では、どうぞ。
落ち着いた俺達が茨のあった先へ行こうと1歩足を踏み出すと、部屋に入るよりも先に目の前からイヴとギャリーがこちらに歩いてくる。その姿を見たメアリーは先程のテンパっていたものがぶり返してきたのか2人の方へとずんずんと大股で歩いていく。
「2人ともなんで私の部屋に入ってるのさぁ!」
「だって仕方ないでしょ?アンタ達2人が落ちてすぐに部屋の様子が変わったんだもの。安全確認はしておかないと。」
「でも安心して?わたし達、メアリーの部屋では何も手に取らないで見るだけだったから。」
「ないって言ってんだし少し落ち着け。慌ててもいい事なんて何もねぇぞ。」
「でも……でもぉ……!」
俺は先程の焼き増しを見ているような感覚に陥りそうな程既視感のある光景がメアリーを中心に展開されている。それを見た俺はギャリーにメアリーの相手をするようにジェスチャーをして丸投げしておく。
少し恨めしげな表情をこちらに向けてギャリーはメアリーの方へ歩いていく。俺がそれを見送っていると暇になったからなのかイヴがこちらに歩いてきた。
「どうしたイヴ、寂しくなったか。」
「……お兄さん、口が悪くなった?落ちてから何かあったの?」
「あー……まぁ後でなんでこうなったかわかると思うから秘密にしておこうか。イヴはこの喋り方は嫌か?」
「うーん……、わたしはいやじゃないよ?確かにびっくりはしたけどでもそのしゃべり方の方が仲良くなったって感じがするもん。」
「そうか。なら良かった。」
俺はそう言ってイヴの頭を優しく撫でる。イヴは今までのように乱暴に撫でられると思ったのか少し警戒していたが、俺が撫で始めて直ぐに大丈夫そうだと感じたらしく大人しく撫でられる事に準じていた。
するといつの間にやらメアリーの癇癪が収まったらしく、2人が少し離れていた俺たちの所へ歩いてきていた。しかしその表情は片や微笑ましいものを見ているようなニヤニヤとしたもので、片や何故だか怒っているような悲しんでいるようなそんな顔だった。
「なぁ、何でメアリーはそんなに不機嫌そうなんだ?」
「あら、そんなの決まってるじゃない。大好きなお兄ちゃんが友達に取られてるんだもの。」
「わぁ〜!そんな事ない!ギャリー適当言わないでよね!トシもギャリーの言った事を真に受けないで!」
「お、おう。」
「メアリーもお兄さんのこと好きなの?」
「ふぁ!?そ、そんなわけないじゃん!ばか言わないでよイヴ!」
「え〜?わたしはお兄さんのこと好きだよ?」
イヴがそう言うと俺達3人の中の空気が一気に固まる。俺とギャリーの表情は固まったまま動かず、メアリーは口をパクパクとさせている。そんな事をものともせずにイヴは再び口を開き始める。
「もちろんギャリーとメアリーも好きだからね!3人とも大好き!」
「―――も、もちろんそういう意味だってことはわかってたから!トシとギャリーにはもったいない言葉って事もね!」
「あ、アンタねぇ!いつもいつも一言多いのよ!少しはそういうところを改めなさい!」
「―――社会的に死ぬかと思った……。いや、俺まだ高校生だしギリギリセーフだよな……?」
メアリーとギャリーがいつもの言い合いをしている中、俺はほっと胸をなで下ろす。まさか小学生に告白紛いな事をされるとは努努思っていなかったので、自分の思っている以上に慌ててしまったかもしれない。
「お兄さんはわたしの事好き?」
「え、あ、おぉ。好きだぞ。好き好き。もーちょー好き。」
「むぅ……。お兄さんなんか適当すぎない?もっと心を込めて言って!」
「それは然るべき時に然るべき人から言われるまで取っておいて。今の俺にはこれが精一杯。」
「叱るべき時?怒ってる人が怒ってる時に好きって言うの?……お兄さん変なこと言うね。」
何だか盛大に勘違いをし始めたが、イヴの好きって言ってモードが解除されたからまぁ良しとしよう。それよりも今の問答の最中一言も喋っていないバカ2人をどういなすか、そっちの方が今の俺には問題なのである。
「あらあらぁ〜。ヒロトシったら随分と初なのねぇ〜。」
「トシのバカ!バーカ!」
「なんでそんなに言われにゃいけないんだよ。俺は何も悪くねぇ。……そんな事より早く行くぞ。」
俺はそう言って3人を背に部屋の扉へと向かい、ノブに手をかける。するとイヴとメアリーは慌てて、ギャリーはやれやれと言わんばかりの雰囲気を醸し出しながら着いてくる。それを横目に俺達は漸くこの部屋から出る事にしたのだった。
イヴちゃんから告白紛いな事をされてそれを目にしたメアリーから罵られる……。ちょっと羨ましいですよね。