GOD EATER 3 -BEAST- ~人の心を宿した神は、人を守るべく神を喰らう~   作:Ingwelsh

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第5話 - 検査

 ラボラトリ区画、医務室に移動して。

 ボクはクレアとエイミーの手で、いろんな……そう、いろんな。身体の隅から隅まで見られるくらいに検査された。

 ボクのオラクル細胞を取り出し、検査した結果を見つめるクレアとエイミーが、揃って難しい表情をしている。

 

「うーん……」

「これは……」

「どう、なにか分かった?」

 

 検査結果を表示した端末を、イルダが覗き込む。ボクも自分の目で見てみたくはあるが、三人が食い入るように見つめているから隙が無いし、多分見てもよく分からないだろう。

 しばらく沈黙が流れた後、クレアがイルダの顔を見上げて言う。

 

「私も、アラガミ研究の専門家ではないので、詳しくは分からないのですが……偏食傾向が、既存のアラガミのどれとも合致しないみたいですね」

「と、言うと?」

 

 彼女の言葉に、イルダが目を見張る。

 アラガミには、それぞれ固有の偏食傾向がある。オラクル細胞は基本的に、有機物無機物、自然物人工物を問わずに何でも食べてしまうものだが、それでも「好き嫌い(・・・・)」はあるものだ。

 クレアが説明を続ける。

 

「例えば、ヴァジュラやマルドゥークであれば、自分より小型の生物を好んで捕喰します。ボルグ・カムランであれば無機物、クアドリガであれば人工物……そんなふうに、アラガミには固有の偏食傾向があるのですが、サルーキの偏食傾向は、どのアラガミとも異なるものなんです」

「無機物は食べない、有機物は好きみたいですが人間の肉は食べない、オラクル細胞由来のものは好き……まるで、ゴッドイーターの偏食傾向のようなんです」

 

 クレアの説明に、ボクは自分で目を見張った。

 つまり、オラクル細胞の「好き嫌い」が、ボクは既存のアラガミのどれとも一緒でないと、そういうことらしい。クレアの説明に続けてエイミーも言葉を発し、悩ましいように首を傾げる。

 

「ということは、P53偏食因子やP73-c偏食因子が?」

 

 顎に手をやりながらイルダが言うと、クレアが小さく首を振った。

 

「いえ、そうでもないんです。偏食因子の同定試験もしたんですが、P53にもP73-cにも一致が出なくて……一部、似た結果は出ているんですが。未知の偏食因子を有している可能性もあります」

 

 曰く、ゴッドイーターに投与されているP53偏食因子、AGEに投与されているP73-c偏食因子は、いずれも人体には食欲を向けず、オラクル細胞に対して偏食を向けるようになっているそうだ。ゴッドイーターはこれらの偏食因子を、あの腕輪から定期的に投与されて、神機のオラクル細胞が自分の身体を捕喰したり、もしくは自分の細胞がオラクル細胞に変わらないように調整しているらしい。

 その、いずれの偏食因子でもないというボクの偏食因子。いったいどういう傾向を有しているというのだろう。人間を捕喰しようとしないのは間違いないのだけれど。

 その話を聞いて、イルダが難しい表情をしながら腕を組む。

 

「なるほどね……じゃあここではっきりさせましょう」

 

 一度言葉を区切って、彼女はクレアとエイミーを見つめながら言う。

 

「サルーキは、アラガミ?」

 

 ボクは、アラガミかどうか。

 その問いに、すぐに答えたのはクレアだった。

 

「……アラガミで、間違いないと思います」

 

 彼女の言葉に、ボクは目を大きく見開いた。

 ボクはアラガミ。やはりそれは、間違いのないことであるらしい。正直、これでアラガミじゃないなんて言われたら、それはそれで困ることではあるけれど。

 しかしその言葉の後に続いて、クレアが再び口を開いた。

 

「ただ、そうだとするとおかしなところも数多くあるんです。ヒト型アラガミに近いですが、外見は完全にヒトではありません。しかしコミュニケーション能力には非常に秀でており、流暢な会話が可能です。更には、メンタリティが完全にヒト寄りだと見えます」

「はい……フィムは、アラガミでありながら捕喰の意思を全く見せなかった、という点で特異ですが、サルーキは捕喰の意思がありながら人間との共存、交流の意思を見せている。こんなの、既存のアラガミでは考えられなかったことです」

 

 エイミーも、クレアの言葉に同調しながら手元のタブレット端末を見ている。

 そうだ、ボクは何も、全く何も捕喰しようとしない、わけではない。なにかしらに対しては捕喰の意思を見せ、人間に対してはそれを向けない。しかしそうありながら、人間と積極的に関わろうといる。

 これは、普通なら考えられないことだ。アラガミが自らの意思で人間と関わろうとするなど。

 二人の言葉を聞いて、イルダが深くため息をつく。

 

「そうなの……そんなアラガミが、生まれた直後の場面に居合わせるなんて、すごい偶然もあったものね」

 

 彼女の発言に、クレアもエイミーも頷いた。しかし未だ困惑の色を濃くしたまま、エイミーが口を開く。

 

「でも、オーナー、これ本当にどうするんですか? サルーキの存在がちょっとでも外部に漏れたら、とんでもないことになりますよ」

「はい、いくら人間に危害を加えないとは言っても純粋なアラガミです。AGEにも一定の権利が認められているこの船ですが、アラガミはまた別だと思います」

 

 クレアもボクの手に自分の手を重ねながら、心配そうに所感を述べた。

 確かにそうだ。ボクの存在が明るみになったら、面倒なことになることは間違いない。それは、生まれたばかりのボクであっても分かることだ。

 イルダもそのことは分かっているようで、小さく頭を振る。

 

「そうよね……いつまでも隠し通しておくことは出来ないわ。何らかの方法で、サルーキが船にいても通る大義名分が必要だわ」

「フィムにそうしていたように、コンテナに隔離しておけば、許可はされるかもしれませんけど……そんなこと、したくありませんものね」

 

 エイミーが話しながら、ボクの頭を撫でた。

 確かに外界から全く隔離されていれば安全だし、この船も面倒ごとは避けられるだろう。とはいえ、それは心情的に好ましくないことだ。ボクとしても、コンテナの中に隔離されるのはいい気分ではない。

 三人揃って難しい顔で唸る中。イルダがハッとした表情を見せた。

 

「……そうだわ」

「オーナー、何か思いついたんですか?」

 

 エイミーが首を傾げると、にんまりと笑みを見せながら、イルダがボクの肩に手を触れた。そして。

 

「サルーキ、あなた、ゴッドイーターになる気はない?」

「へっ?」

 

 彼女の言葉に、ボクはますます目を見張る。

 ゴッドイーターに?

 ボクが?

 

「あ、ゴッドイーターになれば……って、えぇぇっ!?」

「アラガミを……ゴッドイーターに……!?」

 

 クレアもエイミーも、揃って素っ頓狂な声を上げた。

 アラガミをゴッドイーターにするなんて。

 なにやら、とんでもないことになりそうな気がしてきた。

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