二度目の悪神は渇望す   作:オルフェイス

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ラムダ《2》

『●15004』

 

 

 

ザッカートの勧誘によりラムダ側として戦うことにした、のはいいのだが、やはり歓迎はされていない。

敵だった神が味方となったのだから、当然であろう。

 

俺の他にも多数の邪神悪神がいるが、そのどれもが魔王軍の中では下から数えた方が早いものばかりだ。

 

しかし、ないよりはマシだ。

 

なにせ戦闘に関してはラムダの神々よりも場数を踏んでいる。力で劣るからといって、それ以外でも劣るわけではないからな。

 

とりあえず、今までやってこなかった迷宮の作成を試してみようか。

ヴィーヴルたちは創るだけ創って、あとは人間たちに突撃させるくらいしかやってこなかったし、この迷宮を使ってヴィーヴルの強化をしておきたい。

 

なにぶん、出来ることが少ないからな。せいぜい戦うか、分体で敵を探るか、その分体で敵に寄生するかくらいしか出来ない。

 

その寄生も、相手が弱ってなければすぐに分体を潰されるだけだしな。

 

 

 

『●15449』

 

 

 

ヴィーヴルはかなり奇抜な特徴を有していたようだ。

 

その特徴を知ったのは、ヴィーヴルのランクとレベルの上昇を目的とした、自作迷宮の攻略をやらせていたときのことだった。

 

攻略する中で途中でラムダの人間、というよりも人種*1が混ざっての攻略となったのだが、瀕死となった一体のヴィーヴルが人種……エルフの武器に取りつき、寄生したのだ。

 

いや、あれは寄生というよりも融合に近いが……とにかく、そのエルフの使っていた武器と融合して、まったく別のモノになったのだ。

 

最初にそれを知った時は驚いた。なにせそんな力を俺は持っていないからな。もしかしたら死んで死骸となったら、ヴィーヴルと同じようなことになるのかもしれない。

 

ヴィーヴルが融合した武器は、瀕死のヴィーヴルがなったことから『骸装』とザッカートに名付けられ、『骸装』を装備したエルフに異常は見られないとのこと。

 

『骸装』自体に意思はなく、地球でいうところの化石のようなものだととザッカートは言っていた。

 

そこで改めてヴィーヴルを調べてみたところ、ヴィーヴルには他者に寄生し、その寄生対象を強化するスキルが複数あることが判明した。

 

瀕死、もしくは死亡した場合では寄生ではなく融合という形で何かに取り付くようである。なんか【魔王の欠片】*2がマイルドになったようなやつだな、と内心思った。

 

武器に取り付いた際は元となる物質にもよるが、似て非なる別の物質に変質するらしい。流石に、神々の造り出した最高の金属、オリハルコン*3が変質することはなかったようだが。

 

それと、風属性と空間属性に高い適正を持っていることも判明した。

風は、前にゴリラを食べて手に入れた雷の影響だろうが……空間は、恐らく俺自身から来ているのだろう。

 

ふむ……この際だ、練習しておこう。

 

上手くいけば、迷宮をもう一度作る時に役立つかもしれないしな。

 

 

 

『●16601』

 

 

 

いつの間に、というべきか……ザッカートたち勇者が『導士』のジョブに就いていた。

 

導士というのは、他者に影響をもたらすジョブだ。自身の思想を広める導き手であり、導かれた者を強くするスキルを獲得できる。

 

この思想というのが中々の曲者で、導士の広める思想に共感、共存できなければ導きの効果を得られないのだ。

 

例えば、召喚された勇者の一人であるベルウッドは人種や神だけしか導くことができないが、ザッカートの導きスキルは魔物と神も含まれている。

 

……そう、神である。神も含まれているのだ。思想に共感できるのなら、神であろうとも関係ないのだ。

ザッカートの導きスキルは、ラムダの神々だけでなく邪神悪神も含まれている。

 

……うん、正直に言おう。

 

どうやら俺はザッカートに導かれた……ようだ。

 

なんで?とは自分でも思うが、その……ザッカートの思想には共感できたし、悪くないかな、とは思っていたから………うん。

 

導きって、すごい。

 

とりあえずザッカートには加護*4を与えておくことにする。

ヴィダだってザッカートに加護を与えてるし……良いだろう、多分。

 

 

 

『●17112』

 

 

 

とりあえずザッカートのことは置いといて、他の勇者や成長したヴィーヴルたちのことを話そうか。

 

 

光と法の神アルダが選んだ勇者、ベルウッド*5

 

炎と破壊の戦神ザンタークが選んだ勇者、ファーマウン・ゴルド*6

 

