インフィニット・ストラトス a Inside Story    作:鴉夜

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※誤字、脱字は多いかもしれないです。表現も統一性がないかもしれません。なるべく修正します。ご勘弁ください。

また、オリジナル解釈が多めです。矛盾や、つじつまが合わない等はあるかと思いますが、本当にご勘弁ください(泣)



第4話 俺はいつだって後悔してきた

 

 

 

「ちょっと、よろしくて?」

「ん?」

 

 

 

 2時間目の休み時間。先程と同様の注目の的状態である一夏は、これまた先程と同様に俺の席まで話をしに来ている。どうやら一夏は男友達でワイワイやってるのが好きなタイプみたいだ。俺? 俺は可愛い女の子とヨロシクやってる方が好きだ。『ヨロシク』とか言い方が古いのは趣味みたいなもんだから気にするな。

 まぁ別に男友達と友情を育む学園生活もそれはそれで楽しいから一夏を邪険に扱ったりはしない。ちなみに箒はちょっと俺の方を見た後、教室を出て行った。恐らくお手……ゲフンゲフン。

 先程と同様でなく、箒のいない2人で今後の学園生活についての不安や心配事を語っていると1人の女子が話しかけてきた。恐らく、イヤ間違いなく外国人だろう。

 IS学園は無条件で多国籍の生徒を受け入れている。実際日本人はクラスの半分くらいだ。

 その女子は腰まである鮮やかな金髪でロールがかった髪型。白いキメの細かな肌にバランスのとれたスタイル。高貴なオーラを出しながら白人特有の透き通ったブルーの瞳で見つめてくる。いや、睨みつけてくる。その雰囲気はまさに『今の女子』を表している感じだった。

 ISの登場は世界を劇的に変化させることとなった話をしたことがあったが、その最たる変化がこの女性優遇の風潮だ。ISは女性しか使えない。だからISが使える女性は偉いという単純な構図。ISが使えない男性の立ち位置は最早奴隷扱いといっても過言ではないだろう。今や街ですれ違っただけで男をパシリにする女もいるくらいだ。俺は嘘八百、口八百でのらりくらりと渡り合っているけど。そんな男卑女尊、女尊男卑? が常識となった世界なのだ。

 

 

 

「訊いてます? お返事は?」

「ああ。訊いてるけど……どちらに用事? 一夏? それとも……」

「両方にですわ」

 

 

 

 俺はその口調と雰囲気に少しゲンナリする。この髪型を見た時にも思ったがほぼ間違いなくエリート気質、そして恐らく貴族出身なのだろう。佇まいや仕草がそれをいちいち主張してくる。ここまでくると一夏以上に読みやすく、面倒くさい性格であるだろうことが想像できる。

 

 

 

「で、どういう要件だ?」

「まぁ! なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

 

 

 

 一夏の返事にかなりわざとらしく声をあげる縦ロールの女子。典型的な今っ子にエリート気質が混ざるとこんなに面倒くさいカンジに仕上がるのかと少し感心する。びっくりな化学反応だよ。肉じゃがで内臓も溶かす物質を作っちゃうどっかの女子並のケミストリーを感じる。同じ金髪でもティーナとは大違いだ。

 そんな態度に一夏はイラッとしたのだろう。少し強めの発言をする。

 

 

 

「悪いな。俺、君が誰だか知らないし」

「わたくしを知らない? このセシリア・オルコットを? イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!?」

 

 

 

 一夏の発言が相当気に入らなかったのか、吊り目を細めて、いかにも見下した口調でかなり説明的な発言をする。あまりそんな顔をすると素顔がそんな顔になるよ? 人生の中で最もしている顔が素顔になるらしいから。

 しかしそうか、彼女はイギリスの代表候補生で入試主席の『セシリア・オルコット』って名前なのか。それだけでも情報があれば何とかなる。

 

 

 

「(ティーナ、頼めるか?)」

「(りょーかい。やっとくよ)」

 

 

 

 相変わらず仕事が早くて助かるよ。素直だし、可愛いし。同じ金髪なのにどうしてこうも違うのか。金髪成分が違うのかな? 縦ロールがあの性格を作ってるんだと俺は確信しているがね。やっぱストレートな髪型に素直な性格が宿るんだよ。天然パーマの人を敵に回す発言ではないのであしからず。

