二度目の悪神は渇望す   作:オルフェイス

21 / 21
決戦の時《3》

アルダ陣営と山脈内の新種族たちの戦争は長期化していた。本来ならばもっと短期間で終わらせるつもりであったベルウッドにとって、意外な事実だった。

 

それは、仕掛けられた側である新種族たちにとっても同じことだった。いや、正確には新種族たちをまとめあげているカミラにとっては、というべきか。

 

今現在巨人国はアルダ陣営の侵攻によってなくなり、その周辺に位置していたハイコボルト国、ハイゴブリン国もアルダ陣営の軍勢との戦いを強いられている。しかし、その両国とも疲弊はしているが落ちてはいない。

 

例え相手に導士のジョブを持つものがいようと、戦争は軍勢が強ければいいというものではない。戦略、戦術は戦争の基本なのだから。

 

しかし、個人の武力は時にそういった戦略や戦術を台無しにしてしまう。それを可能とする者は、吸血鬼の女王カミラや、英雄神の加護を受けた英雄ベルベットであろう。

 

誰よりも強く、誰よりも勇敢で、誰よりも諦めない。そういう英雄の素質とでも言うべきモノを備えている者が、世界を変えるのだ。

 

そういう点でみれば、カミラとベルベットでは導士ジョブを持つベルベットの方が世界を変える力を持っていると言える。それだけは、両者の中で明らかな優劣がある。

 

────だが。

 

その優劣は、あくまでカミラが導士ジョブに就いた経験がない場合の話であり。

今の今まで()()()()()()()()()()から、就いていなかったのだとするなら───話は変わってくる。

 

ベルウッドの選んだ英雄ベルベットの導士は、光に当たる者を、そして闇にいる者を光ある場所へと導く【光導士】

 

そして、この戦争を切っ掛けに導士ジョブへと就いたカミラの導士は────

 

 

 

 

▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 

「血導士、か」

 

 

なんとなしに、自身の就いたジョブの名前を呟く。

 

このジョブに就いてから、普段よりも血の操作が楽になった気がする。これなら細かい操作も可能だろうとカミラは考える。

 

そんなことを考えながらもカミラは味方の協力によって作られた高い塔から周りを見渡して敵軍の接近がないかを視認し、広範囲に血の眷属をばらまくことで敵軍の内部を、そして進行状況を探る。

 

それによってわかったのは、敵は一枚岩ではないということ。

 

 

「戦争だっていうのに、態々手柄を欲しがるなんて……わかってはいたけど、中と外じゃ歴史が違うか」

 

 

今はアルダやベルウッドという絶対的な上位者がいるからこそ纏まれてはいるが、しかしあちらの人間は欲が強く、欲のためなら仲間すら蹴落とす。

 

敵が撤退した時も、仲間を置いて見捨てるような輩が何人もいた。正直見ていられない。そのような醜態を晒すくらいなら、いっそ殺してやるのが慈悲というものだ。

 

 

「とはいえ、強いことには変わりない。簡単に倒せるような奴等じゃないし……それに」

 

 

それに、まだ本命が出ていない、とカミラは呟いた。

 

あちらに導士がいるのは間違いない。では、その導士は一体誰で、今は何処にいるのか。それがわからない。

 

相手が男なのか女なのか、若いのか年老いているのか、武器は何を使うのか……全てわからない。

 

 

「だからそれらしい奴を探ってるけど……分からないな」

 

 

血の眷属を使っての探りは、あまり芳しくない。敵勢力がどの程度なのかは把握できるが、誰が強いのか正確に分からない。近付きすぎると血の眷属の場所がバレてしまうので近付けないが……出来れば近付き、確かめておきたい。

 

それに、まだ隠れていて見つけられていない奴等もいることだろう。いくら探ってもいないということは、既に行動を開始している、と見るべきか。

 

 

「これ以上探っても、得られるものはなさそうか……仕方ない」

 

 

パン、と手を叩く。血の眷属を元の血に戻したのだ。これ以上の探りは無意味であるなら、次にやることは決まっている。

 

 

「さて、次はどこを攻めてくるかな」

 

 

相当回り道しなければ、ぶつかるのはハイコボルト国とハイゴブリン国のどちらか。今は魔人族や鬼人族、ノーブルオークや吸血鬼などの高い戦闘力を誇る者たちが集まっている。それに災害を起こせるような環境も近くにはない。巨人国の二の舞にはならないだろう。

 

 

「そろそろ降りようか……っな?」

 

 

下には一時的な仮拠点が作られ、そこで戦えるものが準備を行っている。見張りもある程度終わったことだしと降りようと思ったその時、一応のため山脈内の国々に配置していた血の眷属から異常事態が伝えられた。

 

その異常事態は……

 

 

「っ、やられた!最初からそのつもりで……!」

 

 

看過できないことが起こった。それをすぐに理解したカミラは空間魔術を使い、異常事態の原因へと向かった。

 

どうか、手遅れにならないでくれと、そう願いながら。

 

 

 

▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

アルダとベルウッド、その二柱の神が企てた計画は、大雑把に言えば山脈内の新種族を滅ぼすことだ。

 

より正確に言えば、新種族の創造のためにヴィダが模倣し造り上げた輪廻転生システムの破壊。それがアルダとベルウッドの目的であった。

 

システムを破壊するには魂を全て無くす、つまり輪廻転生が出来なくする必要がある。そうしなければ、システムの破壊は困難を極める。

 

しかし、そもそもそれを成すことは並大抵のことではない。新しく生まれ繁栄してきた新種族を─────一万以上はいる全てを滅ぼすなど、何万年と掛かるか分からない。

 

だから、これまで育ててきた英雄や英霊たち全てを投入する。神を降ろすことが出来る猛者も、全員。

 

