インフィニット・ストラトス a Inside Story    作:鴉夜

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※誤字、脱字は多いかもしれないです。表現も統一性がないかもしれません。なるべく修正します。ご勘弁ください。

また、オリジナル解釈が多めです。矛盾や、つじつまが合わない等はあるかと思いますが、本当にご勘弁ください(泣)



第31話 俺には言うべき言葉がある

 

 

 

「……やっと、この時が……来た……」

「――ああ、そうだな。俺も待ち焦がれていたぜ」

 

 

 

 試合開始5秒前からのカウントダウンが始まる。俺の正面に立つラウラは俯いたまま、両手を固く握りしめるのが見える。その少し左後方に位置する箒は近接ブレードを握り、正眼の構えを取りながら眼を閉じていた。精神集中しているようだ。

 俺はというと、右手に意識を集中させる。すると光の粒子が輝きを放ちながら手の平で形となり、【雪片弐型】が生成された。そのまま箒と同じく体の正中線に合わせる様に構える。隣に立つシャルルも、既にその両手にはアサルトライフル【ガルム】が装備されており、準備万端だ。

 

 

 

 

「織斑一夏……貴様を―――」

「ラウラ、お前を――」

 

 

 

 3秒前。ラウラは顔を上げる。憎しみが込められた眼光で、俺を睨みながら戦闘態勢を取ってくる。

 歓声は秒読みと同時に、徐々に、そして苛烈に増していく。そんな盛り上がる周囲とは裏腹に、俺達は緊張感を高めていく。冷たく張りつめる空気。研ぎ澄まされていく感覚。それはハイパーセンサーという高性能センサーを通し、この場に視える全てを把握出来ているとさえ感じる程に。

 俺は【雪片弐型】を握る手に、汗ばむものを感じつつ、その時を待つ。

 そして試合開始のコールが、アリーナ全体へと響き渡った。

 

 

 

「「叩きのめす!!」」

 

 

 

 俺とラウラの言葉は、奇しくも同じ言葉だった。むしろ予想に反して、ともいえるその言葉を皮切りに、試合は始まった。

 試合開始と同時に、シャルルは箒へと射撃を開始する。箒は予期していたかのように平行移動でそれを回避し、シャルルと共に俺達から大きく離れ、距離を取った。

 俺はというと……

 周囲が少しざわめく。それは震撼と呼べる程ではなく、揺らめく程度のもの。それは当然なのかもしれない。今の俺の行動を不可解に感じる人がほとんどだろうからだ。

 

 

 

「……どういうつもりだ」

 

 

 

 目の前の相手もそれは同様だったようだ。待ち構えていたのだろう。ラウラは苛立ちを募らせた表情を浮かべている。

 俺が剣を構えたまま、その場から一歩も動いていなかった。

 俺のこと、『白式』のことは既に近接格闘オンリーな機体として知られている。つまり初動は接近に違いないと普通は考えるだろう。開幕直後の先制攻撃を予想する人もいたに違いない。俺も京夜が作戦を考えてくれなければ、それは当然の一手として打っただろう。

 俺はラウラへと向けていた剣尖を下ろし、さらに前屈み気味の戦闘態勢を起こして右手に握られた雪片を肩に担ぐ。

 そして、空いた左手の指先を上向きに、ラウラに対して手招きをした。それは誰がどう見ても、分かり易い程の挑発行為だった。

 

 

 

「貴様ぁぁぁぁ――――!!!!」

 

 

 

 憤怒の形相で、ラウラは右腕を振り払うようにプラズマ手刀を展開させつつ、直線的に最短距離で、俺に突進してきた。

 俺はそれを自慢の愛刀で受け応える。キンッという音と共に激しく火花が散る。その目に映る俺の刀は、ラウラの怒りに油を注いでいるようだ。見るや否や、鍔迫り合う力がより一層増したのが伝わってきていた。

 俺は力を抜き、その手刀を右へと受け流して、下から切り上げる。その斬撃は冷静さを失っているラウラへと見舞われ、シールドエネルギーを削り取った。

 その状況に対して危機感を覚えたのかは分からないが、ラウラは少し距離を取る。その対応は、流石軍に属しているということかもしれない。

 ともあれ、戦いはまだ始まったばかりだ。やってやるさ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 試合開始から数分が経過したところ。セシリアと鈴が声を上げて応援する傍ら、俺は脚を組み、冷静に試合状況を観察していた。

