妄想ウルトラマンゼロ
妄想ウルトラセブン登場
「お互いに礼!」
『ありがとうございました!!』
純白の道着に帯を締めた、若き空手キッズたちが立ち上がる。後ろで待機しているおっさん連中も立ち上がった。
「ありがとうございましたー!」
その中で、一際元気な挨拶をしてくれる少年がいた。名前を
「とっとと帰れ、轢かれないようにしろよー」
『はーい!』
元気だなァ、と慎太郎は苦笑した。
その日も、変な声が上がっていた。キチガイの声であった。
「クァッハハハハ!!」
「キャカカカカカ!!」
「オォン! アォン!!」
街の中を荒らしながら走る暴走族────いや、
「俺の身体が轟音と風で
「エンジンをふかした時の爆音がたまらねぇぜ。もう気が狂うほど気持ちええんじゃ」
「あぁ^~はよう風まみれになろうぜ。仲間たちもエンジン啼かせてギアを入れて居る(勧誘)」
「Foo↑↑↑気持ちいぃ~~」
「ちょっと速すぎんよ~(恐慌状態)」
「もっと速度出して速度出してホラ」
「狂うぅ^〜〜(スピード狂)」
まあ、こんな具合にピーチクパーチクと喚きながら道路を爆走するのが珍走団である。
前を見ている上でルールを守らず走行するようなクソである。そんな矢先、事故が起きた。
────────────────バァン! (大破)
「いってぇ!? おいニャンニャンニャン! (猫かの確認)」
猫でも踏んだのかと珍走団の一人は確認した。……そこに倒れていたのは猫ではなかった。
「やべぇよ……やべぇよ……人轢いちまった……」
────────一人の子供であった。
「うせやろ?」
「逃げなきゃ(使命感)」
「失礼しまーす(強行突破)」
「あっ、おい待てい(出遅れ)……そうだ! じゃあぶち込んでやるぜ(トドメ)」
ついでと言わんばかりに珍走団の一人は少年を再度撥ねた。
その後、その子供は近隣住民の通報を受け救急車で搬送。全身打撲、そして左足骨折。意識は昏睡状態のまま戻ってこなかった。
その子供は慎太郎の関係者だった。というのも、その子供は慎太郎の通う道場の道場生だからだ。
「
慎太郎は急いで病室に駆けつけた。心電図はまだ動いている。死んではいない……が、轢かれた少年はまだ眠ったままだった。
「なんて事をしやがったあの珍走団……!」
慎太郎は拳を握りしめた。大切な弟分のような存在なのだ。
そんな慎太郎の右肩に、誰かが手を置いた。
「……落ち着いておくれ、慎太郎」
「……!
「慎太郎、後輩が轢かれて怒るのはわかる。けれど、まだ戦う必要は無い」
「しかしッ」
東雲は、やんわりと慎太郎を制した。
「泰心くんを信じろ、慎太郎。彼はきっと戻ってきてくれるさ」
慎太郎は怪訝な顔をしたが、泰心のことを信じようと思ったようだ。
「……押忍、そう言えば朝日先生は?」
「今来てるみたいだね」
そう言ったそばから現れたのはどこか冴えない青年である。
「「押忍」」
「……泰心くんの容態は?」
その青年は心配そうに訊いた。
「全身打撲、それから左足骨折みたいです」
慎太郎はそう答えるとその左目を静かに向けた。
泰心は目を開けていない。夢の中でも殺されているのではないか、とすら思えてくる。
「……辛いだろうけれど、我慢してくれ慎太郎。今は泰心くんの復帰を祈るんだ」
「……朝日先生」
「祈るんだ慎太郎。祈りの力は強く作用するんだから」
そう言うと、朝日は慎太郎の方を向いて静かに笑う。
「……彼は、きっと蘇るよ」
病室には、ウルトラマンゼロとウルトラセブン、そしてウルトラウーマンラピスのソフビ人形が置いてあった。
「泰心くんの病室はここであってるよね」
「あ、泰心くんの担任の……矢的先生でしたか」
泰心のために祈り続けていた慎太郎に、ある男が声をかけた。
「泰心くんの容態は?」
「まだ起きませんね。さっきからうなされてます。朝日先生と一緒に祈っていたんですが……」
「朝日……朝日ってことは、
「……そうですね」
慎太郎は目を伏せる。
「俺に力があれば」
「そんなに悲観する必要は無い」
