「シャァアアアアオラ!!!」
野太い雄叫びと重低音が響き渡る。
直後、赤い閃光とともに、
「デュウワッ!」
まるで超コッヴを護るかのようにウルトラマンガイアが立ち向かう。多彩な蹴り技がアバドンに直撃したが、しかしアバドンは拳を握りしめるやいなや。
「死ねオラァっ!!」
アバドンは燃え上がった拳でウルトラマンガイアを吹き飛ばす。直後、アバドンは分身し、鎖でガイアの首を絞めた。
「ウォアアッ……!」
「苦しめ……苦しむがいい……!!
ぎりぎりと音が鳴り響き、ガイアは口元から泡を吹き始める。さらにアバドンの分身体は秒間6000発の速度で『燃え上がる拳』を打ち込み、ガイアはその正体を表した。
金属生命体ミーモスである。
こうなればもうこっちのものだ。アバドンはそう呟くとさらに分身し、思い思いの武器を手に持つ。
超コッヴはアバドニック・ノヴァで焼き殺した。
「さぁ────、ニセウルトラマン虐待ショーの始まりだ……!」
そうアバドンの本体が言うと、ミーモスを囲み思い思いの武器で攻撃し始める。
まずは鈍器で殴り付け、続いて重火器を撃ち込み、刃物で切り裂き圧かけ首絞め腕折り目潰し引きちぎり────────。
もはやミーモスだった何かと化した破片群に対し、アバドンは分身を解き、バクサツダンサーというMAP兵器を放った。
燃え上がる大地。金属生命体はその生命活動を止めた。
「ん──────……。まーだ足りないなぁ……」
仕方がない、とアバドンは呟き、ふとある事に気づいた。
「……そういえばあの超コッヴに付いていた機械はなんだ……?」
◇◆◇◆◇
翌日────────。ところ変わって、宇宙人のテロ組織のアジト。
「動くな、CETだ! 神妙にお縄につけ。もし抵抗するなら一族郎党皆殺しだ」
慎太郎とゲンタロウは、テロ組織の鎮圧に来ていた。
────────それは、遡ること二日前。
「テロ組織の尾を掴んだ」
フツヌシチームお抱えの超天才ハッカー、
「隊長、マップをモニターに出してくれ」
「ああ」
肇はマップを展開する。祐はそこに次々とデータを放り込んでいった。
「結論から言うと、テロ組織のアジトは東京都文京区湯島にある」
文京区か、と慎太郎は呟いた。
「……30分も歩けば
「
「じゃあ強制収容所に入れて毒ガスで殺そう。人類の医学の発展のためだ」
「ナチス・ドイツと同じことをするんじゃない、たわけ。とにかく、今僕がマップにマークしたところを見てほしい。ここにテロリストのアジトがある」
すると、一同の持つ端末にテロリストのアジトの位置情報が送られた。
「二日後にここに総攻撃を加える。抵抗するなら殺していいだろうけど、なるべく生け捕りにして欲しい」
祐はそう言った。
◇◆◇◆◇
そして、決行日。
「開けろ、CETだ」
そう言いながら慎太郎はテロ組織のアジトのドアを蹴り破る。鉄製のドアが引きちぎられ、銃弾とほぼ変わらない速度でテロリストに直撃。まずはナックル星人の頭がザクロのようにパックリ割れた。
「なっ、ななな……!!」
「どうしてここが分かった!?」
テロリストたちは警戒を強める。それぞれの武器を取り出し、威嚇した。
その中でも血気盛んなババルウ星人が慎太郎に襲いかかる。
慎太郎はその攻撃を見て、瞬間消えた。その直後、ババルウ星人の首は曲がってはいけない方向に曲がり────────哀れ、ババルウ星人は死んでしまった。
ごきりという鈍音の残滓と、死体の倒れる音。そして慎太郎が息を吐く音が部屋に響いた。
