エンティティ様が見てる   作:お寿司大好きTV

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事件記録:留学生カラシナによる深夜の凶行

 某日、深夜2時を過ぎた頃のことであった。

 隣の家の大学生が、異様な騒ぎ方をしているとの通報があり、地元の警察が念のため駆けつけた。

 

 インターホンに反応が無く、扉が開けっ放しであったため警官2人が本部に連絡後、中に入る。

 現場は大学生が宴会をやっているとは思えないほど静寂に包まれており、時折黒い煤のようなものが残っていたという。

 

 リビングを開けたところで、まず第一の被害者に出会う。

 カラシナと同大学、同学年である男子生徒が頭部を破壊された上で、何か黒い蜘蛛の脚のようなオブジェクトに身体の中枢を貫かれて死亡していた。

 この時点で警官2人は事件と判断、本部に応援を要請した。

 

 更に警官が進んでいくと、廊下にてフックのような物に吊るされた同大学の先輩である女子生徒の死体。これもリビング同様、頭部を破壊され、黒い蜘蛛の脚のオブジェクトに貫かれて死亡していた。

 

 この地点で、あまりの悪臭に耐え切れなくなった片方の警官が道を引き返した。

 

 寝室にて、同様に頭部破壊、蜘蛛のオブジェクトにより貫かれ死亡した同大学同学年の男子生徒の死体を発見。

 ここで一度警官が嘔吐してしまっている。(現場保持の観点からいくと、あまり望ましい行動ではない)

 

 その後、車庫に移動。

 そこで同学年後輩の女子生徒を蜘蛛のオブジェクトに突き刺すカラシナ容疑者を発見。

 既に女子生徒は頭部を破壊されていたが、この時点では微かに息をしていたとの証言が警官から出ている。

 

 警官は銃を構えて警告。

 カラシナ容疑者はモーニングスターと呼ばれる凶器を振り回し、警官の左肩を損傷、脱臼させた。

 警官が3発、カラシナ容疑者に向けて発砲。内2発がカラシナ容疑者に着弾する。

 

 

【注意:以降の証言は異常な現場を見たこと、容疑者から攻撃を受けたことによる動揺が重なり発生した幻覚及び妄想である可能性が高い】

 

 被弾したカラシナ容疑者が、獣のような雄叫びをあげつつ、凶器を手放す。

 警官がその隙にカラシナ容疑者にタックルを仕掛けようとした。

 しかし、眼前に突如として黒い霧が立ち込める。

 何かを呼ぶような声、背筋に尋常ではない寒気を感じた警官は慌てて飛び退いた。

 

 その後、カラシナ容疑者は既に現場から跡形もなく消え去っていた。

 残ったのは、僅かな黒い煤だけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生、信じてくれ。本当なんだ」

 

 白い部屋。

 カウンセラーと心療内科の医師が同席した場所で、すっかりやつれた顔の警官が叫ぶ。

 

「でも君の証言はいささか……現実味に欠けるよ。確かにあの場にカラシナがいた証拠は残っているし、今も彼は失踪中だ。犯人が彼であることは疑うよしもない」

 

 医師が慎重に話す。

 だが警官の興奮状態は収まらない。

 

「犯人! そうだ、奴が殺した」

 

「うんうん、そうだね」

 

「でも、殺すのは、手段だ。別の目的だ、きっと、霧を」

 

 警官に注射が打たれる。

 一瞬びくりと身体が痙攣し、目がとろんとした様子になる。

 

 カウンセラーが質問をする。

 

「■■さん、貴方は鉄球を肩にぶつけられた後、気絶したんじゃないですか? 応援が駆けつけた時には、貴方は確かに気絶していたはずです」

 

 警官の焦点がゆっくりとカウンセラーに合わせられる。

 そして、口を開いた。

 

「俺は、俺は……霧が、怖くて。伸びてくる指が怖くて、気を失った。そうだ、奴は……呼ばれたんだ。そして、最後に微笑んだ。まるで、企みが全て上手くいったみたいに」

 

「黒い霧が立ち込めたんじゃなかったのかい? 何故彼の顔が見えたんだ?」

 

 医師の言葉に、警官の目が突如として異常な挙動を示す。

 再び興奮状態に戻った彼に、マジックミラー越しに見ていた他の刑事達がざわついた。

 

 頭を掻きむしりながら、警官が答える。

 

「見えなくたって見えるんだ。そういう霧だった! ああ、喜んでたよ。カラシナが? 違う、霧が……霧が笑ってた。嘲笑だ! 人の命を、絶望を、希望を、嘲笑ってたんだッ!」

 

 数人の屈強な男が入室し、暴れ始めた警官を抑える。

 医師とカウンセラーが互いに目を合わせ、黙って首を横に振った。

 

 

 警官が職務に復帰することは、無かった。

 

 

 

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