 開始直後の一夏の行動に、周囲の僅かなざわめきこそあったものの、今ではあちらこちらから「頑張って!! 織斑君!」や「デュノア君、カッコいい~」などのエールが会場を占めている。それは過言ではないだろう。ちょっとは対戦相手の気持ちも考えて応援してもらいたいものだな。

 

 

 

「一夏のやつ、ホント逃げ足だけは一級品よね」

 

 

 

 その言い方はちょっと可哀想だぞ、鈴。あれはちゃんとした技術だろう? 分かってて言ってるのだろうけど、一夏の努力の結果なんだからもっと言葉を選んであげてくださいな。

 ともあれ、鈴がそう思うのは当然といえる。それは今の一夏の動きが、そういう感想を強く思わせる要因となっているからだ。

 一夏の動き、それはつまり俺が託した作戦がそういうものということだ。

 今回の一夏の作戦を、一言で言ってしまえば「()()」だ。意外だろう? だが、これが最も確実で、勝率の高い作戦だった。

 つまるところ、【AIC】対策だ。右腕部から発せられる停止結界は、突き出された右手の前方、5メートル程の球状範囲の慣性を停止させることが出来る。捕まれば、ワンサイドゲームになるだろう。

 しかしそこは出来立てホヤホヤの最新技術。弱点がある。使用には相当な集中力を必要とし、複数相手やレーザー等のエネルギー兵器には効果が薄い。

 とはいえ、完全一騎打ちによる完全勝利を狙う近接戦闘オンリーの一夏には、この弱点を突くという策はない。

 そこで注目すべきは、「相当な集中力を必要とする」ということだ。

 【AIC】は展開したその空間内に入り込んだ全ての物体の慣性を、自動的に停止させるわけではなく、停止させたい物体を認識し、その物体に対して、自動にではなく手動で【AIC】のエネルギー波を放ち、干渉するものだ。またその効果を継続させる為には、常にその物体を注意し、意識しつづけなければならない。

 これには当然、それ相応で甚大な集中力を必要とする。自分だけでなく、対戦相手と共にハイスピードで縦横無尽に駆け巡るIS戦闘中で、それだけの集中力を発揮するというのは至難の業と言えるだろう。

 つまり、現段階での【AIC】は……『受け専門』の兵器ということだ。

 最低でも自分の体が高速で動いていない時、そういった限定的な状況でないとその威力を発揮できない。しかもその効果範囲は、開かれた右手の前方にしか展開できない。これは対象を視認すること、そして効果範囲をイメージしやすくすることで、集中力の負担を減らしているからだ。

 もちろん近接戦闘中なら、自身も相手も相対的にそう動き回っている訳ではなく集中し易くなる為使用出来るだろうが、それについては個別特訓を施した。

 内容は主に相手が右手を突きだしたら、開いた右脇下に潜り込むというもの。これは俺があの騒動で見せた動きであり、効果は実証済みだった。

 よってこの訓練を経た一夏には、「自分からは接近せず、相手が近接戦闘してくるまで待つ」という作戦を伝えたということだ。

 もちろんこれは一夏の回避能力の成長あってだ。相手が中距離、遠距離攻撃だけを行い、それで駆逐されてしまえば、何も出来ないまま終わることになりかねない。

 だが俺には確信があった。一夏なら、自分の間合いの外から攻撃を全て避けることが出来ると。

 遠距離攻撃なら、大口径リボルバーカノンより、セシリアの【BT兵器】の方が上だ。中距離攻撃なら、ワイヤーブレードより、砲弾が見えない鈴の【龍砲】や、デュノアの膨大な火力兵器を回避する方が困難を極める。一夏は毎日の特訓の中で、これらからの回避行動に磨きを掛けているのだから。

 一夏は俺の説明の間にも、自分からは近づかず、液体燃料をプラズマ臨界寸前まで加熱させ、レールガンとして追加速させたリボルバーカノンからの攻撃を避けながら、ワイヤーブレードも紙一重で躱し、そのワイヤーを丁寧と言える程に順番に1つずつ断ち切り、使用不能にしていった。

 これも俺が授けた作戦の1つだ。4本のワイヤーブレードはIS本体とワイヤーで繋がれている以上、距離には限度がある。その上、互いが絡まぬよう可動範囲にも制限がある。故にこちらである程度コントロール出来るし、それにより断ち切ることは造作もないことだ。

