ウルトラマンアバドン season2   作:りゅーど

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セレブロ

『……キエテ・カレカレータ』

 操られし青年は、今日もまた新しいメダルを集めていた。

『……ゴルザ。メルバ。スーパーコッヴ。ガンQ。レイキュバス。ゼットン。パンドン。マガオロチ。……キエテ・カレカレータ!』

 ギャハハハハハ! 

 哄笑。

 そして、青年は───────古橋は、静かにゼットライザーを起動させた。

 

 所変わって、病院にて。

 とある病室に向かう青年がいた。文一であった。

「…………715室……個人部屋、なぁ〜……そこにアイツが……」

 文一は自分でメモした紙を見ながら小声で色々と呟きながら病室へと向かっていた。

「…………ここか」

 目的の病室に着いた文一は顔がすぐにめんどくさいという顔になった。

 見張りの警官が2人が扉の前にいた。目があった瞬間、色々と詰問されたのも無理はない。

「何をしに来た」

「……部屋にいるアイツと話がしたい。俺はアイツの友人です」

 文一に《めんどくせぇ》という顔をしているのは警官も気づいていなかった。

「一応、CETの隊員でもある……仮に何かあっても対策はしてある。入れてくれないか?」

「……解った。許可しよう」

「……ありがとうございます」

 文一は軽く一礼をし、静かに病室に入った。病室にいた《彼女》はまだ弱々しく、静かに窓の外を見つめていた。ボムヘアーだった髪がすっかりと伸びてしまい、いつの間にかロングヘアーとなっていた。赤いメッシュがかかったロングヘアーとなっていた。

「…………随分と痩せてたな、紗和」

 文一はそう言った瞬間、紗和は静かに顔を振り向かせた。

「…………ろくにご飯食べてないし、まだまともに動けないからね……」

 聞こえないくらいの小さい声で紗和はそう言った。

 ……静かである。

「…………お前、変わったな……」

 文一は冷酷にそう言う。紗和はただ闇のように暗くなった瞳で文一を見たが、紗和は何も言わなかった。

 静かな空気が場を包む。

「……紗和、俺はお前の先輩でもあるが……お前に頼みがある」

 文一はこれ以上何も言わないなら即本題に入ろうと、めんどくさがり屋な性格をしているため、即座にそう言った。

「…………なに?」

 紗和はゆっくりと声をあげてそう言った。

「…………セレブロの居場所は分かるか?」

 文一は直球でそう言ったが、紗和は驚いた表情を見せて言葉を出すことが出来なかった。言えばこの戦いも終わるはずが、紗和は声を出さなかった。

「…………なんで言わねぇんだ?」

 文一は問いかける。だが紗和は何も言わなかった。よく見れば、冷や汗をかき、口元が震えていた。動揺しているのだ。

 言えないと。言ったら殺されてしまいそうだと。

 目がそう訴えた。

 文一はその目を見て察した。だが言わなければセレブロはこれまで以上の被害を拡大し、セレブロに勝つための勝利への道も閉ざされてしまう。どうするべきかと、文一は考えた。脳裏には慎太郎が苛ついてるのが想像ついた。文一は小声で「自分勝手な野郎だよなぁ……めんどくせぇ」と、呟いた。地獄耳だったら慎太郎は今頃怒っているだろう……