風と芸術の神シザリオンが選んだ勇者、ナインロード*7

 

 

この三人は戦闘系勇者として常に前線で仲間と共に戦っている。

 

 

時と術の魔神リクレントに選ばれた勇者、アーク*8

 

水と知識の女神ぺリアに選ばれた勇者、ソルダ*9

 

大地と匠の母神ボティンに選ばれた勇者、ヒルウィロウ*10

 

そして、生命と愛の女神ヴィダに選ばれた勇者、ザッカート*11

 

この四人は生産系勇者として、前線で戦う戦闘系勇者たちをサポートして支えている。

 

 

以上の七名がラムダに召喚された勇者だ。もう一柱、空間と創造の神ズルワーンが残っているが、この神は他の世界からザッカートたちを呼び出すのに力を使っていたので、勇者を選んではいない。

 

で、敵側であった邪神悪神をラムダ側に寝返らせたのがザッカートである。流石ザッカート。スゴい。

 

 

……ゴホン。

 

 

次に、ヴィーヴルだが……今では創ったヴィーヴルの半数近くが武器や人種の肉体と融合し、戦力の増強となっている。

 

それとどうやらヴィーヴルの融合はザッカートの導きを受けた者にしか起こらないらしく、ベルウッドやナインロード等の他の導きを受けた者には融合しなかった。

 

あと、他の邪神悪神が連れてきた魔物たちにも融合は出来るようなので、一部ヴィーヴルを貰いたいと言ってきた神もいた。もちろん断る理由もないのであげた。

 

残りの半数のヴィーヴルは、風属性を得意とするランク11のライジングヴィーヴルや、空間属性を得意とするディメンションヴィーヴルが主となっている。

 

ただ、一体だけ飛び抜けて強くなったランク14のアンリミテッドヴィーヴルという、神の最低ランクを越えた*12個体もいるので、このままいけば俺を越えてくるかもしれない。それも悪くはないだろう。

 

今の状況は勇者という戦力と、邪神悪神を寝返らせた分を含めてラムダ側と魔王軍との拮抗はこちら側に傾いている。しかし、戦力は多ければ多いほど良い。

 

あぁ、そう言えばザッカートが自身のいた世界に存在した武器、銃を再現しようとしていたな……他の生産系勇者であるアーク、ソルダ、ヒルウィロウと一緒に。

 

丁度いいし、食べなかったゼーノたちの骨と肉の欠片を渡しておこう。大きいのは食べたのだが、小さいものは胃の中に放置してたからな。

 

……そしたらザッカートは『そういうのはヴィダたちに聞いてからにする』と言った。

あと『それをもっと早く言ってくれ』とも言われてしまった。

 

なんか、ごめん。

 

 

 

『●17744』

 

 

 

とりあえず銃の試作品ができたようなので、試してみるようだ。試す場所は俺の迷宮────『呑喰穴』と名付けられた場所で行った。

 

結果は、予想通り失敗。銃自体に問題はなかったが、圧倒的に火力が足りないことが判明した。

ザッカートのいた世界『アース』にあった火薬を自作して使ったようだが、火薬の量を増やしてもさほど変わらなかった。それは、弾薬をオリハルコンに変えても同じことだった。

 

色々と試した結果、銃は火力不足という点でダメで色々な工夫をしても、せいぜいがランク6までが限界。それ以上となると実用的ではないらしい。

 

とりあえず思ったのは、銃を扱うにしても必要になるのは銃を扱うためのスキルと、銃を強化する魔術であろう、と。多分それらが揃えばもっと高いランクの魔物にも通じると思う。

 

そういったことを話すと『だよな』とため息をつかれた。

 

……いっそのこと、空間を抉る弾丸とかでも作れればどのような相手にも効くのではないだろうか。できるかどうかは、別とするけど。

 

そこまで考えたところで、ヒルウィロウにヴィーヴルを持ってきてほしいと頼まれたので、胃の中に待機させていたランク9のエアロヴィーヴルを取り出したところドン引きされた。解せぬ。

 

どうやらヒルウィロウは、ヴィーヴルを試作銃に寄生させようとしたらしいのだが、構造が複雑すぎて寄生できないという事実が発覚してしまった。どうやらヴィーヴルの脳が理解できなかったようだ。

 

その後も色々とグファドガーン*13やザッカートたちと共に試作してみたが、結局満足のいくものは作れなかった。無念。

 

ただ魔術を使っての弾丸の強化や、スキルを獲得して武器の威力を上昇させる案は後の実験で試してみるらしい。

その時は俺も混ぜてもらおう。今回と同じように。

 

 

