ウルトラマンアバドン season2   作:りゅーど

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不死身のダークキラー
闇の巨人
登場


じゃあ君の思想が死ねばいい

 岐阜県、金華山。

 

 その地下深くに鎮座する、超古代文明の遺跡。

 

『ウジア……ケレ……アギモイ……』

 

 そこに居たのは、銀色の異星人であった。

 

 まるでクロス・カウンターを受けた後のような体勢で封じられた石像の前で、異星人は念を送る。

 

『三万年前ニ封ジラレタ大イナル戦士ヨ、今此処ニ顕現セヨ』

 

 ぴき、ぴき。

 

 石像に小さなヒビが入る。

 

『ソノ破壊衝動ノママ、全テヲ破壊セヨ。ソレガ貴様ノ任務。聖ナル任務、果タサナクテハナラナイ任務─────!!』

 

 その小さなヒビから、闇が注入される。

 

()ァアアアアアアアアアッ!!!』

 

 

 

 内側は五割充ちた。あとは五割以上をウルトラの者が充たすのみだ───────そう、銀色の男は笑った。

 

 

 

 その頃、CETの格技場では。

 

「うおぉおおっ!!」

 

「かかってこい」

 

 慎太郎と別チームの若手が組手をしていた。若手から頼まれたらしく、どことなくイキイキしている。

 

「す、すげぇ……」

 

「何年かのブランクがあるのにも関わらずあの戦闘能力ッ」

 

 前蹴りの一撃のもとに敵を伏す。諸星慎太郎、未だ衰えず。

 

「もう一度……お願いしますッ」

 

「おう、打ってこい打ってこい」

 

 慎太郎の声に、若手が反応する。

 

「チェストぉーっ!!」

 

 あまりにも直線的で、そして速い拳。

 

「よっと」

 

 内受けで正中線をガラ空きにさせ、前蹴り一閃。

 

「もう少しフェイントも使うといいだろうよ」

 

 慎太郎はそう言うと、軽く腕を振った。

 

「しかし一発一発の破壊力は抜群だ。あのまま食らってたら、俺でもどうだったか……」

 

 そう言って、うずくまる若手に手を差し伸べる。若手はその手を掴み、立ち上がった。

 

 

 

 慎太郎は隊の部屋に戻った。

 

 フツヌシ隊。慎太郎が所属する部隊である。

 

「諸星慎太郎、只今戻りました」

 

「おう、お疲れ。新人育成の為に組手しまくるのは骨が折れるだろ?」

 

「いやあ、折れるねぇヴェラっち」

 

 けらけらと笑う慎太郎。しかし、彼は急に顔を険しくし、

 

「ま、んなこたどーでもいいのよ。どうでい、あの波動は」

 

 そう言った。

 

「ああ。岐阜県内であの波動が多数発生している」

 

「やっぱりかぁ……」

 

「よって慎太郎。お前を調査に向かわせることにする。俺はストライカーで待機するから、基地での待機勢の指示はミソギ、お前に任せた」

 

「承知致しました」

 

 くい、とメガネを上げる青年。

 

 基町元隊長が上層部に移籍した為、フツヌシチームに入って早々副隊長になった青年である。名を黒山(くろやま)ミソギという。

 

「よし……行くぞ」

 

 

 

 てなわけでして。

 

「はるばる来たぜ岐阜県~っと! 久しぶりだなぁ……」

 

 諸星慎太郎、無事に岐阜に到着。

 

「こちら諸星! 岐阜に着きましたよー!」

 

『諸星隊員、浮かれないように』

 

「えぇー? 丸デブ総本店さんくらい寄らせてくださいよー」

 

『ダメです』

 

「けち」

 

 慎太郎はそう言って通信を切ろうとする。その時だ。

 

『……諸星隊員、くれぐれも暴走なさらないように。あなたを止められる人は少ないのですから』

 

「へいへい」

 

 釘を刺され、慎太郎は大人しく金華山に向かった……はずもなく。

 

 丸デブ総本店でラーメンを一杯食べてから、金華山に向かった。岐阜県は日ノ出町にあるので機会があったらご賞味ください(ステマ)

 

 

 

 金華山の地下、隠されていた通路を越えると、そこには石像があった。

 

 巨人だ。慎太郎は悟った、ウルトラマンのそれであると。

 

「……で、何あれ」

 

 ……そこにいたのは、一人の青年であった。

 

