インフィニット・ストラトス a Inside Story    作:鴉夜

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※誤字、脱字は多いかもしれないです。表現も統一性がないかもしれません。なるべく修正します。ご勘弁ください。

また、オリジナル解釈が多めです。矛盾や、つじつまが合わない等はあるかと思いますが、本当にご勘弁ください(泣)



第59話 私は後悔などしていない。

 

 

 

 

「もしもし?」

「……京夜……」

「? どうしたんだ、箒?」

「……」

 

 

 

 たとえ爽やかであろうとも決して流したくない汗と、大特価セール中であっても決して買いたくもない苦労という名の労働を一通り終えての休憩中。ポケットが震え、取り出した端末のディスプレイに表示された「篠ノ之箒」の名前を確認した俺は電話を取った。

 俺に対しては振り下ろされる木刀だけでなくその言葉にすら遠慮会釈がない箒が珍しく言い淀んでいる。珍しく。とはいえ自称「百術千慮」の体現者たる俺には、その理由が何となくではあるが読めていた。

 それを理解した上で出来ること。それはさほどない。百の術など持っての他である。それに時間もさほどないだろう。茶化している時間もないな。

 

 

 

「実は―――」

「大丈夫だ」

「え?」

「何があったかは知らんけど、俺を誰だと思ってるんだ? 分かるに決まってるだろ? だから『お前なら大丈夫』だ」

「京夜……」

 

 

 

 本来であればそちら側の状況を聞くべきではあるのだが、敢えてそこには触れない。触れさせない。

 のちに布石としたいからだ。『曖昧さ』を演出する為にも、今は「知り得ていない」としておきたい。

 

 

 

「夕方にはそっちに戻れそうだ。ああ~マジ疲れるわ~。そんな頑張ってる俺の為に猫耳メイド服で出迎えて労ってくれ」

「フフッ、馬鹿かお前は。それよりしっかり働いてこい。……じゃあ私はやることがあるから」

「おう。また後でな」

「ああ。……ありがとう」

 

 

 

 見えずとも電波の向こうで微笑んだことを確認出来た俺は終話ボタンを押す。そしてそのままの流れで端末を操作してディスプレイに入手した情報を表示させて再び目を通した。

 『銀の福音』のデータだ。先程ハワイ沖のアメリカ・イスラエル共同開発基地局へハッキングを仕掛けて入手したものだ。

 本来ならば箒に託されたISのデータも欲しい所なのだが、今現在それを取得するのはあまりにリスクが高い。バレてしまっては元も子もないのだから。

 故に福音のデータを元に、俺は箒のISの特性を推測する。

 超音速飛行する広域殲滅型の兵装を持った軍用IS『銀の福音』。このスペックとマッチアップする機体。それはつまり常時高速起動を可能とし、広域殲滅にも対応できる上、近接戦闘を得意とする箒に合わせて作られたIS。

 恐らくは「パッケージ換装を必要としない万能機」……とでも言いたいのだろうな。全く。何が「万能機」か。

 まぁとりあえずは、お手並みを拝見かね。

 俺は端末をポケットへとしまい、流れる汗を軽く拭って再び社畜のように労働へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は11時半。

 容赦なく陽光が降りそそぐ砂浜に、私達は立っていた。

 

 

 

「来い、白式」

 

 

 

 僅かに距離と置いて並んで立っていた一夏の全身がぱぁっと光に包まれ、ISが構成される。

 視線の端でその姿を映していた私は、目を閉じて短く息を吐く。

 大丈夫。京夜はそう言ってくれた。京夜は本当に大丈夫な時だけ「大丈夫」と言い、そしてそうでない時には言わないんだ。アイツの傍にずっといた私がそのことを誰よりも知っている。だから―――大丈夫。

 

 

 

「―――紅椿」

 

 

 

 精神統一を終えた私の言葉に反応し、一夏と同様にISが展開される。同時にPICによる浮遊感と、パワーアシストによる力の充実感により、全身の感覚が変化する。

 

 

 

「じゃあ、箒! よろしく頼むな!」

「……ああ。気を引き締めていくぞ」

 

