ウルトラマンアバドン season2   作:りゅーど

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タイラント
ゼットン
バードン
ゴモラ
フラカン
ババルウ星人
アリブンタ

登場


lovers

「デァアアッ!?」

 大きく揺らぎ吹き飛ぶ巨体。あれも我等がウルトラマンアバドンである。

「ジャァッ……」

 地面を踏み締め、間合いを詰める。

 そしてそのまま片脚が大地を蹴り! 次の瞬間にはもう既に()()()()()()()()()()()

 膝蹴り一閃。

 それだけで、呆気なくガルキメスがぶっ倒れた。

「……フゥ」

 変身を解除、というか人間体に変身するアバドン。しゅるしゅると体が縮み、身長187cmの青年へと変貌する。

 アバドンもとい慎太郎は、作戦完了を報告した。

 その時だった。

 風に揺らされる漆黒の外套、顔は外套に付いたフードで隠されていてよく見えないが髪色が赤いメッシュで彩られていた。そんな人物が空を見上げながらスッとスマホを取り出した。

 そして、こう呟いた。

「行きなさい。タイラント……」

「ギュシィイイイグォアア!!」

「チィッ! こちら諸星! ガルキメス消失地点にてタイラント出現! 近くにウルトラウーマンラピスが潜んでいる恐れあり、至急増援されたし!!」

 だがしかし、ラピスもとい紗和は何も命令せずタイラントを召喚した。

 通常ならばアルセーヌのほかに約8体の怪獣をバトルナイザーにいるが、必ずしも命令をしてから召喚をする。そして指示通りに動き回るが……今回に至っては何も言わず……ただタイラントが超絶久々な出番に喜びながら街を破壊していた。

 いや、出番の嬉しさに破壊衝動はどうかしていると思うが……

 流石は暴君怪獣である……。

「ギュシィイイイグォアア!!」

「くそがぁっ!! アバドン!!」

 ガルキメス戦のダメージがかなり響いている。タイラントにどこまで食らいつけるか。アバドンはそう考え、そして吼えた。

「ウォアアアアアアアアアア!!!」

 タイラントはアバドンに向かってムチをのばして、腕に絡めて動きを止めた。

 そのまま尾を利用して強力なキックを直撃させた。

「ガッハ」

 タイラントは動きを止めずに近づきながら口から炎を吐き、アバドンへ攻撃を続けた。寧ろ、めっちゃ楽しそうに攻撃をしている。子供かよ。

 アバドンはそれを何とかして避け、しかし倒れる。

「いっ……」

 タイラントは一撃を与えようと尾で吹き飛ばそうとした。

 その時だった。

「キュイーッ!」

 どこかから、蟻酸が飛んできた。

 タイラントの皮膚に直撃し、尾が直撃寸前で止まった。

「……! この鳴き声はッ」

 そうアバドンが察した瞬間、タイラントに槍が突き刺さる。

「ババルウスティック……まっ……まさか……!」

 タイラントは呻き声を上げながらなんとか槍を抜こうとする。

 しかし、さらに体を抉るのである。そしてそこに放たれるは蟻酸、さらにアバディウム。

 タイラントは予想外の出来事に怯えていたが、なんとか攻めようと勢いよく蹴り技を放った。

 だが無意味だ。

 渾身のアバディウム光線が、渾身の蟻酸そして光線が、そしてババルウスティックが──────全てが、タイラントを襲った。

 アバドンのタイマーは既に高速点滅を繰り返している。

 タイラントは苦しみ声を上げながらその場でもがいて暴れ出した。

 アバドンは闇に包まれ、そしてその意識を手放した。

 深い虚無へと堕ちていく──────

 

