インフィニット・ストラトス a Inside Story    作:鴉夜

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※誤字、脱字は多いかもしれないです。表現も統一性がないかもしれません。なるべく修正します。ご勘弁ください。

また、オリジナル解釈が多めです。矛盾や、つじつまが合わない等はあるかと思いますが、本当にご勘弁ください(泣)


ここで私的なこと、というかご報告的な話を……。
まず、お気に入りが500件を超えました! 嬉しい限りです。
そして、これは聞いた話で、自分自身で確認した訳ではないのですが、

2014年11月22日(土)(21時集計)の
日間ランキングで第1位を獲得したそうです! 知人から聞いてビックリしました!

偏に、読者様のおかげです! 有難うございます!
今後ともどうぞ宜しくお願いします!


第29話 俺は信じることにしよう

 

 

 

 時間にすれば約3分程空いてしまい、繋がりが分かり辛くなって、申し訳ない限りではあるが、今の状況について説明すると……俺は土の上に直に坐り、平伏して座礼を行なっている。

 そう、誰がどう見てもそれは……土下座だった。

 振り下ろしたブレードが、割り込んできた箒へ触れるまで数センチと言う所で俺は急停止。その後、俺が作り出したその殺伐とした空気の打開を図るべく、箒に要請したビンタにより真っ赤に腫らした頬をさする間もなく、俺は織斑先生に土下座をしていた。

 

 

 

「スイマセンでした!!!!!」

 

 

 

 織斑先生は立ち上がり、スーツに付いた土埃を払いながら、凄い威圧感を醸し出しつつ、俺の土下座を見下ろしていた。いや見下していた、かも。傍らには箒が立っている。

 一夏とデュノアはセシリアと鈴を医務室へ運んで行った為、ここにはいない。ボーデヴィッヒさんはISを収納し、少し離れた場所に立ち尽くしている。

 

 

 

「……随分と、好き勝手やってくれたものだな」

 

 

 

 土下座現在進行形の為、織斑先生がどんな表情をしているか知ることは出来ないが、声から受ける印象は好感度ダダ下がりと免れないと言った感じだ。不信感も相当上がっているだろう。

 

 

 

「黒神。お前は停学。3日間の寮での謹慎。それから学年別トーナメント出場禁止処分とする。わかったな」

「はい、本当にスイマセンでした……」

 

 

 

 俺は素直にその処分を受け入れる。俺自身が蒔いた種だ。俺の未熟さが招いたこと。俺は……全てを台無しにしてしまう所だった。

 

 

 

「ラウラ。模擬戦をやるのはかまわん。――が、節度はわきまえて貰わねば、教師として黙認しかねる」

「……はい。申し訳……ありません……」

「…………」

 

 

 

 織斑先生の厳重注意な発言に、先程チラッと見た限りではあるが、ほぼ外傷はなさそうなボーデヴィッヒさんはとても弱々しい声で、織斑先生へ謝罪の言葉を口にする。

 彼女にも、本当に申し訳ないことをした。自身の目的の為だけに、彼女を追い詰めただけでなく、拠り所さえ俺はへし折った。俺はそういう辛さを誰よりも知っていたはずなのに。

 

 

 

「……分かれば良い。では、解散!」

 

 

 

 パンッと強く手を叩いた織斑先生は、そのままアリーナを後にする。ボーデヴィッヒさんも、織斑先生が出て行ったゲートとは違うゲートを使い、姿を消した。俺は未だに土下座姿勢のままで面を上げてないから、それは音から察するにではあるが。

 アリーナには俺と箒の2人だけになり、俺は上半身を起こして正座の姿勢で箒の顔を見る。こちらをずっと見ている箒の表情は、心中複雑の形容詞が最も適してはいるものの、その中でも色濃く表れていた感情は「恐怖」だった。目尻の僅かな水分が、その印象に証明力を持たせてくれる。俺はそう感じた。

 俺は立ち上がり、箒の手を握ろうとするが、その手を引っ込めて距離を取る。目に見えて震えていた。やはり相当怖かったのだろう。本当に……

 

 

 

「……すまなかったな。怖がらせて……」

 

 

 

