ウルトラマンアバドン season2   作:りゅーど

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アブソリュートメメントス
ダークキラー・ザ・アンダイング(不死身のダークキラー)
愛憎戦士ケィアン(ナミダ/ベノム)
結合の怪物
登場


アブソリュート・メメントス&不死身のダークキラー編
戦士降臨


「がっは!?」

 高さが約6kmほどある岩盤に、何かが打ち付けられる音がした。

 赤と青、そして銀のライン。ニュージェネレーション・ウルトラマンたちを率いる我らの兄貴分、ウルトラマンゼロだ。

 そんなゼロは、最初からピンチである。

 無理もない。

 目の前に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。まるでゴールドシップがトーセンジョーダンを見つけた瞬間に蹴りに行くように、そのウルトラマンはゼロを見つけた瞬間に殺しにかかる。ありとあらゆる手段で。

 そのウルトラマンの名は、ウルトラマンアバドン。ウルトラマンベリアルの実弟であり、ウルトラマンゼロひいてはその家族を毛嫌いしているきちがいである。

 今回は撲殺を選択したらしい。

 アバドンは右眼が見えない。代わりに、嗅覚と聴覚、そして味覚が優れている。

 喉も強い。かつて人間に化け、コロシアイ学園生活(ダンガンロンパの世界の生活)をしていた時は『超高校級の歌い手』として一世を風靡したくらいには。

 そんな彼は、格闘能力だけでゼロを圧倒している。ありとあらゆる平行世界に飛び、ありとあらゆる格闘技や武道、そして特徴的な『戦いの術』を白帯(素人)から始め、黒帯(達人)になるまでやり込む。故に彼は強い。

 ステゴロだけでいくのならば、ウルトラマンレオすらも倒すことは出来るだろう。

 彼の動きには無駄がない。

 空手道をベースに、様々な武道や格闘技を織り交ぜた、いわば一枚の流麗なる織物のような戦闘スタイルと言ってもいい────いや、しかしだ。それでもなお彼は残虐なる悪魔だ。タガが外れると───────

「ぐっ、がはっ」

「ヒャァアッハハハハハハハハハハハ!!」

 ───────────こうなる。

 秒間6000発。まるでマシンガンが如く、炎を纏った重い拳が打ち込まれる。鍛え上げた腹筋に全ての拳が吸い込まれ、ゼロは苦悶の表情を浮かべた。

 ゼロは、脚にエネルギーを貯めてアバドンの顔面を蹴り抜いた。その足は燃えていた。ウルトラマンレオ直伝、名付けて「ウルトラゼロキック」! 

 アバドンの怒涛のラッシュが、ほんの1秒にも満たない間だが止まった。

 ゼロはさっとエスケープすると、アバドンの背後に周り、殴り掛かる。形勢逆転。

 何とか回転し、背後からの攻撃を受けずに済んだアバドン。しかし先程とは逆に、無数の拳が打ち込まれてしまう。

 だがアバドンの顔色は変わらない。むしろ笑っているようにも見える。マゾヒストではない。ただ痛覚がないだけである。

「この程度、痛くも痒くもない」

 そう言い放つと、アバドンは拳を手で止めた。ゼロは驚いた。あの速度を止めるなど、普通なら出来ないと。

 だが、アバドンは()()だ。本来ならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という制限が着くはずである。()()()()()()()()()()()ともいえる。それのなっていない製作者は叩かれる、というか叩かれて当然である。

 しかし、だ。

 アバドンはそれらを真っ向から打ち破る。正当な努力の賜物として、そのチートじみた力を行使する。さも当然のように、アバドンは血のにじむような努力をして得た戦闘術(作者の気まぐれで出来たメアリー・スー)を行使するのだ。

 カラータイマーが鳴り響くゼロ。腹の音が鳴り響くアバドン。互いに限界は近い。

「フゥーッ、フゥーッ、……!」

 息を荒らげるゼロ。

「コォオオオオオオオオオッ……()ッッ」

 空手道特有の呼吸法、息吹(いぶき)で再度精神を練り上げるアバドン。

 巨体同士が交錯する。そして、勝ったのは……。

「……テメーが勝とうなんざ、1145141919810年早いんだよ」

 アバドンだった。

 

