インフィニット・ストラトス a Inside Story 作:鴉夜
初めての方、初めましてです。
3ヶ月ぶりくらいの更新になります。
楽しみにしてくださっている方、もしいらっしゃったら本当にスイマセン(汗)
何気に忙しいんですよ……今後も亀更新だと思いますのでご容赦ください。
※誤字、脱字は多いかもしれないです。表現も統一性がないかもしれません。なるべく修正します。ご勘弁ください。
また、オリジナル解釈が多めです。矛盾や、つじつまが合わない等はあるかと思いますが、本当にご勘弁ください(泣)
「箒ちゃんのデータはある程度先行して入れてあるから、あとは最新データを更新するだけだね。さて、ピ、ポ、パ♪」
箒の専用機となった紅椿のコンソールを開いて指を滑らせる束さん。さらには空中投影のディスプレイを6枚ほど呼び出すと膨大なデータに目配せしながらさらに空中投影のキーボードを6枚を呼び出して操作していく。そのあまりの手際に感心することしか出来ない。
「凄いですわね、一夏さん」
「……だろ?」
「ええ。あの方は本当に篠ノ之博士だったのですね。正直な所、今朝は一夏さんがご冗談を仰っているものと思ってましたが……」
耳打ちしてきたセシリアは、鈴やシャル、ラウラとはまた違った驚きの目で束さんのキーボード捌きを見ていた。
そりゃそうだろう。今朝のあの登場からではとても想像出来ない姿だからな。
俺は今朝のことを思い出していた。
◇
「…………」
「あら? 一夏さん? どうなさったのですの?」
「……ああ、セシリア。……アレ」
「??? ……ウサギの……耳?」
朝食前の目覚めの朝風呂を終えた俺は、自分の部屋へと戻るべく廊下を歩いて居た所、ふと廊下脇の植え込みに生えているウサギの耳を見つけた。いや、見つけてしまった。
ウサギの耳と言っても、生のヤツではなく、所謂『ウサミミ』というやつである。バニーさんがしているアレ。ただし目の前のウサミミは白色だった。
しかも『引っ張ってください』という張り紙付き。どうしようかと途方にくれていた所にセシリアとばったり出くわしたという状況だった。
「なんですの? しかも『引っ張ってください』って……」
「ああ、これは……」
「? 何か心当たりがおありでも?」
「ま、まあ……多分……」
箒や千冬姉がいれば確信を持てたかもしれないが、それでもこんな珍妙奇天烈なことをする人間は、知り合いに1人しかいなかった。
「と、とりあえず……抜くぞ?」
「だ、大丈夫ですの?」
「た、多分……」
あの人絡みだと、『多分』としか言えない自分のボキャブラリーの少なさに何だかなぁと感じながらも俺はそのウサミミを引っ張る。
すぽっ
「あれ?」
「……何もありませんわね」
流石に地中に束さんが居るとは思ってなかったが、何かしらくっ付いているだろうという予想に反して、何もなかった。ただウサミミが地面に突き刺さっていただけだった。
「誰かのイタズラ……でしょうか」
「いや、臨海学校にわざわざウサミミを持って来てこんなイタズラするようなヤツ、居ないだろ。多分、束さんが―――」
キィィィィン……。
う? なんだ、この、何かが高速で向かっているかのような音は―――って、うぉ!?
ドカ―――――ン!
どうやら謎の飛行物体が飛来してきたようで、それが今、目の前に盛大に落下し地面へと突き刺さった。それはUFOの恐れさえもあるはずなのだが、物体の見た目というのが―――
「「に、にんじん……?」」
ユニゾンでそう漏らしてしまった目の前のUFO。それは所謂イラストチックにデフォルメされたにんじんだ。っていうか、なんだこりゃ? 月から来たウサギ型宇宙人の襲来か?