 しかし、代表候補生か。自分が有名だと思ってるんだろうね。世界的有名人である一夏の謙虚さを見習って欲しいよホント。

 

 

 

「あ、質問いいか?」

「ふん。下々のものの要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

「代表候補生って、何?」

 

 

 

 がたたっ。俺は聞き耳を立てていたクラスの女子数名と共にズッコける。君たち良い反応だ。俺はその女子たちについつい「GOOD!」と親指を立てる。彼女たちも頷いてくれた。俺たちきっと良い友達になれるだろう。

 それにしても一夏は俺の予想を超える程の馬鹿なのか? さっき見習えと言った俺が発言を撤回しなければならないじゃないか。国会なら大荒れだぞ。こんなに何度も撤回を繰り返しては来期はきっと選出されないだろうな。

 

 

 

「あ、貴方っ、本気でおっしゃってますの!?」

「おう。知らん」

「……。信じられない。信じられませんわ。極東の島国というのは、こうまで未開の地なのかしら。常識ですわよ、常識。テレビがないのかしら……」

 

 

 

 ついには黙ってしまった。ある意味大したヤツだよ織斑一夏。その才能で相手を冷静にさせ、黙らせるのだから。決してその『馬鹿』という才能は羨ましくないけど。

 それとオルコットさん? 日本はそんな未開の地ではないからな? 一夏の生活レベルは知らないから一夏の家にあるか知らないけど、テレビの普及率は低くないから。テレビのない家を探す方が大変なレベルだから。

 でももしかしたら一夏の家にはテレビないのかもしれないな。でなければここまで無知で世俗に汚れてない青年に育たないのではと考えてしまう。

 そうか、貧乏なんだね、明日の食べるものも満足に用意できない程に。きっとあの鬼教官からの雀の涙程の仕送りでやりくりしていたんだろう。かわいそうに。大丈夫、一夏が悪いんじゃない、みんな貧乏が悪いんだ。そんなことで俺は友達をやめたりはしないからな! ずっと友達だ! 金は貸さないし、飯も奢らないけどな。

 けどこの場の助け舟くらいは出すことにしますか。

 

 

 

「えっと、オルコットさん? まず申し訳ない。俺は自己紹介の時にいなかったからオルコットさんのことを知らなくて……それから一夏、代表候補生っていうのは国家代表IS操縦者の候補生として選出されるエリートのことだ」

「なるほど」

「そう! エリートなのですわ!」

 

 

 

 元気になったオルコットさん。ホント扱いやすいなこの子。とりあえず立てておけば機嫌が良いのだから。「主席なんて凄い」とか「オルコットさんに出会えて光栄だ」とかそれなりの態度でそれなりの発言をしておけば問題ない。こういう世渡り上手なスキルは持っていないのかね一夏くん?

 

 

 

「本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスと同じくすることだけでも奇跡……幸運ですのよ。その現実をもう少し理解していただける?」

「そうか。それはラッキーだ」

「……馬鹿にしていますの?」

 

 

 

 一夏のスキル、『KY』発動! そんな使えないスキルで雰囲気悪くするな。

 ちなみに『KY』は『空気読めない』だから。『カカクヤスク』ではない。ある意味あってはいるがな、俺の一夏に対する評価の価格は安くなる一方だから。

 もちろん分かってはいる。まだ大して会話していないが、これが一夏の持ち味であることは。こいつは自分に正直なだけなのだ。自分に嘘をつけない、つきたくない。それが魅力の一つでそれが織斑一夏なのだ。

 仕方ない、助け舟2号を出しますか。一夏所有の泥船ではない、昭和のバブル世代の人間がパーティしちゃうようなクルーザーを。ちゃんと『KY( カカクヤスク)』購入したものだ。

 

 

 

「本当に申し訳ない、オルコットさん。彼はどうしようもない程、無知なもので。オルコットさんに会えたことがどれほど光栄で名誉あることなのか分からない彼の代わりに謝罪させてもらいたい」

「あら、貴方は分かってらっしゃるのね。まぁ分かってらっしゃるのであればわたくしも選ばれた人間として、貴方たちのような人間にも優しくして差し上げますわ。ISのことで分からないことがあれば教えて差し上げてもよくってよ。何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

