二度目の悪神は渇望す   作:オルフェイス

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ちょっと遅れました


ザッカート《6》

『□100』

 

 

色々とあった、と思う。

 

この数十年……ラドゴーンであった時とは違い、早く時間が過ぎ去っていたと思う。

もちろんそれは体感の話であって、実際に時間が早くなったわけではないのだけど。

 

しかし、それでも早く過ぎ去っていくように感じられたのは、この日々が楽しかったからなのか……それはわからない。

 

だって悲しいことも、怒りを覚えるようなことだってあったから。それとは逆に喜ばしいこと、嬉しいこともあった。

 

ゾルコドリオとソルダの間に吸血鬼と人間のハーフ、ダンピールという種が生まれたり─────

ヒルウィロウが忍者と侍を流行らせるために専用のマジックアイテムを開発し、そのせいでバーンガイアに忍者や侍が溢れ返ったり────

第二回、第三回と様々なジャンルで大会を開催して皆と競ったり────

 

……本当に色々とあったし、心配事も増えた。

 

あの子達、カミラとグラは未だに伴侶を見つけておらず、独り立ちはしたのだけれど心配だ。伴侶がいるのといないのとでは、これからの人生に大きな差が出来てくるから。

 

私がザッカートと出会い、大きく変わったように。カミラとグラにも、家族以外の人を愛するということを知ってほしい。それはきっと、彼女達に良い変化をもたらすから。

 

ヒルウィロウとアークは伴侶を作らず、数年前に死んだ後にそれぞれの大神の従属神になった。ヒルウィロウはボティンの従属神に、アークは未だに眠るリクレントの代わりの神に。

 

ソルダはまだまだ元気そうではあるが、もうお婆さんだからどれだけ生きれるものだろうか。

ソルダにはカミラやグラなど、新種族の眷属となって生き長らえる選択肢もあったが、ヒルウィロウとアーク、そしてザッカートと同じようにそれを選ばなかった。

 

 

『この世界には人として来たし、ゾッドのように吸血鬼になる気はないよ。人として生きて、人として終わりたい』

 

『もう俺たちが出来てることはやり尽くしたし、次の世代も育ってる。なら俺は次に託して、今度は神として見守ろうと思うんだ』

 

 

それが彼らの意見だった。ザッカートたち四人の勇者が行った数々の偉業は、神になるに相応しいもの。ヴィダはザッカートを、ボティンはヒルウィロウを、ぺリアはソルダを、リクレント……は眠っているので大神代わりとなるアーク。

 

それぞれの従属神、英雄神として、バーンガイアを守護する神々となるのだろう。魂は消えず確かに残り続けるが、代わりに肉体が死ぬ。いや、肉体が死ななければ死後に神にはなれないか。

 

バーンガイアを繁栄させた四人の勇者が、全員新種族になることなく神になる。カミラとグラは、最後までザッカートに新種族になってほしいと説得していた。

 

神になったところで何が変わるわけでもないことは、あの子達もわかっているはずだ。せいぜい会いづらくなるくらいだ。

 

しかし、大切な人が死ぬ場面は見ていて気分が良くなることはない。むしろ、悲しいだけだ。

 

ゾッドも『悲しくはあります。ソルダの死を見届けなくてはならないことは……ですが、それで最後の別れというわけではありませんからな』と言っていた。

 

私も、同意見だ。

 

ザッカートに死んでほしくない。しかし、最後の別れではない。また会える。会うことができる。だから、一時の感情に流されてはいけない。

 

これは、ただの我が儘だ。

 

だから、ザッカートが死んだことを悲しむ必要は……ない、のだ。

 

カミラとグラは、ザッカートが死ぬその瞬間まで、彼の側にいた。私も、その場にいた。肉体は死んだが、魂が消え去ったわけではない……それはわかっているのだ。

 

しかし、それでも悲しい……大切な誰かが、死んでしまうのは。

 

 

カミラとグラと、皆で抱き締めあって泣き続けた。

 

 

また会えることを願って。

 

 

 

 

『□2』

 

 

 

ランクアップのようだ。久しぶりである。

 

ザッカートが死んで、その遺体は『アース』に習って火葬した。

 