「…………取引、どう?」

 紗和は突然そう言った。文一は驚いたが取引条件を聞いた。その取引は文一と紗和だけの取引であり、慎太郎達には言えないことであった。しばらく取引の話が続き、そして……

「…………取引成立?」

「おう……取引だ」

 取引は成立したようだ。紗和はいつもの笑みを浮かべて決めたようだ。怪盗という叛逆の意志は消えてなかったようだ。

「……なら、教えてくれ。古橋……セレブロはどこだ?」

 文一は真剣な眼差しでもそう言う。紗和はゆっくりと口を開いて言う。

「——————ボクの家だ」

「デトロ! 開けろイト市警だ!」

 彼はそう言った。

 イマイチ影の薄い隊員、カグラ ゲンタロウである。

「……紗和本人から聞いた住所はここだ。怪盗のアジトらしい場所だよなぁ……」

 その後ろで文一は紗和から教えてもらった住所をメモを見ながらそう言った。

「ちなみに……家の中を勝手に細工されているらしく……なんか隠し扉が見つかればそこにいるらしいぞ? 後ゼットライザーを手にしてるらしいぞ」

 色々と聞き過ぎ……だがこれは事実である。

「しちめんどくせぇな、あのエビモドキ」

 食ってやろうかと慎太郎は怒った。

「……だがその扉を見つけても……パスコードが必要らしい……それは紗和でも知らなかったらしい。破壊するか自力でパスコードを見つけろだって……あと、これ……」

 文一は慎太郎に鍵を見せた。

「なんだこれ」

「この家の鍵」

 即答した。何故か紗和は特殊方法で隠し持っていたようだ。流石怪盗である。

「すげえもんだな」

「アイツも鍵は持っているが常に鍵をかけているから怪しまれずに侵入するなら鍵開けるしかねぇってよ……ここあんまり人気が無いけどな……」

「まぁそうだろうなぁ……めんどくせぇな」

「それな。俺はめんどくせぇことは回避して寝たい……」

 ここに来る前に約5時間も寝たのにまた寝ようとしている文一である。だが今は任務中ということで文一は静かに鍵を刺して開けた。何も命令されてないのに自分勝手に……

 しかしそれはいい判断だった。

「お邪魔しま〜す」

 真面目か。だが部屋の中からは音何も一つしなかった。留守なのだろうか、文一は疑いもせずに部屋の中に入った。

 その後を追う慎太郎。

 ふぁさ、と右の長い髪が揺れる。

「……手分けして扉を探すか?」

「そうするか」

「賛成です!」

「……給料分は仕事すっか……」

 文一は軽く欠伸をしながら通路の奥へ向かった。《取引》したモノを確認するために……

 慎太郎は超音波を放つ。そして聴覚を鋭くし、嗅覚を頼りに辺りを探し出した。

 カグラは目を細めた。オーラを見ている。死相をなるだけ避けているのだ。

 文一は奥へ奥へと進んだ。人の気配は無く、ただ眠そうな顔をしながら進み続けた。ふと、別目的で見つけた扉の前に止まった。

「…………これか……」

 文一は小声で呟き、静かな瞳で見つめたまま確認していた。

「…………取引だ。そして……お前は仲間だ。この取引は……壊したりなんかしない……」

 文一はそう言いながら慎太郎達の元へ戻った。

「……慎太郎、カグラ……こっちは何もなかった。そっちはどうだ?」

「俺の視覚ではこっち側にトラップが多く感じられます」

「……宝石とは違う固有振動数をコチラから確認。近いな」

「……こっちは特に何もなかった。隠しているだけあって……複雑な構造をしているみたいだな。近いところを中心に探してみるのはどうだ?」

 文一は少しずつカグラの近くまで寄った。

「……そこ、あぶない」

「お、っと……」

 一歩下り、足元をゆっくり踏んで確認した。

「……ここら辺か?」

「そうです」

「……さて、どう出るか……」

「……おい、俺のいる方面から邪気を感じた」

「…………これか?」

 文一は邪気を感じるその方向に顔を向けた。

「……こりゃまずいな」

「……何が?」

「……チャリンという音がした、ウルトラメダル製造中だなこれは」

「……おい、そのメタルが超獣とかもしくは……お前の兄だったらどうするんだ?」

「……知るか。その時はそのときでこ、す」

 慎太郎にノイズがかかる。

「……おい、慎太郎……大丈夫か?」

「ちぃっ、何だこのき〇がい野郎! 【ピー】付いてんのか、規制しやがってこの【ウニョウニョウニョ……】め!!」

 ……どうやらコンプライアンス対策の模様。

「…………ワロス」

 文一は眠い目をしたまま笑っていた。

「……はァ」

 慎太郎は頭をガシガシとかいた。

「……見つけたが、どうする? 待ち伏せ? それとも正面突破? もしくは……ワザとトラップにかかるか?」

「ここは僕が行きますよセンパイ! 僕の命なんて安いもんです!!」

 そう言って飛び出そうとするカグラの首根っこを掴む慎太郎。

「お前って案外優しいんだな、慎太郎」

 ニヤニヤ顔をしながら文一はそう言った。

「うっせ、部下失ってたまるかってんだ蛮族」

「誰が蛮族だ。俺だって考えて行動するさ」

 眠そうな顔をしながら言うと説得力が無い。

「お前に言われたかねぇ」

 そう言いつつ慎太郎は踏み込んだ。

「ほーう、凡そ10mA(ミリアンペア)の電流か」

「電流なら……いけるな」

「ただ電圧は……500Vねえ」

「ふむ…………なら、金属で誘導させて道を開くのはどうだ?」

 いつの間にか義腕を外してレイピアの腕になっていた。

「お、それいいな。焼死体になっても知らんが」

「なるわけないだろ……ちゃんと対策はあるからな……」

 文一はそう言うと、金属で出来ている義腕を取り外し、電流回路を変えるために特殊セラミックス─────主に絶縁性能に優れている─────製のエレクトロアームを取り付け、再装着。すると、道を阻んだ電流が無くなり、進めるようになった。