 無理もない。俺はそれだけの殺気を振りまいただけでなく、箒に対して刃を向けてしまった。俺に対する拒絶は当然で、俺はそれを受け入れなければならない。

 だがこれは覚悟していたことだ。それが早まっただけのこと。それだけだ。

 俺は視線を落とし、振り返ってゲートへと歩み出そうとしたその時。箒は俺の手を掴む。震えながらも、力強く。そして俺の背中に顔を埋める。

 

 

 

「……あまり心配させないでくれ……」

 

 

 

 俺は箒のその言葉に、自身の思い違いに気づく。そうか、箒が恐怖に感じているのは……。なら俺に出来ること、たとえ嘘でも俺が今言ってあげられることは……

 俺はなるべくいつも通りの顔を務めながら、箒に答える。

 

 

 

「ああ……。ゴメンな、箒。……大丈夫。俺は……今まで通り、いつでも箒の隣に居るから」

「……絶対……だからな」

 

 

 

 俺の言葉に、箒はそれ以上の言葉を口にしなかったが、安心したようだった。手の震えが段々と治まっていくのを俺は感じながら、箒がいつもの通りの顔を取り戻せるまで、アリーナに立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤッホ~☆、みんなのアイドル、京夜君だよ!! 俺はこれからキュートでプリチーなセシリアちゃんと、鈴ちゃんのお見舞いだぁぁぁ……なんてテンション高めで戯けてみたものの、俺の足取りは決して軽くなったりはしない。心も楽になったりはしない。

 落ち着いた箒と共に、俺は医務室へと足を運んでいた。当然運び込まれたセシリアと鈴の様子を確認する為だ。

 俺は今現在、その扉の前に立っている。

 もちろん逃げ出すわけにはいかない。俺は背負うと決めたのだから。彼女達に注意を払いきれなかったこと、そしてボーデヴィッヒさんの行動は、俺に非があることを否定出来ない。

 そして彼女達から拒絶される覚悟も持っている。俺の想定では、恐怖によるものではなかったがな。とはいえ、遅かれ早かれ訪れるものだ。

 だが、それでも……

 

 

 

「……大丈夫だ、京夜。私は2人のことを良く知っている。セシリアも鈴も、その気持ちはそんな生半可なものではない」

 

 

 

 俺の僅かな躊躇に気づいたのだろうか。後ろに立っていた箒は俺の顔すら見ずにそんなことを言う。

 はぁ~。たまに思うことだが、箒のそういう所には本当に敵わないな、と俺は苦笑する。

 ありがとう。その言葉は、直接手で触れることなく、俺の背中を押してくれたよ。

 俺は医務室の扉を開ける。すると――

 

 

 

「「!!」」

 

 

 

 すぐ目の前には、ベッドで絶対安静を言い渡されているだろう程に、湿布や包帯で全身に着飾ったセシリアと鈴が、痛みに耐えながら、たどたどしい足取りでこちらに……扉へと向かって歩みを進めていた。

 俺の姿を目に映した2人は、苦痛に顔を歪ませながらも俺の前に到達し、乗り出すように俺の顔を見る。

 

 

 

「京夜!! 大丈夫!?」

「京夜さん!! 大丈夫ですの!?」

 

 

 

 ……。

 …………。

 …………ああ。なんだろうな、この気持ちは。

 自分のことより、俺のことを心配してくれている。俺への恐怖など微塵も感じてなさそうな顔で、俺のことを考えている。

 俺の後ろにいた箒は、セシリアと鈴の後ろへと移動し、俺の視界に入る。その顔は、自信に満ちていた。甘く見るな――と。

 全く。箒だけでなく、セシリアや鈴にすら俺は敵わないのかもしれないな。色んな意味で。頭を悩ませてくれるわホント。

 

 

 

「もっと自分の体を大事にしてくれ。お願いだから。俺は大丈夫だから」

 

 

 

 俺はいつも通りの笑顔で、2人の手を握りしめながら、懇願する。その言い方は大げさに感じるかもしれないが、気持ちとして間違ってはいなかった。

 俺の言葉に、2人は何も言わず安堵の笑顔を見せる。言葉を発しなくても通じるものが確かにそこにはあった。箒が少し拗ねた顔をしたのでそちらにも伝播したようだった。

 ともあれ……

 

 

 

「鈴、ちょっと待っててな」

「?」

 

 

 

 俺の発言に、「何を?」といった表情を浮かべる鈴。まぁ悪いようにはしないよ。俺が今出来ることを、してあげたいことをするだけさ。

 俺はセシリアの方を向き、背中と足を抱きかかえた。

 

