インフィニット・ストラトス a Inside Story 作:鴉夜
また、オリジナル解釈が多めです。矛盾や、つじつまが合わない等はあるかと思いますが、本当にご勘弁ください(泣)
あまりに突然だが私、ラウラ・ボーデヴィッヒは、黒神京夜が好きだ。
あそこまでされて、惚れない奴はいないだろう。あそこまで言われて、ときめかない奴はいないだろう。私にとっての『何か』になってくれたアイツの存在に、私の胸は揺さぶられたのだ。
そして芽生えた。それは
嬉しかった。私も等しく15歳の女なのだと、私も皆と何も変わらないのだということが、嬉しかった。
そんな私は『何か』というあやふやな存在であったアイツを『嫁』と呼んでいる。
それがどんな意味を持つのか。世俗に疎い私は、それを正確に理解してはいないだろう。それでも構わない。私の思いが、少しでも伝わるのであれば。
そしてその思いは、ちゃんと伝わっている。そう呼ぶ私に、いつも暖かな眼差しを向けてくれるから。私はその瞳に、これ以上ない幸せを感じる。
もっと私を見てくれ。私はお前のそばにいるから。片時も、そのそばを離れないから。
◇
「というわけだ」
「出たよソレ。ありきたりのツッコみとは分かっているけど、何が『というわけ』なんだよ……」
朝というのは、清々しいと思う人が大多数だろう。うん、俺もそう思う。いや思いたいし、思っていた。
今そう思えないのは、なぜだろう。決まっている。この状況が、俺を憂鬱にさせているのだ。
それはいつも通りの二度寝まどろみタイム中のこと。ふにゅふにゅとした柔らかい感触。温かくすべすべした手触り。そして欲情を駆り立てる矯声に流石の俺も目を覚まし、掛布団をめくった。
そこにいたのはラウラ・ボーデヴィッヒ。それ自体は驚くべき所ではなかった。真夜中に俺の部屋へと忍び込み、そのまま俺の布団の中へと潜り込んできたことは知っていたからな。
だが問題は、その格好だ。格好とは言っているが、その素肌には衣類を何一つ纏っていない。全裸だ。左目の眼帯と、IS待機状態である右太腿の黒いレッグバンドのみの姿。朝日を浴びて神秘的に輝く長い銀髪が、その肢体を撫でつつ着飾っている。
ラウラは目を少しばかりこすりながら、何一つ隠すことなく俺に目を向ける。
「日本ではこういう起こし方が一般的だと聞いたぞ。将来結ばれる者同士の定番だと」
雑学をひけらかすように得意顔を見せるラウラ。その姿に俺は頭を抱える。
別にその知識に対してどうこうという話ではない。この起こし方も、俺としては大歓迎だ。ウエルカムエブリデイだ。IS学園の女子寮というこんな環境でなければな。そしてタイミングも悪い。それこそが今俺が頭を悩ませている理由だ。
察しはつくことだろう。あのシャルロットの仕返し? により、昨日の箒達は激しかった。主に拷問的な意味で。その内容といったらそれは俺以外なら女性恐怖症になっている程だ。心理学者からお墨付きが貰えるレベルであることは間違いない。
そしてその翌日にコレ。こんな所を見られようものなら……という恐怖から、俺が少しばかり鬱になることは仕方のないと言えるだろう。
とはいえ、今そんなことは重要ではない。俺はもう、俺の中の衝動が抑えられそうにない。
俺はラウラの肩に手を掛ける。
「わかってないな。間違っているぞラウラ! ちょっと待ってろ」
キョトンとした顔のラウラをベッドに残し、俺はすぐそこの、ベッド隣にあるクローゼットを開け、1枚の衣類を取りだした。
そしてそれをラウラに着せる。おっと、ボタンは全部閉じるなよ?
「(あ~あ、これは大変ね)」
「(どうしたんですか、ティーナ先輩?)」
「(京夜はド変態を超える変人だからね~。ララちゃんにちょっと同情するわ)」
「(あ~。いつものアレですか……)」
ララちゃんというのはラウラのことらしい。幼い双子の弟はいないけどな。
ちなみにシャルロットはシャルと呼んでいる。これはあの2度目のシャルロットの自己紹介の後に一夏が提案し、クラス中に広まった彼女のアダ名だ。「他人が付けたアダ名をそのまま使うなんて、ティーナにしてはオリジナリティがないな」という俺の言葉に、ティーナが「こういうのはインスピレーションが大事なのよ。私もそれがいいと思ったからそう呼ぶだけ」とか言っていたのは昨日の午後の話。まぁ俺は呼ばないし、何でもいいけど。
おっと、脱線した。今はそれどころじゃないだろ!? 俺はラウラへ目を向ける。
言われるがままに着たラウラは、俺の言葉を待つようにこちらを見上げていた。何この可愛い小動物! ここは俺の部屋だが、まさしく「お持ち帰り~」だ!!