慎太郎は顔を上げた。
「彼を守れなかったのは私も辛い。だけど、君は祈ることができる。私も祈るよ、彼の為に。それが教師に、そして師範としてできる事だ」
「……アンタは」
「ン?」
「……いや、何でもねぇっす。良い人だなって」
「……失敗してきたからね、何度も」
「…………そッスか」
二人は、静かに祈った。
慎太郎は心を燃やした。
翌日。
「暴走族の調査ァ?」
開口一番がそれだ。
肇は怪訝そうに慎太郎を見た。
「慎太郎お前、何言ってんだよ。そこは警察のお仕事だろう?」
「違ぇんだよ話が! オレの後輩が轢かれたんだ!!」
「ああ、そういう事ね……OK、わかった。独自任務だ、慎太郎! 警察と協力し、暴走族を調査せよ!!」
「了解!!」
流石は肇である。竹馬の友、とはこの事だ。
慎太郎は急いで走り─────
「あいてっ」
──────勢いよく壁に激突した。
「はやりすぎんなよー」
「手がかりを掴んで、そして珍走団を血祭りにあげてやる」
慎太郎は恨み言を吐いた。
いくらウルトラマンであっても、こういった捜査は苦手なのだ。
故にできるのは聞き込みくらいだ。
警察には聞き込みは任せてくれと言ったがどうなるやら、と思ったのは杞憂らしく。
出るわ出るわ目撃情報、出るわ出るわ罵詈雑言。
情報は以下の通りだ。
・あの暴走族もとい珍走団は『
・普段から爆音で暴走していた
・轢かれかけた住民多数、死にかけた住民多数
・違法改造したバイクが特徴
・全員『瑁屨』と書かれた面頰を付けているらしい
・ほとんど語録でしか話していないクッソ汚い集団
「人間の屑がこの野郎……」
慎太郎は拳を握りしめた。必ず、絶対に、何があっても、弟分を撥ねた極悪非道の珍走団を殺さねばと思った。
「……ご協力感謝致します」
慎太郎は深々と頭を下げた。警察には聞き込みを任されていたため、そういった事を伝える必要もある。
「あー、悪いね。最後にもひとついいかい?」
腰の曲がった老人が慎太郎に声をかけた。
「はい」
「……彼らは、恨みを買っている。災難が降りかかるのは、多分近いと思うぞよ……」
「……ありがとうございます。警察に連絡をしておきます」
警察の方に聞き込みの情報を渡し、慎太郎は捜査に戻った。
有力な情報は、今度は得られなかった。
その晩のことだった。
泰心はうなされていた。夢の中ですら殺されていた。あまりにも殺されていたので、泰心はどんどん恨みを膨らませていた。
それは巨大なマイナスエネルギーであった。宇宙に届くくらい、巨大で純粋で、そしてどす黒いマイナスエネルギーだった。
『苦しい……苦しいよ……』
泰心はそう思っていた。それは少しずつ歪んでいった。いい子である事へのフラストレーションと、暴走族、否! あの気狂いどもへの恨み!! それこそがマイナスエネルギーの根源である!
夢の中ではウルトラマンゼロとウルトラセブン、ウルトラウーマンラピス、ウルトラマンヴェラムそしてウルトラマンアバドンが一緒に闘っていた。泰心を守る為に。だけど、どこかで歪みが生まれて、泰心は殺される。その度に、夢の中のアバドンも苦しみと悲しみに暮れてしまう。
自身が兄と慕っている青年、慎太郎は自分の事を思って捜査に走っている。泰心はそれが嫌だった。少しでも慎太郎を助けたかった。無力だった自分を呪った。泰心は思った。奴らが憎い、憎い憎い憎い憎い憎い……!!
泰心は恨みを抱く。憎悪を抱く。彼の脳内に、とあるワードが現れ、変換されていくのだ。
korositeyaru
変換
ころしてやる
変換
頃し手遣る
変換、コレジャナイ
頃してやる
変換、コレジャナイ
殺してやる
あった
あったたたたあったあたたあたたああああああattaaaatttttttttttttaaaaaaaaa
あった
殺す
絶対に
『殺してやる』
その時、不思議なことが起こった。
泰心が放つマイナスエネルギーが3つに分かれ、ウルトラウーマンラピス、ウルトラセブン、そしてウルトラマンゼロの人形に乗り移ったのだ!