「うちの優秀なハッカーのお陰だ。さぁどうする売国奴ども。降伏するか、このババルウ星人のように抵抗して俺たちに殺されるか。選択肢は二択だ、さっさと選べ」
慎太郎の言葉に、テロリストたちは叫んだ。
「こんな所で俺たちの計画がおじゃんになってたまるか!!」
「どうせ戦争で一人になった身だ! お前ら!! やるぞぉっ!!」
おおおおっ!! と叫び、慎太郎たちを殺しにかかるテロリストたち。
「やっぱそう来るよなぁ!! おいゲンタロウ、殺戮タイムだ!!」
「了解っス慎太郎センパイ! 一人一人相手してやるッスよ!」
ゲンタロウは銃火器を展開し、慎太郎はトンファーを手に持った。
「俺は
慎太郎はさらに叫ぶ。
「どっからでもかかって来やがれ!! 俺が無双の
あの
さながらその雰囲気は日露戦争でロシア兵を虐殺した時のそれであり、ゲンタロウはそんな慎太郎を見てどこか安心したような表情を作る。
「さぁ来い! オレと慎太郎センパイのタッグに勝てる自信があるやつからな!」
ゲンタロウはレーザーガンを持ち、照準を敵の頭部に定めて放った。舞い散る血飛沫、激昂するテロリスト。そして狂ったように笑う二人の軍人。
◇◆◇◆◇
「シャアッオラァ!」
慎太郎は体をかがめ、まるで弾丸のようなタックルを浴びせた。
一人を吹き飛ばした直後、慎太郎は突如として消え失せる。次の瞬間、四人のテロリストの首は180度廻っていた。────既に死んでいる。
「うごっ」
「ギャァッ」
「うわぁっ」
「ベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリ
挙句、慎太郎単体のラッシュに吹き飛ばされる始末。イマージュも使わないただのラッシュだ。
ではゲンタロウに攻撃したらどうなるか、というとだ。
ゲンタロウの手に持った銃から放たれたレーザーが、テロリストたちの脳髄を的確に撃ち抜いていく。まるで決められていた台本のように、ぱたりぱたりと死んでいく。
彩り豊かで個性豊かな宇宙人たちだった。しかしそこにあるのはただのタンパク質の塊だ。
普通の人は死体の山と称するだろうし、OFFの世界なら
そうこうしている間に、慎太郎の持つトンファーが頭蓋を砕く。脳漿が勢いよく吹き出てきて、また一人死んだ。
「メインはフック星人……。ボーダ星人やラムダ星人もいたな……。ゴドラ星人も数こそ少ないがいたし……。っと、邪魔だ」
トンファー一閃、トドメの前蹴り。肋骨は折れて肺に突き刺さり、胸骨は割れて破片が心臓に達しただろう、と慎太郎は長年の経験から悟った。
ゲンタロウも苦戦しながらもガン=カタで応戦していた。レーザーが縦横無尽に飛び回り、その度にテロリストが死んでいく。上手く近寄ったとしても、超絶技巧の脚技が炸裂し意識を刈り取る。
なるほど確かにこのふたりは最凶のペアである。なんせ方やありとあらゆる格闘技の達人にして元帝国軍人、方や銃撃と格闘技を上手く搦めた慎太郎式戦闘術の三番弟子だ。
気付けばテロリストも残るは五十人。慎太郎とゲンタロウは再度構え直すと、残党狩りのために走り出した。
◇◆◇◆◇
一方、都内某所────。
上機嫌そうに鼻歌を歌いながら、右目を隠した少女が歩いている。
赤のメッシュと、これまた黒から赤に変わるグラデーション。柔らかい雰囲気の中には棘があり、まるで毒でできた砂糖細工である。
「平和なんだろうけど……どうも平和には見えない空気だなぁ……」
