インフィニット・ストラトス a Inside Story    作:鴉夜

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※誤字、脱字は多いかもしれないです。表現も統一性がないかもしれません。なるべく修正します。ご勘弁ください。

また、オリジナル解釈が多めです。矛盾や、つじつまが合わない等はあるかと思いますが、本当にご勘弁ください(泣)



第52話 俺は全力で誤魔化すことにした。

 

 

 

 

 

 溺れた鈴を背に、泳いで戻ってきた俺はそのままおんぶして砂浜を歩く。たとえ浮力がなくても小柄な鈴なら、背負って歩いても砂に足を取られることはなく、苦なく歩みを進めることが出来ていた。

 意外にも鈴は何も言うことなく、何の抵抗もなく、歩く俺の背中を陣取ったままだ。このままだと確実に注目を集めるだろうから、流石に恥ずかしがって降りるかとも思ったのだが……。

 

 

 

「(リンリンは背中が気に入ったってことよ。私はやっぱり京夜の股座に座るのが好きね。茜は?)」

「(私は肩に寄りかかるのが好きですぅ。京夜さん、温かいですし)」

 

 

 

 さいですか。まぁ可愛い幼馴染や自慢の脳内彼女達の座椅子や背もたれや湯たんぽになれるのであれば本望か。

 とりあえず、このまま一度旅館へ戻ろう。

 俺は砂浜から旅館へと続く通路へと向かう。すると先程までの待機場所であったパラソル下から一夏達がこちらへと向かってきた。一夏という疑似餌に釣られてか、クラスメイトの数人も付いてくる。

 

 

 

「鈴! 京夜! 大丈夫かよ!?」

「へ、平気よ、ちょ、ちょっと足が攣っただけだからっ」

 

 

 

 自分から勝負を振った手前のこの結果は流石に恥ずかしいのだろう。その頬に若干の赤みが差した鈴の一夏に対する態度には拒絶が見える。

 だが相手は一夏。良い意味では本気で心配してるだけの友達思いな男。悪い意味ではそんな鈴の態度など露知らずな空気の読めない男。

 やれやれ、とため息交じりの一息を付きながら俺は、ふと箒を見る。やけに心配そうな面持ちだ。だが視線は心配の対象であろう溺れた鈴へと向けられておらず、こちらを見ている。

 なぜそんな顔をしているんだ? なぜ俺をそんなに心配している? その答えは箒の腕に掛けられていた。

 それは俺が先程まで着ていた白地のパーカーだった。それを見た俺はその視線を周囲へと向ける。

 俺の近くまで来た箒の隣には、同じような心配顔のシャルロット。 そして―――

 

 

 

「きょ、京夜さん……」

「く、黒神くん、そ、それって……」

「う、うん、や、ヤバくない?」

 

 

 

 箒やシャルロットより少しばかり離れた距離のセシリア。そしてそれよりさらに距離があるクラスメイト達。そんな彼女達は畏怖に近い表情と、異端を見るかのような視線を俺へ、俺の体へと向けていた。背中に乗る鈴もまた、その視線から気付いたようだ。

 そうだったな、そういえば。

 だから泳がないつもりで、海に入らないでいたつもりで……いや、脱がないつもりでいたんだが。まぁ仕方ない。

 するとそんな視線に気づいたからか、それとも織斑クオリティを習得済みなのかは分からないが、なんら変わりなくいつも通りに俺の隣に来たラウラは躊躇なくその話題に触れる。

 

 

 

「それにしても、嫁よ。初めてみたが、素晴らしく鍛えられているな。筋肉の付き方に無駄が無い。そして何よりこの()()()()()()()。やはり只者ではないな。うんうん」

「確かに凄いよな。流石京夜ってカンジだぜ!」

 

 

 

