『□30』
神々、勇者、人間、この三者の意見から町……いや、国の名称は『バーンガイア共和国』に決まった。
奇しくも後に決まるの大陸の名前と同じなのは……いや、そこはいいだろう。
今日は喜ばしい日だ。魔王が倒されてから初めての建国……しかも、創始者は四人の勇者たち。共和国であるため、話し合いで国の方針を決めることになるが……魔物と人間が共存して生きていく世界なのだ、そういうことも必要だろう。
もしかしたら、このバーンガイア共和国から新しい国が生まれることもあるかもしれない。
今はまだザッカートたちがいるおかげで人間と魔物は共存してまとまれているが、それも存命中の間だけだろう。
寿命を迎え、ザッカートたちが死んでしまえば……国のトップは入れ替わり、国の方針は変わる。しかし、そこまで先のことを考えていられるほど今は余裕があるわけではない。
ラムダの復興。とりあえずは、それを目指すべきだ。
『□40』
ソルダに恋人ができた。
それ自体は喜ばしいことであり、ようやくかと言ったところなのだが……その相手が意外も意外だった。
勇者ソルダは、どうしてかは知らないがマッチョが苦手である。以前に『ゾルコドリオさんに人間の身体の仕組みを教えたら、マッチョになって帰ってきた』と涙目で言っていた。
そう、ソルダの相手はゾルコドリオ───マッチョだったのである。これにはザッカートたちも驚いていた。
ソルダ曰く『マッチョが苦手なのであって、マッチョに生理的嫌悪があるわけではない』とのこと。
ゾルコドリオは魔王軍との戦争でも最前線で戦い続けた、勇者に次ぐ実力を持つ者の一人。その耐久力は勇者を除けば一番であろう。
そしてヴィダ信者でもあったため、ザッカートたちと深く交流していた数少ない人物でもある。当然ながら、ザッカートと同じ生産系勇者であるソルダもゾルコドリオと交流を深めることが出来た。
それにゾルコドリオは、筋肉を自在に操る【筋術】という武術……武術?スキルを使って筋肉を縮小させることもできたので、元のマッチョな姿から細身な姿に変わることができた。
ソルダがゾルコドリオと恋人になることが出来た主な理由はそれだろう。そうでなければ、性格以前に異性として見ることもなかったはずだ。
ソルダとゾルコドリオが結ばれたことに、ザッカートはもちろん、アーク、ヒルウィロウ、そしてヴィダたち神も祝福していた。
ソルダは恥ずかしそうにしていたが、ゾルコドリオはとても嬉しそうであった。
その時に、ザッカートが小さく『俺も恋人が欲しいな』と呟いたことを私は聞き逃してはいない。もちろん、ザッカートと共にいるグファドガーンもそうだろう。
……後日、ザッカートにアタックしてみようか。今ならなし崩しに行けそうな気がする。
ダメでした。無念。
『お酒は飲んでも呑まれるな』と心に刻んでいたらしいザッカートは、お酒をあまり飲まない人だった。アークの案の一つ、『酒酔い』は失敗である。
ソルダの案の一つ、『直球告白』……は、まだ心の準備が出来ないので、後回しに。
急ぐ必要はないが……いっそザッカートへの想いを、全てぶつけてしまうべきか。
『□42』
グファドガーンが依り代に宿った。どうやらようやく納得のいく造形になったらしい。
『お前もかっ』と頭を抱えるザッカートであったが、しかし悪い気はしないらしい。それは、私とグファドガーンの肉体が見目麗しい少女の姿をしているからだろう。
……ザッカートが悩んでいるのは、その肉体年齢のようであるが。しかし、姿を変えることは……出来なくもないだろうが、難しい。ザッカートも、わざわざそれを求める気がないのは幸いである。
しかし、そろそろザッカートも二十代後半……『アース』の年齢に近付いてきている。それに問題はないが、遅れてしまってザッカートが気後れしてしまうのは困る。
なので、この機会だからザッカートに思いの丈の全てをぶつけてしまおうと思う。多分、こんな時でもなければ出来ないと思うから。
今までは恥ずかしかったりタイミングがなかったり心の準備が出来ていなかったりあーだのーだと理由をつけて避けていたが……考えてみたら人間みたいだな私。
……とにかく、いずれやるつもりではあったのだ。思いの全てをぶつけてしまうのが、一番効果的だとアークとソルダも言っていた。
今日、私は想いを伝える。
ザッカート、私はあなたを─────
