二度目の悪神は渇望す   作:オルフェイス

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もうすぐこの物語も終わりが見えてきたところ。

ちょっとダイジェスト、いつものやつです。


ライラック《2》

『◯10074』

 

 

 

時が過ぎるのが早く感じる。これも、神となったことで起こった変化なのだろうか。

 

そういったことはわからないが、私が神となってから今日で千年を越えた。

 

属性を管理し、信者を見守り、時に加護を、時に神託を与え、人々を導く。

 

やってることはそれだけだが、『それだけ』の中には濃密なものがつまっている。

 

属性の管理は常に維持していなくてはならず、数多くいる信者を見守り続ける必要があり、必要となれば信者に神託を行い、気に入ったものには加護を与える。

 

そういったことを常に、かつ同時にやらなくてはならないため、普通の人間では処理できない。かくいう私も、生前の時であれば処理しきれない情報量だったろう。

 

しかし、神となったことで信者の信仰、畏怖などといった見えないものを力に変えることができる。その増えていく力のおかげで、これだけの処理を同時平行で行えていると言っても過言ではない。

 

ヴィダを含めた大神たちは、これを日常的にやっていたのだろう。魔王軍が攻めてくるまで、ずっと。

 

正直な感想を言うと、凄いと思う。

 

今でこそラムダが魔素に侵されたせいで通常通りに属性の管理ができなくなってしまっているが、それがなかったら大神たちは単独で世界の維持に力を注ぐことができたことだろう。

 

素直に尊敬する。私は初めて、ヴィダたち大神を尊敬したような気がする。

 

まぁどう思ってもザッカートより上にいくことはないのだけど。

 

 

 

『◯51559』

 

 

 

今日で何千年目か。流石に時間が過ぎ去りすぎてわからなくなってきた。

 

未だにバーンガイアは健在で、カミラの治める山脈内は平和を保っている。まぁ何千年と治めてきたからか『そろそろ後継者を作ろう』と思っているようだけど。

 

そして私のほうも、世界の維持に慣れてきた。今では加護を与える者を誰にしようかと悩めるくらいには時間の空きが出来てきた。

しかしその一方で未だにズルワーンやリクレントが目覚める様子はなく、他の大神の力は完全回復にまで近付いてきている。

 

この調子でいけば、あと数千年と掛からず大神たちも元の力を取り戻すことだろう。

 

ザッカートは……どうやら他の勇者たちの力も借りて、溜め込んできた神の力を使いダンジョンを作るつもりらしい。具体的に言うと、神や英霊となりうる者たちの試練用に。

 

……本当ならば、ザッカートはダンジョンなど作るつもりはなかったようだが、グファドガーンの『明確な目標は人々の心を奮い立たせる』という発言によって決断したらしい。

 

それと、平和になったはいいが近頃諸々のことが停滞してきていることも考え、ザッカートのダンジョンは山脈内全体に良い刺激になるだろうとも考えていたようである。

 

それに、ダンジョンの攻略に成功すれば最低でも英霊となることは確定するので、名を残したい者はこぞって挑戦することだろう。そしてそういった攻略者を選抜し、神にして山脈内の戦力を増強していく。

 

一石二鳥、というやつだ。

 

さて、これが上手い方向に進めばいいが……

 

 

 

『◯10007』

 

 

 

更に数千年が経過した。大した変化は……まぁ起こったか。

 

この数千年で御使いや英霊となった者、神となった者はかなりの数になる。だいたい十人ほどであろうか。

 

少ないように思えるが、決して少なくない。むしろ多いくらいだ。

これは数百年に一度は英雄が生まれているということで、寿命が長い新種族が多い山脈内ではかなりの数だ。

 

寿命の短い人間主体の社会であれば、入れ替わりが激しいため数千年もあれば数十人の英雄が生まれることだろう。実際、アルダ側の人間社会がそうなのは間違いない。

 