 地面に足だけ出して、ゼロは埋まっている。

「よう、まーた犬神家になってんぜゼロちゃんよォ」

 軽率そうな声がした。その男は頭を掻き上げ、ぼうと炎を揺らめかせた。

「〜〜〜〜……」

「あぁ? なんて??」

 炎の男はゼロの足を掴んで引っ張りあげた。

「…………ぁい!」

「あんだってー?」

 腰の辺りが見えた。

「……じゃぁい!!」

「あんだーてー?」

 腹の辺りまで見えてきた。

「……んじゃあい!!!」

Undertale(アンダーテール)??」

 そろそろだな、と炎の男はスパートをかけた。

 

「───────今度こそ俺が勝つんじゃぁあい!!!!」

 

「うおっうるせぇな!?」

 半べそをかきながら、ゼロが収穫できた。まるで根菜のようにすぽっと抜けたと、酒の席で炎の男はアバドンの人間体こと慎太郎に語ったという。

「チッッックショォ────!! なんなんだよあのオッサンはよォ!! 本気で殺しに来てるかと思えば中途半端に生かしてるし!! なんなんだよあのオッサン!!!!」

「そらゼロちゃんの可能性に期待してんだろーよ」

「ンだとグレンもう一回言ってみろ!! ァ゛あ゛!?」

「おぉっと怖い怖い」

 炎の男、あらためグレンファイヤーはわざとらしく肩をすくめた。

「だいいちッッ!!! なんなんだよ畜生!! ガキの相手するみてぇにしやがって!!」

 それはゼロちゃんがガキだからじゃないのー? とは言わなかった。グレンファイヤーは察しのいい男なのだ。いい男は、場をわきまえるものだ。そう言って、酒の席でグレンは笑っていた。なお慎太郎は大爆笑していた模様。

『そろそろ帰るぞグレン、ゼロの回収は済ませたか?』

 堅物そうな機械音がした。

「うるせぇぞ焼き鳥、もう回収済だっつの」

『焼き鳥ではない! ジャンボットだ!』

「喧嘩なんておふたりとも、カルシウム足りてます?」

『……理解不能。仲はいいのになんでこんな犬猿の仲に見えるのだろうか』

「『仲良くなんか(ない/ねぇよ)!!』」

『ツンデレ乙、とでも言っておくよ兄さん、あとグレン』

「俺はついでかぁ? なあナインの坊主よぉ、俺はついでかぁ??」

『しつこい』

「ハハハッ、執拗い男は嫌われますよグレン」

「やかましーぞミラちゃん!」

 コントを繰り広げる五バカ……いや、失敬、ウルティメイトフォースゼロ。こんな男子高校生のような奴らではあるが、一応彼らも防衛隊なのである。

 その中で、真っ先にグレンファイヤーがなにかに気づいた。

「っておい! なんか来るぞ!」

 マグマ溜りを刺激し、まるで間欠泉のようにマグマを噴射させる。

「へっへーっ! マグマで足止め大作戦だ! 時間稼ぎたのむぜ!」

 グレンの合図に合わせ、ミラーナイトが動く。

「分かりましたよ! ディフェンスミラーッ!」

 マグマ溜りを突き破り、グレンの気づいた何かから放たれたエネルギー弾がディフェンスミラーに衝突する。それは光のような性質であった。鏡に当たれば反射する。

「合わせろナイン!」

「ああ、わかったよ兄さん!」

 そして鋼鉄の兄弟が放つは、

「「ダブル・ジャンナックル!!」」

 絆の鉄拳であった。

 圧倒的速度で目標を捉え、まるで追尾式のミサイルのように追い続ける。やがて目標は腹と背中をプレスされ、ジャンナックルが戻ってきた瞬間、青と赤の残像が走る。

「エメリウムスラッシュ! ワイドゼロショットォ!」

 ゼロは、二体の目標を補足していた。牽制とはいえ、幾度となく怪獣たちを葬った技である。初登場から何年も経過し、洗練されたそれは目標を補足し撃ち抜いた。

「ほぉう、流石だウルトラマンゼロ」

 直後、ゼロが消えた。

 何キロメートルも先の岩盤に蹴り飛ばされていたのだ。

「がはっ」

「しかし不意討ちには弱いか……やはり、まだ甘いのだな」

 その鈍い銀色の閃光はゼロの首を締め、落とす。

 最後にゼロが見たのは、自分によく似た銀色の闇の顔とそして、

「……っ、アブソ、リュー……」

 金色の巨人であった。

 

