では、どうぞ。
「パ、パパ……?なんでパパなのかしら……?」
「俺が知るかよ……っ!じいさんがこいつを描いてるところを見てた訳でもねぇしよ……!」
「なんでトシがパパなのー!私の妹ならパパの娘でしょー!」
「はわわっ……!お兄さんって子どもいたんだ……!」
「ハッハッハ!」
「?」
何も分かっていなさそうな自称我が娘を除いた全員が各々にリアクションをしていく。しかしイヴは何お勘違いしているんだか。ここに来てからずっと一緒に行動していたのだからこんな特殊な出で立ちの子供なんぞ出来るはずがないだろうに。
「……ねぇパパ。わたしになまえをつけてください。」
目の前の少女が何も知らなさそうな無垢な瞳をこちらに向けてそう言ってくる。
「お、俺?じいさんに付けてもらえばいいだろ?お前の姉ちゃんと同じようにさ。」
「そうだよ!トシよりもパパの方がきっといい名前をつけてくれるよ!」
「……パパがいい。おじいちゃんじゃなくてパパにつけてもらいたい。」
どうやらこの少女は意地でも俺に名前をつけて欲しいらしい。しかし俺としてはそれよりもこの子がなぜ俺の事をパパと呼ぶのか原因が知りたい。と、そこで俺は1ついい方法を思いついた。
「OK。なら君がなんで俺の事をパパって言うのか教えてくれたら俺も真剣に君の名前を考える。それでいいか?」
「……わかった。でもわたしの理由はすごくかんたん。パパのきおくをおじいちゃんに見せてもらった。だからパパのことはいっぱい知ってる。でもおじいちゃんのことはあんまり知らない。……それだけ。」
少女がそう言ってくれたおかげで俺の予測が確信に変わった。まぁこの子に仕組む事が出来るとしたらじいさんしか居ないのは分かりきっていた事だが。
そんな訳で漸くイヴからの俺の誤解を解く事が出来て、さらに犯人もわかったので今までのお礼と言わんばかりに愉快犯を睨みつけてから真剣に考え始める。
「うーん……。やっぱりパッとは思い浮かばないな。誰か、何かいい案無いか?」
「そうねぇ……。花の名前から取るのとかはいいんじゃないかしら?綺麗な名前もいっぱいあるんだし!」
「あっそれいいかも!ギャリーのくせにいい事言うじゃん!」
「メアリーはいつも一言多いのよ!」
「お花ならわたしポインセチアとかいいと思うなぁ。真っ赤ですごいキレイなお花だよ。」
ギャリーが花というジャンルを、イヴがその中で自分の好きな花を挙げてくれた。とりあえずはそれを軸にして名前の候補を考えてみよう。
「花か……。名前として使うなら百合とか桜とか……あとちょっと古風な名前だと梅とか菊、それと桔梗辺りか?」
「ふむ……LilyにCherryBlossom、PlumにchrysanthemumそしてBalloonFlowerか。花言葉も全体的に悪くは無いしいいんじゃないかな?」
「へぇ。今挙げた花って英語だとそう言うのか。桜は知ってたけどさ。あ、あと蒲公英をダンデライオンって言うのは知ってる。」
「……君は本当に奇麗な物にも興味を持った方がいいと思うよ。仮にもこの私が見初めた人間なんだからさ。」
「あー、その件についてはこれからに期待って事で。」
俺はじいさんの言葉をそう言って流して再び考え始める。英名を含めて考えると百合か梅の方が分かりやすく、呼びやすいだろう。……俺としては桔梗とかいいんじゃないかなって思ってたんだけど……、バルーンフラワーはなぁ……。
「―――よし、決めた。今日から君はリリーだ。」
「リリー……うん、わたしリリー。よろしく、パパ。」
「よし、名前も決まった事だしこれで儀式も終了だ。一応これで3人とも外に出られるようになったけど……すぐに行くかい?」
「あー、俺としてはリリーに愛着が湧いて離れづらくなるのは嫌なんだけど……この子にまた会いに来れたりしないか?夢の中でもいいんだけどさ。」
「夢の中なのであれば毎日会わせる事が出来るよ。実際に対面するのはだいぶ難しいけど……まぁ君の部屋のどこかにここに通じるゲートを開く事は不可能ではないよ。」