 もちろんボーデヴィッヒさんはそんな近・中・遠の3択による単純な戦闘なんてするわけもない。

 両手のプラズマ手刀とワイヤーブレードによる近・中の波状攻撃など、最初こそ近接戦闘を主軸にしたバリエーションを展開していたが、今では中・遠距離の比率が高くなっている。

 その理由は簡単だ。難しいことなんて何一つない。単純明快な答え、それは……近接戦闘において、ボーデヴィッヒさんより一夏の方が強いからだ。

 一夏ってそんなに強かったっけ? と思う人が大多数だろう。その疑問を解消する為に、前フリとして、ある人の話をしよう。

 

 

 

「それにしても……本当に強いですわね……」

 

 

 

 これから説明するその人物に目を奪われているセシリアは、指先を噛むように、手を口に当て息を呑む。その視線の先に居るのは一夏ではなく、『打鉄』を身に纏った女生徒の姿だった。

 さて、ここで1つのクイズでもしようか。問題は「一年生最強は誰か?」ということ。俺は抜きでな。優勝者には豪華景品なんて当らないのであしからず。

 多くの人は、準決勝までの戦いぶりも含め、第3世代型専用機持ちの軍人である『ラウラ・ボーデヴィッヒ』の名を挙げるだろう。

 だが「事実は小説より奇なり」とはよく言ったもので、正解ではない。あくまで俺の個人的見解ではあるが、自信はある。

 正解発表。

 現段階での最強は『篠ノ之箒』。俺の中では追随を許さない程に。

 それを今、箒は一夏達から離れた場所で証明してくれていた。試合開始直後から、デュノアのその整った顔から焦りの表情が消えることはなかった。それはそうだろう。シールドエネルギー残量に大した差はないが、デュノアは完全に攻めあぐねている。同じ第2世代ではあるが、専用機としてカスタマイズされた機体をもつ代表候補生が、訓練機を纏う一般生徒に、だ。

 箒も一夏と同様、いやそれ以上に動かない。空中を飛び回るような動きなんて皆無である。PICで浮いてはいるものの、前後左右こそすれ、上下には1メートルも飛び上がることすらしない。それでもデュノアの過剰ともとれる弾幕を、そのブレードで受けるか去なすか、あるいは最少ともいえる動きで躱す。その僅かな合間を縫って接近し、ブレードを見舞っていく。

 箒は俺の考えを理解しているのだろうから、恐らくこのままの状態がしばらくは続くだろう。逆を言えば、いつでもデュノアに勝つことが出来るということ。つまり勝敗を決定する権利すら持つほどに実力があるということだ。

 そんな箒の強さの秘密の1つ。箒の武器の1つ。物理的な獲物の話ではなく、勝つ為の手段としての強み。

 それは『剣術』だ。篠ノ之流剣術。幼き頃より励み続けている。

 そして篠ノ之流剣術の真骨頂、それは『呼吸』だ。息を吸って~吐いて~の呼吸の事ではない。タイミングやリズムに近いものと言える。

 相手の『呼吸』を感じ取り、動きを先読みし、間合いを掴み、攻撃を見切り、斬撃を放つ。箒はこれをIS戦闘に置いても遺憾なく発揮している。

 その強さは最早、一般の高校生のレベルではない。ISを纏わない生身同士で試合を行ったら、この学園内では教師も含めても織斑先生くらいしか相手にならないだろう。

 一夏はそんな箒に毎日1時間IS装備で近接戦闘訓練、さらに土日は3時間近く剣道場で剣術の指南を受けているのだ。近接戦闘に置いて一夏の右に出る同学年の生徒なんてそうそういない。それは軍属の彼女を含めてもだ。

 さらにボーデヴィッヒさんは精神が激しく傾いだ状態だ。一夏には口が酸っぱくなるほどに「熱くなるな! 冷静に対応しろ!」と言い聞かせた。故にこの試合の近接戦闘においては一夏には圧倒的に分があることは間違いなかった。

 するとセシリアの言葉に反応し、鈴は一夏へと向けられていた視線を箒に向ける。

 

 

 

「……近接戦じゃ、コッチが自信失くすくらい強いわよね、箒って」

「ええ。どうすればあれ程強くなれるのでしょうか……」

「幼い頃からずっと剣術一筋だったらしいからな。それに……箒は知っているからな。自分のことを……」

「「……」」

 

 

 