 目覚めたのは病室だった。

 周りを見渡せば、乱立する機械。相当の重傷らしい。

「タイラントは」

 そこまでしか言えなかった。体が痺れ痛む。

「……タイラントは倒したぜ」

 金髪の青年が、慎太郎に話しかけた。

「……あんたはっ、痛ッ」

 痛む体に鞭を打ち、慎太郎は起き上がった。

「おいおい、やめとけ! 傷が開くぞ!?」

「今は休みなんし」

 ちぃ、と舌打ちをし、また横になる。どうやら相当深い傷のようだ。

 それもそうだ。身体はボロボロ、しかも対して休みもとってない。

「……誰だよ」

「俺はババルウ星人だ! 宜しくな!」

「ババルウ星人だとっ……!? 暗黒宇宙の存在がなぜ……!」

「そんなこまけぇ事は気にすんなって! んで、こっちが俺の妻の」

「至高なるヤプール様によってお創りいただいた、大蟻超獣アリブンタでありんす」

 おうふ。慎太郎の口からはそんな言葉が漏れた。

 なぜ超獣と宇宙人が……。そんなことは今はどうでもいい訳だが。

「……目的はなんだ。俺を殺すことか?」

「違うって。たまたま通り掛かったら苦戦してたからさ」

「見てられんせん。あんなボロボロで闘うとかただの大馬鹿者でありんす」

「面目ない」

 事実である。全く反論出来ぬ事実である。

「……何であんたら、ここに来れたんだよ」

「俺が許可した」

 肇が入室してきたのだ。

「ヴェラっち……!」

 慎太郎は驚愕した。何故奴らに! そんな思いが慎太郎を包む。

「いいだろ、減るもんじゃねーし。昨日の敵は今日の友、今は仲良くしておいた方が後々得になりそうだ」

 なかなか打算的である。

「……そうか」

 慎太郎はため息をついた。

 

 例の家。

 その地下室で、古橋と紗和が話している。

「……タイラントがやられたか」

「う、うん……」

「……チッ。チャートのガバが来たか……」

 ゴキゴキと音を鳴らし首を回す。

「ッ……まだ……やるの?」

「当たり前だ……」

「……わ、わかった……」

「……」

 スタスタと廊下を歩く。

 正気か? と思わざるを得ない歩き方だ。

「……ッ……」

 その背後をついて行きながら歩いていく。

「……検証実験に入る」

 その声はエコーがかかり、異常であった。

「う、うん……」

 古橋のその手には、模造品ではあるがウルトラゼットライザーが握られていた。

「……今度は……何する気?」

 紗和の口調は少し震えていた。だが言われたことは絶対なので逆らうことはしなかった。

「……」

 何も言わない。

 ヒーローズゲートから何かを取りだした……。

 ……ギルバリスの銃だ。

「……古橋君……? なに、する気?」

 何も言わず、銃口から何かを放つ。それは紗和の思考回路を止め、傀儡へと変貌させた。

「──────ウルトラマンアバドンを殺害しろ」

「ッ………………御意」

「……キエテ・カレカレータ」

 古橋はニヤリと不敵に笑った。

 

『D-79-5地区にゴモラ、バードン、フラカンが出現! ウルトラウーマンラピスも近くにいる恐れあり!』

 無機質な電子音が鳴り響く。

「CET、出撃!」

「了解!!」

 マッハストライカーが風を切る。

 ババルウ星人とアリブンタを連れて、平和のために奔走するのだ。

 

 そこにはゴモラやバードン、それにフラカンまでいた。

「……やっぱりな!」

 慎太郎の愚痴とともに、彼らが動き出した……! 

「よぉアバドンさんよぉ! 久しぶりだな」

 フラカンはニヤリと笑いながら目の前に一直線で前進し、拳を腹にめり込ませた。

 ゴモラも雄叫びを上げながら突撃をし、ゼットンも鳴き声を上げながら光線を放った。

 もっともこの3体も超絶久々の出番なので出れたからには正々堂々と戦う気のようだ。

「てっめぇ!! 変身中と名乗りと必殺技時の攻撃はルール違反って知らねぇのかよ!! つーかバードンどこいった!?」

「バードンはヴェラムさんと闘ってますよー!!」

「サンキュー!!」

 ……どうやらゼットンの登場は完全にイレギュラーらしい。

「やってやろうか……! ハァッ!」

「わちきもやりんすぇ!」

 本来の姿に戻る二人。

 あの恐ろしい姿が、今はどうも頼もしい。百戦錬磨の戦士を味方につけたのである。まるで手力男命(タヂカラオノミコト)日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が仲間になったかのようだ。