誰もいないことを良いことに、独り言を呟き空を見上げながら歩く。
ふと、彼女は思い出した。
今左手にある路地。この裏路地を通ればショートカットできると。
警戒心をすっかり吹き飛ばし、紗和は路地裏を歩く。呑気にも「ついでに本屋にも寄りたいからそこに寄って家に帰ろう」と考えながら人気がない路地裏を1人で歩き続けた。周りは薄暗く、しかし微かに太陽の光が上から照らしていた。
その時である。
殺伐とした雰囲気が彼女の頬を裂く。直後、鋭利な何かが吹き飛んできた。
足を止め、周りを見渡しながら、静かに黒い手袋を少しずつ外す。
瞬間、彼女は大きく吹き飛んだ。壁に体がしたたかに打ち付けられ、肺から強制的に空気を吐き出される。
「がっ……は!? み……見えない……!? どこから!?」
呼吸を整えながら立ち上がる。だが衝撃が強すぎたのか、目眩を起こしてしまい足元がふらついてしまう。
その無防備な腹部に、重たい蹴りが一閃。
「アガァ……ッ!」
蹴りの威力に耐え切れず、紗和は両膝を地面につき、腹部を抑えながら周りを見渡す。
紗和の両手に身につけていた手袋はいつの間にか取り外されていた。
「……チッ」
それはひとつ舌打ちをした直後、鋭利な黒色の何かが飛来する。
「……見えた」
そう呟いた瞬間、地面に両手を置き銀色の液体の壁を生成。飛来物を包み込むように防御した。それは液体に突き刺さり、即座に腐食し速度を落とす。
ぎゃりん、と鈍い音がした。
◇◆◇◆◇
地面に落ちた飛来物の正体はクナイであった。
「……ウルトラ忍者部隊かな? …………君は、何者?」
液体の正体は硫化水銀。紗和は猛毒を操る特異体質である。紗和はその毒の壁から顔を出し、その視線の先にあるモノを見つめた。
それは一人の人間であった。フードを目深に被り、手に暗器を握っている。顔が見えないように狐の仮面を被り、その下の真意は一ミリも分からない。
紗和は何も言わずに立ち上がり、その姿を凝視し続けた。
左手を口元に置いてなにかを考えている仕草をしながら。すると、何か思いついたような顔になり、少しだけ笑みを見せた。
「もしや東海から関東に流れてきた闇の正体は君かな?」
指を指しながら紗和はそう言う。それでもなお、胸騒ぎと警戒心が消されることはない。消すことさえできない。
「……」
その者は何も言わず、クナイと手裏剣を投げつけてきた。
両手の指先から溢れ出る水銀で壁を作りながら回避し続ける。
「せめてYESかNOで答えてよ……」
しかし攻撃は熾烈になり、いよいよそれは猛毒の壁を易々と飛び越え、顔面に蹴りを炸裂させる。
「ぐぁ……! ッ……マイナスエネルギー……やっぱ君は……ッ」
鼻血と口からの出血を気にせずに話し続け、自分から殴りにかかった。
それは紗和の拳を掴み、勢いよく地面に投げ飛ばす。
「がっ、は……! げっほ、っげほ……。なるほど、普通にはいけない、か」
仰向けに倒れた状態から後転し、両足で腹部を深く蹴り飛ばした。
「……fxxk」
そう静かに呟くと、彼は指をひとつ鳴らす。
「…………
「ッ……」
紗和は拳を構えながら体勢を整え、周りに集中する。鼓動と警戒心が更に高まり、どこからでもかかって来いと言わんばかりのオーラを纏った。
瞬間、紗和は一瞬にして吹き飛ばされた。気付けなかった。まるで
「…………えっ」
気がつけば地面に倒れていた。全く以て状況が掴めず、伏せった状態から動こうにも動けなかった。
『さあ、始めましょう! 始めるよ! 楽しいゲームの幕開けサ!!