しかし、その質はどうであろうか。寿命が長い方がスキルレベルも高く出来るだろうし、敵を倒し続ければランクも、レベルも高くなっていることだろう。

 

寿命が長いということは、それだけ力を注ぎ込めることが出来るということなのだ。

 

断言できる。生まれてきた英雄の数で劣っていたとしても、その質ではアルダ側には負けていない。

 

それに、武器や道具の差もある。山脈内には勇者の残した技術もあってマジックアイテムの平均的な質が高い。流石に神の作り出したマジックアイテムに匹敵するものは少ないが、それでも存在はする。

 

そういったことも含めれば、現段階ではアルダ側よりもこちら側の方が優れていると言える。

 

表面上は。

 

しかし、積み重ねてきたものがたった一人の大英雄には敵わない、なんてことがラムダではあり得てしまう。例を上げれば、ベルウッドがそうだった。

 

やつ一人がいるだけで、こちらの勝率はぐっと下がる。例えザッカートが兵器を作り出したとしても、平然と乗り越えてくるだろう。

 

ベルウッドは魔王を直接倒した男だ。魔王に結界という絶対防御がなかったとしても、単独でグドゥラニスを倒せる者はベルウッドしかいない。

どれだけ時が過ぎようとも、この世で一番強いのはベルウッドであることは変えられないだろう。

 

ベルウッドと正面から戦ってはいけない。やつを倒すには、もっと別の方向から攻める必要がある。

 

……どうせなら何処かで封印されてしまえばいいのだが……流石に無理か。

 

 

 

『◯204589』

 

 

 

三万年ほど……だろうか?多分、それくらいは経過している……と思う。

 

時間感覚があまりはっきりとしない。ヴィダや他の神、それにザッカートも経過した時間をきちんと把握しているというのに……

 

ゴホン。

 

この三万年は、多くの人間が育ち生まれた。

 

ノーブルオーク、魔人族、鬼人族、グール、吸血鬼……かつては少なかった新種族や魔物たちも、今では数を増やし確かな文明を築き上げている。

 

ザッカートを含めた勇者たちの合同で作り上げたダンジョン『勇者の試練』は、多くの山脈内の英雄の壁となった。完全攻略を成し遂げた者は未だにいないほどだ。

 

階層の数は確か……百、いや百二十か。歴代最高到達階層は百階層までで、それ以上となるとナンイドガ高すぎて攻略できないのだとか。

ザッカートは『百までは攻略されるための階層。で、そこから先が絶対に攻略させないための階層にした。後悔はしていない』とのことで、つまり悪ふざけもあったらしい。

 

攻略難易度を上げるためにグファドガーンやダンジョンに詳しい神々の力も借りたそうだが……あまりに難易度を高くしすぎて『俺たち勇者がパーティを組んで揃っても攻略できないかも』とザッカートに言わしめたほど。

 

その完成度はヴィダを引かせ、リクレントを呆れさせ、ズルワーンを大爆笑させたほどである。

 

あぁ、ちなみにこの三万年の間にズルワーンとリクレントは封印から目覚め復活した。眠っている間も信者たちの祈りが届いてだいたいのことは把握しているらしく『我らが眠っている間、人の文明を築き上げ、守護してきたことに感謝する』とリクレントが。ズルワーンは『色々すまん。あ、空間属性の管理はこれからも任せるけどいい?』とかぬかして逃げようとしたズルワーンは捕まえて管理を預けた。属性を管理するのは構わないが逃げるのは許さん。

 

『あのラドゴーンが、今ではこんな母神になるとは……人生、何が起こるかわからんな。まぁ我は神だけど!』

 

ふざけてないで仕事をしなさい。そうじゃないと私もザッカートの近くにいれないのだから。

 

 

 

 

『◯354575』

 

 

 

どうやら決戦の時のようだ。

 

 

簡潔に言おう。

 

 

────アルダ側が、総力を上げて攻めてきた。

 

 

 

 




次回、決戦
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