二度目の悪神は渇望す   作:オルフェイス

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今回で神話大戦編は終了です


ラムダ《5》

『□32』

 

 

レベルアップとランクアップを繰り返し、ランク14に到達した。

 

そして、ザッカートたちがグドゥラニスに効くかもしれない銃の開発に成功した。

ただラムダのシステム上、火力が足りないことから火薬ではなく魔術を使った銃となっている。また、その大きさと重さは通常の銃の約3倍となっている。少なくとも魔術師には持てない代物となっていた。

 

ザッカートの案では、まず改良型魔砲銃(ソルダ命名)でグドゥラニスの結界を攻撃。それで結界が破壊できればそれでよし。もしも出来なければ、兵器を放ち結界を破壊する。そしてベルウッドが自身の持つユニークスキルでザッカートの兵器を無効化し、結界を張り直される前に魔王を倒す。

 

それがザッカートの思い描く、大まかな魔王攻略の作戦だ。勿論その作戦には穴があるが、それを埋めるべく日夜改良と作成を繰り返している。

 

グドゥラニスが張る結界は、魔術と物理の結界が別れて展開されている。

どちらかを破壊できれば、片方の結界を無視してグドゥラニスに攻撃することが出来る。

 

だからこそザッカートは、物理な破壊をもたらす兵器を使っての結界破壊を考えた。魔術による破壊は自分達では無理だと判断して。

しかしグドゥラニスの結界の強度がわからない以上、失敗する可能性がある。が、それはもうどうしようもなく、今までのグドゥラニスとの交戦から推理するしかない。

 

ザッカートの作り出した改良型魔砲銃は、とにかく威力を重視して作られた。そのため、銃本体は勿論のこと放たれる弾も極端に大きくなっている。そして一発でも放たれれば壊れてしまう欠陥品だ。しかも素材にオリハルコンを使っている。

 

しかしそれだけあって威力は申し分なく、試作型の魔砲銃であってもランク14の肉体を、しかも鎧術の武技*1を使っての防御力を突破して腕を消し飛ばすという威力を発揮した。

 

試作型でもこの威力。改良型魔砲銃ならば、グドゥラニスの結界を破壊することも不可能ではないだろう。

 

因みに消し飛んだのは俺の腕である。なにせ近くに防御系武技が使え、なおかつランク13以上で、しかも腕の一つが消し飛んでも問題ない存在がいなかったのだから。

 

まぁ試作型魔砲銃はザッカートに隠れて実験したので怒られてしまった。多分ザッカートは人体実験とかしなさそうだし、俺なら腕の一つや二つ、再生できるし問題ない。

ただザッカートに怒られたことが意外にも心に響いたので、今後はしません。

 

 

 

『□89』

 

 

 

ザッカートの作り出した兵器は、使わずに済みそうである。銃でグドゥラニスの結界を破壊できるのであれば、それで済ませたい。

 

しかし、改良型魔砲銃であっても一発限りであるのは変わりない。そのため、確実に当てられる距離とタイミングが重要になる。

 

なので、ザッカートに量産型魔砲銃を作ってもらった。何故かといえば、銃術だとか砲術だとか、そういう武術スキルを獲得するためだ。

武技を使わず、弾の発射に魔術のみを用いて俺の腕を消し飛ばした試作型魔砲銃であるが、万全にしておきたい。

 

近々、魔王軍との戦いを終わらせるため、ラムダ勢力による大攻勢に打って出るらしい。

そのため、スキルの獲得に時間を掛けていられる余裕はなくなった。ラムダと魔王軍の均衡、それがラムダに傾いている今こそが好機なのだから。

 

ザッカートは、現状では魔砲銃の更なる改良は難しいと判断し、今は兵器の毒素を薄めなおかつ威力を上げる改良を行っている。

 

出来れば兵器の出番がないことを、ザッカートは望んでいた。前はこの兵器が自分の作れる最後の切り札だったが、今は違う、と。

 

もしも兵器を使えば、グドゥラニスは倒せるにしてもベルウッドとの関係は最悪になるだろう。それこそ、和解は不可能になるほどに。

 

グドゥラニスを倒したあとのことも考えるなら、ベルウッドとザッカートの関係悪化は避けたい。

 

そして、今の俺にできることなど一つしかない。他のことはグファドガーンに任せる。

 

とりあえず、短時間でスキルの獲得とレベルアップを目指そうか。

 

 

 

『□5』

 

 

砲術の獲得と、レベルアップ。砲術の武技の開発。ランクアップによってランク15に到達。そして、格闘術が上位スキル【貪王喰闘術】に覚醒。

 

そして、魔王軍との最後の交戦と────魔王の撃破。

 

それが今日、起きた出来事だ。

 

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼

 

 

 

 

今、ラムダでの戦いは終盤に差し掛かろうとしていた。

 

 

『ウォォォォォォ!!』

 

『進めぇ!奴等を抑え込め!!』

 

『グドゥラニスゥゥゥ!』

 