『お願い、ウルトラセブン! ウルトラマンゼロ! ウルトラウーマンラピス! あの悪い暴走族を、やっつけてよ!!』
それらは闇に包まれ、街の中で巨大化する。
「ヤァー!」
「デュワッ!」
「デェリャッ!」
────────────闇に染まった、三人のウルトラ戦士が現れた。
その頃、マイナスエネルギーを察知した者が三人いた。
「……
矢的猛は空を見上げ、
「嫌な予感がするッ」
朝日勝人は拳を握り、
「───────まさか、やっちまったのか泰心!!」
慎太郎は基地から飛び出そうとして、
「あいてっ」
「お前どうした慎太郎」
ごぉん。
壁にぶつかった。本日二度目。
妄想ウルトラセブンたちは、暴走族たちを目敏く探していたりその時、目の前で自身の仇とも言えるかの気狂いに轢かれそうになっている子供を見つけた。妄想ウルトラセブンは、子供を屋上に置くと、サイズを変えて珍走団の気狂いを蹴り殺した。妄想ウルトラマンゼロは、親父同様同じサイズになり追いかけ回し、フェイクゼロスラッガーで首を撥ねた。妄想ウルトラウーマンラピスも親父と兄同様人のサイズになり、虚空から日本刀にも似た剣を生成して斬り殺す。辺り一面は血の海だった。
「お兄さんゆるして! お兄さんゆるして!」
「壊れちゃぁ^~う(絶命)」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい! 待って! 助けて! 待って下さい! お願いします! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!! (発狂)」
「やべぇよ……やべぇよ……朝飯食ったから……(恐慌)」
「ああ逃れられない!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛も゛う゛や゛だ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!! (発狂)」
死にかけていた子供を助けただけで、あとは恨みばかり。泰心の持っていた優しさはとうに失せ、今は紅き死刑執行人、蒼き粛清者、朱と碧の悪魔へと変貌している。
妄想セブンたちは飛び上がり、奴らの家族を殺しに行った。
泰心は思っていた。暴走族の家族も悪人だと。心の底から、そう信じていた。
そこに、三人は集まった。
「匂いからしてウルトラ戦士じゃあない。軟質ポリ塩化ビニルと血の匂い……嫌な匂いだ」
慎太郎は鼻をつまんだ。
「人一倍鼻が効くからな、お前は」
矢的は苦笑した。
「……まあ、いい。行きましょう、朝日先生、矢的先生!」
諸星慎太郎はそう叫び、アバドスティックを取り出した。
「よぉーしやるぞ……! 泰心くん、僕たちが助けるから!」
朝日勝人はピカリブラッシャーを取り出した。
「往くぞッ」
矢的猛はブライトスティックを取り出した。
「ウォオオオアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛!!! アバドンッ!!!!!!」
「ゼァーッス!」
「エイッティ!」
三つの光が、巨大なる戦士に変貌する。
ウルトラマン80、ウルトラマンゼアス、そして、ウルトラマンアバドン。
3人の戦士が現れた。
「……!!」
ウルトラマンアバドンたちの登場に、街の人々は驚いた。CETは急行中である。
「驚いたな、こんなにもマイナスエネルギーが強いとは……」
ウルトラマン80は妄想ウルトラセブン達を見た。拳を握りしめ、構えた。
「……やるしかねえんだよなぁ!!」
アバドンは構えた。
「…………助けるから! 待っててくれ!!」
ゼアスは、意を決して構えた。
「デュアァアアアアアッ!!」
「デェエエエエリャァッ!!」
「シャァァアアアアアッ!!」
妄想セブンたちは、アバドンたちに襲いかかった。
ウルトラマン80は、妄想ウルトラセブンと闘った。
「(昔闘った個体よりも、格段に強化されている!)」
80は悟った。この妄想ウルトラセブンは、顕現させた泰心の怨念だけではなく、泰心の戦闘センスをもコピーしているのだと。
妄想セブンは、かつては使えなかったアイスラッガーを使用した。頭部から外されたアイスラッガーは、80の首を狙わんとしていた。
ひゅう、と風を斬り、アイスラッガーが唸る。80はアクロバティックに回避すると、それを蹴りで叩き落とした。
妄想セブンの頭部にアイスラッガーが装着され、再度構える。