「レイピアも良かったんだがこれ金属製じゃねぇんだよな……義腕が鉄製で金属製で良かった……」

「どっちだよ、金属製じゃねぇならセラミックスだろこの能無し」

「……材料技術基礎、勉強します? センパイw」

 シンプルな罵倒と煽り。

「……俺、それ専門外だからよく分からん。寧ろ興味なくてよ……だからよく分からん」

 素直に答える文一。だが文一はこれでも頭脳派であり、なんやかんや頭が良いので仕事とかはちゃんとこなす人である。

 セラミックスと金属を間違える様なやつではあるが頭脳派なのだ。

「ま、行くとしますかねえ」

「……あ、ちょっとした頼みがあるんだが……良いか?」

 文一は2人を止めるかのように言い出した。

「んァ? どした?」

 慎太郎はそう言って歩を止めた。

「出来れば……古橋は殺さないでくれないか? 頼む……」

「ああ、いいぞ。半殺しにはするがな」

「……ま、罰与える程度にな」

 そう言いながら文一は2人より先に前に進む。

「ちなみにこれ……取引でもあるんだからな? お前は今俺と取引した。交渉成立。拒否権なし……行くぞ」

 眠そうな顔とは裏腹に、文一の気配がいつもとは違う。重く、何かを思うような黒い気配を感じた。

「チッ、めんどくせー。クーリングオフで契約破棄したろ」

 慎太郎はきらくなきもちでいるようだ。

「おい書き手、IQ低下してんぞ」

 いやはや申し訳ない。

 

 閑話休題。

 文一は何も言わずに進み続けた。ふと、脳裏に紗和が思い浮かんだ。

「…………ぐあっ」

 よそ見で頭を激突。

「アホかお前」

 無慈悲。

「すまん」

 鼻元を抑えながら文一は謝った。

「…………ちょっとした考えて事をしていた。すまない、これから本当の戦いが始まるというのに……」

 珍しく文一は真面目な眼差しとなり、慎太郎に向けて謝った。

「……へっ」

「とりあえず、この話はこれが終わってから詳しく話すさ。……あ、そうだ。慎太郎、お前年齢いくつだ?」

 何故か年齢を聞く謎が発生した。

「143024歳、軍人です」

 受け答えがきたねぇ。なんてきたねぇ年齢と答え方だ。

「…………あ。やっぱそうか」

 そう告げただけで文一は一人で奥まで進んだ。何がしたんだかコイツは……

「……何が言いたい」

「……いや、こっちの話さ。俺は強くなってもお前みたいにはなれないんだなって……」

「ああそうかい……それにしても、瘴気がすげぇよ」

「死相が濃すぎる……一体何体の怪獣が犠牲になったんだ……」

「そうだな。だが、その分近づいているってことだ。運悪く鉢合わせが無ければ良いけどな……」

「……よし、突入だ! デトロ! 開けろイト市警だ!」

 バァン! (大破)

 ドアくん迫真の大破により開け放たれたその部屋には、地下へ向かう為のエレベーターがあった。

「行くか」

「押忍!」

「アイツとの取引を……無駄にさせねぇ」

 無機質な音を立て、地下へと進んでいく。

 

 地下のマッドネス号に足を踏み入れた三人は目を疑った。

 怪獣の肉片が転がっている。

「…………食うなよ?」

 何故か慎太郎を見て言った。

「たりめーだろ……ゴルザにメルバにスーパーコッヴ、あとこれはレイキュバスに……これは魔頭鬼十朗の木乃伊(ミイラ)か? いやガンQか。それにこれはゼットン、パンドン……あ、マガオロチの破片もある」