 

多くの巨人が、龍が、神が、魔王軍へとなだれ込む。自分に出せる力の全てを、吐き出し尽くさんとするように。

 

拳を、息吹を、魔術を放ち攻撃する。ラムダ勢力の奇襲は、魔王軍に混乱と共に大打撃を与えていた。

魔王軍側の邪神悪神も、迫り来るラムダの神々に抵抗しようと攻勢に打って出る。

 

その内の一柱、『呪爪の邪神』マルヂビグが前方に出てラムダの神々を自慢の爪で切り裂かんとする。

 

 

『これ以上は────』

 

「邪魔だっ!【光輝一閃】!」

 

「鈴木、前に出過ぎるな!【邪砕焔拳】!」

 

「お前も出過ぎだ遠山!【乱嵐鞭】!」

 

 

『グォォォォォ!?』

 

 

しかし、マルヂビグの目の前に飛び出してきた人間───勇者であるベルウッド、フォーマウン・ゴルド、ナインロードの三名が連携してマルヂビグを叩きのめし、瞬殺した。

 

ベルウッドたちが通りすぎる一瞬で深い傷を負ったマルヂビグは、負った傷を癒すべく何万年と掛かる深い眠りに付こうとする。

姿は薄れ、存在感もなくなっていく────

 

 

「させるかぁ!」

 

『封じるっ!』

 

 

その前に、ベルウッドたちを追ってきた義勇軍が、神々が致命傷を負ったマルヂビグを封印する。

魔王軍が混乱している隙に、魔王のいる中心部へと進み何柱かの邪神悪神を封印していく。

 

しかし、その快進撃もここまでだった。

 

 

『勇者が、しかも神々を引き連れて態々乗り込んでくるとはな!』

 

 

ベルウッドたちの襲撃に気が付いた魔王グドゥラニスが、最前線に出てきたのだ。

ベルウッドたちの攻撃はグドゥラニスの張る結界に阻まれ、通らない。

 

逆にグドゥラニスはベルウッドたちを退ける───いや、滅ぼさんと攻撃を繰り出した。

毒を、病を撒き散らし、魔術で神を退け、肉体を変化させてベルウッドたちを追い詰めた。

 

ベルウッドたちも、途中から【英霊降臨】の上位スキル【大神降臨】を使用し、大神を降臨させてグドゥラニスに対抗するが、それでもグドゥラニスの結界を破ることが出来ない。

 

 

「っ、遠山!九道!時間を稼いでくれっ!」

 

「任せろ!」

 

「わかった!」

 

 

だからベルウッドたちは、事前の作戦会議で決めていた『最大威力の攻撃をグドゥラニスに叩き込む』作戦に出た。

ベルウッドたち戦闘系勇者が考えた作戦()、自分達の出せる唯一の手だ。

 

()()()()()()()()()()も同時進行で進んでいるが、ベルウッドはザッカートの作戦を行わせる気はなかった。

 

兵器はあくまで最終手段であると譲歩させたことで、ザッカートたちは兵器ではなく新たに造り出した武器、魔砲銃によって結界を破壊する方法を取った。

 

しかし、それに失敗すればザッカートが兵器を使うのは間違いない。その対策のため、ベルウッドは自分の出せる最大威力でグドゥラニスの結界を破壊する作戦を考えた。

 

つまり、ザッカートの作戦が失敗する、その前に自分達で魔王を倒そうとしたのだ。

 

当然ながら、この作戦の中にザッカートたち生産系勇者はいない。

参加している神々は大神であるアルダ、ザンターク、シザリオンとその従属神たち。そして、グドゥラニスへの復讐心から参加した亜神たちだ。

 

他の大神────ヴィダ、リクレント、ズルワーン、ボティン、ぺリアは参加していない。

 

ボティンとぺリアは後方で待機している。もしもザッカートとベルウッドの作戦、その両方が失敗した時のために。

ヴィダ、リクレント、ズルワーンはザッカートの作戦についているため、ここにはいない。

 

やることも出来ることも正反対であるザッカートとベルウッドの二人。しかし、二人の勇者に共通して抱いている強い思いがある。

 

それは、『これで終わらせる』というグドゥラニスとの決着を望むものだった。

 

 

「ぐ、ぅっ!まだ、なのかっ!?」

 

「もう少し、時間いるっ!」

 

「だがっ、これ以上はもう……!」

 

 

『この程度で終わりならば、さっさと死ね勇者ども!』

 

 

グドゥラニスを押さえ込んでいたファーマウンとナインロードの二名だが、【大神降臨】を使っての時間稼ぎには限界が来ていた。

他の神々は邪神悪神と交戦していて、援護は望めない。義勇軍も魔物と戦い、ベルウッドたちの方に行かないように凌いでいるため、こちらも駄目だ。

 

なにより、【大神降臨】は身体に負担が掛かりすぎる。力を貯めるだけならともかく、グドゥラニスと戦いながらでは長時間維持はできない。

 