妄想セブンは飛び上がる。ウルトラマン80も飛び上がる。そして、
「タァッ!!」
「デュワッ!」
互いの飛び蹴りが交差した。
爆発が起こった。
その爆発の中を突っ切る者がいた。
妄想ウルトラウーマンラピスとウルトラマンゼアスだ。
まるでウルトラマンシャドーとの初戦のように組みあい、しかしゼアスはその時よりも強くなっているため近距離での膝蹴りで対応する。
妄想ラピスは腹を抑えた。ゼアスは距離を置き、構える。
蹴り技を放つと、妄想ラピスはそれに対応した。
前蹴り。火花。イーブン。
下段回し蹴り。火花。イーブン。
横蹴り。火花。イーブン。
後ろ回し蹴り。火花。イーブン。
膝蹴り。火花。イーブン。
中段回し蹴り。火花。イーブン。
下段回し蹴り。火花。手応えアリ。
中段回し蹴り。火花。イーブン。
前蹴り。火花。
──────当たった。
前蹴りが妄想ラピスを大きく吹き飛ばす。
妄想ラピスは立ち上がり、フェイクスターライト光線を放った。
ゼアスはそれを回避した。煙が轟々と立ち込めた。
その煙を突っ切るように、妄想ゼロが吹き飛んできた。
その先にはウルトラマンアバドンがいた。
アバドンは拳を握りしめ、妄想ゼロの顔面をぶっ叩いた。さらに、目にも止まらぬ速度で貫手を浴びせる。
妄想ゼロは、泰心が最も得意とする大技、720度キックを放った。
何度も組手で見ていたそれは、しかしアバドンの怒りを買うには充分であった。
アバドンはそれを受け流し、そして足を掴んで一本背負い。そのまま、馬乗りになってマウントパンチである。
その時、80は叫んだ。
「妄想セブンたちは泰心くんの怨念で強くなる! その為にも病院に近づかせないようにしてくれ、アバドン!!」
「……チィ! めんどっちぃな!!」
アバドンは妄想ゼロを空に投げ飛ばすと、イマージュメルバを召喚する。
「イマァアアアアアアジュ!!」
イマージュメルバの風が、妄想ゼロの体を痛めつける。
「アバドン! 地上を見てくれ!!」
ゼアスが叫ぶ。アバドンは地上を見た。
そこには、マイナスエネルギーで生まれた『カゲ』たちがあった。ハゲじゃない、カゲだ。
「なんってこったい!!」
カゲたちは見境なく通行人を襲う。
「やめろ泰心!! お前は空手家としての心を忘れちまったのか!!」
アバドンは叫んだ。
妄想ゼロは、いや泰心はこう言った。
「憎い、憎い! 悪を倒す力がいるんだよ兄さん! 僕は、悪を打ちのめしたい!」
「なら善行で悪を倒せ!!」
「それよりも手っ取り早いじゃないか! 力こそ正義だ! 弱さなんて……!!」
がっぷり四つに組む二人。
精神世界では、目が赤くなった泰心と、同じく目を赤く光らせた慎太郎が組み合っていた。
「お前は全国のウルトラマンを信じる少年少女の気持ちを踏みにじる気かァーッ」
「兄さんはわかってない!! ウルトラマンは平和の守り神、暴走族みたいな悪を殺してくれるんだよ!!」
「可哀想な奴だ! ウルトラマンは決して神じゃあないし、俺はそのために教えたんじゃない!!」
急に土砂降りの雨が降り注いだ。互いの精神がぶつかり合うことで、悲しみの雨が降り注いできたのだ!
「……兄さんは馬鹿だ。僕は、悪を打ちのめすためにヒーローになってやる!!」
「バカはお前じゃぁああああ!!」
妄想ゼロの顔面に、アバドンは720度キックをぶちかました。
カゲを潰しながら、妄想ゼロは地に倒れ伏す。
「目を覚ませ!!」
アバドンは近づいた。その首を、
「デェリャッ!!」
──────────フェイクゼロスラッガーが斬り裂いた。
アバドンの首はころりと落ちた。
そしてその首は、
「おっと危ない」
「よいしょっと」
とんでもないスプラッタである。首がごろりと落ちる、それをキャッチしてまたくっつける。
やはり化け物である。ウルトラマンの皮を被った化け物だ。
「ふぅ────────……俺はこの程度じゃあ死なないぜ泰心、覚えておきなぁ!!」
妄想ウルトラマンゼロはぞっとして後ずさった。もちろん、病院で眠っているはずの泰心もゾッとしていたと思われる。
「地上の方が気になんだよなぁ……」
アバドンは視線を地上にやって、その後思考を妄想ゼロたちに向けた。
地上には、東雲優がスタンバイしていたのだ。
アバドンは悟った。東雲ならカゲを殺せると。
「……ジュアッ」
アバドンは構えた。80とゼアスも構える。妄想セブンたちも構える。そして、六つの巨体が再度鍔迫り合うっ!!
