ようこそ読心至上主義の教室へ   作:ひゅらら

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※昨日の内に出すつもりでしたが、諸事情により遅れました。
 申し訳ありません。


第3話

教室からいち早く抜け出せた俺は、ドア付近の壁に背をもたれかけるようにして伊吹を待っていた。

体中が痛い。

防御したとはいえ殴られた訳だから普通に痛みが残る。

所々痣になってそうだなこれ...

 

さて、俺が龍園の下についた理由だが大きく分けてニつある。

 

一つは龍園がとんでもないキレ者だったという点。

龍園はなんと、既にこの学校のシステムに気づいていた。

こいつただサボっていただけかと思いきや、その時間に2.3年生も含めた他クラス全ての様子を観察していた。

さらに職員室の前にも張り込み、独自に情報収集を行っていたのである。

そして10万という多すぎるポイントや監視カメラ、救済措置であろう0円の商品など全ての情報を繋げて答えに辿り着いた。

正直俺みたいなイカサマじみた能力がないと知りようがないと思っていたので、心を読んだ時は驚いた。

暴力でクラスを支配しようとしたのも、龍園がクラスを統治することに加えて、恐怖が蔓延すれば必然的に皆が畏縮して生活態度も自然に改善されるということを見据えての行動。

 

これには感服した。

これほどの男が上に立ってくれるなら、このクラスもAクラスに上がるのは不可能じゃないと思えた。

 

そして二つ目だが、これは普通にあのままやりあっても俺が負けるからである。

心を読めるとはいえ、俺自身がめちゃくちゃ強くなる訳でもない。

龍園の攻撃を凌ぎきった後にはほとんど体力は尽きていたし、攻撃を避ける気力も残っていなかった。

あそこで切り上げてなかったら、今頃ボコボコにされて病院送りレベルの怪我を負っていただろう。

 

そんなことを考えていると伊吹が走って教室から出てきた。

 

「伊吹、さっき龍園に蹴られてたがそれは大丈夫なのか?」

 

心配して声をかける。

 

「別にもう大丈夫...ってそうじゃない!」

 

そして伊吹がツッコミをいれるように叫ぶ。

 

「あんた、さっきの話はどういうこと?クラスが上がれるだの何だの...全然ついて行けなかったんだけど」

 

あぁ...あれね。

まぁあの会話はこの学校の仕組みに気づいた奴同士じゃないと何言ってるのか分からないよなぁ。

 

「ま、取り敢えず歩きながら話そう」

 

俺が足を動かすと、伊吹はいつものように俺の隣を歩き始める。

 

「それでさっきの話なんだが、聞くのはあと2週間ちょっと待ってくれないか?」

 

「嫌だけど。なんでそんな待たないといけないのよ」

 

「いや頼む、俺あんまり上手く説明出来るか分からないし。何より5月になったら多分先生から説明が入ると思うから、それ聞いたほうが分かりやすいと思う」

 

「なんでここで先生が出てくんのよ。また私の分からないことを...ああもう!いいわよ。今は聞かないであげる」

 

伊吹は呆れたような、諦めたような声で答えた。

 

「そうしてくれるとありがたい。」

 

本音を言うと説明するのが面倒くさかっただけだが、伊吹は引き下がってくれたようだ。

 

「でもこれだけは聞かせて。なんであんたは龍園なんかの右腕に下ったの?」

 

続けてたら龍園を倒せたんじゃないのと伊吹は続ける。

 

「さっきも言ったけど、あの時俺は満身創痍に近かったからな。どの道負けてたから降参しただけだよ。」

 

伊吹はまだ疑いの目線を向けてくる。

龍園も納得のいかないような表情をしていたが、伊吹もらしい。

二人とも俺を高く買いすぎである。

 

「いや本当なんだって。俺が息が切れしてたのは見てただろ?それにほら、この通り筋肉もそこまでだし」

 

俺は制服を捲り腕の筋肉を伊吹に見せる。

少し筋トレはしているが、別にそんなにガッチリとしているわけでもない。

人の心が読める以外はただの一般人なのだから。

 

「...まぁ、信じてあげる」

 

渋々といった感じではあったが信じてくれるらしい。

 

「それよりもさ」

 

俺はこの話はここまでにしようと話を切り替える。

 

「映画見ようって話なんだけど、明日にしないか?」

 

これまで一緒に遊んできた中で、伊吹の趣味の一つに映画鑑賞があるということが分かった。

俺も久々に映画を見てみたいと思い、前々から伊吹とは一緒に映画を観る約束をしていたのだ。

そして明日は土曜日で学校も休み。

映画を観る時間も十分にあると思い、伊吹に提案する。

すると何故か少し驚いたような反応をした。

 

「...覚えててくれたの」

 

ん?

