インフィニット・ストラトス a Inside Story    作:鴉夜

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※誤字、脱字は多いかもしれないです。表現も統一性がないかもしれません。なるべく修正します。ご勘弁ください。

また、オリジナル解釈が多めです。矛盾や、つじつまが合わない等はあるかと思いますが、本当にご勘弁ください(泣)


第16話 俺には懸念材料がある

 

 

 

 

 クラス対抗戦を来週に控える5月の初め。例年より少し高めの気温に、気持ち良い日差しが照りつける午後。

 織斑先生の午後不在情報を事前に得た俺は、この機を逃さず昼休みに職員室前に待機、出てきた山田先生ことヤマヤンに定番理由その①である『体調不良』を発動して、保健室行きのプレミアチケットをゲットした。

 当然の如く『行き先変更手続き』を行い、一番上まで階段を上る。そこは保健室ではなく、告白場所の大定番である屋上だ。伝説の木も鐘も存在しないが、基本的に男子も存在しないIS学園ではそんな青春の1ページが繰り広げられることもあまりないようで、意外にもここは閑古鳥が鳴いている場所の1つらしい。

 缶コーヒーを片手に、俺は日陰に腰を下ろす。冷たく固いコンクリートの座り心地は、慣れればそこそこ快適とも言えるだろう。

 俺は内ポケットから開封済みの煙草とジッポを取り出し、一本銜える。手に持った純銀製のジッポは、真鍮製の独特な高く長く響く音とは違い、少し低めの音の響きと共に、炎を灯して銜えた煙草に火をつける。

 チャコールフィルター越しに吸い込んだその煙は、肺を経由して自身の周りを包む綺麗な空気に溶け込んでいく。

 

 

 

「(京夜さん! 不良です!! 煙草なんてダメですよ!!)」

「(ムダよ茜。私だって散々言ってきてダメなんだから。頭の中が不良なのよ)」

「(ああ、残念な方だったんですね。ごめんなさい京夜さん)」

 

 

 

 そんな不具合全開な頭に住んでいる君たちにそんなこと言われたくないと思いつつ、フェンス越しにグラウンドを眺める。イッチニ、イッチニの掛け声と共に打鉄を纏った女子生徒たちが、並んで素振りをしている。あれは恐らく上級生だろう。

 1年生の「実際にISを使った実技訓練」はクラス対抗戦後に開始するそうで、それまでの間の訓練は基礎体力作りが基本となっているからだ。

 ちなみに本来なら1組の今日の午後の授業もグラウンドでランニングだったのだが、先程話した織斑先生の不在で、座学自習となった。今頃一夏たちは真面目に勉学に勤しんでいることだろう。

 

 

 

「(後で箒さんやセシリアさんに怒られますよ、京夜さん)」

「(……ティーナ。この後の箒の、あの木刀による一撃をどう対処したらいい?)」

「(それはあらかじめ遺書を書いておくしかないんじゃないかしら)」

「(殴られない方法を教えてくれ!!!)」

 

 

 

 ただでさえ最近セシリアも俺の性格を掴んできたからか、俺に『生活改善プログラム』を発動しようとするんだよな~箒とは違って手はまだ出ないけど。

 まぁとりあえず、ここでしばらくの間ではあるがのんびりできるだろう。一夏の特訓には付き合わないといけないけどな。流石にそこまでサボると俺の命をパッチンとされかねな……

 

 

 

「アンタ、こんな所で何やってるのよ?」

 

 

 

 そこに現れたのは俺的に常時剥離剤塗布希望の女子である凰さんだった。先週の「中華ツインテール、襲来」以降は『モルルのお守り』デフォルト装備でエンカウント0状態をキープしていたのだが……

 彼女は俺のことを観察するかのように視線を向けてくる。特に俺の右手に大注目状態だ。

 

 

 

「ふ~ん。授業をサボって、おまけに煙草とはね~」

「は、ははは……。凰さんはなぜここに? 授業はどうしたんですか?」

「代表候補生ともなれば、いろいろあんのよ」

 

 

 