 何を感心してるんだが。ブレないなぁ~一夏とラウラの織斑兄妹は。

 もし周囲の視線が前者の、鍛えられた肉体へ向けられている興味の視線であるならばいいのだが、そうではないだろう。

 間違いなく後者。その視線は、埋め尽くす程に、数え切れない程に俺の体に存在する傷跡へと向けられていた。

 無理もない。異常と、尋常ではないと言わざるを得ない程の傷跡が俺の体には刻まれているのだから。

 

 

 

「まぁな。昔、色々とやんちゃをしてた時の名残ってやつさ」

 

 

 

 俺は、そう言って苦笑いすることしか出来なかった。説明することも、言い訳することも……しないし、出来なかった。

 俺の珍しい表情と態度がそうさせたのか、クラスメイト達は誰もそれに追及してはこず、その上どう思っているか読み辛い微妙な表情を浮かべた。セシリアだけはクラスメイト達と思う所が少し違うようで、悔しさのような感情を端々に滲ませている。

 

 

 

「それより、とりあえず鈴を休ませたいから旅館に戻るわ。一夏、悪いけどもうこっちには戻らないかもしれないから後、任していいか?」

「ああ、いいぜ。片付けとかだろ? 任してくれ」

「頼んだぜ。じゃあまた後で。……悪いな箒、シャルロット」

「……気にするな。私は気にしてないし、気にしない」

「うん……僕も平気。大丈夫、大丈夫だから」

 

 

 

 何を気にしないんだか、何が大丈夫なんだか。本当に優しい奴らだな。

 俺は皆と別れ、再び旅館へと向かって歩く。モーゼの十戒とは言わないまでも、俺の前には道が次々と切り開かれていく。クラスメイト達だけでなく、他のクラスの女子達もまた、先程と同じ視線を俺へと向けて少し距離を取っていく。

 すると背中の鈴が俺の首へと回した腕に力を入れる。

 

 

 

「……ゴメン、京夜。……本当に、ゴメン……」

「気にするな。鈴が悪いわけじゃない。だから謝るな。自分のせいにするな。俺は、お前が無事ならそれでいい」

「……ありがと……っ」

「ああ。だからこの件はこれで終わりだ」

「うん……。で、でも最後に一つだけ……」

「ん? 何だ?」

「あ、あたしも気にしないから、大丈夫だからっ」

「……そうか。……ありがとう」

 

 

 

 互いにそれ以上は語らず、俺達はそのまま目的地へと向かう。

 旅館へと繋がっている通路。旅館の裏手にある専用の入り口へと上がる階段に足を掛けた時、逆に誰かが旅館から砂浜へ向かうべく降りてきた。

 

 

 

「どうした、黒神」

「! 織斑先生……」

 

 

 

 声の主は織斑先生。どうやら休憩時間のようで、水着姿だった。

 スポーティな印象でありながら、メッシュ状にクロスした部分がセクシーさを演出している黒いビキニに身を包んだ織斑先生。普段のスーツ姿からではお目に掛かれない豊満な乳房。まるで彫刻のようなくびれた腰。艶かしい太腿から足首へと続く曲線美。同級生にはない大人の色気、妖艶さのようなものを全身から醸し出していた。

 素晴らしきエロス。正直ドーパミンがどっぱーしかねない状態なのだが、もしそうなってそれを背中の鈴に察知されると回された腕でそのままスリーパーホールドへ移行され、そのまま天国へ移送されてしまいかねないのでセーブを図る。

 それに……そんな気分でも状況でもないしな。

 

 

 

「いや、鈴がちょっと溺れてしまって……旅館で休ませようかと」

「そうか。凰、大丈夫なのか?」

「は、はい、だ、大丈夫ですっ」

 

 

 

 苦手意識があるのか、若干緊張気味に鈴は答える。その鈴の反応に、織斑先生はいつもの堅苦しい表情に僅かではあるが安堵を垣間見せた。

 

 

 

「十分に休め。後で―――! ……黒神、その体……」

 

 

 

 凝視。それは観察するかのような視線。奪われている視点。

 だがそれは先程クラスメイト達から送られていたものとは少しばかり違う。その中には、僅かではあるが()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それはつまり……()()()()()()()()()()()()()ということだ。