 

「いや、そりゃ約束したんだから覚えてるに決まってるだろ。」

 

「その...社交辞令的なやつで言ってるのかと思ってたから...」

 

あっ...

 

その昔を思い出したような表情から、過去にそういうことがあったんであろうことが分かってしまう。

流石に不憫すぎる。

 

「そんなわけ無いだろ」

 

俺は強く否定した、そして

 

「なんなら一本じゃなくてニ本観よう!三本でもいいぞ」

 

俺は伊吹と映画が見たいぞ!ということをアピールする。

すると伊吹は微笑んで

 

「っ.....ありがと、嬉しい」

 

そう笑った。

いつもの強気な面はどこへやら、とても可愛らしい表情をしている。

 

伊吹ってこんな可愛かったっけ?と思うほどだ。

服を褒めたときもそうだったが、伊吹は時々とんでもなく可愛い表情を俺に向けてくれる。

 

心を読むと、伊吹は俺のことを友達としてではなく異性として見始めていることが分かった。

これはいい兆候だな。

伊吹を俺に依存させる計画は着々と進んでいる。

脳内ではそんな打算的なことを考えていた。

 

だが、何故か同時に

 

 

 

この表情を俺以外には向けてほしくないとも   

思っていた。

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

日付も変わり映画鑑賞当日。

 

午前10時に映画館に集合だったが、俺は9時半前には部屋を出ていた。

早すぎると思う人もいるかもしれないが、こういう時に女性を待たせるのは紳士失格、絶対にしてはいけない行為である。

30分ほど余裕があれば何かトラブルが起こっても伊吹を待たせるような事にはならないだろう。

 

そう思っていたのだが、映画館着くと待ち合わせ時間より30分以上前なのにも関わらず、既に伊吹がベンチに座って待っていた。

なんということだ。

俺は早速紳士ではなくなってしまった。

 

「伊吹ごめん!待ったか?」

 

謝罪しながら伊吹に駆け寄る。

 

「っ別に、今来たとこ」

 

そんな本来男性側が言うはずの言葉も言われてしまった。

ちなみに伊吹の心を読むと9時には映画館に着いていたようだ。

今日が楽しみで早く着きすぎてしまったらしい。

にしても早すぎじゃないか?

これから伊吹と待ち合わせするときは1時間半前に出ようと心に決め、上映している映画のパンフレットを伊吹と一緒に眺めた。

 

ちなみに昨日の内に、映画はニ本観ることに決まっていた。

午前に一本観たあと昼食を挟み、午後にもう一本。

三本観るのは流石に目が疲れるということで却下になった。

 

俺はパンフレットには何個か見を通したが、どれも面白そうで中々決まらなかった。

すると

 

「これ観てみたいんだけど、あんたはどう?」

 

伊吹が一枚のパンフレットを差し出してきた。

見るとそれはミステリー作品で、かなり有名なシリーズモノの小説を実写化したやつらしい。

探偵役の主人公の俳優さんも有名な人だった。

 

俺は観たい映画が決まっていたわけではなかったので、

 

「よし、じゃ最初はこれ観るか」

 

と返答し、伊吹と一緒にチケットを購入した。

 

その映画はとても面白いもので、迫真の演技や演出が俺達観客の目を釘付けにした。

そう、とても面白かったんだ.....途中までは。

 

物語の後半になっても謎が謎を呼ぶ展開で、俺は早くこの後どうなるのか知りたいという思いが先行しすぎてしまったのだろう。

俺は間違って主人公に能力を使ってしまった。

当然、その役者さんは物語の内容を知った上で演技しているわけだから、心を読んだ瞬間にその内容が頭に入ってきてしまう。

最悪の形でネタバレを食らってしまった。

 

終盤、主人公がバンバン謎を解いていって、明かされる衝撃の展開に他の観客の驚いた声が聞こえた。

伊吹も小さく「うそ...」と呟いていたが、俺はその内容を知ってしまっているので虚無だった。

 

映画を観終わった俺達はフードコートに移り、昼食を取りながら感想を語り合っていた。

 

「まさかあいつが犯人だったなんて.....」  

 

「ああ.....」

 

「にしてもあんたはあんまり驚いてなかったけど、予想ついてたの?」

 

「いや...驚きすぎて固まってただけだよ」

 

そんな感じで誤魔化す。

次の映画は間違って能力を使わないように気を付けなければ.....