ヤベェ、高まってきたぁ!! 興奮してきたぁぁぁ!!!
俺は先程のラウラに負けず劣らずのドヤ顔で語る。
「いいか、ラウラ。確かに包み隠さない全裸にも興奮はする。だがな。男は見えそうで見えないチラリズムの方が、より興奮度が高いんだ! その上で、このワイシャツ1枚というスタイルは定番ではあるが、その破壊力は申し分ない。さらにこの装備は、ラウラのその未成熟な体格に抜群の付帯効果を生み出す。そのブカブカさが、まるで幼女に対していかがわしい行為を行ってしまったという背徳感を芽生えさせるのだ。これでさらに倍率ドン! 向かう所敵なしとはまさにこのことだ!!」
「う、うむ」
たとえ俺の熱い思いにお前が引いていたとしても、今の俺は止められないぜ!! ここからさらに俺は加速する!!
「袖は折るなよ? 袖から手が見えないことも重要なファクターだからな! その格好で、内股座りしろ。そしてそのまま前かがみになれ!」
「こ、こうか?」
「パァァァァーフェクツ!!」
その体勢から繰り出される上目使い。第2ボタンまで開けられたその胸元からは発展途上なちっぱいが見え隠れし、さらにはワイシャツの裾から見える生足は、その隠された向こう側を俺に妄想させる。そんな光景に俺の下半身が!! 俺のマイサンが!!!……って危ない危ない。これ以上は控えさせてもらおう。都条例に引っかかっちゃうから。都庁来ちゃうから。全年齢対象で逝きたいからなって、言ってるそばから字を間違えてるかもしれないが、気にするな。
とはいえ、これは永久保存するしかないな! えっとカメラは……
「京夜~? ラウラ知らない? 朝から姿が見えな――」
「!!??」
何の前触れもなく突如として開かれる部屋のドア。え、え~っと、ノックって知ってる? シャルロットさん。
状況。同級生とはいえ、若干幼女気味の美少女が、まるで事後のようにワイシャツ1枚の格好で、興奮気味の俺と2人きりでベッドにいるという光景。
俺の右肩上がりだった興奮のバロメータが急転直下。先程を超える加速度で俺に冷静さを取り戻させる。
これって詰んだんじゃね?
「な、何やってるのさ!? 京夜のエッチ!!!」
「へぶっ!?」
流石に『
俺はギャグ漫画ヨロシクバリに壁へと吹き飛ばされ、墨なし人間魚拓をさせられたのだった。
マジで痛い。俺は意識を数秒で取り戻し、2人を観察する。
「ラウラ! そういうのはダメだって!」
「何故だ? お前もしたのだろう?」
「し、し、してないよ僕は!! 昨日のアレは――」
床に倒れている俺を無視して、シャルロットとラウラはルームメイト同士でなにやら仲睦まじい会話を繰り広げていた。
自分が女子であることを、クラスメイトだけでなく当然学園側にも伝えたシャルロットは、箒の時と同様でこの部屋からお引っ越し。ラウラと同室になった。今の2人なら、このやりとりを見るまでもなく上手くやっていけるだろうと確信していたが、この光景は俺に安心感を与えてくれる。予想を超える程に仲良くやっているようだ。
まぁそんな「寮の部屋調整」という雑務の負担がのしかかったせいで、ヤマヤンは昨日あんな酷い顔になっていたということなのだが。御苦労さまです、山田先生。俺のせいではないけどね。
俺は、そんな山田先生に労いの意味を込めてブラックコーヒーを1ケース贈った。ヤマヤンは「苦いのダメ」という情報を知った上で、「わざわざ山田先生の為に買いました」という押しつけがましい善意を伝えながら、「これで徹夜しても大丈夫ですね」と追撃を繰り出したのだった。嬉しさ反面、虐められてることを理解した山田先生の泣き顔に、俺が満面の笑みを浮かべていたことは想像して頂けることだろう。
ちなみにシャルロットが引っ越して、俺は1人部屋となった。一夏はココに引っ越してこないそうだ。理由を尋ねたら、稀有な男性操縦者を一ヶ所に集めておくことの危険性を説かれたのだが……実際の所はどうだかな。
俺は体を起こしながら、ラウラの足元に目をやる。そこにはアーミーグリーンの、所謂ミリタリーバッグが。コイツもあの時の鈴と同様、既に荷物持参か。
