では、どうぞ。
「俺の、名前?……確かに苗字は珍しいかもしれないけど下の名前はそんなにおかしいものじゃないだろう。
じいさんの質問に俺は一瞬考えてしまったが、特におかしい所もなにか思う所もある訳は無い。両親から聞いた名付け理由も「大きく広い心で利口に生きて欲しい」というなんともわかりやすいものだったはずだ。
「確かに君の言う通り君の国では普通の名前かもしれないね。でも人の解釈次第で名前の意味なんてものはどうとでもなるものさ。それに今大切なのはありふれた名前か否かじゃない。」
「なら俺の名前の何がどんな意味を持ってるって言うんだよ。」
「それを考える為にはファーストネームとファーストネーム、両方を少しだけ穿った考え方をしてみよう。」
「穿った……?それってどういう意味だよ。その言葉の意味知らないんだけど。」
「そこからかい……?うーむ簡単に言えば物事の本質をちゃんと捉える事かな。」
「へぇ。なんか文字の雰囲気的にひねくれた考え方をしてるとかそういう意味かと思ってた。」
「物事は往々にして見た目と実態が違う事があるものさ。話を戻すよ。」
じいさんはそう言うとコホンと1つ咳払いをして俺に説明を始める。
じいさんの話を聞くに日本人の名前は1文字1文字を分解して漢字の意味を読み解いたり、他の読み方をする事によって実際に与えられた意味とは違う意味を持つ場合があるらしい。
「へー……。それで?その考え方をして俺の名前を見るとどうなるってのさ。」
「まず君の名字から考えていこう。
「お、おう。だからって何になるってのさ。」
「本来君はこの世界に来るはずのないイレギュラーな存在だった。でも君の名前のお陰で弾かれる事もなく馴染む事が出来た……って言ったら分かりやすいかな?」
「はぁ?何がどうなったらそうなるんだよ。意味わからん。」
「まぁこういう世界にはそういう機能が備わっているんだ。だからこそ君の名前はとても私にとって都合が良かった。それにファーストネームもなかなか君の事を言い当てていると思うよ。」
俺はじいさんの言っている世迷言を素直に受け入れる事が出来なかった。何せ自分の苗字の意味なんて今まで考えた事もないし、それのお陰で今ここにいる事が出来ているなんて考えたくなかったからだ。
しかし下の名前の方が俺の事を言い当てているとはどういう事なのだろうか。さっきじいさんの言っていたようにできる限り多角的に少し考えてみるがてんで見当がつかない。
「……ギブアップだ。なぁじいさん、俺の下の名前にはどんな意味があるって言うんだよ。」
「こっちについてはだいぶ無理矢理な解釈になるけど君はそれでも構わないかい?」
「ここまで聞いたんだ。今更どんな答えが返ってきても驚きはしてもあんたを悪く言うつもりはない。」
「そっか。それなら私も私の考えをちゃんと君に伝える事にしよう。と言っても
「……と言うと?俺の名前を一体どう変えるんだ?」
「
「―――代理人。つまりじいさんは俺の事を代理としてここに呼んだって訳か?」
「―――それもあるね。」
じいさんは少し言い淀んだものの悪びれる素振りもなく俺にそう言い放つ。その姿に俺は怒りが湧いてくるでもなく悲しみに侵される訳でもなく、ただあるがままにその言葉を頭の中で反芻していた。
代理人。ゲーム内で
「ははっ……。じいさんのお陰でなんでどの世界でも外に行こうとしなかったのか身に染みてわかったわ。ありがとよ。」
「……そう決めつけるのはまだ早いんじゃないかな?確かに今まで見てきた君は外に出ようとはしなかった。つまりは
「あぁ。だから俺は外に出ることは叶わない。……だろ?」
「じゃあ
「……はぁ?いや、それをしたらほかの3人の誰かが出られなくなるかもしれないじゃんか。俺がこの世界に入るきっかけの事を考えてもそんな事は出来ない。」
「なら君の薔薇を……いや、みんなの薔薇を出る直前にこの世界に投げてしまえば?みんなの体を外に出せて尚且つ代わりとなり得る媒体はその世界に残る……。そんな事はあの時考えなかったのかい?」
「いや、それはっ!……考えなかった。俺が残れば皆は出られる。ならばそれが最善手だとばかり思っていた。」
「その“みんな”の中に何故自分を入れない。これでも私は君の事怒ってるんだよ?私は君“にも”外の世界に言って欲しかった。この世界は
じいさんはそう言うと俺に微笑みを向ける。どうやらこの人は良くも悪くも俺がこの世界に残る事を良しとしないようだ。しかし
「……じいさんの言いたい事は分かった。でももう3人とも外の世界に行ってしまった以上俺が外に出られる事は無いだろうし、出たとしても俺は元の世界に戻るだけだろ?」
「そう。君が外に出たら娘達と離れ離れになってしまう。でもそれも案外何とかなったんだ。逆に考えればいとも簡単に……ね?」
「逆に考える?何を逆に考えるんだよ。」
「娘達の世界に君が行けないのなら娘達を君の世界に連れて行ってあげればいいんだよ。」
「……いや無理だろ。戸籍は?家は?イヴの家族はどうするんだ。」
「そんなの簡単さ、世界を騙すんだよ。私が君にしたみたいにね。外の世界のイヴちゃんとギャリー君の戸籍謄本は既にコピー済みだ。それを君の世界にペーストするだけだからきっと大丈夫だろう。」
「いやそれ普通に犯罪……。」
「ふぅ……いいかい君。世界の真理を教えてあげよう。」
「はぁ……?」
「バレなきゃ犯罪じゃないんだよ」
「もう怒られろ。」
俺はじいさんの言葉に呆れると、じいさんはそんな事など知った事かと言わんばかりにドヤ顔をこちらに見せてくる。しかしそこも何とかなるのであれば、後はこの世界から
王様曰く“脱出するには贄が必要”との事だったので俺が残ったのだが、他にも方法があるのだろうか。それともこのじいさんが何か必要なものを準備してくれるのだろうか。俺は何も思いつかない中、じいさんは真面目な表情に戻って口を開く。
「とにかく、だ。これからまだ脱出する前くらいに君を戻すからそこからは頑張ってくれ。私も顔を出そうとは思っているが少し準備が必要だからね。少し待っていてくれると助かるよ。」
「分かった。とりあえずあの絵の前に着いてもじいさんが来るまでは待ってるように声をかけとくわ。」
「ありがとう。それじゃあこれからも良い旅路を……。君が外に出る所を見送らせてもらうからね。」
じいさんが喋っている途中から意識が徐々に無くなっていく感覚が強くなっていく。そしてじいさんが言い終わる頃には俺の目の前は暗闇となってしまっていた。
もうすぐこの作品も終わりそうですね。次回作のことは全く考えていませんが描きたい設定などは多少あったりはします。
まぁ全てを書き終えてからそこら辺は考えていこうと思います。