もはやここまでか────そう思われた、次の瞬間。

 

 

「丁度良い位置ですね」

 

 

『なっ!?』

 

 

グドゥラニスの背後から【転移門】が現れると共に、女の声と、カコン、と何かを構える音が響く。

 

いつの間に、というグドゥラニスの驚愕を気にすることなく声は続く。

 

 

「【骸装限界突破】【魔砲限界突破】【雷砲付与】……」

 

 

『ま、まてっ』

 

 

グドゥラニスは自身の本能と理性が訴える危機感に突き動かされるように、後ろにいる敵に攻撃しようとする。が、間に合わない。

グドゥラニスの発した静止の声が届く前に、その一撃は放たれた。

 

 

「【二不砲(にのうちいらず)】」

 

 

武技を呟き、引き金を引いた。その瞬間、音は消えた。

 

──────轟音。それが鳴り響くと共に、音が一瞬消える。

 

全ての音が一瞬のうちに掻き消され、その場の空間が無音で支配される。

 

それが永遠に続くのではないかと、その轟音を聞いた者の誰もが錯覚した。そして─────

 

 

ガタン、という何かが落ちる音が、無音の空間に音を響かせた。

 

 

「一撃で駄目になってしまいました。ですが……十分でしょう」

 

 

『ば、かなっ……!?』

 

 

そこにいたのは、黒き髪を携えた麗しき美貌を持つエルフと─────物理結界を破られ、身体に大きな風穴が空いているグドゥラニスの姿だった。

 

 

『まさかっ!それは、ザッカートの作り出した異世界の武器かっ!?それが、我の結界と肉体を……!』

 

「魔砲銃を見るのは構いませんが……余所見厳禁ですよ。【抜き手・極み】」

 

 

エルフ────ライラックは自然にグドゥラニスに近付き、武技を放った。

 

 

『その程度の攻撃が効くものかぁ!』

 

 

しかしグドゥラニスは自身の傷をすぐさま再生させると、ライラックの攻撃を自身の肉体で防ぎ、逆にライラックの腕を粉砕し、ついでのように頭を消し飛ばした。

 

 

「でしょうね。知っています」

 

 

しかし、頭を失ったはずのライラックの肉体はグドゥラニスから離れると、すぐさま首から頭が再生していく。

彼女にとって、頭を消し飛ばされたぐらいでは致命傷とは言えないのだ。

 

 

「ですので、これは時間稼ぎです」

 

『なんだとっ?』

 

 

まさか、他に自身を傷つけうる武器を────グドゥラニスはそう考えた。しかし、そうではない。

 

結論からいうと、ライラックの────彼女を送り込んだザッカートの目的は、既に達成されている。

 

目的は二つ。一つは結界の破壊。これをしなければどのようにしても攻撃が通らない。

そして、もう一つは先ほど言ったように、時間稼ぎである。

 

──────()()時間稼ぎなのか。

 

答えは簡単だ。

 

 

「あとは任せましたよ、ベルウッド」

 

「ウォォォォォォォ!!!」

 

 

『なにっ!?』

 

 

ベルウッドが力を貯めきるまでの、である。

 

 

────ザッカートは、グドゥラニスを倒すための兵器を作る中で考えていたことがある。いや、それは他の生産系勇者も考えていたことだ。

 

それは、ザッカートの造り出す兵器だけではグドゥラニスを倒せないのではないか、という疑問だった。

 

ザッカート、アーク、ソルダ、ヒルウィロウの四人で話し合った結果、やはり兵器では火力不足だということが結論付けられた。

 

兵器をどれだけ改良したところで、限界がある。いや、例えグドゥラニスを倒せるだけの改良を施せるのだとしても、それをするだけの時間がない。その間に、戦いは終わるだろう。

 

なら、もうやることは決まっている。

 

結界は壊すが────あとはベルウッドたちに丸投げしよう、と。

 

 

「これで倒せなければ、もうラムダは終わりですが……」

 

 

その心配はなさそうだと、ライラックは心の中で呟く。

 

なにせ、彼女の目に映る光景は、魔王を倒す勇者の姿であったから。

 

 

「ザッカート。あなたの……勇者の勝利です」

 

 

ライラックは、勇者への称賛と……ザッカートへの深い愛情を込めて、そう呟いた。

 

 

 

『【格闘術】が【貪王喰闘術】に覚醒しました!』

 

『【魔王殺し】の二つ名を獲得しました!』

 

 

 

「それはいらない」

 

 

思わぬアナウンス*2にツッコミを入れると、後処理をベルウッドたちに任せ、ザッカートの元に帰るのであった。

 

 

 

 

*1
武術スキルのレベルに応じて使用できる技。独自にオリジナルの武技を開発可能

*2
システムに組み込まれた機能の一つ。アナウンスとしてレベルが上がった時やスキルを獲得した時、二つ名を獲得した時などに自動で知らせてくれる




最後は番外編を投稿して次の章に移ります
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