しかしザッカートは……四人の勇者たちは神となって、このバーンガイアを見守っている。あとついでにファーマウンも。

そのせいか、バーンガイア全体は悲しみに包まれることはあっても悲観するようなことはなかった、これまで通り、とはいかないだろうが……すぐに崩れることはないだろう。

 

恐らくこれから、勇者のおかげで団結していたバーンガイアは少しずつ分散していき、いずれは多くの国々となるだろう。

 

しかし、それは今ではない。今のバーンガイアは団結している。過去に起きたことを未だに実感している。

いずれバーンガイアが崩壊するというのなら、いっそのこと今のうちに土台を作ってしまえばいいと思う。

 

国を作る土台。いずれ来る分散……そしてベルウッドとの戦い。

それに備えて、少しずつ準備を進めておくとしようか。

 

因みに、グファドガーンは依り代を自身のダンジョンに保管すると神となったザッカートに付き従っているらしい。相変わらずのようである。

 

それと、いつの間にか私のステータスに『ザッカートの加護』が付いていた。

 

なんだか、ザッカートがいつも見てくれているようで嬉しい。

 

 

 

『□10』

 

 

 

ザッカートが亡くなって十数年。ついにバーンガイアは分裂を始めた。

 

ノーブルオーク、人魚、巨人種、吸血鬼……は数が少ないのでそういったことはないが。

 

ともかく、新種族や高い知性を持った魔物の多くがバーンガイアから別の土地に移り新たに国を興し始めた。

といっても、内乱が起きたとかそういうわけではない。

 

単に、永住するには色々と問題があることが判明してしまっただけだ。

今まではザッカートたち勇者がいたから、問題があってもすぐに解決した。

 

しかし、今は勇者はいない。だから問題があっても解決に時間が掛かる。

巨人種やアラクネ、エンプーサ等の図体の大きな種の住まいは相応に大きくなくてはならないし、人魚は水があるところでないとダメでスキュラは泥のあるところの方が住みやすい。

 

そういった問題が今さらながら判明したことで、種族ごとに別れて国を作った方がいいと判断されたのだ。

 

人魚やスキュラは水が多くある土地へ。魔人族や鬼人族はランクの高い魔物が住む土地へ。巨人種はデコボコのない広く住める土地へ。ノーブルオークは、数々の国に救援などに向かえるように中心の土地に。

 

それぞれの種族が、それぞれの守護神と共にバーンガイアを離れ国を興した。

 

しかし、それは共存できないからではない。この方がいいと、皆で話し合って決めたことだ。ザッカートが残した言葉にも『ちゃんと話し合おう』というものがあるから。だから、誰もバーンガイアが嫌いだったわけではない。

 

いずれ来る戦いに備えているのだ。

 

やつは……ベルウッドは、アルダは。いずれここに攻めてくるだろうから。

 

あの時の怒りを、私は、私たち忘れていない。

 

もし攻めてこようものなら……今度こそ撃退してやるのだ。もう何も、奪わせはしない。

 

 

まぁそれはそれとして。私はカミラたち吸血鬼とグラたちグールで構成された三代目バーンガイアにいることにした。なお守護神はザッカートである。

 

もう大人ではあるけれど……やはり腹を痛めて産んだ子供だから、気にしてしまう。

 

そうしたら『もう子供じゃないよっ』とか『心配しすぎ』などと言われてしまった。

 

むぅ……否定できない。流石に気にしすぎだろうか。

 

 

 




●魔物解説:夜叉鬼母


ラムダで初めて誕生した……というか初めてだらけのランク16の魔物。初めてランク16に到達した魔物で、初めて依り代として作られた魔物で、初めてランクとジョブを持つ新種族を産んだ魔物で、初めて人間の妻となった魔物である。

初めてだらけであるためデータは少なく、名前からして鬼母ということしかわかってない。
しかし『アース』に存在する神に夜叉という存在がいるらしく、その神は元は鬼の神であったが、後に護法善神の神格へと変化しているらしい。

ライラック自身も、似たような経歴であるため、それが彼女を夜叉鬼母にしたのかもしれない。

どうやってこの魔物にランクアップするのかは不明だが、恐らく子を産むこと、そして高い戦闘能力を持つことが必要であると考えられる。
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