 

 

「よっと」

「きょ、京夜さん!?」

 

 

 

 その姿は所謂『お姫様抱っこ』だ。俺はそのまま、先程まで横になっていたであろうベッドへと運んでいく。最初こそ照れ顔のセシリアだったが、今は大人しく夢見る少女のような瞳でこちらを見つめている。

 俺はセシリアを降ろして、鈴の元へ向かい――

 

 

 

「いくぞ、鈴」

「う、うん」

 

 

 

 同じ要領で、鈴も抱きかかえる。セシリアと違い、最後まで照れ全開でこちらを見ることはなかったが、俺の胸元を掴む手からは、喜びに近い感情が伝わってきた。

 ちなみに鈴を降ろした後に、俺の視界に入ってきた箒の顔が、超絶不機嫌であったことは……まぁ……ねぇ……

 

 

 

「京夜!!!」

 

 

 

 俺を呼ぶ声が聞こえてきた扉へと視線を向ける。そこには目下全力で謝罪し、許しを請わなければならない男が立っていた。織斑一夏だ。その後ろにはデュノアもいる。

 俺は躊躇なく一夏の前に行き、織斑先生の時と同じ体勢を取る。

 土下座だ。

 これは必須だ。絶対だ。今一夏に拒絶されることが、最も今後に支障をきたしてしまう。もちろんそれだけではないが。

 俺は頭を地面に打ち付けて、土下座する。ガンッ、という衝撃音が部屋に響く。

 

 

 

「許してくれ、一夏!」

「ちょ、ちょっと、やめろよ京夜!」

「だが、俺はお姉さんである織斑先生にあんなことを……」

「別に千冬姉は怪我したわけじゃないしさ。気にするなよ。仲間があんな風に傷つけられたら、怒り狂って我を忘れてちゃうなんてこともあるだろ。だからさ、な?」

 

 

 

 膝をつき、俺の肩に手を置いて、俺に面を上げる様に促す一夏。顔を上げると、爽やかイケメンスマイルを俺に向けていた。

 友情……なんだろうな、これは。一夏の俺に対する理解は。コイツの信頼も、箒達に負けず劣らずだ。真顔で男同士の友情を発揮出来る一夏。くそ、カッコいいヤツめ。俺だって負けてられるか! 

 俺も笑顔だけ返す。ありがとうなんて言わないぜ! それが男同士の、親友同士の会話だからな!!! ……まぁキャラじゃないけどな。一夏に免じての今日だけの特別サービスだ。贖罪かもしれんが。

 けどまぁ……その気持ち自体は……まぁ……否定……出来ないな。あまり認めたくないけど。

 「このツンデレ!」とか「素直じゃないですね~」などの脳内彼女からのツッコミをスルーし、一夏の後ろのデュノアに視線を移す。その様子をいつもの王子様スマイルで見ていたが、その顔には若干ではあるが恐怖の色が滲んでいる。無理もない。

 だが、ぶっちゃけ今の所、デュノアのことはどうでもいい。恐れられようと、拒絶されようと、あまり影響がない。

 コイツは俺のことを完全に信用している訳ではないし、俺に対してコレといった感情を持ち合わせていない。それは俺も同様だ。

 それにあの現場は、ティーナ達が機転を利かせて、一夏が破ったエネルギーバリアーを修復し、物理シールドを観客席に展開させてくれたので、居合わせたのは、ここにいるメンバーを除けば、あとは織斑先生とボーデヴィッヒさんのみ。外部からの監視にも対応していたし、問題ないだろう。

 さてとりあえず、これからどうしようかなんてことを考えていると―――

 

 

 

 ドドドドドドッ……!!

 

 

 

「な、なんだ? 何の音だ?」

 

 

 

 どうやら一夏にも聞こえているようだ。地鳴りに聞こえるそれは、どうやら廊下から聞こえてきており、段々と近づいてきている。巨大鉄球でも転がってきているのだろうか。

 

 

 

 ドカーン!