だがそんな大穴予想は外れ、本命鉄板予想だった人物がその中から現れる。
「あっはっはっ! 引っかかったね、いっくん!」
ぱかっと真っ二つに割れたにんじんの中から笑い声とともに登場したのは、あのIS開発者である箒の姉、千冬姉の幼馴染である束さんだった。
その才能は天井なし。天才中の天才。自称1日を35時間生きる女。篠ノ之束博士である。
「やー、前にほら、ミサイルで飛んでたら危うくどこかの偵察機に撃墜されそうになったからね。私は学習する生き物なんだよ。ぶいぶい」
いや、だからってにんじん型のミサイルにしなくても……学習する方向が間違っているだろ。それにいつもそうだが、普通に登場するっていうことを知らないんだろうか。確かにインパクトは抜群だが。
「お、お久しぶりです、束さん」
「うんうん。おひさだね。本当に久しいねー。ところでいっくん。箒ちゃんはどこかな?」
「今日はまだ会ってませんね。まだ寝てる……のは考えにくいか」
箒は早起きだって京夜が言ってたしな。
「まあ、この私が開発した『箒ちゃん探知機』ですぐ見つかるよ。じゃあねいっくん。またあとでね!」
軽やかでありながらもとても素早い動きで走り去っていった。ちなみに『箒ちゃん探知機』とやらはあのウサミミだったらしい。ダウジングロットのようなもののようで何かしらの察知して向きを変えていた。
「い、一夏さん? 今の方は一体……」
「束さん。箒の姉さんだ」
「え……? ええええっ!? い、今の方が、あの篠ノ之博士ですか!? 現在行方不明で各国が探し続けている、あの!?」
「そう、篠ノ之束さん」
先程と同様に、この状況とその情報が整理出来ないセシリアは口をあんぐりと開けたまま静止してしまった。正しく常識のある人間からしてみればそうだよなぁ……俺だって小さい頃から知っていなければ同じ反応だっただろう。
っていうか何しに来たんだろ? ただ俺や千冬姉や箒に会いに来たってカンジじゃなさそうだけど……なんか臨海学校に用事でもあったんだろうか?
ちなみにこの臨海学校での専用機持ちは『ISの非限定空間における稼働試験』とかいうのが主題らしい。その為、各国から代表候補生宛に新型装備が山のように送られてくるそうだ。俺にはないけど。
それは当然部外者は参加出来ない決まりになっている為、許可されているIS学園指定の揚陸艇のみがその装備をどかっと運んでくるらしい。
しかし、そこは流石の束さん。思いっきり規則無視して入り込んでくるんだろうなぁ。っていうか何しに来たんだろう。
あの束さんのことだから、きっと大丈夫……心配だなぁ……
◇
そんな俺の心配を余所にというべきか。束さんは鼻歌交じりで楽しげにキーボードを操作し続けていた。
「近接戦闘を基礎に万能型に調整してあるから、すぐに馴染むと思うよ。あとは自動支援装備もつけておいたからね! お姉ちゃんが!」
「は、はぁ。よく分からないですが、ありがとう、姉さん」
「ふ、ふ、ふふ~♪ 可愛い箒ちゃんの為だからねぇ~。ん? 箒ちゃん、また剣の腕前があがったねぇ。筋肉の付き方をみればわかるよ。やあやあ、お姉ちゃんは鼻が高いなぁ」
「姉さんはもう剣術をやらないんですか? 父さんが少し悲しがってましたよ?」
「ん? うん、お姉ちゃんはもういいかなぁ~。こっちの方が楽しいし!」
前にも話したが箒の実家は剣術道場を営んでおり、昔は俺や千冬姉も通っていたのだが、当然束さんもその家の娘として剣を学んでいたのだ。
まあ当時から束さんは剣術があまり好きではないそうで、千冬姉に無理やり付き合わせていた時しか束さんが剣を振るっている姿を俺は見たことがなかったほどだった。
それでも当時千冬姉に近しい実力ではあったけど。今にして思えば、あの頃から束さんが如何に規格外かということを目の当たりにしていたんだな。
久々の姉妹の語らいの中でも、束さんの手は休むことなく動き続けている。まるでピアノを弾いているかの如く、素早くも滑らかな動きで。数秒単位で切り替わっていく画面にも全部しっかりと目を通している。
「―――はい、フィッテイング終了~。超速いね。さすが私。あとは自動処理に任せておけばパーソナライズも終わるから、しばらくそのままで待っててね、箒ちゃん」
「わかりました」
そう言い、全部のディスプレイとキーボードをしまう束さん。
