幸せなバッドエンドを目指して   作:ぽんしゅー

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#7 備えあれば嬉しいな

 4/16 土曜日 晴れ

 

 休日だーー!! とはならんのや。秀尽高校は進学校だから土曜日も授業がある。ゆーて半ドンだけども。……半ドンって死語か?

 

 まぁ適当にこなして午後は用事のために授業中に休眠を……

 

「そこ!! 聞いているのか!!」

 

 牛丸がチョークを投げてくるが、フッ……甘いぜ……!! 横に首を振って難なく避け……痛ってぇ⁉

 

「ふん!! 授業中に話を聞かないからだ」

 

 ア、アイツ……!! 投げたチョークの影から、もう一つチョークを投げていやがった!! なんだそのテクニック!!

 

……フフ

オイ聞こえんだろ

 

 周りの奴らがクスクス笑ってて、ちょっとだけ羞恥の気持ちが湧いてくる。

 

 制服のポケットに入ってるスマホが震え、牛丸にバレないようにこっそりと通知を見る。

 

『ちゃんと授業受けないとダメですよ』

 

 スマホの画面から廊下に目を移すと、芳澤すみれが教室の扉の窓から手を振り、移動教室だったのかそのまま去っていった。てかそう思うんならメッセ飛ばすな。

 

「……おい」

「……あ」

 

 牛丸が こっちをみている なにかをいいたげだ ▼

 

「お前後で職員室来い」

 

 おれは 牛丸につかまった!!

 

 

 ***

 

 

「……うへぇあ~~」

 

 牛丸のありがたいお言葉と、担任の蛭田の注意で午後は少し押してしまった。この後釣りに行く予定だったけどそれ明日にして今日はメメントスに行くか。体動かしたい気分だ。

 

 イベントじゃモルガナに教えてもらうまでは行けないけど、存在してない訳じゃない。それに敵の強さもそれ程じゃないはずだ。今開放されてる階層は序盤の『思想奪われし路』のみ。モルガナ一人でもそこに行けたとか言ってたからそこまでなら俺も大丈夫なはず。

 

 危なかったらすぐ帰るし、実験のために本当に先っちょだけ入るだけだから。

 

 

 ***

 

 

 周りに知り合いがいない事を確認してナビを起動してメメントスに入る。誰かに目撃されないようにする事を一番注意しなければならない。こんなとこ目撃されたら言い訳出来ないからな。

 

 後方確認。ヨシ!! 誰も入って来てない。これで安心して実験できるな。

 

 やりたい事は簡単だ。どこまでこの現実はゲームに忠実なのかの実験だ。アイテムを使用したら、勝手に相手にターンが回ってくるのか。アクセサリーの効果は適用されるのか。それを知る事で戦闘での動きが違くなってくる。例えばドリンク飲みながらペルソナのスキルを撃てたりするのかとか。

 

「という訳だからまぁ……俺の研究の礎になれぇ!!」

 

 目の前のシャドウに飛び掛かって戦闘を仕掛ける。

 

 攻略ノ進歩、更新ニ犠牲ハツキモノデース。

 

 

 ***

 

 

 シャドウを蹴散らしながら『思想奪われし路』の最深部に着く。次の階層に行く扉を試しに蹴っ飛ばすが反応は無い。やっぱり『調和奪われし路』へ行く扉はまだ開いてないみたいだ。うん帰るか。

 

 そして実験の結果。俺の考察は大体合ってた。戦闘は現実の喧嘩とそう大差無い。ゲームに例えると、F〇14とか、龍〇如くとか、そこら辺に近い気がする。攻撃しながらアルギニドリンク飲めたし。

 

 次にアクセサリーの効果についてもこれまたゲームと同じく反映されてた。一昨日にビッグバンバーガーで、コメットバーガーを食った証として、二等航海士バッジを貰ったから身に着けてみたが、フワッとしてるけど、体がちょっと丈夫になった気がした。

 

 そして興味深いのがアクセサリーの効果について優先順位というものが存在している。二つのアクセサリーを身に着けたら、先に着けたアクセサリーしか効果は発揮されない。つまりここはゲームと同じく装備できるのは一つまでっていうお約束だ。

 『いっぱい着けたら最強だろ!! 何で一つしか装備出来ないんだよ⁉』っていうゲームの疑問はこういった形で解消された。

 

「……んっ……ぷはーっ!!」

 

 おなじみのアルギニドリンクを何本か飲んでSPを全回復し、来た道戻って今日は解散としよう。アルギニドリンクじゃ、回復量が微量すぎるから、今度雨宮に頼んでルブランのコーヒー持ってきてもらおう。リットル単位で。

 

 ゲームじゃ一瞬でショートカット出来たけど、実際には降りた道を戻ってんだよな。こりゃモルガナも疲れて『今日はもう寝ようぜ』ってなるわけだわ。

 

 ……モルガナカー乗りてぇ。あとドリンクを飲み過ぎて、トイレ行きたくなってきた。

 

 

 ***

 

 

 ――俺はそれなりに戦いを経験してきて、自分が強いという自負がある(過信)。そんなプレイヤーにだけ働く勘がある。

 

「……」

「うぉおおおおおぉお!!」

 

 ――俺はここで死ぬ。……とか言ってる場合じゃねぇ!! 逃げるんだよォー!!