「しばらく出てなかった分、派手に楽しませてくれよ……! だからルールなんか知るか! (ゼットンが背後で哀しんでるのに罪悪感があるが……な……)」

 フラカン、お前は子供か。だがフラカンはただ召喚されただけであり、どうするべきかは内心困惑をしているようにも見えた。無論、バードンとゴモラもだ。

「キィイイイッ!」

 叫ぶアリブンタ、構えるババルウ星人。

 アバドンはフラカンの元に走り、アリブンタはゼットンに、ババルウ星人はゴモラに挑んだ。

 

「キュイーッ!」

 アリブンタは火炎を放った。ゴモラは着火こそしたが、それでもなお健全な状態で反撃として突進をした。

「キュイーッ!?」

 何とか回避するも、少し爪が掠る。

「このぉーっ!!」

 アリブンタは蟻酸を噴霧した。

 ゴモラはそれに負けず、諦めずに尾で攻撃をして吹き飛ばした。

 MAP兵器とも言えるその蟻酸は、辺りをドロドロに溶かす。

「ぐぁっ……!」

 尾の攻撃で溶けた地面に身体が埋まる。しかし直ぐに起き上がり、アリブンタ渾身のドロップキックがゴモラの頚椎を折った。

 メシメシメシ……。

 嫌な音が鳴り響いた。

 ゴモラの苦しみの雄叫びが街中に響く。それでもなお、諦めずに勢いよく突撃をした直後、胴体を掴んで投げ飛ばした。

 アリブンタは受身を取ると、ゴモラの目玉を蟻酸で溶かし、そして今度こそ命を奪った。光と共に、ゴモラはバトルナイザーに帰っていった。

 

 ゼットンは溶けた道を避けながら奇妙な鳴き声を上げながらウルトラマンを倒した時のあの技を放った。波状光線がババルウ星人を襲うその時だ。

「ヘェァッ!!」

 ババルウ星人の体が急に揺らぎ、そこにはだれもいなかった。

 いや、ひとり居る。彼は───────

 ────────武器の達人、ウルトラマンジャック! 

 しかし様子がおかしい。

「……ヘッ」

 ジャックの飛び蹴りがゼットンの腹を抉り抜く。しかも()()()()()()()

「ゼ、ゼットン……!!」

 ゼットンは驚きながら鼓膜が破れそうなくらいの呻き声を上げた。マンを倒したゼットンとはいえ、殺した張本人が突然どこからともなく現れたので流石に動こうともしなかった。

 しかし目の前にいるのはウルトラマンジャックだ。

 ジャックの声はババルウ星人、そして弱点属性。ここからわかることはただ一つ。

 ババルウ星人の固有スキル、『ニセモノの輝き』だ。

 速属性であるゼットンに対し特効を持つウルトラマンジャックへの変身。ウルトラ怪獣バトルブリーダーズを置き換えるとこうなるのだ! 

 ゼットンは多少震えながらも光線を放った。だが本当は、バトルナイザーに戻りたいところだが、主である本人が何もしてくれないのでどうするべきか分からず、苦戦していた。

「俺の妻に手ぇ出すなっ!」

 怒り、そして決意。

 ババルウ星人の、文字通りの『ニセモノの輝き』。心做しか、ブルースも流れているように感じる。

「ゼッ……ゼット〜ン!」

 ゼットンは情けない声を上げた。ちょっと可愛いが、ゼットンはもう体力の限界だった。もう、終わりにしても良いくらいに……

 ババルウ星人は変身を解除し、ババルウスティックを突き刺す。

「あばよ」

 ゼットンは、バトルナイザーに帰っていった。

 