床に置かれていたそれは、鈴のボストンバッグよりさらに小さい。本当に必要最低限の物しか持ってきていないようだな。恐らく衣服は制服と軍服、ISスーツと下着ぐらいではないだろうか。だから裸だったのかもしれないな。
俺はシャルロットへと視線を移す。そういえばコイツもそうか。……ふむ。
「ラウラ、シャルロット」
「なんだ? 嫁よ」
「どうしたの、京夜?」
一般常識を諭すシャルロットも、話の内容がイマイチ理解出来ないラウラも、まるで示し合わせたかのようなタイミングで俺へと顔を向けた。
その顔は、辛くても、苦しくても、そして醜くても、必死に足掻いて掴んだ今だからこそ出来る無防備な顔なのかもしれない。
俺はそんな、ごく一般的な普通の女生徒と同じ顔が出来るようになった目の前の2人が、恐らく想像にすらしていなかったであろうことを言った。
「俺とデートしないか?」
◇
ここは進路相談室。とはいうが、IS学園に通う生徒達は、国家代表も含め9割方ISに関連する職種を希望する為、進路相談室としてよりは生活指導室として使われることの方が比較的多いかもしれない。
だが主としては進路相談の為に設けられている場所であり、ここは情報漏洩防止の観点から見て、生徒が出入り出来る中では最もセキュリティーの高い場所と言えるだろう。
私は目の前に座る女生徒に目を向ける。
「すまないな。生徒であるお前に……手間をかける」
「いえいえ。それがウチの稼業ですから。織斑先生」
そう言う彼女に私は頷きを見せ、再び手元の資料に目を通す。
そこに記載されているのは『黒神京夜』に関する調査報告だった。表立って調べられる範囲は自分で調べた。後はそうでない部分、裏側についての調査を、私は依頼していたのだ。
トライラックス社の社長の息子……か。やはりただの生徒ではないと思ってはいたが……これならIS委員会との繋がりも……。
さらには来週末にトライラックス社は、デュノア社との一部業務提携が発表される可能性有り……先日のデュノアの告白の件から考えても、黒神が裏で何やら動いていることには間違いないだろう。
全てを読み終えた私は、資料から少し視線を外す。
「どうしますか? 調査は打ち切りますか?」
その言葉に、私は熟考する。
調査を依頼して間もないこともあるが、今挙げた部分以外には特に気になる点は見当たらない。隠されていた真実、つまり真実を語りたがらない黒神の隠していることがこのレベルなのであれば、それ程までに警戒する必要はないのかもしれない。
だが……
「いや、すまないが引き続き頼む」
「わかりました。ではまた……」
部屋を後にする女生徒を尻目に、私は資料をテーブルに置き、肘をついて手を組み、思考を走らせる。
私の頭には、あの時の黒神の言葉が思い返されていた。冗談の1つとして語られたあの言葉が。そしてその言葉がもし本当であったのなら、もし本当にアイツと関わりがあるとしたらというそんな可能性が、私をこうした行動へと駆り立てている。
アイツが気を許す人間は極端に少ない。私と一夏、そして妹だけだろう。下手をすれば、アイツはそれ以外の人間を、ゴミ同然に扱いかねない危険性すらある程だ。故に黒神の放った言葉を素直に冗談とは受け止められないでいた。
調査を続行したのもそこに理由がある。何もないのであればそれでいい。それが分かれば杞憂として終わるだけの事だ。
とりあえず、関係が明らかになるまでは可能な限りアイツと黒神の接触を避ける必要があるな。もし黒神の言葉が真実であったとしたら、黒神の目的は……。
とはいえ現状、全てと言える程にそれらは推測の域を出ない。もちろん教師として、教え子を信じたいという気持ちはある。一夏の家族として、身を挺して一夏のことを守ってくれた恩人を疑いたくないという思いも。
矛盾しているな。そう思いながらも、こんな行動を取る私は。
私は深いため息を吐きながらその場に留まり、女生徒に渡された調査報告書とは別の、持参していた再来週からの課外学習に関する資料に目を通すのだった。
『インフィニット・ストラトス a Inside Story』は自身のブログでも掲載中です。
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