 

「……」

「おわっぷっ!!」

 

 現在あの『刈り取るもの』に遭遇してしまってメメントスでランデブーしてます。やだもう『刈り取るもの』君ったら~求愛行動(メギドラオン)が激しすぎ♡

 

「……」

「だぁーーー!!」

 

 あっぶね!! 今度は弱点のブフダイン撃ってきやがった!! 喰らったらダウンしてそのまま死ぬぞ!!

 

 いやもう怖すぎだろアイツ⁉ 普通に迷子になってたら背後に立って追っかけてきたんですけど!! なにこれこんな状況でも戦闘って入ってるんですか⁉ もう一つ上に昇ればメメントスの入り口だってのに!!

 

「……」

「……っ」

 

 ……っ見えた!! 上に行くフロアの階段!! あそこに逃げ込めばアイツは追ってこれない。

 

「……」

「いや、この、馬鹿がよぉ!!」

 

 あと一歩ってところで目の前に『刈り取るもの』が立ちふさがる。しかし攻撃はしてこな……違うありゃコンセントレイトだ!! 次の一手で何が来ようと死ぬ!!

 

 ……やるしかねぇ!! 現時点での全身全霊の最大火力(ティタノマキア)でぶっ飛ばす!!

 

「アステリオス!!」

 

 背後の雄牛が吠えると、目の前が爆炎に包まれる。光と熱の破壊が奴を襲うも、あまりダメージが入ってる様子は無い。

 

 だが怯んだ。今の内にダッシュで横を過ぎ去っていく。

 

「……っ!!」

 

 駅のホームに足をかけた瞬間。『刈り取るもの』が出した銃声の音と、背後の爆発が鼓膜を叩いた。

 

「ぐっ……っ」

 

 爆発の余波で吹っ飛び、駅のホームからそのままエスカレーターの段差で転がりながら上まで吹っ飛んでいく。

 

「っ痛ってぇ!!」

 

 ゴロゴロと転がり、その勢いが止まって横を見ると、不気味な改札口が目に入ってきた。どうやらメメントス入り口のまで吹っ飛んできたみたいだ。

 

「いないよな?」

 

 誰に確認してるんだって話だが、誰も何も返事をしてこないので、どうやら『刈り取るもの』からは撒けたらしい。逃げ出せた安心感とSPがすっからかんなのが一気に来て、しばらく立てないかもしれない。

 

「……ちょっと漏れてんな」

 

 今度から替えの下着でも持って来よ。

 

 

 ***

 

 

 4/17 日曜日 晴れ 

 

 

 今日主人公達はパレス攻略のために、ミリタリーショップでの武器購入イベントが挟まれる。だが準備してるのはあいつらだけではない。

 

「昼料金は三千円ね」

 

 という訳で市ヶ谷の釣り堀にやってきた。ここは釣った魚の種類とサイズによってポイントが割り振られていて、そのポイントによってアクセサリーが貰える。

 

 魚神のバッジ(100,000ポイント)……は、今日中には無理だから、狙い目はルアーのキーホルダー(6,000ポイント)。あれを認知世界で身に着けるとハイボルテージ(チャンスエンカウント時、クリティカル攻撃を与える確率が15%上昇する)っていう、スキルが発動する。今日はそれを目的に釣っていきまっしょい!!

 

 ノーコンティニューで(以下略

 

 

 ***

 

 

 無理だったよ……全然大物が釣れん。

 

 釣れても20ポイントから50ポイントの小物ばっか。釣ったポイントで大きな餌を交換して、大物釣ろうとしても逃げられて、貯めたポイントがチャラになる始末。心が折れるなぁ!!

 

「……あ」

「……ん? あ」

 

 取り敢えずもう一回ポイントと餌を交換しようと席を立つと、見知った先生と顔を合わした。川上先生だ。

 そういえば今日じゃないけど、雨宮と坂本が釣り堀で遭遇するイベントあったな。

 

「どもっす」

「どうも。男子高校生が一人で来るとこじゃないわよこんなとこ。もっと元気に外で遊びなさいよ」

「ちょっとボーっとする時間が欲しいなって」

「ああ、そう」

 

 適当に返事され、俺とは反対の生け簀に釣り糸を垂らす先生。

 

「……乙守君さぁ。何で鴨志田先生に盾突いたの?」

 

 餌を取って戻ってくると、川上先生がこちらを向かずそんな事を尋ねてくる。

 

「鴨志田がやってる事知ったらじっとしてられなくなりまして」

「ふーん……君ってそういうキャラだったんだ」

「どういうイメージだったんですか俺って?」

「うーん……無難な人間?」

 

 無難……無難?