そんな下卑た笑い声が辛うじて聞こえた次の瞬間、再度紗和は吹き飛ばされ、気付けば瓦礫の山の中に埋められていた。
「……え?」
◇◆◇◆◇
状況が掴めぬまま、紗和は困惑しつつも瓦礫から出てくる。気がつけば、頭部からの出血はさらに酷くなり、裂傷や擦過傷、打撲などの外傷により上手く身体が動かない。それでもなお、精神力だけで立ち上がり、今の状況に思考を廻らせる。
「(廻る…………廻る……? 試す価値はあるな……)」
紗和は左手の指先から硫化水銀を垂れ流しながら構え─────また紗和は吹っ飛んだ。攻撃された事実すら分からないまま。
またしても壁に激突し、瓦礫に埋もれる。それでもなお、すぐに立ち上がり、距離を詰めようとする。
「(動きが同じなら……この場が……)」
その次の瞬間、
紗和は驚きはしたものの、一瞬にして冷静さを取り戻して周りに水銀の壁を作り出した。
それを見て、男はにやりと笑う。指の音がして、直後
「……うん、予想してたよ」
その言葉が周りに反響し、いつの間にか男の背後に紗和がいた。そして仕返しと言わんばかりにその背中を蹴り飛ばし、男は瓦礫の中に埋まる。
「……」
男は何も言わずに─────消失した。
次の瞬間。
みしり、という音がして、紗和の腕が完全にへし折られた。
見れば男の怪我はキレイさっぱり消えている。
曲がってはいけない方向に曲がった腕を一瞥し、蓄積する痛みに耐えながらもなお立つ。腕が無ければ足や他のところを使えば良い、紗和はそう思いながら戦いを続ける。
「この際言うけど、ボクは慎太郎と違うの。ボクは慎太郎とは違って脳筋じゃないからちゃんと考えて行動するんだ」
この場にいないことを良いことにさりげなく慎太郎の事をバカにしたが、戦いはやめないようで。
瞬間、紗和は瓦礫に囲まれる。
『廻レ廻レ! メリーゴーランドダヨォ!』
瓦礫の中でぐわんぐわんと回されて、体が一気にシェイクされ。
「ッ……逆!」
紗和はガレキを破壊しながら毒液と共に飛び上がり、隠し持っていた銃を乱射する。
「……面倒くさ」
また指パッチンをする。
瞬間、
紗和は何も言わず何もせずにに降下しながら銃弾を見ていた。
更にそれは
「……
小声で独り言を呟きながら、銃弾が身体に直撃する。その瞬間、撃たれた身体が溶け始めた。上空にいた紗和は硫化水銀で造られた偽物だったのだ。
「…………チッ。やはりあらゆる手を尽くしてでも殺すしかないか……」
男は消えた。
◇◆◇◆◇
本物の紗和は身を潜めていた。ガレキでシェイクされた際には既に身代わりに任せていたようだ。
「………………まだ時間がかかるなコレ……」
ボロボロになった路地裏、静かに佇む紗和。戦闘音を聞きつけた野次馬たちは口々に叫んだ。
「あれシンシャじゃねえか……?」
ざわつく一同、その中でメガネをかけた青年が叫ぶ。
「あの瓦礫を見ろ! きっとアイツがやったんだ! 絶対に侵略宇宙人だ、殺せ!!」
「……おっと……」
紗和は慌てて両手を上げる。どろどろと滴り落ちる硫化水銀を手袋で覆うが、時すでに遅し。
『ウルトラ族……め。殺すしかあるまいて』
そんな声と共に紗和は吹き飛ばされ、正義感に駆られた地元住民に体を押さえつけられる。
そんな時であった。
「デュワッ!」
「ゥオルァアッ!!」
ウルトラマンが二人現れたのは。
◇◆◇◆◇
そこに居るのは、確かにウルトラマンガイア(V1)とウルトラマンアグル(V1)であった。
しかし怪獣はいない。
さて、なぜ彼らが現れたか。それは紗和が死闘を繰り広げていた時に遡る。
「ウオラァッ!!」
諸星慎太郎の右ストレートにより、テロリストは壊滅したかに思えた。
「先輩、生命反応はもう無さそうっすよ」
「おう、ご苦労だっ─────」
慎太郎はなにかに気づく。それはどろりとした流体金属だ。普通なら何かが溶けたと思うだろうが、しかし慎太郎はこれでもウルトラマン。そしてこれは何度か戦った事のある相手でもあった。
「ゲンタロウ、死体は放置して逃げよう!」
「えっ!? でも……」
「いいから! 奴から逃げるぞ!!」
そうして二人は逃げ出した。