もうあんな間抜けなことはしたくない。

 

その後も感想を語り続けたが、ここである事を思い出す。

 

「そうだ伊吹、話したいことがあるんだが」

 

「何?」

 

「伊吹には言う必要もないと思うが一応。学校に登校してる時は常に模範的な行動を心掛けて欲しい」

 

これまで見てきた中で特にポイントが減らされるような行動はしていなかったが、念の為に伝えておく。

 

昼食を取り終わって10分ほど休憩すると、再び映画館に戻る。

二本目の映画は恋愛モノだ。

伊吹に、一本目は私が決めちゃったから二本目はあんたが決めていいと言われたので、俺はこれを選択した。

これには理由がある。

この映画を利用して、伊吹にさらに俺を異性として意識させる。

 

ライトが消え、広告などが流れ終わるとようやく本命が始まった。

内容はよくある王道的なモノではあったが、それゆえ中々面白いものだった。

そして物語終盤、主人公とヒロインがいい感じの雰囲気になった時に、俺は右手をそっと隣に座っている伊吹の左手の上に重ねた。

 

「っ!...っ...」

 

目を向けなくても、伊吹が顔を染めてアタフタしているのが分かる。

好意を持ってくれてるとはいえ流石に攻めすぎたか?

そう思ったが嫌がる素振りは見せない。

それどころか、伊吹は指を絡めてきた。

...正直驚いた。

手を重ねたのは俺だが、まさか指を絡めてくるとは。

伊吹も結構攻めたことするな...

だがこれは嬉しい。

 

俺達は場内が明るくなるまで指を絡めていた。

 

 

 

 

そして上映が終わり、他の観客達が退室し始める。

俺達も同様に席を立ち、帰路につく。

この動作も今日で二回目。

だが一回目と違うのはお互いに無言だと言うことだ。

結局、寮に着くまで俺達は一言も言葉を発さなかった。

 

 

 

「その.....今日は楽しかった」

 

伊吹が沈黙を破り、口を開く。

 

「あぁ、俺も楽しかった。」

 

「でさ、あの...さっきのなんだけど」

 

伊吹がモジモジしながら続ける。

 

「あんたは.....ど、どういうつもりで...やったの?」

 

「すまん...やっぱり嫌だったか」

 

「べ、別に嫌じゃない!嫌なら私も...指、絡めたりしないし」

 

自分から絡めたことを思い出して、伊吹の顔は真っ赤に染まっている。

まるで熟した林檎のように。 

 

「どういうつもりで.....か」

 

俺は夕日で赤く染まった空を見つめながら話す。

 

「分からない。でも、無性に伊吹と手を重ねたくなったんだよ」

 

「っ!...そ、それって」

 

伊吹が驚いたような、何かを期待するような声を上げる。

しかしまだこれ以上の関係になるつもりはない。

今日はあくまでも、俺を異性としてさらに意識させることが目的。

だが下準備は整えておく。

 

「あのさ...良かったらなんだが」

 

俺はそう切り出す。

 

「また二人で一緒に映画、観に行かないか?」

 

ビクッと、伊吹が反応する。

 

「わ、私も...また行きたい」

 

声は少し小さかったが、どうやらまた一緒に行ってくれるようだ。

 

「良かった!じゃあ俺は少し課題しなきゃいけないからもう帰るな」

 

そう別れを告げ、俺達はそれぞれ部屋に帰宅する。

今日はとても有意義な一日だった。

もう伊吹は完全に俺のことを異性として見ている。

ここまでくれば、俺に依存してくれるまであと一手間だ。

案外早かったなと、俺は安堵していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回はちょっと長く描きたいので少し遅れます。 
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