 

 

 

 ふう、何とか機嫌が良くなった。一夏も俺の口調がこの場を収めようとしてることが分かったようだ。最初から読んでくれよ。変なスキルを発動しないでさ。何事も平和が一番さ。面倒事はもうこれ以上……

 

 

 

「入試って、あれか? ISを動かして戦うってやつ?」

「それ以外に入試などありませんわ」

「あれ? 俺も倒したぞ、教官」

「は……?」

 

 

 

 どうやらこの場を収めようとしてることが分かったわけではなかったようだ。

 しかし、オルコットさんはともかく一夏は入試で教官を倒したのか。流石に動かせれば問題ない入試だったからそこまで詳細な内容については聞いてない。教官を倒せる程動けるのか。それなりの運動神経はあるようだな。そういえば箒が、一夏とは同じ剣道道場に通っていたことがあるって言ってたっけ。

 

 

 

「わ、わたくしだけと聞きましたが?」

「女子ではってオチじゃないのか?」

 

 

 

 ピシッ。もう修復が無理になるような、氷にヒビが入ったような音が聞こえた。一夏にも聞こえたようだ。顔にそう書いてある。その音を聞かないとダメな程に空気が読めない君のスキルに今後苦しめられそうな予感でいっぱいだ。まさかあのクルーザーで転覆するとはな。バブルが弾けたように一瞬の出来事だったな。『KY( カカクヤスク)』購入したことが間違いだったのか? やはり安いと粗悪品に行き当たる可能性が高いということなのか。

 こうなるともう放棄だな。スマン一夏。俺にはもうどうすることもできない。これ以上はもう、俺が面倒くさ過ぎる。ここからは若い2人に任せて、年寄りは引っ込みますかね。

 

 

 

「つ、つまり、わたくしだけではないと……?」

「いや、知らないけど」

「貴方! 貴方も教官を倒したと言うの!?」

「うん、まあ。たぶん」

「たぶん!? たぶんってどういう意味かしら!?」

「えーと、落ち着けよ。な?」

「こ、これが落ち着いていられ―――」

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 一夏には福音に聞こえたみたいだが、俺には第1ラウンド終了のゴングだった。当然このまま引き下がる訳ないからだった。

 

 

 

「っ……! また後で来ますわ! 逃げないことね! よくって!?」

 

 

 

 ほらね、次の休み時間に持ち越しだ。第2ラウンドは君ら2人でやってくれ。正直もうこれ以上はお給料を貰いたいレベルだよ。

 それから箒さん? 教室に帰ってきたなら俺を助けてくれてもいいんでないかい? 主に一夏とオルコットさんのバトルだから別にどうでもいいや的に一別くれて席につかなくてもさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」

 

 

 

 1、2時間目とは違って、織斑先生が教壇に立っている。その横では山田先生までがノートを手に持っていた。この授業はそれほど大事であるということなのか。先程とはまた違った緊張感があるな。BR法が施行された訳でもあるまいに。このメンツなら1分持たずに織斑先生が生き残るだろうがな。

 

 

 

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

 

 

 ふと、思い出したように言う。また面倒そうなことを言いだすなこの先生は。先程のひと悶着を知らないだろうけど、このタイミングでそんな話をするなんて。

 

 

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあ、クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は入学時点でのクラスの実力推移を測るものだ。今の時点では大した差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると1年間変更はないからそのつもりで」

 

 

 

 クラス長か……つまりは学級委員長ってカンジだな。

 俺はクラス全体を見回す。多国籍の生徒が多い、つまり外国人が多いこともあってか、所謂『いいんちょ体質』のクラスメイトはいないようだ。

 俺の考える『いいんちょ体質』といえば、もちろんメガネを掛けた黒髪の3つ編み2つ縛りで、聡明が全身からにじみ出ている趣味が読書の女の子だ。反論のある方、『今夜は朝までいいんちょ討論』を開催しますので是非参加を。