 苦笑いを浮かべる俺に彼女は右手に持ったUSBメモリーを軽く見せびらかすように振る。自国への提出用データが入っているそうだ。

 そういえばセシリアもたまに授業中退席してたな。主に専用機の稼働データだろう。第三世代はどの国もまだまだテスト段階のものが多く、実用化に向けての多くのデータを必要としているからな。

 

 

 

「廊下を歩いていたら、たまたまアンタを見つけて追いかけてきたってワケ」

「そうですか……良かったらコレどうぞ」

 

 

 

 俺は内ポケットからコーラを取り出し差し出す。もちろんキンキンに冷えている。内ポケットに入っていたのになぜかって? 俺の内ポケットには常人の想像を超える程の機能が備え付けられているのさ(笑)

 

 

 

「へぇ~買収ってワケ? まぁいいわ」

 

 

 

 彼女はコーラを受け取り、自然に俺の隣に座る。カシュっと爽快な音を奏でて缶を開けると、躊躇なく流し込み、ノド越し最高そうな清々しい顔を見せた。

 それから少しの間、大した会話もせず時間が過ぎていく。だが不快に感じない空間が俺たちの周りを包んでいた。彼女もそう思っているのだろう。互いに目を合わせることもなく、共に空を見上げて晴れ渡る空から解放感と清涼感を得ていた。

 この心地良い雰囲気を壊したくないと思う自分に少し驚きを感じるものの、俺には聞いておきたいことがあった。

 

 

 

「あの……一つ、聞いてもいいですか?」

「ん? 何よ?」

「なぜIS学園に編入してきたんですか?」

 

 

 

 IS学園に入りたいのであれば、通常の入学試験をパスして一般の生徒同様に4月頭から入学すれば良い。彼女のことを調べ上げたのだが、3週間遅れの上、難関の編入試験をパスしてまで転校してくる理由が全く掴めなかった。

 

 

 

「それは……直感ね!」

「ちょ、直感ですか?」

「4月に入ってから、なんとなくIS学園に行かなければいけない直感をビシビシと感じたのよ! まぁ一夏もいるし、楽しそうと思ったのも確かだけどね」

 

 

 

 怖!! 直感って何!? どこぞのイタリアンマフィアの血筋に受け継がれる特殊能力みたいなやつですか!? 科学的根拠がまるでないんですが……。俺みたいに論理的思考で物事を考えて行動するタイプからしてみれば、恐ろしいことこの上ないな。

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 

 

 5時限目の授業終了を告げる鐘の音。そんなに時間が経っていたのか。

 

 

 

「さて、もう行くわ。アンタもあんまサボってばっかいない方がいいわよ」

 

 

 

 そう言い残し、飲み終えたコーラの缶を置いて凰さんは屋上を後にする。俺は彼女が出て行った扉を見つつ、複雑な想いに心を掻き乱されていた。俺はもう少し一緒にいたかったのだろうか。もう二度と会いたくないのだろうか。それとも……

 だがそんなセンチメンタルな気分も、直後に再び開いた扉の向こうにいた鬼神のようなオーラを纏った2人、超可愛いはずの幼馴染と超美人なはずの代表候補生の姿が俺の目に映った瞬間にかき消されて、恐怖一色な気分となった。

 いつものことだが、いつ味わっても慣れることのないこの恐怖に俺は自分自身にM気質がないことを実感しつつ、有罪確定裁判を受ける。

 罪状は喫煙、サボり、そしてタイミング的に凰さんともすれ違っただろうから、そのあたりも火に油を注いでるんだろうな。

 その後の1年1組の教室には心身共にボロボロな姿で机に突っ伏している2人目の男性操縦者があったことは言うまでもないだろう。もし凰さんが屋上に来なければ意識くらいは保っていられたかもしれない事実に、やはりあのトラブルメーカーとも言うべきイレギュラー凰さんには関わらないでおこうと決意した午後だった。

 ――翌日、生徒玄関前廊下に大きく張り出された紙があった。

 表題は『クラス対抗戦日程表』。

 俺はそれを見て、因果律について研究を始めようかと考えてしまった事実を告げておこう。なぜなら我が1組の、一夏の1回戦の対戦相手は凰さんだったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良い子のみんな! 寄ってらっしゃい見てらっしゃい! キョウちゃんの! これで安心! 凰鈴音さん対策ぅぅ!!!」

「「「……」」」

 

 

 

 拍手くらいしようよ! 視線が冷ややか過ぎるよ! 何なの!? 一夏とセシリアのその唖然とした顔は! 何なの!? 箒のその呆れ顔は! 泣くよ!? 泣いちゃうよ!? 周りがドン引きする程に泣いてやるんだからね!?