 

 

 セシリア達とは違い、私にはISによる実戦の経験がない。一夏もあの所属不明機での一件を除けばそうだろう。十二分に注意する必要がある。

 

 

 

「大丈夫! 箒はまだ専用機に慣れていないから不安だろうけど、いざとなったら俺がフォローするからさ!」

「……」

 

 

 

 同じ「大丈夫」という言葉なのに、どうしてこうも受ける印象が違うのだろう。一夏の言葉を聞いても、決して安心感が生まれない。

 それより何より、一夏が少し浮かれ気味なのが気にかかる。地に足が着いていないかのような、そんな不安定さを感じざるを得ない。

 するとISのオープン・チャンネルから織斑先生の声が聞こえる。

 

 

 

「織斑、篠ノ之、聞こえるか? 今回の作戦の要は一撃必殺(ワンアプローチ・ワンダウン)だ。短時間での決着を心掛けろ」

「了解!!」

「……了解しました」

 

 

 

 一夏の自信に満ちた声に、本来ならば頼もしさを感じる所なのかもしれないが、私にはどうにもそう感じ取れなかった。そしてそれは私だけではなかったようだ。

 

 

 

「……篠ノ之」

「はい」

 

 

 

 先程とは違い、恐らくは一夏に聞こえないよう配慮されたプライベート・チャネルからの織斑先生の声に、私も回線を切り替えて返事をする。

 

 

 

「どうも織斑は浮かれている。なにかをし損じるやもしれん。専用機を渡されたばかりのお前にこんなことを言うのもなんだが―――」

「はい。可能な限りサポートします」

「……。……すまない。……一夏を、宜しく頼む」

 

 

 

 私は一夏に背を向けて腰をおろし、一夏を乗せる。

 それを確認した織斑先生は、チャネルを再びオープンへと戻し、号令を掛けた。

 

 

 

「では、はじめ!」

 

 

 

 ――作戦、開始

 

 

 

 私は一気に上空300メートルまで飛翔、そのままさらに速度を上げて目標である500メートルへと高度を上げた。

 

 

 

「暫時衛星リンク確率……情報照合完了。目標の現在位置確認。……一夏、行くぞ」

「ああ! やってやるぜ!」

 

 

 

 私は目標へと向けて加速する。脚部及び背部装甲が開き、そこからエネルギーが噴出した。

 そしてものの数秒で、ハイパーセンサーが目標をとらえる。

 

 

 

「!! 見えたぞ! 箒!」

「ああ」

 

 

 

 映るはその名にふさわしく、全身を銀色に輝かせるIS。『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』。

 頭部から生えた一対の巨大な翼は、大型スラスターと広域射撃武器を融合させた新型システムであり、多方向同時射撃を可能とするらしい。もし仮に攻撃された場合、恐らく今の私達では完全回避など不可能だろう。

 そう考えた時。ふとある懸念が、脳裏を過ぎる。

 果たしてアレは、ただ暴走飛行をしているだけなのだろうかと。

 ともあれ、それは確認のしようがない。私は片隅にそれを置きながらさらに加速する。

 

 

 

「目標に接触するのは10秒後だ。一夏、集中しろ!」

「ああ!」

 

 

 

 徐々に距離が縮まる。

 そして10秒後、一夏は零落白夜を発動し、さらには瞬時加速を行って私の背から飛び立ち間合いを一気に詰める。

 

 

 

「うおおおおおっ!」

 

 

 

 振り下ろされる光の刃。

 だが次の瞬間、私の懸念が現実となる。

 

 

 

「「なっ!?」」

 

 

 

 福音は、その速度を落とすことなくこちらへと反転し、後退の姿となって身構えたのだ。

 誰がどう見ても、それは迎撃体制であった。

 

 

 

「敵機確認。【銀の鐘(シルバー・ベル)】稼働開始」

 

 

 