 それはさておき、この状況なら初手は決まりだろうな。みんな初対面でまだ顔も名前も覚えきれていないであろう初日だ。当然実力の程など知る由もないだろう。その状況で自薦、つまり立候補できるヤツは相当の自信家で、他薦、つまり推薦されるヤツは間違いなく話題性のあるヤツだろうから。

 

 

 

「はいっ。織斑くんを推薦します!」

「私もそれが良いと思います!」

「では候補者は織斑一夏……他にはいないか? 自薦他薦は問わないぞ」

「お、俺!?」

 

 

 

 当然の一手で一夏を推薦。まぁそうなるだろうな。俺の名前が呼ばれないのも計算通りだ。他のクラスには男子がいないこともあってこのクラスのアドバンテージである一夏の推薦はニーズにも答えている。無責任且つ勝手な期待も相まってクラスは一つにまとまりそうな雰囲気だ。

 当の本人はつい立ち上がってしまう程に困惑気味だが、俺より目立っているイケメンの君が呼ばれるのは必然。そう仕向けたからな。若干呼ばれないことに悲しさは感じるが。その現実に箒さんは納得の表情で頷いてるけれどもね。

 

 

 

「織斑。席に着け。邪魔だ。さて、他にいないのか? いないなら無投票当選だぞ」

「ちょっ、ちょっと待った! 俺そんなのやらな―――」

「自薦他薦は問わないと言った。他薦されたものに拒否権などない。選ばれた以上は覚悟しろ」

「い、いやでも――」

 

 

 

 必死の抵抗を見せる一夏。無理なことは承知でも抵抗せずにはいられないか。お前が相手にしてるのは理不尽悪魔。あまりの抵抗は得意の理不尽暴力で脳細胞の大量殺人を招くだけだぜ。

 さて次の一手は当然、自薦者だろう。何人が名乗りを上げることやら。

 

 

 

「待ってください! 納得が行きませんわ! そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ! わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を1年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

 

 

 バンッっと机を叩いて立ち上がったのは大本命のセシリア・オルコットさん。以上。意外と少ないな。もう少し居るかと思っていたが、奥ゆかしい女性が多いようだ。

 しかし流石は代表候補生。まぁある程度の自信家でなければ実力があってもそこまで上り詰めるのは無理だろうけど、一夏との2人だけの口論ではないのだから、発言には気を付けてくれよ?

 

 

 

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭御座いませんわ!」

 

 

 

 セシリア・オルコットさん? 一夏並の馬鹿なんですか? 貴方も『KY』という名のスキルをお持ちなのでしょうか? 円滑な人間関係の築き方についての本でもプレゼントしようか。当然領収書付きで。感謝する姿はとても想像できないが。

 

 

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはならないこと自体、わたくしにとって耐え難い苦痛で――」

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

「なっ……!? あっ、あっ、貴方ねえ! わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

 

 

 

 あちゃ―。一夏のヤツ、やっちまった。そうなるともう泥沼。この場は収まってもこの先、禍根を残す形になる。それは一夏にとっても、オルコットさんにとっても。どうしてこんな初日からそこまで揉めるかねぇ。最初は牽制し合いながら距離感を掴んでいくもんだろう? このまま雨降って地固まるのを待つのも手ではあるが、必ず戻るものでもないし……

 

 

 

「(「面倒くせ~」といって仲裁に入る京夜なのでした)」

「(その期待に答えて言わせてもらおう。面倒くせ~)」

 

 

 

 オルコットさんの評価は今後の授業などの中で実力を見せていけば、緩和されていくかもしれないが、一夏の場合はISの世界において男というハンデを負っていることもあり、評価の回復は困難を極めるかもしれない。なるべく最初からクラスに受け入れてもらい、学園全体に応援してもらう形が望ましいと考えている。学園の皆が一夏の味方だという状況である方が今後の展開がコントロールしやすいからだ。

 

 

 

「先生、発言の許可を頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」

「いいだろう」

 

 

 

 手を挙げ、発言の許可を取る。その俺の姿を見て織斑先生は許可を出してくれた。色々な意味で観察されている環境下であまり目立ちたくもないが、クラス内に不協和音を奏でたままでの生活は居心地の良いものではないし、迷惑極まりない。まぁ何とかコントロールしてみるさ。

 立ち上がり、一夏とオルコットさんのちょうど真ん中の位置に立つ。

 