 ボサボサの黒髪、黒縁のメガネ。薄めのリュックサックに登山用のシューズ。どこか慎太郎に顔立ちの似たその姿。

 

 そして何より、『報道部』の腕章をつけて石像を熱心に撮っている。

 

 まさしく変人奇人……。

 

「ここは禁足地みたいなもんだが?」

 

 慎太郎はそう言って、青年に近づく。すると青年は深々とお辞儀をして、こう言った。

 

「ああすみません! しかし趣味と実益を兼ねたこの職業に就いた身としては絶対に真実を報道しなくては……と思いましてここにいる所存です。CETの方ですよね? それもフツヌシ隊だ。その肩の日本刀の刻印はフツヌシ隊のそれですからねぇ……」

 

 熱弁する青年。

 

 慎太郎は悟った。

 

 こいつオタクだ、と。

 

 

 

「申し遅れました。ワタクシこういう者です」

 

 差し出された名刺には、普通の情報が書かれている。

 

「CET報道部の澤田(さわだ)カイトさんね……ん?」

 

 名刺をしまおうとした慎太郎は、やけに名刺が伸びるなと思った。許可をとって名刺をうにょっと伸ばしてみたら、慎太郎にとって見覚えのあるIDが記載されていた。それは慎太郎の使うツブヤイターの相互さんであり、常に馬鹿騒ぎしているユーザーのID。

 

「@Rahmen_kaito……え、もしかして『ラーメン好きのカイト兄やん』さん?!」

 

「……えっまさか『ザ★美食ボーイ』さんですかぁ!?」

 

 せーの、どん……。

 

 同時に出したスマートフォンには、確かに『相互フォロー』の文字が。

 

 沈黙。

 

「……」

 

「……」

 

「「YEAHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!!!!!!!」」

 

 巨人の像の前で、偶然オフ会が成立した。

 

 

 

「まさかCETにフォロワッサンが居たとは」

 

「いつも通りのノリで安心しましたよ美食さん、デュフヒヒwww」

 

 カイトは毎日この巨人像を撮っては変化をしたためているらしい。

 

 慎太郎と一緒にヒビが広がっていることを上層部に報告したことも相まってか、少しずつ人は増していく。

 

 上層部は、おそらく巨人像が壊れると思っているのだ。

 

「あれ壊れると思いますかね?」

 

「壊れねえだろ……むしろ、内部に何があるかがよく分からん」

 

「それもそうですねぇ。ああそうだ、時に美食さん。拙者の布教したアレは見ましたかな?」

 

「最ッッッ高だったよ! 勢いでアプリ版もDLしちまった!」

 

「でしょうでしょう!?」

 

 ……哀しいかな、慎太郎もアニメオタクである。幻滅しただろうか。

 

「兄弟モノのBL作品ではありますがそれがまたオイシイでしょう!?」

 

「弟側のクソデカ感情たまらん…………はあ…………弟君くんくっっそかわいいすき…………むりだめ……」

 

 限界オタクここに極まれり。

 

 

 

 もちろん調査も進めている。近くの図書館で伝承を探したり、聞き込みに回ったり、石像のサンプルをとったりとなかなか大忙しだった。

 

 その間にも、カイトと慎太郎は親睦を深めた。ラーメン屋に行き、焼肉屋に行き、時には互いに議論したりして。まるで竹馬の友のように、二人のオタクは親交を深め続けた。

 

 そんな中である。

 

 

 

 どこの世界にも、バカは居るもので。

 

 

 

 それは慎太郎達以外が撤収した時だった。

 

 ざふっ、と踏みしめる音がする。ガヤガヤとした声を慎太郎の超人的な聴覚は捉えた。

 

「何者だ貴様ら!」

 

「こちら朝飛新聞ですけれども」「私舞日新聞の丸々です」「駐日新聞です」「NHKです」「朝飛テレビの者ですが」

 

 ───────マスゴミがやってきてしまった。

 

 

 

「マスコミの皆さん、現在はこの石像についてはほぼ何も分かっていません。3万年の時間が経っている以外は、何も分かっていないのです。どうかご静粛にお願いします」

 

「すみません、お帰りください……」

 

 慎太郎とカイトはマスコミを抑えようとする。

 

「CETは秘匿するのですか!?」

 

「違います、まだ真相がわからないのです」

 

「秘密主義は本当ですか!?」

 

「いや違う」

 

「なぜ石像を隠匿するのですか!?」

 

「おまっ」

 

「政府に対して一言!!」

 

「やめ」

 

「諸星隊員の好物はなんですか!?」

 