 オープン・チャネルからの抑揚のない機械音声。そして数秒待たずにぐりん、と体を一回転させて一夏の攻撃を数ミリの精度で回避した。

 超音速飛行状態での回避運動。慣性制御機能(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)を標準搭載しているISとはいえ、その操作精度に驚きを隠せない。瞬間的にあの所属不明機を思い出させる。

 そしてあの精密な急加速。恐らくあの翼は超高性能高出力の多方向推進装置(マルチスラスター)なのだろう。軍用ISというのは伊達ではないということか。

 

 

 

「くっ! この……!」

「! 一夏!! 無理するな!!」

 

 

 

 私の言葉などまるで聞く耳持たない一夏は、福音へと何度なく攻撃を繰り出す。

 だが福音は、それをひらりひらりと紙一重で躱す。そしてそれに翻弄されたかのように一夏の太刀は大振りになっていく。悪循環だ。

 それにこれ以上時間が掛かれば、こちらが圧倒的に不利だ。『零落白夜』には制限時間があるのだから。

 

 

 

「!!」

 

 

 

 そして案の定、隙を突かれる。

 その銀の翼を広げるかのように開かれた。まずい!!!

 開かれたのは砲口。より多く砲門をこちらへと向ける為に前へとせり出された翼から、幾重もの光の弾丸が撃ち出され、そして私達へと降りそそぐ。

 

 

 

「ぐぅっ!?」

「っ!!」

 

 

 

 翼から抜け落ちた羽のような形をした高密度圧縮のエネルギー弾は、ISの装甲に突き刺さったかと思うと、次の瞬間には一斉に爆ぜた。

 まずい。命中精度はさほど高くはないが、近接戦闘を得意とする私や一夏だけではあの連射速度の高い広域殲滅型の兵装は相性が悪すぎる。

 これじゃ駄目だ! ここは―――

 

 

 

「一夏! 撤退するぞ! ここは一度―――」

「何言ってんだ、箒!! 俺達でアイツを討つんだ!!」

 

 

 

 そう言い放ち、一夏は再び福音へと接近する。私は一夏を止めるべく後を追った。

 そしてそこからしばらくの間、一夏は複雑な回避運動を行いながらも連射の手を休めない福音へと攻撃を仕掛けていた。

 けれどその攻撃はかすりもしない。福音はとにかく回避に特化した動きで、その上同時に反撃までしてくる。正直あまりにも高いその実用レベルに、手も足も出ない状況だった。

 私の方はというと、【雨月】と【空裂】の二刀流で一夏のフォローへと回っていた。その間も続けている再三の説得に一夏は応じない。

 そしてこのままでは、と感じた次の瞬間だった。

 

 

 

「La……♪」

 

 

 

 甲高いマシンボイスが耳に届いたかと思えばその刹那、ウイングスラスターはその砲門全てを開いた。その数、36砲門。全方位向けての最大火力の一斉射撃である。私は弾幕を張るべく、【雨月】を構える。

 だが私の目に、あるものが映り込んだ。

 船だ。福音の直下後方の海面を航行していたのだ。

 なぜこんな所に!? 海上は封鎖されているはずなのに!

 そこに気を取られたしまったその一瞬。迂闊な一瞬だった。

 放たれる爆発光弾。まるで打ち上げ花火のように、全方向へと放射状に射出されていく。

 この位置からでは、あの船が守りきれない。私は考えるより早く、直下海面へと全速力で向かって船に対して弾幕を張った。

 かろうじて間に合い、船は守ることが出来た。恐らくは密漁船なのだろう。だが私は後悔などしていない。たとえ犯罪者であろうとも一つの命のなのだから。

 だが次の瞬間、前言撤回したくなるような光景が私の眼へ焼き付けられることとなる。

 私の目に映り込んだのは……被弾し、海上へと落下していく一夏の姿だった。

 

 

 

 

 

 




『インフィニット・ストラトス a Inside Story』は自身のブログでも掲載中です。
 設定画や挿絵、サブストーリーなんかも載せていくつもりですので、良かったらそちらもご覧戴けると嬉しいです。

※ブログは少しだけ先まで掲載されています。


【ブログ名】妄想メモリー
【URL】http://mousoumemory.blog.fc2.com/
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