 

 

「まず、一夏。お前は日本を愛しているか? 誇りに思って生活をしているか?」

「いや、日本は好きだがそこまでは……」

「では祖国を侮辱される気持ちは、お前には分かっていないだろう。彼女の発言にイラっとした気持ちは分かるが、だからといって祖国を誇りに思う、愛する気持ちが分からないお前が言っていい発言ではない」

「……」

 

 

 

 押し黙ってしまう一夏。納得はできていないが、言い返す言葉が見つからないといった具合だ。

 俺はさらに追い討ちをかける。

 

 

 

「お前にとっての誇り……お前の姉である織斑千冬先生を侮辱されたらどうだ? 売り言葉に買い言葉であってもお前はそれを許せるのか?」

「!!」

「許せないだろう? それと同じことをお前は言った。だからまずお前から謝ろうか。『男として』女性より先に謝るのは当然だろう?」

 

 

 

 一夏はこの女尊男卑な世の中でも尚、男として享受しているプライドがあることは今までの会話の節々から読み取れていた。さらに織斑先生を引き合いに出せば、もう納得せざるを得ないだろう。

 一夏は少し悔しそうな顔をしていたが、目を閉じ、フッーっと息を吐き、冷静さを取り戻して口を開いた。

 

 

 

「……セシリア・オルコットさん。さっきの発言を撤回します。スイマセンでした」

 

 

 

 そう言い、頭を下げる。クラスの皆も謝られた本人も先生たちも若干驚いているようだった。今の世の中、女に頭を下げる男は珍しくもないだろうが、あそこまで険悪ムードの状態から謝るのは相当だ。この行動は一夏の潔さを際立たせ、好感を持たせる良策となったことだろう。

 さて次は彼女だ。一夏の時よりへりくだった態度でちょっとオーバー気味に演じなければならない所が面倒くさい。

 

 

 

「次にセシリア・オルコットさん。貴方は先程、日本のことを後進的な国と、そして日本人を極東の猿とおっしゃいました。かつて『ブリュンヒルデ』と称された織斑先生を始め、山田先生、クラスメイトの半分程は日本で生まれた日本人の方々です。そんな方々をクラス代表になろうとお考えの貴方が侮辱なされるのですか?」

「!! そっ、それは……」

 

 

 

 2人の先生を始め、クラスメイトの殆どがオルコットさんに対して大小あれど嫌悪の表情を浮かべている。これだけの人数に恨まれるような視線を浴びるなど、一学生にはとても耐えられるものではないだろう。

 

 

 

「それに貴方はイギリスの代表候補生、ゆくゆくはイギリス代表になられる。貴方の発言はイギリス国の総意として捉えられることもあることはお分かりでしょう? 貴方はISを生み出した日本国に対して宣戦布告をなされるおつもりですか?」

「!! い、いえ、そのようなことは……」

「でしたら、一時の気の迷い、過ちとして、皆様に謝罪して戴きたく存じます。イギリス貴族の立ち振る舞いとして、その名に恥じぬ行動を取って戴きたいと切に願います」

「……」

 

 

 

 彼女の方に体を向け、右手を左胸にあて、踵を揃えて会釈する。まるで貴族のご令嬢に仕える執事のように。彼女の立ち位置を自覚させ、プライドを守りつつ、自発的な謝罪を促す。外堀から埋めるような発言でこの状態からの逃げ場はないだろう。

 オルコットさんもまた先程まで顔を真っ赤にして怒りを示していたが、落ち着きを取り戻していた。

 

 

 

「……織斑先生、山田先生、織斑一夏さん、それにクラスメイトの皆様。申し訳ありませんでした。このセシリア・オルコット、イギリス代表候補生として正式に謝罪致します」

 

 

 

 よし、次の一手だな。プライドの高い彼女の謝罪に沈黙がこの場を支配している。ここでこの空気を和やかにする。ジョークや笑いなどが効果的だがここは『天然』を利用することにしよう。

 ちょうど今立っている場所に一番近い席の女子に話しかけることにする。この子は2時間目の休み時間、一夏とオルコットさんの口論を聞いていたが、ずっと笑顔が崩れず、天然オーラを醸し出していた。名前は確か……

 