その頃、地上では。
「シュッ、じゃぁ!」
東雲によって、カゲの群れを倒す殺戮ショー、東雲無双が開催されていた。それはまさしく武人であり、そして武神であった。
カゲの腹部を拳が貫いたと思えば、頭部に蹴りを放つや否や首から上が霧散する。蹴った点は常に爆発を起こし、さらに蹴りの風圧で辺りのカゲが斬られる始末。
人の身でありながら、人智を超えた戦士。
その実力があるからこそ、本気になったウルトラマンすら下すことが出来るのである。
「シュッ!」
またひとつ、カゲが死んだ。
「デェリャッ!!」
互いの蹴りが交錯する。
「チィッ! こいつを外せッ!」
「これも修行のうちだ! 我慢しろ!」
アバドンと妄想ウルトラマンゼロの闘い……の、ハズなのだが。
どっからどう見ても、K76星での組手にしか見えない。
なんせアバドン謹製のテクターギアにより妄想ゼロは動きを制限されている。また、先程のアバドンの攻撃により泰心の本音が外に出やすくなったためか、妄想ゼロは先程よりも饒舌に喋っているのだ。
「クッソォ!」
投げられて悶えていた妄想ゼロは、すぐに立ち上がると、アバドンを睨んだ。
「デェリャッ!」
「シュッ」
前蹴り一閃。
妄想ゼロが吹き飛ばされた。
妄想ウルトラウーマンラピスは先程よりも強い力を振るい、ウルトラマンゼアスを襲撃する。眼突き、金的、
「ゼアッ!」
妄想ラピスは狼狽した。ゼアスの懐に入ろうと、その小さな体を縮ませるように近付いた。その速度はまるでロケットのようで、しかしゼアスにとっては児戯にも劣る速度であった。
「ゼアッ」
軽く飛んで、そして後頭部目掛けてキック一閃。
妄想ラピスが大きく吹き飛んだ。
妄想セブンは80と死闘を繰り広げていた。
80は妄想セブンの攻撃を回避し、的確に鋭い技を当てていく。一方妄想セブンは、一撃必殺を狙う為かそれとも狼狽か、大振りになっていた。
こんな妄想セブンは80の敵ではない。
80は、ウルトラ400文キックを放ち、直後にダイナマイトボールを放つ。全ての技がクリーンヒットし、妄想セブンは吹き飛ばされた。
その先には───────
「ぐっ」
「シュゥ」
「デュゥッ!?」
───────妄想ゼロと妄想ラピスがいた。
「おイタが過ぎたようだな泰心。反省しろ──────!!」
「……もう一度、やり直そう。優しさを忘れぬようにね」
「誰だって、何度でもやり直せるんだよ泰心くん。優しい君になら、わかるはずさ」
一同は光線をチャージした。
妄想ゼロは慌ててフェイクワイドゼロショットを、妄想ラピスはフェイクスターライト光線を、妄想セブンはフェイクワイドショットをチャージした。
「アァアアアアアアアアアバディウム光線!!!!!!!」
「─────ぜぁっ!!」
「ショワッ!!」
互いの光線がぶち当たる。それらは暫く撃ち合いになり、しかし年の功か、それとも思いの強さなのか定かではないが、アバドン達の光線が打ち勝った。
妄想セブンたちは苦しんだ。
「泰心よく聞けェ!!」
アバドンは光線を打ちながらこう言い放った。
「お前は良い奴だ! 俺が保証する!! だから─────ッ!!」
息を吸った。
「もう二度と、心配かけさせんじゃねぇ───────────────ッ!!!!!」
「────兄、さ」
妄想セブンたちは、消失した。
一週間が経過した。
泰心は超人的な回復力を発揮し、今はリハビリに励んでいる。少し歩き方が覚束無いが、あと一週間もすれば元通りだろう。
慎太郎は二日に一度面会することにしていた。しかし、泰心は明らかにアタリがきつくなっている。取り繕ってはいるが、慎太郎も凹んでいるわけで。
「あああああああ泰心に嫌われちまったあああ……」
「ははっ、本当に信頼した人にはああいう態度とるらしいね泰心くん」
「いや、だとしても……」
「どこか吹っ切れたんじゃあないかな、泰心くんは……」
朝日はそう言って笑った。
その後、暴走族の家族は
それがまた別の騒動を引き起こすのだが、それは別の機会に。
その頃、泰心が放った強力すぎるマイナスエネルギーは宇宙を漂っていた。
虚無の宇宙空間が割れる。
そこに現れたのは、金と銀の巨人。
「ここがマイナスエネルギーが大量に発見された時空かァ?」
銀色の巨人は、スラッガーを手で撫でた。
「ああ! 間違いねぇ、ここにめっっっちゃつえぇ奴が居る!」
そして金色の巨人は、まだ見ぬ強者に目を輝かせていた。
─────新たな事件の始まりであった。