『Б▼%@&#』
成功した。
しました。
…………やったっ
『□45』
昨晩は嬉しすぎて気絶してしまった模様。なんという無様……恥ずかしすぎて穴があったら入りたいレベル。
しかし、嬉しいことには変わりない。多分受け入れてくれると思っていたし、アークやソルダの力も借りた。成功するはずだとは、思っていた。
実際に成功してみて……嬉しすぎてキャパオーバーしてしまったようなのだ。幸いだったのは、ザッカートと離れた時に気絶したことか。こんな醜態、見せなくて良かった。
……しかし、成功したのは良いのだが……どうしよう、後のことをまったく考えてなかった。
ザッカートと何がしたい、というわけでもない……ただ側にいたい、共に生きていきたい、というだけで。
敢えていうなら、子作り?でもそれはちょっと気が早いように思うし……そもそも魔物と人で子は成せるのだろうか。
うーむ、悩ましい。
『□49』
かれこれ悩んでいたのだが、結局悩んでも仕方ないと開き直ることにした。
子を成せるのかどうかについては、後々に考えればいいし、ザッカートとの関係も前と大きく変わるわけでもない。なにせ常にザッカートの近くにいたのだから、距離感は変わりようがない。
だから、以前と何も変わらない。以前と同じ……では駄目だけれど、より近い距離感で接すればいい。それだけで私は満足だ。
……多分、恐らく、きっと……その、はずである。
……自分のことながら、自信がないな。
『□53』
魔物と人間のカップルが誕生しつつある。どうやらザッカートと私が結ばれたことがきっかけとなったようだ。ヴィダは無邪気に喜んでいたが、私としては素直に喜べない事情があった。
ザッカートはベルウッドとの関係を断ち、邪神悪神と魔物が共存できる場所を造り出した。
だが、それをベルウッドは今でも認めてはいないだろう。原典のベルウッドのことを考えれば、奴は自身の罪を認めない限り……それが人間の血を引いている子供であろうとも、魔物の血が入っていれば容赦なく殺すだろう。
いや、もしかしたら魔物との子が生まれたことを口実にバーンガイアに攻めてくる可能性もある。そんなこと、あってほしくはないが……それを否定できないほどにベルウッドは幼稚で愚かだ。
何をしてくるか、予想できない。
もしもの時は、ぺリアやボティン、それにザンタークとシザリオンが止めてくれるだろうが……それを押しきって攻めてくる可能性は、ある。
あってほしくはない。しかし、備えなければいけないだろう。ないに越したことは、ないだろうが。
『□57』
恥ずかしさと嬉しさとで、色々な感情がない交ぜになっているのが自覚できる。
最近になって、妊娠していることが発覚した。もちろん、妊娠しているのは私であり、相手はザッカートだ。
いや、最近になって珍しく不調だなとは思ってはいたのだ。身体はダルいし、気を抜けばぼーっとしていたりもしたし……けれど、その原因が何なのかわかっていなかった。
でも、まさか妊娠していたとは気付かなかったな……少し前からザッカートと……その……交わってはいたし、いつかは出来るだろうとは思っていたが……まさかこんなにも早く授かれるとは思っていなかった。
アークは『熱々ですね?』とか言われたし、ソルダは『どんな子が産まれるのかな』と興味津々だった。ソルダはちょっと気が早い……わけでも、ないのだろうか?
ただ、妊娠が発覚したときはみんな嬉しそうにしていたし、そして皆どのような子供が産まれるのか気にしていた。
魔物と人間のハーフ。生まれてくる子供は、一体どのような子なのか。初の例であるため、どのようにしていいのかわからない。
不安は、ある。けれど、それ以上に喜びがあるのだ。
ザッカートとの間に授かった子。今はまだ私の中で育っているが、いずれ私の腹の中から出て来て産声を上げることだろう。
それまでは、無茶はできそうにない。
お腹の中の子は妊娠してから約二週間ほどのようで、まだ外見に変化はない。お腹が少し膨らんだかな?という程度だ。
生まれるまでそれなりに時間が掛かることだろうし、気が早いかもしれないが……今のうちに名前を考えておくのも、悪くないかもしれない。
どのような子が生まれてくるのか……楽しみにしていよう。
『□57』
あぁ─────まったく。
やってくれたな、ベルウッドっ!
ここから長い長ーい世界規模の内乱が始まります。