紅椿は今フィッティング―――つまりファーストシフトを終えた状態なのだが、その形態はさほど変化が見られなかった。あらかじめデータが入れてあったおかげなのか、今の箒の体格に合わせたサイズの微調整程度のようだった。
それにしても―――
見るからに、この機体。白式と同じ近接特化型に見えるなぁ。腰に左右1本ずつの日本刀型ブレード以外には何も装備してないし。
さっき束さんが『万能型』とか『自動支援装備』があるとか言っていたから、もしかしたら展開されていないだけで遠距離武器があるのかもしれないな。ちょっとうらやましい。
そうだ。丁度いいから束さんに相談してみよう。
「じゃあ次はいっくん、白式見せて。束さんは興味津々なのだよ」
「え、あ。はい」
俺は右腕のガントレットに左手を添えると意識を集中させた。
来い―――白式。
その念に応える様に、右腕のそれは白く強く発光する。そして空中に光の粒子が発生し、それらが俺の周囲に集まって形を成していった。
「データ見せてね~。うりゃ」
言うなり、白式の装甲にぶすりとコードを刺した束さんは、さっきと同じように複数のディスプレイを出現させつつ、何やらブツブツと言い始める。
「ん~……不思議なフラグメントマップを構築してる。なんだろう。見たことないパターン。いっくんが男の子だから? だけどここは随分と……パーソナライズからトレースかければ……ブツブツ」
ちなみにフラグメントマップというのは、各ISがパーソナライズによって独自に発展していくその道筋のことらしい。人間でいう遺伝子のようなものなのだそうだ。
それより……
「た、束さん? ちょっといいですか?」
「ん? 何だい、いっくん?」
「なぜ白式には後付装備が出来ないんですか?」
「そりゃ、私がそう設定したからだよん」
「……ええっ!? 白式って束さんが作ったんですか!?」
聞いてた話だと、確か白式は『倉持技研』という会社の機体だって聞いていたのだが……
「うん。そーだよ。あ、『倉持技研』って聞いてた? 実はね、私が作ったんだよー。けどまあそこは大人の事情ってヤツあってね~」
「はぁ。じゃあ何でそう設定したんですか?」
「それはね、実に簡単な理由があるのだよ、いっくん! 何を隠そう、それはちーちゃんと同じ単一使用能力を実現する為なのさ! まぁ詳しく説明しても多分わからないだろうからしないけど、とにかくその為にはそう設定する必要があったのさ! 分かったかな!?」
「は、はあ。わ、わかりました……」
まぁ正直全然分からないことだらけだけど。何で千冬姉と同じ単一使用能力を実現したかったのかもわからないし。まあそれは嬉しいことなんだけどさ。
束さんは再び複数のディスプレイでデータを見ながらブツブツと自分の世界に入ってしまった。もう誰の言葉も耳には届かないかもしれない。まぁ束さんは元々他人の言葉には耳を傾けない人なんだけどさ。
いわく『どうでもいい人間なんて区別はつかないね。わかるのは箒ちゃんと、ちーちゃんといっくんだけだね。あとは両親くらいかな。興味ないし、必要ないから。他の人間なんて』とのこと。
という訳でこの束さん。とにかく俺達以外の人間に対しては異常なまでに冷たいのだ。非情というか、とにかく冷徹。他人の名前なんて覚えることもなければ、呼ぶこともない。それでも無視しないで返答するようになった今は昔に比べればマシになった方だった。千冬姉の暴力的な公正によるものなのだが。
とはいえそれが束さんだ。他人に興味を持つことなんてありえない。そう思っていた俺が次の瞬間、束さんの言葉に少し驚いてしまったのは無理のないことだろう。
「あ! そういえば、もう1人居るんだよね? ISが使える男の子って。今は何処に―――」
「ね、姉さん!! まだ終わらないのですか!?」
突然、箒が声を上げる。らしくなく、何やら焦った口ぶりで。なぜだろう。よくわからないけど、俺はそう感じた。
そう、それはまるで束さんの発言を遮るかのよう。まるで興味を自分へと逸らすかのよう。
「んー、もう終わるよー。はい3分で終わった~、。あ、今の時間でカップラーメンが出来たね、惜しい」
白式からコードを引き抜いて、束さんは再び箒の元へ。既に箒のことしか見えていないかのよう。何が惜しいのか分からないんすけどね。
「んじゃ、試運転もかねて飛んでみてよ。箒ちゃんのイメージ通りに動くはずだよ」
「わ、わかりました。それでは試してみます」
プシュッ、プシュッ、と音を立てて連結されたケーブル類が外れていく。そこから若干顔を強張らせた箒は瞼を閉じて意識を集中させる。すると次の瞬間には紅椿はもの凄い速度で飛翔した。