 

「無難って何すか」

「なんというかいい意味で替えが利くというか、万能な人って感じ。君って人当たりいいし、悪い評判も無いし、何でも器用にこなせるじゃない?」

「ああ、そゆこと」

「学年が変わる時に、クラス替えがあるじゃない? あれって先生が誰をどのクラスに入れるかで先生達で話すんだけどね、君結構人気だったんだよ」

 

 ……………………

 

「例えるならトランプのジョーカーね。どこ入れても何の役にも成れちゃうような万能な切り札。……それも鴨志田先生との問題を起こすまでだったけど」

「……そう言って貰えるのは嬉しいですけど、俺ジョーカーあんま好きじゃないんですよ。だってなんにでも成れるって事はそこにいるのは俺じゃなくてもいいって事じゃないですか」

「……」

「どちらかと言うと俺はスペ3みたいな奴になりたい……なりたかったんですよ。最弱だけどジョーカーに勝てるっていう唯一無二の個性を持った人間に。でもそういう生き方は社会が許してくれない……空っぽのまま、周りの顔色を見て自分を変えて生きていくしかない……息苦しいですよねこの世界って」

「……君は」

「なんちって!! 先生の話に乗ったら大富豪みたいな話になっちゃいましたね。俺のバケツの中は大貧民なのに。ははは!!」

「……」

 

 俺の渾身のギャグがスルーされてちょっと悲しい。えー、じゃあ次の話題出しますか。

 

「雨宮蓮って奴先生のとこ入りましたよね? あいつの事どう思ってます?」

「どうって……噂通りの生徒って感じ。初日から遅刻するし、不良の坂本君とつるんでるから、先生達の間でも要注意人物って認識よ」

「あいつって噂で言われてるほど悪い奴じゃないですよ」

「……もしかしてあの子に感化されて鴨志田先生に盾突いたの?」

「まぁ少なくとも影響はされてるかもしれません。でもだからってあいつのこと悪く思わないで下さいね。俺が勝手に動いただけですから」

 

 ここで雨宮の事聞いて、どの位俺の知ってる原作とかけ離れているかの確認をしたかったけど、評価は大体一緒みたいだ。

 

「で、話変わるんですけど。今度の期末試験の現文の範囲とどこら辺出るか教えてください」

「……別にいいけど釣りしながらね」

 

 

 ***

 

 

 川上先生の話を聞きながら釣りをするも、一向に釣れないで時間だけが過ぎていき、バケツの中には数匹の稚魚のみ。

 

 一日で6,000ポイントは無理だったよ……はぁ……

 

「なんでそんな落ち込んでのよ」

「……いや景品欲しいけど俺、釣りが下手みたいで……」

 

 そう言いながら背後を見ると、川上先生のバケツには飛び出る程大量の魚が入っていた。

 

「先生……俺金払うんでその魚譲ってくれませんか?」

「そこまでして欲しいの……? 別に譲るわよ、景品目当てに釣ってた訳じゃ無いし」

「マジすか⁉」

「それに、もう会えないかもしれないし」

「え。転勤するんですか?」

「逆よ。君がどっか行くかもしれないって事。鴨志田先生、次の理事会で君の事吊るし上げるって言ってたから」

 

 あ、だから次の期末の範囲詳しく教えてくれたのか。俺が先に吊るし上げられて退学して、試験受けないかもしれないから。

 

「んじゃその好意に甘えて戦果を横取りしましょかね」

「……ごめんね。私にはこういう事しか出来なくて」

「……先生。さっき言った大富豪の話覚えてます? ジョーカー好きじゃないって話」

「……? ええ」

「でもジョーカーって見方によって全然役に立たないんですよ。ババ抜きだったら最後に持ってた奴が負けですしね」

「……何の話?」

 

 両手にバケツを持ってその場を去る前に先生に告げる。

 

「見方を、世界を変えてやりますよ。この俺が」

 

 これは宣戦布告だ。俺がこの世界を変える革命を起こす。鴨志田はその第一歩だ。

 

「だからきっと俺に現文の試験範囲教えたこと後悔しますよ」

 

 そう宣言して俺はその場を去った。

 

 

 ***

 

 

「合計で9,000ポイントだね」

「先生すご」

 

 

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