「日本食全般」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ……とまあ、変な方面に話が進む中。

 

「あの石像を見せてもらいたい」

 

 低い声がした。

 

 慎太郎は何かを悟り、銃を抜いた。

 

「動くな」

 

「そうはいかんよ。奴を蘇らせねばならないからね……。マスコミ諸君、銃を抜け」

 

 その声に操られるようにマスコミが銃を抜く。対怪獣用小型機関銃である。その射線は、慎太郎であった。

 

「……!! 美食さん、いや慎太郎さん!! 危ない!!」

 

 カイトは駆け出した。慎太郎は念力を練り止めようとした。

 

「おい、カイト……!?」

 

 だが慎太郎の念力も届かず、

 

撃て(ファイア)

 

「しんたろ」

 

 慎太郎の目の前で、カイトは撃ち殺された。

 

 

 

「カイト!! カイトっ!!!!」

 

 慎太郎はカイトを揺さぶる。しかしカイトは目を覚まさない。……もう、死んでいた。

 

「見ろ、犯罪者が死んだぞ。アニメオタクという犯罪者がだ!!」

 

「やったぜ!!!」

 

 朝飛新聞の記者は飛び上がって喜んだ。オタクは怪獣扱いである。

 

 慎太郎は涙を流しながらマスコミに向けて指を指した。

 

「なあマスコミ諸君よォ────────……。お前らが……『アニメオタクは犯罪者』だって言うならよォッ、お前ら『マスゴミ』も『大衆を洗脳する大犯罪者』って言えるよなァ───ッ!? エェッ!? なんとか言ってみろよゴミカスがよォ─────ッ!! 今日日この日本に三日三晩腐らせた腐りかけのニシンで作った黒焦げのスターゲイジーパイみたいに腐りに腐ったマスコミなんかいらねえんだよォッ!! このドグサレモンキーヒトモドキがァ──────ッッツ!!」

 

 カイトの亡骸を抱え、慎太郎はそう叫び、マスコミの一人に九四式拳銃を放った。鳴り響く銃撃音。さながら戦場のようにマスコミの頭部を撃ち抜き、ふうと硝煙を吹き散らす。

 

 一人死んだ。

 

 銃撃音。

 

 二人死んだ。

 

 銃撃音。

 

 三人死んだ。

 

 銃撃音。

 

 四人。

 

 銃撃音。

 

 五人。

 

 銃撃音。

 

 六人。

 

 再装填。

 

「ふぅ─────────────ッ」

 

 銃撃音。銃撃音。銃撃音。銃撃音。銃撃音。再装填。

 

 死者総勢十二名─────!! 

 

 残ったマスコミは逃げようとしたが、慎太郎は冷徹にその脚を撃ち抜く。半狂乱になり蹲るマスコミ関係者に対し、かつて日露戦争の際()()()()()と共にロシア兵を蹂躙した隻眼の日本兵(諸星慎太郎)は斯く語る。

 

「これは殺戮ではない。これは救濟だ。イメージしてみろ。貴樣らの下劣な魂をここで救濟し日夲國の爲に再生させる。それの何が惡いと言うんだ? お前たちのやっているオタク差別もそういう物だ。何故アニメが好きなだけで排斥されるのだろうか、と俺は考えていた。そして思い浮かんだ。全て貴樣らマスコミが惡いと」

 

 頭から血が抜け、静かに冷たく怒る慎太郎は、さらに言葉を続ける。

 

「全ては宮崎勤の犯罪から始まった亊は否めはしない、だがそれだけだ。その後のオタク差別を助長し未だに日夲國を愛する亊を惡だと斷ずるのは誰だ?」

 

「そ、それはお前の思想だろう」

 

「默れ。貴樣らが全て惡いのだマスコミ諸君。詭辨(きべん)? 詭辨で結構。俺は殺したいだけだという亊も理觧(りかい)している。だが未だに俺の大東亞戰爭は終わらない。終わってくれないんだよ!! なあ朝飛新聞!! 貴樣らが戰爭感情を煽った所爲だろう!! そして敗戰───というか、未曾有の恠獸災害により休戰した直後に貴樣らはなんと言った!! 「日夲國軍の暴赱」「今直ぐ日夲國軍を觧躰すべし」「日夲國軍を許すな」と……。全ては日夲國を非難する内容に過ぎん!! 戰爭感情を高めた貴樣らがのうのうと生きる時點(じてん)で可笑しいのだ!!」

 