 

 

「どうだろう、布仏さん。2人とも反省してるみたいだし、水に流して仲良くやってもらえないかな?」

「そ~だね~。みんな仲良くしよ~」

 

 

 

 この子の天然でゆったりした空気に当てられ、一夏、オルコットさんも含め、クラス全体がそれとなく和やかになりつつある。とりあえず一触即発な雰囲気は回避できただろう。

 さてここからはゴールへ向けて舵をきる。このままではクラス代表が決まらないままだからな。上手いこと先導してみようホトトギス。

 

 

 

「織斑先生、山田先生、この場で私は主席入学でイギリス代表候補生のセシリア・オルコットさんをクラス代表に推薦したいと思います。そこでどうでしょう? 候補者が2名いますのでISの模擬戦による代表決定戦、エキシビションマッチを行うというのは?」

「ほう?」

「オルコットさんは代表候補生です。クラスメイトの皆さんはもちろん、私もその高い操縦技術を観戦することによって今後、より高い意識で授業に望めるようになると共に、互いの実力の優劣をはっきりとさせてクラス代表を決定することができます。それに何よりクラスメイトの皆さんはきっと一夏の晴れ姿を見たいであろうと思いますので……」

 

 

 

 俺の提案にクラスメイトの女子たちは満面の笑みで頷き、賛成してくれていた。オルコットさんは実力で代表が決定するこの案に必ず乗ってくるだろうし、一夏は男として逃げるような真似は恐らくしない。あとは2人がその意思表示をしてくれば、織斑先生もこの案を飲むだろう。

 

 

 

「わたくしはそれで構いませんわ。代表決定戦を希望します」

「俺も構わないぜ。その方が分かりやすい」

 

 

 

 ここまで誘導できれば余程の不確定要素がない限り、2人で代表決定戦を行い、勝った方がクラス代表になるだろう。そう、余程の不確定要素が余計なことを言わない限り……

 

 

 

「キョウちゃんも参加したらいいよ~見てみたいな~」

「……キョウちゃんとはもしかして俺のことかな?」

 

 

 

 どうやら布仏さんは1時間目の休み時間に箒に言った冗談を聞いていたみたいだ。

 キョウちゃんはともかく、このタイミングでそんなこと言うのはやめてくれ! この不確定要素が! 天然はそこに損得がないから読みにくい。この発言を誰かに聞かれでもしたら……

 

 

 

「ん? そうだな……黒神、お前も代表決定戦に参加しろ。私が推薦してやろう。先程クラスを上手いことまとめていたしな。クラス長としては向いている」

「そうですね! 学級委員長向きかもしれません!」

 

 

 

 鬼教官こと織斑先生はデビルイヤーもお持ちだったようだ。山田先生までそんなこと……。そんな言い方をしたら、一夏もオルコットさんも乗ってきてクラス全体が乗っかってくることは間違いない。

 案の定、当事者2名はある意味ノリノリで俺を誘う。そこは2人で戦って友情育んどけよ。あわよくば愛情も生まれちゃっとけよ。面倒くさいのが嫌でここまで話を勧めてきたのに、あの不確定要素が余計なことを言うから引くに引けなくなってしまった。 さらに憎らしいのはあののほほんとした雰囲気に当てられると怒る気も失せてついつい和んでしまう。あれは一種の才能だな。

 そんなこんなで一夏、オルコットさん、俺の3人での代表決定戦が決定した。

 

 

 

「さて、それでは勝負は1週間後の月曜。放課後、第3アリーナで行う。織斑、オルコット、そして黒神はそれぞれ用意をしておくように。それでは授業を始める」

 

 

 

 後悔先に立たずと言うが、人生はいつだって後悔の連続だ。俺はいつだって後悔してきた。後悔の度に教訓を得て一つ一つ成長する。今回の俺の後悔は「馬鹿と天然は使いよう」教訓は「馬鹿と天然は紙一重」ということだろう。

 

 

 

 

 

 




『インフィニット・ストラトス a Inside Story』は自身のブログでも掲載中です。
 設定画や挿絵、サブストーリーなんかも載せていくつもりですので、良かったらそちらもご覧戴けると嬉しいです。


【ブログ名】妄想メモリー
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