「エースキラーの破片もある、エレキングも! これは……ゴモラにレッドキングの破片……! ペダニウム合金も落ちてる!」

「……で、こりゃ俺が献血した時の血液かい」

「あ、だからベリアルのメダルが出来たのか……? ベリアルの遺伝子がついた肉の一部だと上手く出来ないから……的な?」

「つか、俺がデビルスプリンター爆食いしたからだろーな」

 戦犯。

「お前が悪いんじゃねーかよ」

「先輩……」

「仕方ないね、うん」

「何が仕方ねーだよ……(だから悪魔なんだよ……)」

 心の中で慎太郎の地雷を踏んだ文一である。奥に見える扉を見ながら。

「……行くか」

 慎太郎は扉を蹴り飛ばした。

「…………いない?」

 物静かである。用心するために武器を構えるが、静かにである。

『俺のラボに何の用だ』

「……お?」

 文一はゆっくりと振り返りながら武器を構え続けた。

「コイツが古橋か慎太郎……?」

「……変わったな、てめー」

「あ、変わったんだ……めんどくせぇ……つーかお前……勝手に他人の家を改造するとか…………お前、彼氏失格じゃね?」

『俺は古橋であって古橋ではない』

「セレブロか」

 慎太郎は古橋の頭を掴み、おもむろにカド目掛けてぶつけた。

 何度も何度も。殺す気でやった。

「取引……忘れてねぇよな?」

 文一はそう言いながらも義腕を取り外してレイピアを取り出し、足を斬りつけた。

「あの取引さえなければ後ろにゴキャッとやって殺してたところだ」

「…………まぁ、セレブロなら唐揚げにするなりして食べたり斬り殺したりして良いさ。古橋が重傷状態までなら許すぜ」

 文一は話し続けながら古橋に向かいレイピアを突き続けた。

「よっしゃ」

 慎太郎は勢い良く蹴りを放つ。カグラも便乗して頚椎狙いの蹴りを放つ。

 古橋はそれを静かに見た。そして、一言。

『カレカレータ』

 その言葉を聞いていなかったのか、文一は胸元をめがけて突こうとした。

 古橋は消えた。

「なっ……!? 幻影か?」

「ゼットライザー使いやがったな」

「チッ……めんどくせぇ〜なぁ〜…………アイツ、またメダル作って怪獣を召喚する気じゃねぇよな?」

「畜生……!」

 

『Furuhashi Access granted』

 古橋はゼットライザーを起動させた。

『宇宙恐竜』

 かしゃん。

『双頭怪獣』

 かしゃん。

『大魔王獣』

 かしゃん。

『Zet-ton. Pandon. Maga-orochi』

『キエテ・カレカレータ』

 そして、古橋は……セレブロは、ゼッパンドンへと変身した。

 

「……チッ!」

 慎太郎もゼットライザー、いやアバドライザーを起動させる。

「しばらく任せるぞ!」

「……あ、おい……この写真、渡す。もし古橋を元に戻したければの……一応、対策なんだが……」

 手渡す写真には、かつてのフツヌシメンバーが揃った集合写真であった。迫水と奏もいた。

 文一は紗和の作業机に置いてあったのを見つけ、隠し持っていたのだ。

「セレブロから引き抜くために……少しでも自分の記憶を取り戻せば抜けるはず……頼めるか?」

「おう、解った。……やってやる」

 

 ヒーローズゲートをくぐる、その瞬間時間の流れが変化した。

『Shintaro:access granted』

 バッ、と勢いよく手を開けば、アボラス、キングザウルス三世、ヒッポリト星人のメダルがあった。

「未来本当、期待感正論!」

 そう言って、慎太郎はメダルをセットした。

「アボラス! キングザウルス三世! ヒッポリト星人!」

『Abolas』

『King zaurus the third』

『Alien hipporit』

 スライドし、三枚のウルトラメダルをアバドライザーにリードする。

「高鳴れ、ただ生き抜け! この最上行動!!」

 そして慎太郎はアバドライザーのトリガーを押した。

「うぉああああああ!! アバドン!!」

 ウルトラメダルが慎太郎に同化し、慎太郎の体を怪獣に変化させる。

『Bronzolution the third』

 ブロンゾリューション三世のお出ましである! 

