エンティティ様が見てる   作:お寿司大好きTV

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殺人鬼になろう

 エンティティの存在を確信したあの日から4日。

 俺は図書館でひたすらに過去のシリアルキラーに関する記事を読み漁った。

 

「ここまでくると笑えてくるな」

 

 出るわ出るわ、凄惨な事件の数々。

 トラッパー、ヒルビリーに関する記事だけじゃない。

 レイス、ナース……はたまた、ドクターに関連していそうな記事まで出てきた。

 

 コラボ先の殺人鬼までいるとしたら……。

 はは、最低の治安だ。

 

「ストレンジャー・シングスなんてどうなるんだ」

 

 ストレンジャー・シングス。

 コラボにより追加されたキラーはデモゴルゴン。

 ゲーム時代ならば、完全に侮っていた存在だったが……問題は、ヤツの出自だ。

 

「裏世界の門が開いてるって事じゃねぇか……!」

 

 ヤツはこの世界の裏側に潜む怪物だ。

 裏側にはデモゴルゴンだけじゃなく、あらゆる物に寄生し操り成長するマインド・フレイヤーという恐ろしい存在もいる。

 デモゴルゴンは狩猟本能に基づき行動しているだけだが、マインド・フレイヤーは知性があり、侵略しようという野心まで持っている。

 

「……」

 

 だが、他と異なる点がある。

 あの物語には、勇気を持った主人公格の子供達が居た。ホラー映画で子供は勝ちフラグだろう。

 異能力者も混じっていたぐらいだし、流石に扉は完全に閉じていると思いたい。

 

 だって念動力でデモゴルゴンをぐちゅっと潰せるレベルだぜ?

 

「希望は……一応、あるのか?」

 

 そう考えると、儀式そのものを破壊してくれる存在に期待してしまう。

 殺人鬼より、生存者になった方が良いのだろうか。

 

 でも、俺は怖い。

 永劫に続くかもしれない苦痛が怖い。

 

 なら、殺人を楽しめる人間になってしまいたい。

 そういった価値観を持つことができれば、俺は永劫に愉快に暮らせるようになる。

 

 ——最も、そんな考えがよぎる時点で、既に素養があることの証左だが——

 

 とにかく、愉快に暮らすには人を殺す必要がある。

 普通の殺人じゃダメだ。

 

 エンティティが、俺を殺人鬼側として採用したくなるような、魅力的な殺人を起こさなきゃならない。

 

「こういう時は文献調査に限るな」

 

 過去、エンティティに採用された殺人鬼の凶行を調べよう。

 何か、共通点や傾向が見えてくるはず。

 

 

 

 

 数時間後。

 俺はストレスで頭痛がするのを感じながら記事の山に突っ伏した。

 

「あぁ、クソ。全くもって共感できねぇ」

 

 動機が不明な者、シンプルな者。そもそも殺人は過程である者や、単に娯楽とする者と様々だ。

 

 再び文に目を通す。

 ダメだ、意味は分かっても脳が理解を拒む。

 そりゃあそうだろう。なんたって不浄の女神お墨付きの殺人鬼達だ。

 

 だが唯一、感性が一般に寄った殺人鬼——いや、殺人鬼達が居た。

 

「リージョン……」

 

 フランク、ジョーイ、ジュリー、スージー。

 オーモンドという田舎町で事件を起こした、短絡的な若者達。

 

 いったい奴らの何がエンティティの琴線に触れた?

 集団の殺人鬼を、一つくらいは確保しておきたかっただけか?

 

 殺人鬼をコレクトしているのなら、物珍しい殺り方をすればスカウトされる?

 

「クソ、わかんねぇ」

 

 物珍しい殺し方ってなんだ。

 

「数って手もある」

 

 でも法治国家で連続して殺せる数なんてたかが知れてる。

 畜生、どうすればいい。

 

「凄惨で、斬新な殺し方……」

 

 俺はそこで、ふと思い付いた。

 

 放射能なんかどうだろう。

 放射能汚染された物質を使って独創的な殺人を起こせないものだろうか。

 

「確かウランを購入して逮捕されてた日本の高校生がいたよな」

 

 そんなニュースを目にした事がある。

 日本の高校生が買えてしまうんだ、アメリカの大学生ならどうなる?

 

「……ある意味ハードルが高い気がしなくもないが」

 

 問題としては、俺はそこまで放射能の知識を持ってないことだ。

 結果として、俺が壮絶な自殺をやっただけで終わる可能性もある。

 

 ダメだダメだ。俺の身に危険が及ばないもので殺さなきゃならん。

 俺は死にたくないから殺すことを選んだんだ、死の危険は許容できない。

 

「クソッ」

 

 思わず悪態をつく。

 

 どうすれば、エンティティが俺が殺人鬼側の人間であると判断してくれる?

 黒い霧に招かれず、牢獄にぶち込まれた時はどうすればいい?

 

「……いや、視点を変えよう」

 

 エンティティ様にアピールできればそれでいいじゃないか。

 特別な殺し方にこだわり過ぎて、本来の目的を忘れていた。

 俺は殺人側であると強くプレゼンすること。特別な殺し方は目的ではなく、手段の一つだ。

 

「そうだ、あの手がある」

 

 そこで俺は一つの手法に思い至った。

 素晴らしい。独創性もある意味無くはないし、プレゼンとしては十分な手法だ。

 

 さて、殺した後の演出は決まった。

 次は武器の選択だ。

 ここで用いた武器は、俺が儀式の中で延々と使うことになるはず。

 慎重に選ぼう。

 

「索敵を兼ねられる物か、高速移動を可能にする物が望ましいかな」

 

 車?

 いや、厳しい。

 索敵ならソナー……どう殺すんだ?

 

 一応、シンプルにナイフで殺したとしても能力無しにはならないだろう。

 リージョンのように、何か特殊な技能を与えてくれるはずだ。

 だが、俺は能力使用の度に疲労だのスタンだの、苦痛を感じたくない。

 

 チェーンソーを使えばほぼ確実に一撃ダウン能力をくれるだろう。

 ただヒルビリーとカニバルとの差別化の為に妙な能力をひっつけられるかもしれない。

 

 投擲系のやつにしとくか?

 手斧、毒瓶、銃、ゲロ。それ以外の物。

 

「隠密系も有り……うぅん、どうすっかな」

 

 椅子がギシ……と音を立てる。

 ふむ。音か。

 

「聴覚バグらせ系……」

 

 俺もバグっちまうよ。

 困ったなー。一旦後回しにするか。

 

 席を立ち、手に取った本や資料を元の場所に戻していく。

 まずは工作の時間だ。

 エンティティがお気に召す物を作らなくちゃな。

 

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