いません!」
パっと顔を上げ、明るい顔を見せるかすみ。危険なことをしている妹が心配だったんだろう。大丈夫、ちゃんと守るから。
「ところで、すっごい聞きたかったんだけどさ……入る? 怪盗団?」
「お断りします! 新体操に集中したいので!」
「そっか残念ダナー」
よかった~~~~~~~!! まじここで怪盗団の戦力増強とかシャレにならん。
「私も乙守先輩に聞きたかったんですけど」
「ん、なに?」
「先輩ってなんでここにいたんです?」
……っべー。そもそも今日はこのイベントが消えてると思ってたからパレスに訪れてたもん。逆にお前らがなんでいるの!? って聞きたかったもん。理由……理由……あっそうだ。
「ここに新体操の競技場予定地が建つってすみれから聞いてさ、ちょっとその……下見的な……」
「ほーん……」
「すみれが言ったから、ねぇ……」
「そのためにわざわざ下見を……」
さすがにまずいか?
「先輩」
かすみが俺の肩に手を置く。
「グッドラックです!」
「……? おう」
そして俺の顔を見てグッドサインを出した。……なんかわからんがヨシ! 誤魔化せたらしい。
「とりあえずかすみも初めてペルソナを出して体に負担があるだろうし、どっか店入って休むか?」
「……あー私、お肉食べないと疲れ取れないかもですねー。もしかしたら疲れで怪盗団の正体の口を滑らしちゃうかもー。イヤー、イセカイッテ、タイヘンダナー!」
「甘え上手な後輩だこと。近くに焼肉店あったっけ?」
「ちょうどここの駅周辺に見かけた」
「そこで打ち上げするか。『かすみ頑張った会』ってことで。俺たちの奢りで」
「やったー!」
***
後日。
「昨日はすみませんでした!!」
「いえ気にしてはいませんよ」
パレスへと戻り、白衣さんに頭を下げた。
「それよりもお聞きしたことが。私にダメージを与えたあの攻撃。私には耐性があったのに何故ダメージが入ったんでしょうか?」
「いい質問ですねぇ……簡単ですよ。丸喜先生の曲解を使ってあの必殺技に【火炎ガードキル】を付与して強化したんです」
【火炎ガードキル】は相手の火炎属性の耐性を3ターンのみ無視するスキル。つまり俺のあの必殺技はどんな敵に対しても絶対にダメージが入るってことだ。
「これが進化した必殺技『赤灼爆拳Ver2』って訳ですよ!!」
「……技名、ご自分で考えたんですか?」
「……? はい。そうですけど」
「……なるほど。これが共感性羞恥」
「なんか言いました?」
「いえ別に。その特性の付与。ペルソナの全てにスキルに付与してるのですか?」
「いやーそれが出来なかったんですよねー」
丸喜先生に一応あの必殺技以外にも【マハラギダイン】とか【ティタノマキア】に【火炎ガードキル】を付与してもらおうともらったけど変化は無かった。だからとりあえず【火炎ガードキル】のスキルだけ覚えさせてもらった。
「何故それが出来なかったのでしょう?」
「……多分、俺の認知の影響かもしれないです。『必殺技っていうのは絶対に決まらなければいけない』っていうのと『そういうのは複数持ってるのはズルいんじゃね』っていう自分の認知というか価値観が邪魔したんだと思います」
「……」
「白衣さんは表情無いですけど、言いたい事わかりますよ。くだらないって思ってるでしょ」
「口には出してないだけですが、まぁ」
「別にあれはあれで消費するSPとHP増量したんでいいこと尽くしって訳じゃないんですよ!!」
「……そのデメリットも主の曲解で消してもらえればいいのでは?」
「『デメリット無しで打つ必殺技なんて強いわけない』でしょう」
あ、白衣さんが無い眉間をおさえた。
「でもくだらないって思うんだったら、昨日の白衣さんの悪役の演技だって必要無いじゃないですか」
「あれは……ふふ。少し興が乗ってしまいまして」
「……今笑いました?」
「……何の話でしょう?」
「え、照れてます?」
「何の話でしょう?」
乙守胡桃「んじゃ怪しまれないようにイイ感じに登場したいので、皆さんはイイ感じに邪魔していただいて、俺の攻撃の影に隠れて退場してください!」
シャドウ「「「わかりました」」」