 

「ピポポポポポ……ガッガァッ、ギッギィッ……」

「ギシャァアアアッ!」

 大怪獣バトルの始まりである。

「カグラ! 俺たちは市民の非難をさせるぞ……! めんどくせぇけど、俺だってやる時はやるからな」

 そう言いながら文一は市民の非難誘導を始めた。

「了解!」

 カグラの声色は真剣であった。

「頼むぞ……ウルトラマンアバドン……」

 文一はアバドンを見上げながら呟き、約束を守るために息を整えた。

 一瞬だけ、右手をポケットの中に突っ込んだがすぐに出して市民避難を続けた。

「(アバドンが本当にヤバかったら……俺も……《変身》してやる……ッ)」

「ギシャァアアアッ!」

「ピポポポポポ……ガッガァッ、ギッギィッ……」

 蹴り技を放つ両雄。

 ブロンゾリューション三世はドロップキック、対しゼッパンドンは片脚。

 簡単に吹き飛ぶゼッパンドン。

「うぉ……!? 危ねぇなぁ〜……あ、こっちだ……! この方向で走り続けて逃げろ……!」

 真横から吹き飛んだ拍子に建物の一部が瓦礫として落ちてきたがなんとか回避させ、避難を続けた。

「カグラ……そっちの市民避難はどうだ?」

「近隣住民避難完了です」

「なら避難所まで行ってくれないか? アイツがもし避難所に目が入って市民に襲ってきたら危ないからな……俺はここで避難指示をするから頼めるか?」

「了解!」

「……それと……もし俺が姿を見せなかったら……あとは頼む」

 その言葉を最後に文一は避難指示をしながらアバドンの元へ歩み出した。

「……了解」

 文一はアバドンの戦いを見上げていた。あるものを右手に握り締めながら……

「あ、こっちじゃなくてあっちの道を走り続けろ……!」

 避難指示を止めることもなく、見上げ続けていた。

「ピポポポポポ……ガッガァッ、ギッギィッ……!」

「うぉぁっ!? チィ、しちめんどくせぇヤローだな!」

『ゼッパンドン撃炎弾!!』

「ブロンゾリューションストライク!!」

 互いの必殺技がぶち当たる。

『うぉあああああああああ』

「くたばれ死ねさっさと死ねゴミカス地獄堕ちろゴミィイイイイイイイ!!!」

 その鍔迫り合いに勝ったのは。

『ピポポポポポ……ガッガァッ、ギッギィッ……!!』

 ゼッパンドンだった。

 ゼッパンドンは、即座にファイブキングに変身した。

「アバドン……ッ! (クッソ……俺は、どうすれば……ッ)」

 いつもの文一とは正反対に焦る顔が浮かんだ。

 ふと、脳裏に紗和との会話を思い出す。

 

「これで取引は成立した。お願い」

「……あぁ、俺とお前の仲だからな……」

「……最後に、お願いがあるんだ」

「なんだ……?」

「…………セレブロは古橋君の中にいる限り、強さはさらに上回る……だから、古橋君から取り除かない限り……状況は厳しくなる。だから、これは取引ではなくお願いだ。ボクの代わりに戦ってほしい……お願い」

 

 ———ウルトラマンノゾム

 