ベルウッドは勿論のこと、ナインロード、アルダなどといった大神や準大神まで動員しての全戦力投下。このような博打は、何度も出来ることではない。故に、この一度で新種族を全て滅ぼす。

 

それが出来る者たちを育ててきたが、しかし撃ち漏らしは出てくることだろう。だから英雄たちが強力な新種族を殺し、逃げる新種族は兵士に追わせる。

 

結界は破られた以上、神の空間魔術は通用する。つまり、山脈内に直接転移させることが出来る。例えあちらにズルワーンや空間属性の神々がいようとも、数の暴力で無理矢理にでも通らせる。

 

そんな計画の元、アルダとベルウッドの企みは実行に移され、山脈内の神々が止める間もなくアルダ陣営の強者たちが新種族たちへと牙を向いた。

 

まず被害にあったのは、ちょうど多くの戦える者たちが前線へと赴いた後である鬼人国だった。

 

訳もわからずに英雄たちに殺され、逃げ惑う鬼人族。それをとめようとした者もいたが、しかし圧倒的な実力差に抗うことすら出来ず殺された。

 

カミラが空間魔術で鬼人国へと飛ぶまでに、鬼人国の総人口の内、約2割が殺された。

 

その、あまりに外道な行いに────彼女の堪忍袋の緒が切れた。

 

 

「───【呪血の人形】」

 

 

血を媒体に空間を飛ぶ上位スキル血空魔術によって鬼人国へと飛び、状況を速やかに理解したカミラは、まず撒き散らされた血を用いて多くの人形を作り出した。

 

それは、怨念が込められた血の人形。執念と怒りと憎悪で構成された人形は、敵対者に対して呪いを振りかざす。

 

 

「なんだこい───」

 

「っ!離れ───!」

 

 

呪血の人形の一体が近くにいた敵に近付き───破裂する。

 

破裂した血は敵の肉体を破壊、付着し敵の身体を蝕み崩壊させていく。

一度目で敵の肉体を壊し、二度目で敵の細胞を腐らせ崩壊させる。それが呪血の人形の効果であった。

 

この魔術は、はるか昔に作るだけ作ってしまった失敗作であり、あまりに殺傷能力が高すぎることから使用を躊躇っていたが────今のカミラに、その躊躇いはない。

 

ただ敵を殺し、今できる限りの人を救う。それだけだった。

 

故にそこに容赦はなく、痛みで転げ回る敵の頭を踏み潰す。

 

 

「次はどいつだ?」

 

「っ……」

 

 

異変を察知してこちらに近付いてきた幾人もの敵は、怖じけて動けない。あまりの威圧感に、身体が言うことを聞かない。

 

ここにいるのは、全員ランク13以上の実力を持つ者であると言うのに、動けない。

それだけカミラと敵には、圧倒的な埋められない差があった。

 

だから、カミラの次の動きに対応できない。

 

 

「【血刃】」

 

 

血の刃。それに気付けたのは、カミラが刃を振り抜いてからだった。

 

幾人もの敵の肉体が、ずるりとズレていく。首が、頭が、身体が───即死の斬撃を与えられ、崩れていく。

 

 

(速、過……ぎる……)

 

 

その光景をスローモーションで眺めていた一人の男は、そこでようやく自分が切られたことに気付き、そのまま死亡した。

 

あとに残るのは、刃を振った体制のカミラと、バラバラに切断された複数の死体のみだった。

 

 

「……さて、次」

 

 

敵をちゃんと殺したことを確認したカミラは、近くに生存者がいないことを確認してから敵のいる方向へ走り出す。

 

心を、怒りと憎悪で燃やしながら。

 

 

 

 




・名前:カミラ・ライラック・バーンガイア
・年齢:約三万歳
・ランク:19
・種族:オーヴァートゥルーヴァンパイアクイーン(超越種真祖吸血鬼女王)
・レベル:91
・ジョブ:血導士
・ジョブレベル:47
・ジョブ履歴:見習い戦士 見習い魔術師 魔術師 戦士 拳士 爪使い 精霊使い 魔闘戦士 大魔術師 大精霊使い 吸血女帝 血闘士 魔血操士 血器使い 武術士 超越者 真祖 血武術士 ヴァンパイアロード ヴラド 降霊士
・二つ名:【始まりの吸血鬼】【双子の女帝】【バーンガイア帝国初代女帝】【マザコン&ファザコン】【血帝】


・パッシブスキル
闇視
自己極強化:吸血:10Lv
能力値増大:バーンガイア:10Lv
神速再生:Lv5
超血:10Lv
超力:10Lv
状態異常無効
魔術耐性:10Lv
詠唱破棄:10Lv
魔力自動回復:10Lv
無手時攻撃力増大:極大
精霊極強化:10Lv
魔力回復速度超上昇:10Lv
魔力使用量超減少:10Lv
全属性耐性:10Lv
血器使用時能力値増大:極大
直感:5Lv
生命力増大:10Lv
魔力増大:1Lv
導き:血導:2Lv
血導誘引:2Lv
血操時操作力強化:小


・アクティブスキル
無属性魔術:10Lv
血命魔術:10Lv
血空魔術:10Lv
血時魔術:10Lv
魔術超精密制御:10Lv
魔血超精密制御:10Lv
精霊神魔術:10Lv
血武術:10Lv
極連携:5Lv
血化:10Lv
魔血王闘術:10Lv
同時多発動:10Lv
多重超速思考:10Lv
英雄神降臨:10Lv


・ユニークスキル
吸血鬼の真祖
血操
血器限界超越:10Lv
共有存在:グラ
亜神
ヴィダの加護
ボティンの加護
ぺリアの加護
ザンタークの加護
邪神悪神の加護
生産系勇者の加護
神降ろし:5Lv
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。