 そしてメインイベント、ウルトラマンアバドンvs疾風魔人フラカンである。

「チッ……俺しかいない、か……」

 フラカンもこの状況がピンチなのに薄々予想はしていたようだが、アバドンの攻撃についていけているのでゴモラとゼットンより長期戦が続いていた。

「そろそろ死ねよこの野郎がァっ!!」

 アバドンの蹴り技が空を切る。

「うぉ……!」

 フラカンは擦りはしたがなんとか避けることが出来た。だが体力に限界が近づいているのには自分でも分かっていた。

「何故だ……何故だアバドン。何故、姉貴を狙うんだ……!? 姉貴である、俺の主を……!」

 息が少しずつ切れ始めていた。それでもなお、諦めずに疾風のような動きで攻撃を当て続けた。

「アイツが!! アイツが俺の恋人を殺したんだ!! だから敵を討つ!! 殺すんだよ!!」

「ッ……姉貴が今までそんなことをするような奴だったか!? 確かに今の姉貴がおかしいのは俺だって認めるが……ッ」

 そう言った直後、フラカンはそのまま息を詰めるように何も言わなくなり、アバドンの腹に拳をめり込ませた。

 しかしそれはわざとなのだ。

 腹筋を収縮させ、抜けなくしたのだ。

「キャッハハハハハ! 作戦大成功……死ねぇぇぇぇ!!」

 頭を掴み、90度回す。

「さらに横向くんだよ、90度ォ!!!」

 首の骨を折る気なのだ。

「しま……姉……貴……も、う……ッ」

 フラカンは何も抵抗できず、助けを求めた。

「……クカカ」

 ぱっと手を離した。

「ッ……ゲホッ! ガハッ…………は?」

 流石のフラカンもこれには予想外だった。呼吸を整えながらアバドンのことを見ていた。

 アバドンはフラカンを掴む。そして、アバドニックマジックで分身をすると、それぞれが武器を持った。

「え、なんだ……? 何する気だ……?」

 一人はメリケンサック。一人は棍棒。一人は鎌と分銅のついた三節棍。そして一人は──────

紅八塩朱剣(クレナイヤシオノアカツルギ)

 殺す気なのだ。

「テメェそれは流石にやり過ぎじゃねーのか!?」

 フラカンは危機を感じて思わずそう叫んでしまった。

 しかしアバドンはにじり寄る。そして、武器を掲げて。

「お前を殺す」

 こう宣言した。

 

 トキハスペーサーのアバドンが、アバドスペースを起動した。

 外では一分の間だ。

 外の1秒が内部の1年。つまり───────

 ─────────フラカンは、60年近く殴られ続けた計算になる。

 もはや面影はない。

 体はボロボロで、死の寸前なのだ。

「ッ……なん、て……やり方だよ……ッ(姉貴、頼む……!)」

 フラカンは紗和からの助けを求めながらこの場から逃げようとしていた。

 アバドンはフラカンを蹴り飛ばした。そして体をひとつに戻すと、アバディウム光線を放った。

「ッ……! グァァァァァァァッ!!!」

 フラカンは逃げることが出来ず、光線が直撃した。その直後に光粒子となって消えながらバトルナイザーへと戻って行った。

 そしてバトルナイザーの持ち主は、ただ何も言わずに、アバドンのことを地面から見上げていた。

 アバドンはその持ち主に気づく。しかし、そこで意識は途切れたのだ。

 怪我を押してでた結果である。

 クスッと笑みを溢したが、無言で後ろを向き、歩み出した。『報告……』ただそれだけを呟いただけで、その後は何も言わずに闇のように消え去った。

 まるで、操り人形のように……

 目を覚ましたのはまた病室だった。

「また倒れてんじゃねぇか!」

 面目ない。慎太郎はそう言って、見上げた。

 まっさらな部屋に、自身の体が寝かせられているのがわかる。

「……ありがとうな、ババルウ夫妻……」

「良いってことよ!」

 屈託のない笑顔に、慎太郎はホッとした。

「ババルウちゃん、時間近くなりんした!」

「んじゃ、俺たちはそろそろ行くわ」

「……グッドラック」

 慎太郎は口角を上げた。

 

 例の家。

「報告……フラカン、アバドンと対立するにも敗北。ゼットンとゴモラもです……」

 背を向けている彼に向かってそう言った。何故か少しだけ怯えてるようにも見える……

「……コシ・カレカレータ。ずんと休養召されよ」

 古橋は何かを読んでいる。おそらく時代劇小説だろう。

「…………コシ(お前は)バグリーサ(殺してやる)……アバドン……」

 エコーのかかった声が、部屋に響いた。

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