 文一はカァッと目を見開き、右手に持っていたものを取り出した。炎の形をした指輪であった。その指輪を左手の人差し指に嵌め込み、覚悟を決めた。

「俺の炎とマグマは……決して消えないッ!!」

 そう叫んだ瞬間、文一は炎のような赤い光に包まれた。

「……こりゃキツイな」

 そこにはウルトラマンアバドン ロストワンズウィーピングが倒れていた。

 ゼッパンドンにやられたようだ。

「おっさんウルトラマンはそこで倒れるのか? めんど情けねぇよなぁ……俺の身になってくれよ? めんどくせぇ……」

 どこからかそんな声がした。

「……ほう、よく抜かすなクソガキ」

「俺……これでも9万6000歳だ、アバドンさんよぉ……!」

 そう言った瞬間、ゼッパンドンの背後を誰かが突き刺した。

 その正体は、身体が炎のように赤く染まったレッド族であり、猫耳のような尖った顔、そして右腕は武器となっているレイピア。

 彼の名はウルトラマンノゾム。ウルトラウーマンラピスの仲間であり、彼女の代理としてアバドンに助太刀をしに来たのだ。

「アバドンのおっさん、いつまでやられている気になるんだ? そろそろ立てよ……俺だって本当は正体バラしたくなかったんだよな……めんどくせぇ」

「ヘッ、戯言を……」

 ファイブキングはガンQの目から光線を放った。

 アバドンはそれを弾き飛ばし、首を絞める。

「あ、まだまだ動けんじゃん。さっきまで倒れかけていたのになぁ……」

 そう言いながらもノゾムは腕になっているレイピアで胴体を斬り倒し続けた。レイピアの刃は軽く、すぐに体制を整えることができた。

「……あ、古橋がどこにいるのか分からない限り、下手に攻撃は出来ねぇな……」

「古橋なら……ここだな!」

 ガンQの目玉に手をぶち込むアバドン。それを抑えているのは……ああ、彼か。

 ウルトラマンビータ、そしてウルトラマンヴェラム。

 ビータ曰く、ザギとフェレスは同時に復活した邪神をボコリに行っている模様。

 アバドンは古橋を引っこ抜く。それと同時に、セレブロはファイブキングに寄生した。

「ファイブキングかよぉ……ったく、めんどくせぇからこのまま寝たい気分だ。アバドン……古橋を頼む……写真、見せて……そして……《彼女》に頼む」

 ノゾムはそう言いながらファイブキングに向かってレイピアを向けた。

「……へっ、任せとけ」

 地盤が僅かに浮かび上がる。

「はぁああああああああああ……! アバディウムバ────────────スト!!!!」

「よっ……おっと……え?」

 ファイブキングを相手にしているノゾムはアバドンの方へ顔を向けた。

 ファイブキングのガンQの目は潰れている。遠方より放たれた光線(ダブル・グラビティザギ)の余波でレイキュバスも死んだ。

 実質トライキングと化したファイブキングの関節は既にビータとヴェラムが砕いていて、もはやグロッキーであった。

「…………グロ注意じゃねぇかよこれ……」

 画像とかは無いのでセーフではある。

「あ……おい……アイツが倒れて破壊されたところ……少年院じゃね?」

「いや、違うな。まだ壊れてはいない……流石だぜクロイツェル」

 ギリギリのところで力自慢のクロイツェル(アルファ個体)が抑えているのである。

「……シュァアアッ」

 野太い声がして、思わずファイブキングは揺らいだ。

 そして倒れた先は、ああなんという事だ。某国の領事館だ! 

 なんという不幸な事故なのだろう、とアバドンは嗤うのだった。

「……国際問題にならないよな?」

 ノゾムが謎の不安に満ちていた。

「ならねぇだろーな」

「ふーん……」

 不安になった割には無関心に返答した。

「あ、古橋のヤツ……大丈夫か?」

 ノゾムはチラ見で病院に目を向けていた。

「大丈夫だろ」

 アバドンはファイブキングに馬乗りになった。

『……邪神が今頃街を壊しているはずだ、お前はもう終わりだ!』

「……ヘェ? あれが邪神か? 雑魚にも程があったぜ」

「お、ようザギ」

「ようアバドン」

『なんで破壊神とラフな会話してんだお前は!?』

「決まってんだろ」

 二人は拳を握りしめる。

「「嫁が可愛い同盟だからだよ」」

 無論、出任せである。

「……なんだこの茶番……?」

 ノゾムは空気が読めないウルトラ族である。

「ホラッ! お前もさっさとやってくれや!! 刺せ! 刺せェ──ッ!!」

「へいへい……」

 怠そうにノゾムはそう言ったが、レイピアは普通の剣より軽いからか俊敏良く振り回し続けた。振り回しているがノゾムが狙っているのは胸元であった。

「チッ……ちょこまか動くから刺せねぇ……」

「えいっ!」

 グサッ、という擬音と共に槍が刺さる。

「うぉ……!? ……多少楽になった……♪」

 喜ぶな怠惰マン。

「今だよダーリン! それからそこの二人組!」

 ダークフェレスがフェレスボルグで刺し貫いたのだ! 

「よし、いい子だヴェサ」

「ナイスー!」

『ヤ、ヤメロォ────ッ!!』

 ……最早、何も言うことはあるまい。

「…………お〜らよっ、とな!」

 突く勢いを上げ、胸を大きく貫通させた。

「アバドニックブレイク!」

「はぁあああ……ジャァッ!」

「えいやぁ────っ!!」

『ばかな……ッ!! うぉああああああああああああ!!!!!!』

 壮大な爆発音と共に悲鳴は消え失せた。

「……はぁー……終わったか?」

「……終わったようだぜ」

「……はぁ……古橋はどこだ?」

「んぁ? ふぁふんほっひは(多分こっちだ)