 

 

 

 ドアが吹き飛んだ。それはリアルに。脚色アリアリのギャグ漫画補正ではない。その光景は一生に一度お目に掛かれるかどうかのレア体験だろう。

 

 

 

「「「織斑くん!」」」

「「「デュノアくん!」」」

 

 

 

 数十名の女生徒達が雪崩れ込んできた。この広い医務室の人口密度が一気に上がる。そのまま女生徒達は一夏とデュノアを取り囲む。俺の所には誰も来ない。

 最近は「俺だけ除け者」みたいなこんな状況が当たり前になってきた。別に女生徒達の俺に対する扱いが酷くなったとか、そういう訳ではない。むしろ逆だ。皆は俺のことを気遣って俺の名前を呼ばない、話しかけないようにしてくれているのだ。

 理由は俺がそこの3人(言わずとも分かるだろう)から拷問……いや説教を受ける機会が多いからだ。入学以来、寮中に俺の断末魔が何度となく響き、参加メンバーが増えるにつれ次第にそれが酷くなっており、皆が俺の命を結構割と真剣に心配してくれているからだ。

 つまり説教される原因というか、要因に成り得る皆様方の方が、遠慮してくれているという訳だ。説教される理由については……まぁ察してくれ。

 

 

 

「な、な、なんだなんだ!?」

「ど、どうしたの、みんな……ちょ、ちょっと落ち着いて」

「「「「これ!」」」」

 

 

 

 俺を含め、状況が飲み込めない医務室にいたメンバー全員に、バンッ! と女生徒一同は一枚の紙切れを提示してきた。それは学内の緊急告知文が書かれた申告書のようだった。

 

 

 

「な、なになに……?」

「『今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的な模擬戦闘を行うため、2人組での参加を必須とする。なお、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締め切りは』――」

「ああ、そこまででいいから! とにかくっ!」

 

 

 

 申告書を読み上げる一夏と、その隣に立つデュノアに女生徒達が一斉に手を差し出す。

 ああ、そういうことか。つまり……

 

 

 

「私と組もう、織斑君!」

「私と組んで、デュノア君!」

 

 

 

 ということだ。数少ない男子とペアを組もうと、先手必勝とばかりに勇み迫ってきたのだろう。あわよくば仲良くなって、親密な関係へとステップアップさせたいという乙女心が見え隠れしている。

 しかし「2人組での参加を必須」……ね。いきなりのトーナメント仕様変更。このタイミングで。まぁ理由は想像出来るな。

 全く。不器用過ぎるだろう。原因の一端である俺が何か言う資格はないかもしれないが、やり方が乱暴過ぎる。はぁ~……仕方ないか。

 それはさておき、今はこの状況を何とかしないとな。一夏はともかく、デュノアが他の女子と組むと、正体がバレる可能性が飛躍的に上がってしまうのは火を見るよりあきらかだ。

 それに性別偽装に対するデュノアの姿勢にはあまり変化がない。現在それを確実に知っているのは俺1人。疑いをもって探りを入れてきているヤツは何人かいるがな。

 俺も今回のことで手一杯ではあるし、こういうのは複数同時進行すると、思いもよらない事態を招きかねない。とりあえずの伏線的な一手を打って牽制しておくか。

 はいはい、そんな困り顔をこちらに見せなくてもなんとかするさ。デュノア君。

 

 

 

「皆。実はその情報はさっき聞いていて、一夏はデュノアと組むんだってさ。だから諦めてやってくれ。俺もさ……さっき一夏に捨てられて、デュノアに乗り換えられたばかりなんだ……よよよっ」

 

 

 

 俺はハンカチで目尻の涙を拭う動作をする。

 一瞬の沈黙。そして……

 

 

 

「「「「ええええええっ!?」」」」

 

 

 

 イエス! ナイスリアクション!! IS学園は流石のクオリティですよね。実は入学試験に「ノリ」と「リアクション」の評価項目があるんじゃないだろうか(笑)

 

 

 

「黒神君、織斑君に捨てられちゃったの!?」

「三角関係!? 略奪愛なの!?」

「黒神君はそれでいいの!? 諦めちゃうの!?」

 

 

 

 ニタニタした笑顔を向けながら俺に質問してくる女子達に対する回答は、もちろん決まってるぜ! 俺はそういう期待に答えるし、裏切る時はより面白くなるようにって神に誓ってるからな。

 

 

 

「諦めないぜ! トーナメントで優勝してデュノアから一夏を奪い返して見せる! だから今回だけは見守っててくれないか!?」

 

 

 

