Ib〜ハッピーエンドへ行き着くためには〜   作:月舘

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END:2 貴方を想って

―――わたしは今まで何をしていたんだろう。ぼうっとした頭でそう考えると周りの景色も相まって何とか思い出す事が出来た。

 

 

「そうだ……。わたし美術館にいるんだっけ……。ママ達はどこにいるかなぁ。」

 

 

わたしはママとパパを探すためにその場を離れる事にした。わたしが今いる2階を早足になりながら探すけど2人ともなかなか見つからない。一周して見当たらなかったからもしかして1階にいるのかなって思って降りて展示コーナーを探してみると、バラのオブジェの前に何やらおしゃべりをしてる男の人と女の子がいた。身長差的に兄妹とかかな?

 

 

「ねぇメアリー。今日のアンタ、なんか様子がおかしいわよ?今までそんな変な事言わなかったじゃない。」

 

「だから私は美術品だったの!それをトシに助けて貰って……あぁもう!なんで私は覚えてるのにギャリーは覚えてないの!?」

 

「だって……ねぇ?ここに来てから急に“私は美術品だった”なんて言われても訳わかんないわよ。……もしかしてこの子どこかで頭でも打ったのかしら?」

 

「私はどこもおかしくなってない!……あっ!イヴ!ねぇ、イヴもギャリーに言ってあげてよ!」

 

「えーっと……あなたは誰ですか?わたし達初対面だよ?」

 

 

わたしがそう言うとメアリーと呼ばれてた女の子はとても絶望した顔をわたしに向けてきた。……うん、いくら思い出してみてもこの子にあった記憶がないや。

 

 

「嘘……?じゃああそこの記憶を持ってるのって私だけ……?」

 

「……?あれ?なにかポッケに入ってる……。アメ?」

 

「あら?それアタシの飴じゃないかしら……。やっぱり上着のポケットに入れてた飴がなくなってるわ。」

 

「えっ、じゃあこれ返すね?」

 

「いや、それはアンタにあげるわ。もしレモンキャンディが嫌いならアタシが食べるけどどうする?」

 

 

ギャリーと呼ばれていた男の人にそう言われたので、「じゃあもらうね」と言ってそのアメをじっと見つめる。これを見てると何かを思い出せそうな気がする。でも何を思い出すんだろう。このアメを見た事はないはずなのに……。

 

 

――――――――――――

 

 

「名前?則内大利(すのうちひろとし)って言うんだ。ヒロでもトシでも、今まで通りお兄さんでもなんて呼んでもいいよ。」

 

「そりゃイヴちゃんを信頼してるからね。」

 

「そっか。イヴちゃんは強いね。じゃあ頑張って進んでいこっか。」

 

 

………………

…………

……

 

 

「―――いや、俺はここで“サヨナラ”だ。」

 

「お兄さん!―――またね!」

 

「―――っ。あぁ、またな。」

 

 

――――――――――――

 

 

「……お兄さん。」

 

「イヴ今なんか言ったかしら?ってちょっと!急にどうしたのよ!」

 

「え?なんの事?」

 

「イヴアンタ今泣いてるわよ!」

 

 

ギャリー……さんにそう言われて目の下辺りをさわると、なんでか分からないけどぬれていた。それを意識してしまったらもう自分では止めることができなくなっちゃった。

 

 

「イヴは思い出したんだね……。あとはギャリーだけだよ!」

 

「そんな事よりこの子を早く泣き止ませないと!ほらメアリーも手伝って!」

 

 

2人がなんか色々言い合ってるけど私はそんなことも気にしないで、流れ出る涙をママから貰ったハンカチでふき続けた。

 

少しして涙も止まったわたしはあの“お兄さん”のことについてメアリー……さんに教えてもらう。するとメアリーさんはわたしに“ヒロトシ”という人の話を聞かせてくれた。メアリーさんが言うにはわたしがその人のことを“お兄さん”と呼んでいたらしい。ということはさっき頭の中に浮かんだ人がヒロトシさんなんだと思う。

 

 

「―――で?ギャリーはここまでの話を聞いても思い出さないの?」

 

「そんな無茶を言わないでちょうだい……。思い出せ……思い出すのよギャリー……!アタシだってやれば出来るの……!」

 

「あ、あはは……。そこまで自分を追い込まなくても大丈夫なんじゃないかな?」

 

「いや!こういう時こそ自分を追い込む必要があるのよイヴ!……アンタの名前イヴで合ってるわよね?なんか言い慣れてる感じがあるわね……。」

 

「おっ!その調子でどんどん思い出して!」

 

 

わたしを置き去りにして2人だけで話をする2人を見て少しさみしい気持ちが出てくると同時にこんな時お兄さんならなんて言うかなってふと思っちゃったんだ。

 

 

『おいお前ら……。俺達をおいてけぼりにすんじゃねぇよ。イヴち……いやイヴも困ってんじゃねぇか。』

 

「―――えっ?」

 

「い、今誰かが何か言ってたわよね……?」

 

「トシ……。」

 

 

なにか聞こえ始めた時にわたししか聞こえてないのかと思ったけど、反応を見る限り2人にも聞こえてたみたい。それに今聞こえた声はわたしに安心感を与えてくれてもう一度聞きたい気持ちが出てくる。

 

 

「でもお兄さんはあの世界に残ったんだもんね……。ここでお兄さんの声が聞こえるわけもないね……。」

 

「それは―――ごめん。私が外の世界に行きたいって言わなければこんな事にならなかったかもしれない。」

 

「いや、そんなことはないと思うよ。だってお兄さんは“やることがある”って言って残ったんだもん。」

 

「それは―――。」

 

「うーん……。まだ思い出せてないアタシが言うのもなんなんだけどきっとそのヒロトシって人はアンタ達を外に出すために頑張ってたんでしょ?なら感謝だけをして後悔をしないようにしなさい。」

 

「えっ?な、なんで―――。」

 

「だって助けたのにごめんなさいって言われるのって言われた方はだいぶ悲しいものよ?」

 

 

わたし達はそう言われてハッとする。たしかに助けた時に感謝されなかったら悲しいと思う。それに1回忘れちゃったとはいえきおくも思い出せたからもう忘れることはないと思う。

 

 

「……わかった。これからはここにいる事をトシに感謝しながら生きてく……。」

 

「わたしもお兄さんにありがとって思いながら毎日生きてく。」

 

「よし!それじゃあせっかく知り合ったんだし今度一緒にマカロンでも食べに行かないかしら?」

 

「さんせーい!マカロン食べたーい!」

 

「わ、わたしもいいの?」

 

「勿論!美味しいマカロンを提供してるお店知ってるの!そこに一緒に行きましょうね!」

 

「―――っ!うん!」

 

 

わたし達は次会う約束をつけて別れることになった。ママが後ろでわたしを探していたから早く一緒に見て回りたかったから。でも次2人と会ったらその時はちゃんとお兄さんのことを話したいと思う。だって―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやら今回は1人を犠牲に3人助かったようだね。まぁ彼ならそうすると思ってはいたけど。でも私の望む終わりは誰かの犠牲に成り立つようなものでは無いんだ。だからヒロトシ。君にはもう少しだけ私の我儘に付き合ってもらうよ?




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