……そういえば、ザッカートが酒の席で愚痴を呟いていたな。なんでもベルウッドを羨んで『俺もエルフの美少女と仲良くしたい』らしい。

丁度グファドガーンもいたので、グファドガーンを誘って美少女エルフを作ってみようか。

 

……まぁ、どうやってもエルフの形をした魔物にしかならないだろうが、やれるだけやってみよう。

 

 

 

 

『●21009』

 

 

 

グドゥラニス率いる魔王軍との戦争は、ラムダ側に戦況が傾いている。

 

魔王の居座る大陸────後の魔王大陸は魔素やらなんやらで汚染されてしまい、もう人の生きていける環境ではない。

それでもベルウッド率いる義勇軍は生まれ故郷を取り戻そうと足掻いている。

 

なぜ突然こんな話をしたのかというと、ザッカートたちとベルウッドの本格的な対立が始まってしまったからだ。

 

ベルウッドは『アース』に存在していた兵器、道具を忌み嫌っている。ラムダを壊す害悪であると認識しているのだ。

 

それに対してザッカートは、『アース』の兵器を使ってでもグドゥラニスを倒すことを優先している。遅れれば遅れるほど取り返しのつかないことになると思っているのだろう。

 

グドゥラニスの張る強力な対物理、対魔術の二つの結界。それらを現状破ることができないからこその対立だった。

 

……いや、ラムダ側が優勢になっているからこそなのかもしれない。余裕が出来てしまっているからこそ、手段を選ぶことができてしまっている。

その余裕は、事態を悪化させることにしかならないというのに。

 

ザッカートはヴィダたち大神と協力して、兵器を使うときに発生する汚染をどうにか出来ると思っている。

ベルウッドは、浄化できるかもわからないのに『アース』の兵器をこちらで使うわけにはいかないと断固反対。

 

これでは埒が明かないと察したザッカートは他の生産系勇者と共に工房に籠り、兵器開発に着手した。兵器の汚染を大神たちが浄化できるのかも確かめようとした。

 

……あぁ、そろそろだろう。

 

この時期、このタイミング……間違いない。

 

さて、俺も覚悟を決めようか。

 

保険は、用意してあるしな。

*1
人間、エルフ、ドワーフの総称

*2
魔王の肉体をバラバラにして封印した欠片たちが、封印された中でそれぞれ独自の部位となったもの。非常に危険で近くにいる生命体を宿主として寄生する。精神力が低いと寄生された瞬間に精神を乗っ取られ、自我は崩壊し肉体は欠片に侵食される

*3
神鉄ともいう。魔王の肉体に対抗できる唯一の金属

*4
神が与えることのできるもの。システムが実装されたことにより、神の加護は与えた者の成長を促す効果が発揮される

*5
『アース』では自然活動家であり、熱弁家な大学生だった

*6
『アース』にいたときは冒険家志望の大学生だった

*7
『アース』では大学生兼ペットショップのアルバイト店員だった

*8
『アース』では文系大学生な普通の女子

*9
『アース』では理系の女子学生で、眼鏡女子。マッチョが苦手だった

*10
『アース』では舞台俳優の卵で、忍者や侍などを好んでいた

*11
『アース』では町工場経営者だった。呼び出された勇者の中で最年長だったが、ヴィダによって若返った

*12
神は最低でもランク13並みに強いため、神と戦うなら越えておかねばならないライン

*13
常に24時間ザッカートの近くにいるザッカート信者。神ではあるが、信者である




『ヴィーヴル』

『貪喰の悪神』ラドゴーンによって創造された竜の魔物。見た目は竜の形をした鱗の化け物で、目、鼻に該当する部位がなく、あるのは鱗と口と牙、ついでに舌のみ。そして生殖器官を持っていないため、自力で自己繁殖する。

素のランクは6で、他の魔王軍によって創られた魔物と比べて比較的ランクが高い。しかしその能力値*1は同ランクの魔物と比べたら低い部類に入る。

しかし【寄生融合】【寄生融合時攻撃力強化】などといった、寄生及び融合によって他者を強化するスキルを保有する。その対象は生物だけに収まらず、無機物でさえも対象となる。

寄生融合された生物は【寄生融合時能力値強化】【自己強化:骸装】【骸装術】などといったスキルを獲得する。人種が寄生融合された場合、ジョブに【骸装使い】【骸装剣士】といったジョブが出ることが確認されている。

また、ヴィーヴルの寄生融合は失った肉体を補填する役割もあり、瀕死の状態から寄生融合によって生還した者も確認されている。

現在確認されている最高ランクは、ランク14のアンリミテッドヴィーヴルである。

*1
生命力、魔力、力、敏捷、体力、知力で構成される

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