 俺は拳を握りしめ、力強い決意表明を口にする。「お~!!」という言葉と共に拍手を送ってくれる女生徒達。

 

 

 

「そういうことなら!」

「うん! 私達は見守らせてもらうわ!」

「頑張ってね!! 応援してる!!」

 

 

 

 皆は俺に応援の言葉を掛けて、一人また一人と医務室を去っていった。本当にこの学園の生徒達はノリがいいなぁ(笑) 一夏がデュノアと組むなら、とりあえず他の女子に取られる心配ないと分かるや否や、まるで打ち合わせたかのように全員が俺の馬鹿な寸劇に付き合ってくれるとは。

 

 

 

「ふう……」

「ふう、じゃないわ! アホかお前は!!」

「あ、あはははは……」 

 

 

 

 えっ? 一夏とデュノアは面白くなかった? 結構いい感じだったのに。

 ちなみに箒とセシリアと鈴は……キャパシティを超えたようだ。フリーズして動かない。そんなに衝撃的だったのだろうか。

 

 

 

「まぁそういう訳だ。ちなみに俺はさっきの一件で、トーナメント出場禁止処分になっちまった。だから2人で頑張ってくれ。同じ男子同士、その方が色々と都合が良いこともあるだろ?」

 

 

 

 俺はデュノアに視線を送る。どうやら俺の言葉の意味が理解出来たみたいだな。デュノアは無言で頷く。

 デュノアが女であることが他の女子の誰かバレるより、男の一夏にバレる方が、リスクが少ない上、何かと都合が良い。……これは俺の計算ではないが。

 もちろんバレないだろうという自信はある。一夏の鈍感さは計算の内だ。

 それにデュノアと組ませれば、一夏の優勝の可能性がグンッと上がる。近距離戦闘オンリーの一夏となら、射撃武器がメインのデュノアとは相性が良いし、少なくとも一夏がデュノアと対戦することがなくなるからな。

 

 

 

「それもそうだな。ヨロシクな! シャルル」

「うん、僕の方もよろしく、一夏」

 

 

 

 一夏の突き出した拳に、デュノアは合わせる。今大会切っての超注目異色コンビの誕生だな。数少ない男同士のコンビの上、片やブリュンヒルデの弟で、片やデュノア社の男装女子。あとはこの話題性に負けないだけの結果が残せるよう、一夏とデュノアに対ボーデヴィッヒさん用の戦術を叩き込めば良いだけだ。

 

 

 

「!! オルコットさん! 凰さん! どうしたんですか!? 篠ノ之さんまで!!」

 

 

 

 そこにはいきなりのチチカマー、いや間違えた、いきなりのニューカマー、山田先生がセシリア・鈴のベッドの前に立っていた。っていうかヤマヤン。そこに転がっている医務室の扉はスルーですか? 教師としてそれで良いのでしょうか。

 

 

 

「山田先生。実はその3人、突然変異種の6月病にかかりまして……現在夢の世界へ現実逃避中なんですよ。不治の病らしいですが、温かい目で見守っ―――ウグッ!? ガハッ!? イダッ!!?」

「「「なわけあるかーーー!!!」」」

 

 

 

 俺の頭部に「マクラ×2」プラス「手刀」というツッコミが入る。おかえり3人共。随分と脳の再起動に時間が掛かりましたね。っていうかセシリアさん、口調がいつもと違いますよ。ツッコミを合わせるというコミュニケーション能力の成長は嬉しく思いますが、キャラブレは勘弁してください。補完が大変です。

 苦笑いを浮かべる山田先生は、手に持っているファイルに視線を落とす。

 

 

 

「えっとですね、オルコットさんと凰さんのISの状態を先程確認しました。やはり損傷が酷く、ダメージレベルがCを超えています。当分は修復に専念しないと、後々重大な欠陥を生じさせますので、ISを休ませる意味でも、トーナメント参加は許可出来ません」

 

 

 

 やはりな。学園側の措置としては適切であろう。まぁたとえ本人達が出場を希望しても、俺が絶対出させないつもりではいたけどさ。

 だがISの状態を聞いた以上……

 

 

 

「わかりました……」

「不本意ですが、トーナメント参加は辞退します……」

「わかってくれて先生嬉しいです。ISに無理をさせるとそのツケはいつか自分で支払うことになりますからね。肝心なところでチャンスを失うのは。とても残念です。あなたたちにはそうなってほしくありません」