「ヒッ……!」

 

「ならどうする? じゃあ君の思想が死ねばいい」

 

 そう言い終わると、彼の目は完全に日本兵のそれになった。バンザイ突撃をして殺しにくる狂った目だった。

 

「こ、このぉ!!」

 

 対小型怪獣用携帯機関銃をマスコミが撃つ。これは怪獣災害の箇所に取材する際の必需品だ。

 

 普通ならば一溜りもない、だが。

 

「溫いわ」

 

 その銃弾は、慎太郎に届くことは無かった。

 

 気づけば、辺りは死体で満ちていた。

 

 

 

 地下に流れる血液。全てマスコミの物だ。

 

 慎太郎はカイトの死体を抱きしめながら、一人泣いていた。

 

「取り逃した……!! カイト、ごめん……!! 俺、ダメだった……!! カイト、ぁ、ああああああああああああっ……!!!!」

 

 慎太郎の中に渦巻く闇のエネルギー。遂にそれは、巨人の封印を解くための鍵となった。

 

 びし、びし。

 

 そんな音を出しながら、巨人像にヒビが入る。

 

 ゆっくり、しかし着実に。

 

 慎太郎は気づき、闇のエネルギーに光のエネルギーを混入させた。

 

 それはさながらパンドラの箱のようなもので、絶望の内側に希望が隠されたかのような構図になってしまっている。

 

 びしびしと大きなヒビが入り、その石の表皮が剥がれ落ちる。

 

「……う、あああああああああっ……。よく寝たぁ……」

 

 ごきごきと、巨人の関節が鳴り響いた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 岐阜県岐阜市、市役所付近。

 

 街が瓦礫に変わっていた。

 

「く、ああぁ……! セァッ!」

 

「シャアオラッ」

 

 二人の巨人の戦闘が繰り広げられていたからだ。

 

 アバドンの下段回し蹴りが黒い巨人の太ももを打つ。その直後カウンターの左の拳がアバドンの腹に当たる。

 

 刹那アバドンは身を固め膝蹴り、その蹴りの威力を腕で殺してヘッドバット。アバドンは拳に炎をまとい秒間6000発の炎のラッシュ『バクネツラッシュ』を闇の巨人に放つが、闇の巨人は対抗するように「クロクロクロクロ……」と叫びながら超速のラッシュを放った。

 

 二つの拳がぶつかり合い、衝撃波でビルが倒壊する。

 

「っ、畜生強ぇ……!!」

 

『攻撃開始!』

 

 アバドンを援護するようにマッハストライカーが飛んできた。

 

 バルカン砲が闇の巨人に命中する。

 

 その直後、闇の巨人の頭部にかかとが激突した。

 

「遅くなった」

 

「サンキューヴェラっち!」

 

 ウルトラマンヴェラムである。

 

 闇の巨人はもがき苦しみ、きっとヴェラムを睨み付けると、

 

「う、う……あ、ああぁ……!! ウルトラマン、ヴェラ、ム……!! 裏切っ、たな……!?」

 

 と言った。ヴェラムは身に覚えがないので、

 

「裏切った……? 何の話だ!?」

 

 そう叫ぶと、闇の巨人はまた怒りを爆発させた。

 

「裏切り、ものぉおあああああ!!!」

 

「来るぞッ」

 

 闇の巨人が襲いかかる。

 

 アバドンはまずサイドステップで避けると、頭にがっしりヘッドロックし、そのまま力一杯締め上げた。

 

「はぁああああああああ……!!」

 

「がぁああああああ」

 

 締める力を徐々に高めるアバドン。ヴェラムはその闇の巨人に攻撃しようとしていた。

 

 その時である。

 

「アジャラカモクレン テケレッツのパー 《縛り付けろ》!!」

 

 そんな声がして、アバドンとヴェラムは縛り付けられた。もちろん瓦礫でだ。

 

「『カプリスキャスト』ォオオオオオオオ!!!」

 

 無軌道のレーザーがアバドンたちに襲いかかる。アバドンたちは拘束を引きちぎり、二人で闇の巨人を殴り付ける。

 

 その瞬間、闇の巨人は霧散した。

 

「……はっ!?」

 

 こうして、闇の巨人との戦闘は終わった。

 

 

 

 慎太郎は、金華山の地下にいた。

 

 そこで慎太郎は自分の目を疑った。

 

 

 

「……死体が、消えた?」

 

 

 

 

 

 

 

 新たな闇が、蠢き始めた。

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