アジトの中で流体金属は死体を取り込み成長し、パソコンに侵入してウルトラ戦士に関わるデータを読み込みはじめる。
そうして読み込んだデータを体に移し変え、何かしらのロックを解除した上で、流体金属はウルトラマンへと変身したのだった。
◇◆◇◆◇
まあ、そんなこんなで二人のニセウルトラマンが現れていたのだ。
「あれは……?」
『あの青いウルトラマンは目が赤紫色だ、殺して構わん! …………ただし、プロテクターの赤いウルトラマンは様子見だ』
「了解」
そうしてCETは二体のウルトラマンと闘うことになった。先手はCETの保有する飛行機、マッハストライカーから放たれるミサイルだ。
「スペシウムミサイル、てぇーっ!」
ピッ、とスイッチを押せば、機体下部から無数のミサイルが放たれる。
ニセアグルはバリアを生成し、ニセガイアは光弾でミサイルを打ち落とす。
その直後、別のマッハストライカーからバルカン砲が放たれた。鉛玉の雨を全身に浴びたニセガイアは、その姿を変貌させる。
「あれはッ」
「……ヴァージョンアップ!?」
ニセガイアとニセアグルはV2へと変貌する。
ニセガイアは地面を叩き、ニセアグルは空を蹴り上げた。そしてそれは虚空と地面へと伝わり、封じられていた怪獣兵器達を叩き起す呼び水になった────!
◇◆◇◆◇
「ゴョァアアアアッン!!」
「グゥェァアゥッ」
地面から飛び上がる怪物がひとつ、そして虚空からゲートがうまれる。
そこから現れたのは、怪獣たちであった。ギールとゾーリムである。ギールとゾーリムは、ニセガイアとニセアグルに並んだ。
「デュワッ」
ニセガイアとニセアグルは、マッハストライカーに光弾を放った。マッハストライカーはローリングで回避し、再度バルカンを放つ。まさしく鉛玉の雨である。
しかしそれをゾーリムが遮った。哀れな鉛玉は巨大な頭に直撃し、ぱらぱらと落ちていった。
ギールは突進し、空中で
「あーあー、見てらんねーな」
慎太郎はそう呟くと、アバドスティックを掲げてウルトラマンアバドンに変身した!
◇◆◇◆◇
「ゥオアッ」
アバドンはマッハストライカーをその手の中に収め、着陸させた。
「ウルトラマン……!」
一般兵はそう叫んだ。アバドンは、静かに頷いた。そして、四対一という敵側有利な状況の中、走り出した。
「デェアラッ!」
先ずは前蹴りである。それだけでニセアグルは3km先の地面に背中から落ちていった。
その勢いを殺さずに、アバドンはニセガイアの金的と顎に二段蹴りを放った。綺麗なまでに吹き飛んでいった。
さらに突進してきたギールをゾーリムに投げ飛ばし、ふうと一息。アバドンは怪獣たちを睨みつけ、ふと上空から何かが来ていることに気付く。
瞬間、毒を纏った炎がゾーリムを焼き殺した。
「バードンか、こんな真似をするのはあのカスしかいない」
そこに居たのは火山怪鳥バードン、そしてウルトラウーマンラピスだった。
◇◆◇◆◇
アバドンの目付きが変わる。ウルトラウーマンラピスは、絶対に赦されない。
「お前を殺す」
アバドンはそう呟くと、バードンをギールたちに押し付け、ラピスを殺しに走った。
「デェアラッ!!」
最早、贋作共には目もくれなかった。
嘗ての恋人の、そして間接的に嘗ての上司を殺した殺人鬼への復讐を果たすために駆けていた。
ビルの壁面を伝い、超音速でラピスの顔面に蹴りを放つ。
「ッ……!」
手足が出ずに吹き飛ばされてビルに激突する。
「ッ……ふぅ…………まだ、怒ってるの? ボクは……奏さんを……」
そこまで言いながらゆっくりと立ち上がり、拳を構えた。
「默れ、お前は生きる價値のない下衆だ。忌むべき外道だ。この忌み子め!」
アバドンはそう叫ぶと、ラピスの腹に重たい拳を打ち込んだ。
その拳は腹に当たってなかった。両手で抑えてそのまま腹に蹴りを直撃させた。
僅かにバランスを崩し、
「殺す」
瞬間、アバドンは消えた。
拳を構えながら周りの景色に息を殺しながら集中するラピス。
その反応は─────地下から、やってきた。
「死ねオラァッ!!」
アバドンは、ただ無為な時間を過ごしていたわけではない。
イマージュ能力を練り上げ、新たな力を手に入れたのだ!