 

 

 

 あっさりと引き下がる2人。代表候補生として、『蓄積経験』については当然理解しているということだ。

 

 

 

 ―IS基礎理論『蓄積経験について』注意事項第3項―

 ISは戦闘経験を含むすべての経験を蓄積することで、より進化した状態へと自らを移行させる。その蓄積経験には損傷時の稼働も含まれ、ISのダメージがレベルCを超えた状態で起動させると、その不完全な状態での特殊エネルギーバイパスを構築してしまう為、それらは逆に平常時での稼働に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

 

 

 って、おいおい一夏くんよ。コレって基礎だからな? こっそりデュノアに耳打ちで何やら聞いている所から察するに、セシリアと鈴のあっさりとした態度に疑問を抱いたんだろうけど。技術も大事だが、もっと知識というか理解を深めてもらいたいものだ。

 一夏の無知さについてツッコミたい気持ちもそうだが、この『蓄積経験』に対する世間の誤認識についてもとりあえず置いておこう。同じようなことを度々言うっていうもの憚られるしな。

 

 

 

「しかし、何だってラウラとバトルすることになったんだ?」

 

 

 

 一夏は素っ頓狂にさえ感じる質問をセシリアと鈴にぶつける。どうやらずっと疑問に思っていたようだ。もしかしたら責任とかを感じての質問かもしれないな。彼女とのバトルを一夏が拒んだことが原因かもしれないとでも思ったのかもしれない。

 まぁそれが起因はしているかもしれないが、直接的な原因ではないだろう。

 

 

 

「え、いや、それは……」

「ま、まあ、何と言いますか……」

「! ……。一夏。そういうのは聞くだけ野暮というものだ。察しろ」

「へ!? わ、わかった」

 

 

 

 歯切れの悪いセシリアと鈴に、箒のフォローが入る。凄みのあるその声に、一夏はたじろぐ。「一夏はデリカシーが足りないね」とデュノアは一夏へ追撃。箒とデュノアはバトルの理由が分かったようだ。

 まぁ俺にも何となく想像出来るけどな。少し焦り顔のセシリアと鈴はチラッと俺の顔を見たから。恐らくその辺りが理由なんだろう。

 だからってその内容を暴露したりはしない。それは聞くだけでなく、言うのも野暮ってもんだろう? どこぞの特務機関の作戦部長も言っていたが、日本人の身上は「察し」と「思いやり」らしいからな。

 「思いやり」……か。

 俺は窓際に立ち、手すりに手を掛けながらオレンジ色に染まる医務室からの景色を眺める。目の前に広がるグラウンドの先、近代的な学園校舎の隙間から僅かに夕日を拝むことが出来た。その暖かな光を見つめながら、俺は彼女に対して出来る「思いやり」とは何かを考える。

 『―Die Zeit ist der beste Arzt―(時間は最良の医者である)』なんてドイツの諺があるが、時間は全てを解決してくれる訳ではない。医者は死者を蘇らせることは出来ないのだから。

 死に等しい程の絶望の中にいるあのドイツの軍人さんに、俺は出来うる限りの償いをするべきだろう。

 俺は選択した。選択基準が常に自分本位であること、そしてその選択によって彼女自身が傷つくことになったことに対して俺は後悔なんてしない。それは揺らいではいけない。だが……あの一件での、俺のあの行動は、俺のミスだ。俺の未熟さが、彼女の人生を狂わせる一端を担ってしまった。

 千思万考し、1つの答えを得えた俺は一夏を見据える。

 

 

 

「何だ? 京夜」

「……いや、何でもないさ」

 

 

 

 それは酷く気が進まないが、最良で最善と思える方策。気が進まないのは「他力本願であること」。最善だと思えるのは……これも野暮かな。

 けど俺は信じることにしよう。コイツと……あの人ならきっと大丈夫だ。

 俺はセシリアと鈴に「お大事に」と伝え、箒を連れ立って医務室を後にした。

 

 

 

 

 

 




『インフィニット・ストラトス a Inside Story』は自身のブログでも掲載中です。
 設定画や挿絵、サブストーリーなんかも載せていくつもりですので、良かったらそちらもご覧戴けると嬉しいです。



【ブログ名】妄想メモリー
【URL】http://mousoumemory.blog.fc2.com/
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