 とはいえ、今それを知られる必要も、気にされる必要もない。俺は全力で誤魔化すことにした。

 

 

 

「いや~、実は中学時代、ヤンキーで喧嘩三昧だったんですよね~。そんなやんちゃしてた頃の勲章ですかね(笑)」

「だが黒神、その傷は―――」

()()()()()()()()()()()()()()()。では」

「……」

 

 

 

 誤魔化せないなら、塞ぐしかない。逃げるしかない。

 俺の喰い気味の強めの口調と苦笑いは、織斑先生の口を塞ぐ。そして足早に、俺は織斑先生の横を通り過ぎ、旅館へと続く階段を上り始めた。

 感じる視線は、まるで俺の動きに合わせる様に俺へと張り付いたまま、去る俺を見送るかのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「箒さんとシャルロットさんは……ご存じだったのですか?」

「……ああ。私は付き合いが長いからな」

「……うん。ルームメイトだった時に、ね」

 

 

 

 京夜さん達2人を見送る傍らで、わたくしは自分自身に悔いておりました。

 無意識に距離を取ってしまった自分に。京夜さんにあんな寂しそうな笑顔をさせてしまった自分に。何も言えなかった自分に。

 あれは恐らく京夜さんの辛い過去。語って頂けない過去の片鱗。京夜さんを苦しめている何か。その一部。

 それをわたくしは無意識に、僅かではありますけれど拒絶を垣間見せてしまいました。その壮絶さを想像して、一瞬怯んでしまいました。

 

 

 

 悔しい―――

 

 

 

 京夜さんはわたくしを受け入れてくれたというのに。わたくしは―――

 

 

 

 滲み出そうになる涙をこらえようと、誰にも見せまいと下を向く。すると誰かがわたくしの肩に優しく手を置いた。

 

 

 

「大丈夫だ。私もシャルロットも、セシリアと一緒だ。気持ちも思いも。覚悟も」

「うん。箒の言う通りだよ。僕達は知ってただけ。違いなんてないよ」

「箒さん、シャルロットさん……」

 

 

 

 違いなんてない。京夜さんへの好意も、その強さも。距離や立ち位置も。そして……覚悟さえも。

 その言葉に、少しだけ心が救われますわ。相対的に比較するようなものではありませんけれど。それでも。

 わたくしは2人に感謝の言葉をお伝えする。箒さんとシャルロットさんは優しい笑顔で返してくれました。

 違いのないわたくし達。そんなわたくし達の思うこともまた同じ……ということなのでしょう。

 わたくし達は同じ男性に恋をしています。ですが、わたくし達は誰1人、自惚れてなどおりません。ですからこのような、敵に塩を送るようなことが出来るのでしょう。もし仮に逆の立場であったとしても、わたくしもまた同じことしたと思います。

 同志と書いて、あるいは恋敵と書いて『ライバル』と呼ぶような関係……ではありません。こんな言葉はありませんけれど、同じ恋をする友達、『恋友』なんて表現が適切かもしれません。

 それが、それこそが、わたくし達の覚悟。強い思い。自惚れてはいないわたくし達が自負している気持ちですわ。

 だからこそ、これは何か行動を起こさねばなりません。京夜さんのことですから態度や接し方が変わるようなことはないと思いますけれど、誤解されたままではいられませんわ。

 わたくしはパラソル下へと歩みを進めながら、臨海学校というこの機会に、何か出来ることはないものかと思考を巡らせるのでした。

 

 

 

 

 

 




『インフィニット・ストラトス a Inside Story』は自身のブログでも掲載中です。
 設定画や挿絵、サブストーリーなんかも載せていくつもりですので、良かったらそちらもご覧戴けると嬉しいです。

※ブログは少しだけ先まで掲載されています。


【ブログ名】妄想メモリー
【URL】http://mousoumemory.blog.fc2.com/
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