 来週にクラス対抗戦を控えた週末の夕食後、一回戦の相手である凰についての作戦会議を行うことになった。本来なら一夏と同じ初心者たる俺が教鞭を取るのはおかしいのだが、箒とセシリアの強烈なプッシュがあり、2人がそう言うならと一夏も納得した今現在、俺と箒の部屋に集まって始めたのだが……

 

 

 

「(……プクククク、アハハハハ!! 完全にスベってんじゃない! 笑い過ぎてお腹痛い! 京夜も痛い!)」

「(俺は別に痛くはないだろ!? っていうかフォローなく、大爆笑なお前の姿に俺は心が痛いよ……)」

「(あ、あの、私は京夜さんとずっと一緒にいたいですよ?)」

「(茜……凄く嬉しいけど、あんまウマいこと言えてないぞ?)」

「(は、はうぅ)」

 

 

 

 顔を真っ赤する茜。はぁ~癒される~。HPが一桁の瀕死状態だった俺にそのリアクションはベホマ並みだね。MPまでガリガリ削り取られてて、どうしようかと思ったが、なんとか続けられそうだよ。

 俺は一夏に視線を向ける。

 

 

 

「コホン、ではまず凰さんのデータについて説明する前に一夏、『初期装備(プリセット)』『後付装備(イラコイザ)』そして『拡張領域(バススロット)』については理解しているな?」

「あ、ああ、それは大丈夫だぜ!」

 

 

 

 自信満々に説明する一夏。得意げに話すのはいいが、基礎中の基礎だからな?

 一夏の説明は若干分かりづらいので簡単にまとめると、ISには機体ごとに専用装備がある。これを『初期装備』という。

 それだけでは不十分なので『初期装備』とは別に、様々な機体で使える汎用的な武器を装備させる。これを『後付装備』という。

 その『後付装備』の為に、IS内に用意されている領域のことを『拡張領域』という。機体のスペックにはよるものの、2つは後付けできるようになっているのが一般的だ。

 

 

 

「とは言っても、俺には【雪片弐型】しかないんだが……」

「そうだな。『拡張領域』に空きがないみたいだから、新たに武器を増やすこともできないだろう」

 

 

 

 『白式』の『初期装備』である【雪片弐型】はその能力の高さ故に『拡張領域』までも全て使用している。よって『後付装備』を使用できず【雪片弐型】だけの超近接戦闘型となっている。

 

 

 

「ではこれを見てくれ」

 

 

 

 俺は部屋のテーブルに備え付けの端末に、ティーナと茜が集めて纏めた情報を表示させる。

 映し出されているのはISを纏った凰さんの試合映像とそのスペックデータ。

 赤み掛った黒を基調とした、両肩付近に浮遊している棘付き装甲(スパイク・アーマー)非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)が特徴の、攻撃的な印象を受けるフォルム。

 ――ISネーム『甲龍(シェンロン)』。戦闘タイプ・近中距離両用型。初期装備・肩部大型衝撃砲【龍咆】他。後付装備・大型ブレード【双天牙月】2本(連結可能)。中国の第3世代型ISで「実用性と効率化」をコンセプトに開発された機体だ。

 

 

 

「なぁ京夜、この【龍咆】ってどんな武器なんだ?」

「これはPICの応用で実用化された空間圧作用兵器だ」

 

 

 

 PICとは正式名称『パッシブ・イナーシャル・キャンセラー』と言い、浮遊や加減速を行うISの基本システムのことだ。

 

 

 

「衝撃砲と言われる空間自体に圧力をかけて砲身を生成、その反作用で生じた衝撃自体を砲弾として打ち出す第3世代兵器ですわね」

「ああ、そうだ。砲弾だけでなく砲身までもが見えないのが特徴で、しかも砲身斜角に制限がない」

 