とてつもない急加速。その衝撃波で砂が舞い上がる。箒は既に200メートル程上空を滑空していた。
「どうどう? 箒ちゃんが思った以上に動くでしょ?」
「え? あ、ええ、そ、そうですね……」
うんうん、と自画自賛の束さん。なぜISを展開している訳でもないのに束さんはオープンチャネルで会話出来ているのかは置いといて、俺は少し箒の表情が気になっていた。
ハイパーセンサーにより比較的はっきり見える箒は、先程までの強張りはないものの、何やら腑に落ちないような顔をしていた。何か違和感を感じているようだった。
「じゃあ刀使ってみてよー。右のが【
そう言って、束さんは空中に展開させたキーボードを走らせる。データを受け取った箒は、しゅらんと両腰にある2本の刀を同時に抜き取った。
「親切丁寧な束おねーちゃんの解説つき~♪ 【雨月】は対単一使用の武装で打突に合わせて刃部分からエネルギー刃を放出、連続して蜂の巣に! する武器だよ~。射程距離は、まあアサルトライフルくらいだね。スナイパーライフルの間合いでは届かないけど、紅椿の機動性なら大丈夫!」
箒は試しとばかりに突きを放つ。右腕を左肩まで持って行って構える、篠ノ之剣術流二刀型・
そこから突きが放たれると同時に、赤いレーザーが光の弾丸となって切先から放たれ、漂っていた雲を穴だらけにした。
「次は【空裂】ねー。こっちは対集団仕様の武器だよん。斬撃に合わせて帯状の攻性エネルギーをぶつけるんだよー。振った範囲に自動で展開するから超便利。そいじゃこれ打ち落としてみてね。ほーいっと」
束さんはいきなり16連装ミサイルポッドを呼び出して展開し、一斉射撃を行った。放たれたミサイルは、ぐるりと迂回しながら箒へと向かっていく。
「箒!」
思わず、俺は声に出していた。だがそんな心配は無用だった。
箒は焦ることなく、右脇下に構えた【空裂】を一回転させるように振るう。するとまたあの赤いレーザーが今度は帯状になって広がり、16発のミサイルと逃すことなく全弾撃墜した。
爆炎がゆっくりと収まっていく中、その絢爛な真紅のISの威風堂々とした姿を見せる。
俺達はそのスペックに驚愕し、言葉を失っていた。それ程に、群を抜いて圧倒的だった。魅了されてしまっていた。
だがその中で、2人だけがそうではなかったようだ。
その1人は、魅了されている俺達を見て満足そうに頷いている束さんを厳しい表情で見ていた。千冬姉だ。
それはまるで敵でも見ているかのような、そんな表情だった。
そしてもう1人、それは当の本人である箒だ。
さぞ満足げで得意げで誇らしい表情かと思いきや、とても顔色が悪かった。いつもの勝ち気な箒からはとても想像も出来ない、むしろこんな顔の箒は初めて見たかもしれない。
何かを恐れているかのような、そんな不安気な表情だった。
「箒? どうし―――」
「た、大変です! お、おお、織斑先生っ!」
いきなりの山田先生の声に、俺達は全員そちらへと向き直る。
いつも慌ててばかりの山田先生だが、今回はその様子が尋常じゃなかった。
「どうした?」
「こ、こっ、これをっ!」
渡された小型端末の、その画面を見た千冬姉の表情が曇る。
「特務任務レベルA、現時刻より対策をはじめられたし……」
「そ、それが、その、ハワイ沖で試験稼働していた―――」
「しっ、機密事項を口にするな」
「す、すいませんっ……」
再び千冬姉は端末を操作し始める。恐らくは何かの詳細が表示されているのだろう。曇っていた千冬姉の表情は厳しいものへと変貌していく。
全てに目を通した千冬姉は、その端末を山田先生へと返した。
「そ、それでは、私は他の先生達にも連絡して、生徒達を旅館で待機させますのでっ」
「了解した。―――全員、集合!」
山田先生が走り去った後、千冬姉はパンパンと手を叩いて専用機持ちを集合させる。滑空していた箒も地上へと降り立ち、俺達は全員千冬姉の前に整列した。
「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。今日の稼働テストは中止。そして専用機持ちであるお前達も作戦に参加してもらうこととなった」
は? 千冬姉は何言ってんの? 俺は意味が理解出来なかった。
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