その名もイマージュグビラ! それは水属性の
アバドンは、地面をえぐり抜きラピスの真下から急襲することに成功したのである!
「ドワァァァァァ!?」
と叫びながら吹き飛び、背面から地面に倒れるラピス。見たこともないイマージュに驚きながら立ち上がった。
『グギァアアッ!!』
そんな獣の声と共に、アバドンは地底に潜む。
「ッ……」
再び息を殺しながら拳を構えて周りに集中するラピス。
何かを考え込みながら地面を見つめ続ける。
その直後、ラピスの顔に水がかかる。イマージュグビラのもう一つの力、潮である。
目に直撃したせいか視界を自ら塞いでしまい、ラピスはバランスを崩してしまった。
瞬間背中に走る重い衝撃。
アバドンの蹴り技であった。
「ガハッ」
そのまま地面に倒れる。しかし即座に起き上がった。
「水と土……イマージュ……ならボクは、こうするしかない、か」
独り言のように言った。だがその口ぶりは、アバドンに聞かせるように言ったようにも思える。
しかしアバドンは意に介さず、その右手に九四式拳銃を生成し実弾を放つ。
そのことを予想したのかラピスは身に付けている手袋を外して水銀の壁で銃弾を防いだ。
そのまま勢いよく水銀の波を作り、アバドンに向けて襲った。
「兒戲にも劣る猿眞似を……。馬鹿は一つの事しか行えないというのは、斯くして本當のことであったか。實に、實に哀れなり」
その水銀は途中で掻き消える。偶然近寄ってきたニセガイアを盾にしたのだ。
ニセガイアは水銀により腐食し、醜きミーモスの本性を表す。
「うわっ!? ミーモス!?」
いきなり目の前に現れたことに声を出して多少驚いていたが、アバドンとの戦いは止めなかった。水銀を抑えために再び手袋を嵌めながらアバドンの動きを確認した。
────眼前に、いない。
「よう」
直後、乾いた発砲音と共に、ラピスは自分の肩の肉がえぐれた感覚がした。
「ガフッ……い、いつの間に……ッ」
肩を抑えながらアバドンの方へ顔を向けた。
無慈悲な発砲音が響く。
後ろ蹴りでニセアグルを吹き飛ばしつつ、片腕だけで発砲しラピスの肉を抉りとる。
「グッ……ッ……」
なんとか立ち上がりながらアバドンを見つめ続けるラピス。
アバドンにとっては憎い存在だが、知ってるラピスが目の前にいるのは分かる。だが所詮は敵として判断するのはもう変わらない。
もう、後戻りはしない。絶対にしない。
「赦さない」
アバドンは撃ち抜く、ラピスの体を。
「
アバドンは切り裂く、嘗ての仲間を。
「死ね、死ね死ね死ね、死に晒せ売国奴めが!!」
最早、彼は止まらなかった。
そこにいるのはウルトラマンなんかではなかった。
─────ただの、帝国軍人だった。
だがラピスは何もせずにただ攻撃を受けていた。手が出せないのだ。隙もどこもない。
一瞬の希望を信じて、アバドンに向けて手を伸ばすが……それも無意味だ。
伸びた手を、アバドンは「俺を
僅かにあったであろう希望が、一瞬にして粉々に砕かれる。その表情に、アバドンは愉悦を覚えていた。
かつて前線でロシア兵を殺していた時のように。
かつて前線で中国人を殺していた時のように。
かつて米兵を殺した時のように。
僅かな希望を完膚なきまでに打ち砕き、絶望の中に追いやってから苦しめて殺すのが、アバドンの好きな殺し方だった。
奇しくも、今行っている殺戮はそれと同じであった。
ラピスは驚いた顔をしたが、それでも気にしてなかった。