「……貴様。そこまではやるなと何度言えば」

 ゼロは意識を取り戻した。そこにはなにやら弄られ顔を赤くしながら正座をする銀色の巨人が。

「てめ……!」

「安静にしろ……先程のアバドン戦を見ていたが、やはりダメージが深い。戦闘は別の場所で行うといい……」

「その間に、破壊……ッ! いてぇ……」

「早く治す為に私の拠点に連れていくんじゃあないか。ほら、私に任せたまえ。ベストコンディションにまでしてやる」

 金色の巨人は、なにかの空間を生成し、有無を言わさずに隔離した。

 

 所変わって、地球。

『救済完了……』

 愛憎戦士 ケィアンが丁度怪獣を退治した時であった。

「あおおおおおっ!!! すげえ!!」「やりますねぇ!」「かっこいいなぁ」「ヒンッッ顔がいいかっこいいむりしゅき」

 地上からは、その熱い戦いに惚れ込んだファン達の歓声が上がっていた。ケィアンはそれの方に向くと、

『なんで逃げなかった』

 そう言った。

「ケィアンさんの戦いを間近で……!」

『馬鹿もん!!』

 一喝。

『逃げればよかったんだよお前らは』

 途端に静まりかえる。そのとき、一人の民衆があるものを見つけた。

「ッ! 空! 空を!!」

 ケィアンは空を見た。

 一瞬見えるは金色のなにか、そして───────────────もうもうと立ち込める土煙の中を突っ切って、巨体が二つ飛んできた。

 

 金色の巨人が、ケィアンを吹き飛ばしていたのだった。

「……ほう、まだ生きているな? さすがは愛憎戦士! そう来なくては面白くない……しかし、君に心はあるかい?」

『てめぇ、何しやがる!』

 見れば、金色の巨人の手にはなにかのエネルギー光球が生成されている。

「君に心があるかのテストだ。……ディストラクション」

『やめろぉっ!!』

 その光球を体で受け止め、一同を守るように立ち塞がるケィアン。しかし、守り切れるはずもない。光球が民衆に近付く。

『しまっ……!』

 刹那、翡翠色の障壁が生み出され、光球は弾かれた。

「……鉱石戦闘術・堅牢の障壁。守りは任せろ、佐久間」

 さらに遅れてきた光球が近付く、その瞬間。

 一陣の風が吹き、光球を破壊した。

「避難はさせておくのだ。存分に暴れて来い、佐久間!」

『ジェード、ビリジ……!!』

 ケィアンはジェードの姿を見て立ち上がり、金色の巨人を見る。

 

「う゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!! か゛ん゛ど゛う゛し゛た゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!! ぼ゛か゛ぁ゛ア゛ツ゛い゛友゛情゛が゛大゛好゛き゛な゛ん゛だ゛よ゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!! 身゛を゛呈゛し゛て゛守゛る゛姿゛も゛か゛っ゛こ゛い゛い゛よ゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!!!!!」

 

 ガッッッツリ号泣していた。

 それは、まるで熱い格闘技を見た観客のようだった。

『……は?』

「ふぅー……感情が熱くなりすぎた。しかしいいアツさだ、君達は……! こっちも本気で行かせてもらおうか!」

 金色の巨人は前蹴りを放つ。ケィアンはそれを捌くと、下段回し蹴りを放った。

『名前くらい名乗れ!!』

「名前か……私は究極生命体 アブソリューティアンの拳士! アブソリュート・メメントスだ」

『メントス?』

「メメントスだ」

『……OK、メメントス。再開と行こうぜ!』

 ケィアンが走り出した瞬間、ケィアンの意識は暗転する。

 そこに居たのは、二人の人間が合わさったような、どことなく嫌悪感を抱くような──────

「……妖怪?」

『ッ、シオ……り……』

 