 

 

 セシリアの説明に俺は補足を付ける。さらに言えばコンセプト通りで実用性と効率化に優れており、非常に燃費が良い。燃費最悪の『零落白夜』を持つ『白式』とはある意味対極と言ってもいいだろう。

 

 

 

「『ブルー・ティアーズ』のような遠距離射撃型であれば、射程的な観点から考えても『甲龍』とは相性が良いのだが、近接格闘型の『白式』の場合は……正直微妙だな」

「近接戦闘になれば、一夏にも分があるかもしれないが……ということだな」

「そういうこと」

 

 

 

 箒の見解に俺は同意する。『白式』の、そして『零落白夜』の情報を事前に入手している可能性が高いこの状況では、一夏の出方次第ではあることに間違いないものの、距離を取ってくる率は高くなるだろう。凰さんの性格的には近接戦闘も多いかもとは思うが。

 

 

 

「っていうか砲身斜角無限の見えない砲弾を、どう対処したらいいんだ~!?」

 

 

 

 端末に流れる凰さんの映像を見ながら、一夏は頭をガシガシ掻き毟る。ハイパーセンサーによって空間の歪み値や大気の流れを探り、斜角を読み取ったとしても、正直それでは間に合わず、回避できないだろう。だが……

 

 

 

「そこについては俺が分析して考案した特訓メニューをこなせば、ある程度は避けられるようになると思うぜ?」

「本当か!?」

 

 

 

 若干涙目気味な一夏は、俺に救いの神でも見るような目を向ける。もっと崇め奉ってくれたまえ、一夏くん。俺は君の為に寝る間も惜しんで昼寝して、食事も削ってお菓子を食べて、無い空き時間を作ってティーナたちに丸投げしたんだから……なんてな。

 まぁとりあえず衝撃砲対策については置いといて、次に……

 

 

 

「攻撃についてだが、【雪片弐型】しかない一夏の場合、たとえどんな相手であっても一択だ。攻撃を()()()、間合いを()()()、相手を()()……だけだ」

「やっぱりそれしかないよな」

「そうだ。これを絶対に忘れるなよ」

「ああ、わかってるさ」

 

 

 

 本当にわかっているのだろうか。『白式』においてこれが基本で、そして究極であることを。

 たとえば「避ける」。『零落白夜』が攻撃の要となる白式は、「避ける」ことが前提の機体だ。防御してシールドエネルギーを消費するなんてもってのほかである。

 あまり彼女を失望させないでもらいたいと切に願い、この日の作戦会議は終了した。

 一夏はその翌日から試合当日までの間、箒との剣道訓練、セシリアとの基礎移動技能向上訓練、そして俺考案の対凰鈴音特別メニューをこなしていった。

 特訓に付き合わせて悪いなとか、そんな水臭いことが言えなくなるくらい泥臭く、汗臭く、血生臭い地獄の臭い訓練フルコースだ。あまりの過酷さに一夏は毎日、Tomorrowなジョーのように、『白式』と、ある意味で一体化したように見える程に真っ白に燃え尽きていたが……

 まぁそれでもとりあえず目処は立った。ここまでくれば後は一夏の気持ち次第、意志の強さ次第といった感じだ。

 だが俺には懸念材料がある。IS学園入学式から既に一か月経とうとしているが、色々なことが色々な意味で大人し過ぎる印象が俺の頭から離れない。

 物事は大抵の場合、終始一貫して上手く行くことなんてありえない。最後の失敗が、それまでの全てをひっくり返して台無しにすることなんて珍しいことでもない。

 俺の人生にイージーモードは存在しない。いつでもハードなルート選択を余儀なくされてきた偏屈で天邪鬼な俺は、明日のクラス対抗戦に向けて準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 




『インフィニット・ストラトス a Inside Story』は自身のブログでも掲載中です。
 設定画や挿絵、サブストーリーなんかも載せていくつもりですので、良かったらそちらもご覧戴けると嬉しいです。


【ブログ名】妄想メモリー
【URL】http://mousoumemory.blog.fc2.com/
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