 『剣術』という武器を持つ箒は強い。だがそれは箒の強さの1つでしかない。箒の本当の、真の強さの源たるものは、別にある。

 「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」

 孫子に記載されている言葉。彼を知ることも大事だが、俺が最も大切だと感じること、それは己を知るということだ。

 己を知る。それは……自分の「弱さ」から目を背けないこと。

 己を弱さを知っている。これが、篠ノ之箒の強さだった。

 それを分かった上でかは分からないが、口を噤いでしまった2人の顔には、悔しさがにじみ出ていた。それは悪意や敵対心といった負の感情ではなく、「必ず追いついて見せる!」といった前向きな印象だった。青春真っ盛りの良い顔だったと言っておこう。

 箒達の方は、しばらく膠着状態が続くだろう。一夏達の方は――

 

 

 

「織斑一夏ぁぁぁぁ!!! 」

 

 

 

 凄まじい咆哮のような大声を共に、ボーデヴィッヒさんは一夏へと特攻を図っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 肩部の大口径リボルバーカノンは弾切れ、ワイヤーブレードは全て切り伏せた。これでラウラは近接戦闘しかなくなる。

 案の定、大声を上げながら接近してくる。ここからが正念場だ! 京夜が用意してくれた作戦は「近接戦闘で勝負する為の土俵作り」だ。それはつまり、近接戦闘で勝てるかどうかは俺次第、ということだ。そしてそれでも俺が勝つと、京夜が信じてくれたということだ。

 俺は俺自身の為にも、千冬姉の為にも、信じてくれた親友の為にも、そして目の前にいるラウラの為にも負けるわけにはいかない!

 俺は接近してくるラウラのプラズマ手刀による左からの薙ぎ払いの攻撃を読み、間合いを一瞬詰めて先手を取り、袈裟切りを放つ。

 しかしラウラはその手刀で受けることもせず、避けることもせず、直撃を受ける。それに怯むことなく、手を止めず、俺の脇腹へと斬撃を繰り出した。相打ちだ。

 衝撃が内臓に伝わる。昼食のカツ丼が出てくる程ではないにしろ、その重みのある一撃に、俺は覚悟を決めた。――受けて立とうと。

 俺はこの試合で『零落白夜』を使うつもりはない。相手は単一仕様能力が発現していないのに、俺がそれを使うのは不公平だと思ったからだ。

 完璧に勝つ。そうでなければ、何の意味もない。

 

 

 

「「おおおおっ!!!!!」」

 

 

 

 そこからの俺は……俺とラウラは、華麗とかそんな言葉がとても似合わない程の泥仕合を繰り広げた。互いに防御などせず、ただただ剣を相手の体に叩き込み続ける。

 時にはラウラの斬り下ろしを蹴り飛ばし、時には雪片を握りしめているその拳で顔面を殴り、互いにシールドエネルギーを削っていく。

 京夜はきっと「おい! 冷静に、と言っただろう!?」と少し怒ったような声で、呆れながらそんなことを呟いているかもしれないが、きっと分かってくれるだろう。

 とはいえ、もうそろそろエネルギーが尽きる。次の一撃が最後かもしれない。

 ラウラは大きく振りかぶり、俺の頭部へと打ち下ろしてくる。俺は剣尖を後方の地面へと向け、居合に近い構えを取る。そして―――

 次の瞬間、もはや得意技となりつつある瞬時加速を、さほど空いていない間合いを詰める一瞬に使用し、打ち下ろされる前に懐へと入り込む。

 そして――

 

 

 

「ガハァッ!!!!」

 

 

 

 そのまま、その速度を刃に乗せて、右わき腹あたりから左肩へと斜めに、ラウラのその胴体を左切り上げた。

 それは完全なる手ごたえだった。手に残る感触は、相手のシールドエネルギーを根こそぎ絶ったことを実感出来た。

 俺はラウラに目を向ける。表情は一層苦悶に歪んでいた。衝撃が深く体を貫いたのだろう。

 さらには膝をつき、その機体にも紫電が走る。ISの強制解除されつつあるのだろう。

 俺はラウラがこちらを向くのを待つ。俺には言うべき言葉がある。この試合に勝った時、必ず言ってやると決めていた言葉だ。

 「俺は、織斑千冬の弟、織斑一夏だ!」――と。

 ――だが次の瞬間、それは叶うことなく、ラウラの身に異変が起きた。

 

 

 

 

 

 




『インフィニット・ストラトス a Inside Story』は自身のブログでも掲載中です。
 設定画や挿絵、サブストーリーなんかも載せていくつもりですので、良かったらそちらもご覧戴けると嬉しいです。



【ブログ名】妄想メモリー
【URL】http://mousoumemory.blog.fc2.com/
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