 佐久間優作は夢を見た。

 奪い取られた彼女、シオリと添い遂げる夢だった。

 笑顔で話しながら、ゆっくり暮らす。

 子供に囲まれながら、慎ましく暮らす。

 そんな、幸せな夢。

 それを、あの女が壊した。

 ふつふつと怒りが込み上がる。

 胸中に湧くはどす黒く熱いコールタール。

 呪いの力が、復讐の力が、佐久間の中に溜まる。

 瞬間、なにか()が外れた気がした。

 

 ケィアンは倒れる寸前で地面を踏み、妖怪を睨みつけた。

「アハ「なんで殺し「助「苦しみたくない」けて」たの?」ハハハハ「シオリは私の「ごめんなさい優作くん」なのよ」ハ「奪い返さなかった君が悪い」ハハ「ねえ」ハ」

 妖怪の腹を、ケィアンは殴り抜く。その時にメメントスは気付いた。

「その足……いや、その姿。新たな境地に達したか」

『……力が溢れてくる』

 ケィアンはその妖怪を、結合の怪物を睨みつけた。

 結合の怪物は果敢に立ち向かう。しかし、前蹴りを受け流された直後に勢いよくはっ倒された。

『……』

 かつて奪った側の女を想起させる左側を、ケィアンは踏みにじる。げしげし、という軽い音ではない。ぐちゃぐちゃという生々しい音だ。

「いやぁああ「痛い痛「うげぁあ」い痛い痛い痛い」ああああああああ「やめろ「たすけて」たすけろ」ああああああ」

 ケィアンは空に放り投げる。

『スクラップにしてやる』

 瞬間、ケィアンが消えた。

 メメントスは察し、何かをチャージする。

「アツいいいものを見せてくれたお礼だ……!」

 結合の怪物がようやくケィアンを探した時には、もう遅かった。

復讐刀(ふくしゅうとう)八大地獄斬(はちだいじごくぎり)!!』

「アブソリュートディストラクション!!」

 斬撃を受けた体に、無数の光球がぶち当たる。

 二人の巨人が並びたち、放つは最強かつ最凶の合わせ技。

粛清式(しゅくせいしき)勧讐懲悪砲(百合を滅ぼすビーム)!!』

『アブソリュート・マス・ディストラクション!!』

 どす黒い光線と電撃光線が混じり合い、結合の怪物は爆散する。

 瞬間、死体から『核』が抜け出した! 

『……任せた!』

 逃げようとした『核』が地表に降りようとし、その瞬間。

「鉱石戦闘術・翡翠のカゴ」

 ジェードの生成したカゴに囚われ、『核』は行き場を失う。

「……死んでしまえ」

 そして、ビリジの放った()()()()()()()()()により、『核』は崩壊した。一陣の風が巨人の頬を撫でた。

 

「いやぁ、申し訳ない! 怪獣退治の後とは!」

 豪快に笑うメメントス。人間サイズとはいえ、どことなく雰囲気が違う。

「本当なのだ……」

 ビリジは、はぁとため息をついた。

「まあ、いいじゃないの。こうして三馬鹿できるんだし」

 ジェードが笑う。

「全くだ。ほら、コーヒー出来たぞ。龍治(りゅうじ)の奴はカフェ・オ・レにしといたからな」

 苦笑しながら佐久間は、コーヒーとカフェ・オ・レ、そしてちょっとしたお菓子を用意した。

「……これは?」

「ケーキだよ。僕が作った」

「佐久間の作るケーキは絶品なのだ」

 ビリジは既に食べている。

「……うまい」

 メメントスの目が輝いた。

 その日、佐久間の運営するマンションの一室からは、笑い声が途絶えなかったという。

 

 その頃、金ピカ空間の中では。

「……また、テメェかよ……!」

「会いたかったぜ? ゼェロォ……」

 因縁が、蘇っていた。




正直寝不足

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