 こいつ、セレブロ食ってやがる。

「お前マジで食うのかよ……」

 ノゾムは本気でドン引きしていた。

「うめえ」

「マジかよ……(それで洗脳されなきゃ良いが……)」

 ノゾムは文一に戻り、古橋の元へ駆け出した。

「……うぅ」

「いた……おい、初対面だが古橋……」

 文一は胸ぐらを掴み強引に立たせた。

「……俺は、なんでここに?」

「セレブロに寄生されていた。そしてお前はお前の恋人を傷つけた……」

 文一の瞳は何故か怒りに満ちていた。

「え、え??? どういうことなんだよ、え??????」

 セレブロに寄生された者は殆ど記憶処理されるのである。

「チッ……お前、紗和に何したのか知ってるか?」

「覚えてないんだ。二ヶ月間くらいの記憶が……ないんだ」

「はぁ〜……気が抜ける……めんどくせぇ〜な〜……」

「おい、しばらくは独房だぞ」

 慎太郎は古橋を持ち上げ、そのまま連行させた。

「安心しろ。紗和も一緒だからな……まぁ、今は病院で寝t」

「古橋君……ッ!!」

 背後から聞き覚えのある声が聞こえた。

「は?」

「ゲホッゲホッ……! ゲホッ……古橋く、ん……」

 いまだに重傷状態の紗和が現れた。吐血しながらも古橋に駆け寄り続けた。

「…………お前……病院からここまで距離あるぞ……?」

「ゲホッ……ゲホッゲホッ……知ってる……ゲホッ……警察の目を盗んで抜け出すの苦労したんだからね……? ゲホッゲホッ……ッ!」

 地面に血が垂れ落ちていた。それでもなお、古橋に向かって駆け寄り続けた。

「紗和……! ごめんな、紗和……!」

 古橋は紗和に近寄り、抱き締めた。

「ガフッ……お帰り、なさ、い……古橋く、ん……」

 身体中の傷が悪化し吐血をし続けていた。

「…………治ったら……すぐに向か、う……ね……」

 そう言って紗和は地面に倒れた。

「あーあー……気を失ったな。一応言うぞ……お前が紗和を《傷つけた》」

 文一は冷酷にそう言いながら紗和を担いで病院に送り戻しに向かった。

「……そうか、おれが……」

 古橋の目から光が消える。

「あ、でも……紗和からの伝言を貰ったぞ『お帰りなさい。ずっと待ってたよ』……ってな」

「……そう、か」

 古橋は倒れた。

 

 一ヶ月経った。

 もう既に古橋は事情聴取に写っている。また、セレブロは鹵獲されたようである。

 そして紗和は自ら怪盗だと言うことを自白し、治療を全て終え、少年院に送られた。街中のメディアは『怪盗少女逮捕』『怪盗少女は少年院に送られた』などの報道騒ぎが続いていた。

 紗和本人は、少年院で古橋のことを待ち続けていた。だが古橋は成人済みではあるので少年院には来ない、そう思い、会えないことを受け入れられず、死んだように独房で常に静かだった。

「……よう」

 紗和の耳によく聞きなれた声が届いた。

「……え?」

 その声に静かに後ろを振り向いた。

「久しぶりッ」

 痩せこけ、髪の毛からも元気がない古橋がいたのだ。

「……古橋君……?」

 すっかり伸びてしまいロングヘアとなった髪を揺らしながら駆け寄った。

「……ここじゃなくて……普通に刑務所のはずじゃ……」

「ん? ムショなら刑罰無しよ。俺達はどうやら──」

 ばん、と紙を見せてきた。

「精神崩壊みたいな感じで責任能力なしと判断されたそうだ」

「……え? それって無罪ってこと?」

「お前は洗脳状態、俺は寄生済み……だとよ」

「…………そんなこと、警察は信じたの? 普通なら信じられないよね? (というかそもそもボクには窃盗罪があるような……)」

「CETがやってくれたよ」

「———!」

 紗和は声に出さないくらいに驚いた。だが一瞬で笑顔になった。

「……ん?」

「なんでもないよ……♪」

 紗和はそう言ったその背後で少年院の警備員が紗和に荷物を用意しろと命令された。

「……さ、行こか」

 二人は進む。自身の正義のために。

 

 ウルトラマン アバドン Season2

 第一部『シンシャ』~完~

 第二部につづく……。




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