あの日セレブロの洗脳から解放してくれたこと、自分自身が知るアバドンが目の前にいたことに……あの時と同様、ラピスは
「ああああああイライラするゥ! 絕望しろ! 跪け!! 地を舐めろ額を擦り付けて許しを請え!!! お前は忌み子なんだよ存在しちゃあいけない粗大ゴミなんだよさっさと死ねよォ!!!」
これはアバドンにとって最も嫌な事であった。
敵が最後まで希望を捨てずにアバドンに殺されるのが、一番嫌なのだ。
だからアバドンはこう告げた。
「まるで紙のように薄っぺらい人格でェ!! 生まれすらクズの血統だ!! 駄馬のくせによくのうのうと生きてこられたなぁこのドブス!! 考えのないド阿呆め!! 薄ら汚い淫賣め!! 少しはその無い頭で考えてみたらどうだァ? 自分がどれほど嫌われてんのかをよォ!!」
これは自分へと向けた罵倒でもあった。アバドンは無意識のうちに、重ねていたのだろうか。
否、これはただの罵りだ。心のない叫び声だ。
だがラピスは、笑みを浮かべ続けた。だけどその瞳は……悲しげで、諦めた瞳だった。
「アバドン……君の言いたいことわかるよ。とても……でもね、ボク……君に勝てないの分かってるから……希望なんか持ってない。ボクは……迫水隊長と奏さんに言われた。『前へ進め』って……でも、信じてくれないからいいや」
長く話すが、肩を抑えていた片手を離し、拳を構えた。
戦いを終わるのはまだ早い。ラピスはそのことに気づいてはいた。
「死ねぇッ!!」
そうアバドンが蹴りを入れようとした、次の瞬間────
ヴァシュッ─────────!
────ラピスは、そして怪獣達は、何者かに頭部を撃ち抜かれた。
◇◆◇◆◇
ラピスの頭部からどくどくと流れる光の血液からは、生々しくも神々しい香がする。そして光の粒子となり消え失せた。
金属生命体たちはその肉体を留めておらず、最早生命活動を止めていて。
怪獣に至っては、脳漿をまき散らして死んでいた。なおバードンはバトルナイザーに消えた模様。
十字架を象った巨大な銃を担いでいる闇の巨人がそこに居た。
「……! この前の!」
「また会ったなウルトラマン」
やけにエコーとケロケロ加工のかかった声であった。脳髄が、正体を理解する事を拒否するような声であった。
「貴様は何者だ」
「ワタシの名はサエラマ。ブラッドガンナー サエラマだ」
「ブラッドガンナーだかブラッキーエールだかなんだか知らんが、なんだその中二病みたいな二つ名!」
「いいだろう? ワタシの趣味だ」
「ああそうかい、こちとら共感性羞恥で心臓が張り裂けそうだわぁっ!!」
アバドンは闇の巨人、もといサエラマに前蹴りを放った。サエラマはそれに対応するように前蹴りを放った。
互いの顔の前で止まる足。
先に動いたのはアバドンだ。カラータイマー目掛けて、前蹴りをカカト落としへと変える。次いでサエラマは腰を入れ、アバドンの顔を潰そうとした。
先にクリーンヒットさせたのはサエラマであった。アバドンは大きく蹴りの余波で吹き飛ぶと、しかしギャルンという音を鳴らしながら立ち上がる。
直後即座に距離を詰め顔を思い切り殴り抜けば、サエラマは軽くよろけ、しかし一瞬のカウンターで蹴りを放った。
「……!」
サエラマはアバドンから距離を外す。
「……さすがはアバドン」
そう言ってサエラマは消えた。
残ったのは死体と、そしてラピスの水銀で汚染された土地だけであった。