不可能では無い。じいさんにしてはなんとも暈した言い方に少し違和感を覚えるが、きっとそのように言った意味があるのだろうと思いながら返答を考える。
「……まぁゲートについては今はいい。とりあえず夢で会える様にしてくれないか。じいさんに教育を任せると色々歪みそうだし。」
「君ちょっと失礼じゃないかな?仮にも何人も子供のいる大家族の父親だぞ?」
「でもそれ全部彫刻とか絵画ってオチなんだろ?」
「勿論!私の生前に伴侶となる女性はいなかったからね!」
「なら俺ら4人で遊んであげた方がいい勉強になるだろ。人間関係とか言ったら傷つく言動とかさ。」
「ここでその配慮は必要かい?別に誰がいるわけでもあるまいに。」
やっぱりこういう所は人間として終わってんだよなぁこのじいさん。でもこの子の為なら俺達の夢を何やかんやして1つにする事くらいは容易く出来るだろう。時間遡行や平行世界への移動が出来るくらいなのだから。
「まぁそういう事だから夢の件は任せた。じいさんならちょちょいのちょいだろ?」
「君は本当に老人使いの荒い若者だよ。―――任せておきなさい。私とリリーが毎晩君の夢の中にお邪魔しようじゃないか。」
「パパ!たまにでいいから私とイヴも一緒に呼んでね!あとついでにギャリーも!」
「ハハッ勿論だとも。メアリーも私の娘なのだから除け者にはしないさ。」
「あの……アタシ達も一緒でご迷惑では無いですか?ゲルテナ先生のお手を煩わせるようであればアタシは大丈夫ですよ?」
「いいんだいいんだ。君もメアリーの友達、なら私から言わせてみれば君達も私の子供達さ。」
じいさんがギャリー達と話しているのを横目に俺はリリーと会話をする為に目線を合わせる。すると向こうも話したかったのか少し近づいて内緒話が出来るくらいの距離感になった。
「いいかリリー、俺達はこれからここを離れなきゃ行けなくなるけどリリーはここでじいさんと仲良くしてるんだぞ。」
「うん、わかった。」
「よし偉いな。また俺が向こうで寝たらじいさんがここに俺を連れてくると思うからそれまで我慢してくれな?」
「うん。」
「……どうしても会いたくなったらじいさんに頼んで俺に知らせてくれ。どうにかしてここに来られるようにして貰うからな。」
「うん。……パパはわたしのこと、すき?」
「―――あぁ、大好きだぞ。」
「……わたしもパパのことすきだよ。だからわたしまってるね。」
リリーはそう言って俺に笑顔を見せてくれる。初めて見たこの子の笑顔はお世辞にも楽しそうには見えなかったけど、それでも今までの無愛想な表情と比べたら何倍も可愛い顔だった。
「……それじゃあじいさん、俺達はそろそろ出るよ。夢の件、くれぐれも忘れないように頼むぞ?リリーもじいさんが忘れてたら遠慮せずに言っていいからな?」
「私もそこまでボケてないはずだから安心して寝てくれて大丈夫だよ。責任もって君の夢にリリーを連れていく事を約束するよ。」
「バイバイ、パパ。またあとでね。」
「バイバイ。……じゃあ行こうか3人とも。」
俺がそう言うと3人は力強く頷いてくれる。じいさんのお陰で少し3人の置いてけぼり感を傍から感じていたが、今となっては些細な事だろう。少しそんな事を思いながら『絵空事の世界』へと俺達は入っていった――――――。
リリーちゃんはリリーと表記するかリリィと表記するかで迷いました、お姉ちゃんがメアリーなのでリリーにしました。リリィも可愛いと思うんですけどねぇ……。
あと名前は次点で桔梗にしたかったんですけど英名がちょっとダサいのと、桔梗の前というあまり縁起のよくないお話があるそうなので今回は諦めました。桔梗って可愛くて結構好きなんですけど呪いはちょっと……。
Ibもリメイクが今年発売ですね。Steamに既にストアページ自体はあるのでまだご覧になられていない方はぜひ見に行かれてください。